新暦0075年、JS事件が起きた。
その時活躍したのが古代遺物管理局 機動六課。通称機動六課。その中で特に活躍したのが、エース・オブ・エース高町なのはである。
というのが世間の見解であるが、実際に一番活躍したのは
化け物。管理局が誇るオーバーSランクの面々が揃ってそういう程の人物。機動六課の数多の危機を救い、聖王の鎧を砕き、聖王のゆりかごを止めた張本人。
そんな神助はというと、天瞳道の道場へと足を運んでいた。
天瞳道にはいくつかの術派があると聞いたことがあるが、神助が知っているのは居合術のみであり、居合術の師範代であるミカヤ・シェベルという女性に用があってここを訪れたという訳だ。
道場の門をくぐると道着を着た女性が、庭で竹刀を振っていた。ちなみにではあるが、神助が知っている限り、この道場にいる女性は一人しかいない。
「よっ。久しぶりだな、ミカヤ」
片手を上げ、気さくに話しかける。すると女性は竹刀を降るのを止めて、声のする方へ視線を向ける。神助を見ると微笑み、やあ、来たねと声を掛ける。
端正な顔立ち、引き締まった肉体とそれに比例するかのように主張する胸と尻。凛という言葉が似合う女性だ。
「で?何の用だ?」
「ああ。私が去年、右手を怪我したことは知っているね?」
ミカヤの問いに対し、眉間に皺を寄せる。その仕草で答えを得たミカヤはくすりと笑い、
「別に私は気にしていないよ。それよりも、完治したかどうかを知りたいんだ」
「あ?完治したって言ってなかったか?」
「あれは怪我が治ったということだよ。私が知りたいのは、感覚のほうさ」
治療に専念していたために出来なかった日々の鍛錬。それを今までの倍以上の量で補ってはいるが、一日休めば感覚を取り戻すのに三日かかると聞く。ミカヤは一日どころか半年以上を治療に費やしていたのだ。単純計算で言えば、感覚を取り戻すのに一年半以上掛かる。
ここまで考えて神助は、そういうことかと納得する。
「オーケー分かった」
神助は腰を落として腰に下げた刀の柄を握り、
「来いよ」
不敵に笑んだ。それを見てミカヤは、腰に下げた刀型のデバイス『晴嵐』の柄に手を添えた。
「天瞳流抜刀術師範代 ミカヤ・シェベル。参る!」
鋭く踏み込み刀を勢いよく抜き放つ抜刀術。師範代の名に恥じぬ洗礼されたその抜刀は、ブランクがあるとは思えないほどの切れがあった。
何物をも断ち切らん程の鋭さを以って放たれた抜刀を前に神助は、そのままの姿勢で何もせず、ただミカヤを見つめていた。
抜き放たれた晴嵐は、神助の首元すれすれで止まった。
「⋯⋯前より良くなってんじゃねぇか?」
ミカヤの放った寸止めの一刀。それだけで全てを見通した神助は、姿勢を直しそう言った。
「⋯⋯そうか。君がいうのならそうなんだろうね。ありがとう」
右手を握り、開き、神助の感想に微笑んだ。
「ああ、いいよ。それで?用ってのはそれだけか?」
「いや、それだけじゃないよ。もうひとつあるんだ」
なんだよ?と怪訝そうな表情をする神助に、ニコリと微笑み。
「君もインターミドルに出るといい。というか既に申し込んでおいた」
満面の笑みで事後報告をし、申込書を見せてきた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
急なことに神助も、目を見開いて驚くしか無かった。
× × ×
インターミドル地区選考会へ来た神助だが、まったく乗り気では無かった。
「なー。なんで俺がこんなのに出なきゃいけねぇ訳?デバイスも持ってねぇんだぜ?」
「デバイスならここにある。デバイスの中に魔力が込められてあるから、君でも展開ぐらいは出来るよ」
「それって近接用のデバイスだろ?俺剣士、分かる?刀使えなきゃ十分の一も発揮出来ねえっての」
「そこは問題いらないさ。私が大会本部に交渉して、鞘からさえ抜かなければ、武器として使用する事を許可して貰った」
「どこまでも用意周到だな、お前。ったくよぉ、こんな大会なんかに興味ねぇっつうのによぉ」
「まーまー。過ぎたことをいくら言っても意味が無いぞ。ほら、君の番だ」
文句タラタラな神助の背中を押し、リング上へと登らせる。
とぼとぼと登ったやる気のない神助と、やる気に満ち溢れた対戦相手。
男女混合のインターミドルでは、女子が男子と戦うのは珍しくない。
対戦相手は女子。尚更やる気が出ない。
そんな神助をよそに、レフェリーが試合開始の合図をする。
瞬間の出来事だった。対戦相手の女子が、膝から崩れ落ちた。
何が起こったのか分からずに慌てる人々。その中レフェリーは、勝利者宣言をする。
一方神助は、溜息を吐きながらリングを降りる。
「まったく。だからくだらねぇってんだよ。せめてお前みたいのじゃなきゃ楽しめねぇっての」
その発言にははっと笑うミカヤ。
「だろうね。でも、選考会を通れば次は、ダークホースが集まる地区予選だ。そこには私以上の強者も沢山いるはずだよ」
「はっ。俺はパルトメストやなのはと戦うだけで十分だっての」
「おや?なら私と戦いたくは無いのかな?」
「お前とはいつもやってんだろ」
「あれはただの手合わせだよ。君はもちろん、私だって本気では戦っていないさ」
「言うじゃねぇか。なら、予選だろうが本線だろうが、お前とあたった時は全力でいっていいって事だな?」
「もちろん。むしろ、手加減されて勝っても嬉しくなんかないからね」
「そりゃそうだ」
地区選考会二戦目も危なげなく通過。山形神助、スーパーノービスクラスで予選出場決定。