桜諸刃流免許皆伝の天才剣士   作:反町龍騎

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二振目

 選考会を突破した神助は、ミカヤと共に喫茶店へ来ていた。

 

「いや、色々とばたばたで済まなかったね。ここは私が奢るから、好きな物を食べなよ」

 

「いや別にいいよ。それよりなんで喫茶店?」

 

「それはまぁ⋯⋯。私なりに色々と思うところがあるからだよ」

 

 赤らめた頬をポリポリと掻きながら他所に視線をやるミカヤに、何を思ったのか神助は、

 

「お前まさか、まだ俺をはめる気じゃあるめぇな。もう二度とごめんだからな」

 

「もうそんなことはしないさ!あーそれより、だ。今日これから、予定とかあったりするかい?」

 

「予定?いや、別に無ぇけど」

 

「そう、か。じゃあ良かったら、今から私と⋯⋯」

 

 言いかけた所で、神助の携帯から着信音が鳴る。

 

「ん、悪ぃ。出るぞ」

 

「あ、ああ⋯⋯」

 

 どこか寂しげな表情で俯いたミカヤは、少し珈琲を口に含んだ。その時の味は、いつもより少しだけ苦く思えた。

 

「脱走だぁ?お前があそこは脱獄不可っつってたんだろうが。――チッ。今から行くよ」

 

 パタンと携帯を閉じ、立ち上がった神助は、二人分の珈琲代を机に置き、

 

「悪ぃ急用が出来た」

 

「管理局の方かい?なら私も行くよ」

 

「馬鹿言うな。これは命が保証された競技とは訳が違うんだ。お前は先に帰ってろ」

 

「いや、いずれは私も現場に行かなくては行けなくなるからね。着いていくよ」

 

「家に帰ってろって」

 

「わ・た・し・も!行かせてもらうよ」

 

 三度も言わせるなと、満面の笑みが語っている気がして、神助は深い溜息を吐いて、分かったよと言うと。

 

「ただし、危ねぇから俺の傍から離れんなよ」

 

「勿論そのつもりだよ!」

 

 ミカヤと長い付き合いになる神助だが、今までで一番と言っていいほどご機嫌なのではないだろうか。

 そんなミカヤに首を傾げつつ、電話相手の元へと向かった。

 

 

×  ×  ×

 

 

 時空管理局本部にある一室。ここは時空管理局執務官であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの仕事部屋だ。そこで神助とミカヤは、金髪に赤い瞳の女性――フェイトと、茶髪に黒い瞳の女性――高町なのは一等空尉、そしてフェイトと同じ執務官である、オレンジ色の髪に青い瞳の女性――ティアナ・ランスターの三人と向かい合って座っているのだが。

 

(なぁ、神助君。あの三人、凄く私を見てくるんだが、一体なんなんだ?)

 

「物珍しいんじゃねぇか?俺が女連れてくるのが」

 

「え!やっぱりそうだったの!?」

 

「え!やっぱり神助の彼女さん?」

 

「それにしても綺麗な人〜。名前はなんて言うんですか?」

 

 ミカヤが小声で喋りかけたというのに、神助が皆に聞こえる声で喋ってしまったために、なのは、フェイト、ティアナと反応していき、ミカヤは恥ずかしそうに肩を狭めるのだった。

 

「こいつはミカヤ。別に彼女じゃねぇよ。棒振り仲間だ」

 

「へぇー。彼女じゃ無いんだぁ」

 

「えー。ほんとにそうなのかなぁ〜」

 

「ミカヤさん照れてるけど、本当に彼女じゃ無いのー?」

 

 などと、ティアナ、なのは、フェイトの三人は、二人をからかうように喋っていく。神助の彼女じゃない発言に、落ち込み気味だったミカヤだが、三人の怪しむ視線に、やっぱりそう見られてるんだ!という恥ずかしさから、段々と小さくなっていく。

 そんな中で神助は、重要な話をしない三人に苛立ちを覚えたのか、机を指でトントンと叩きだした。

 

「それで?脱獄の件はどうなってんだ?」

 

「あ、そうだった!その件は、パルトメストが指揮を取ってくれてるんだけど、やっぱり神助の力が必要になるかもしれない」

 

 フェイトが難しい顔をする。パルトメストと言うのは、フェイトやティアナと同じ執務官であり、なのはと同じエース・オブ・エースの称号を与えられた魔導師である。

 名前や噂くらいは聞いたことのあるミカヤだが、話を聞く限り、管理局の誰よりも強いと名高い魔導師なのだ。そんな人が神助に頼るとは、余程の相手なのか、と。

 

「例のレアスキルか、厄介だな。ただでさえ三つの魔力変換資質があるってのに⋯⋯」

 

「――三つ、とはもしかして、炎熱、氷結、電気の三つでいいのかな?」

 

「ああ」

 

「その上で厄介なレアスキル、無双時間(エンペラータイム)を使うのよ」

 

「このレアスキルは、一定時間の純粋な物理攻撃以外の攻撃を無かったことにする、ていうものなんだ」

 

「簡単に言えば、魔法は効かない。だから、なのはやティアナみたいな砲撃型の魔導師も、私やパルトメストみたいな魔法を応用して戦う魔導師も、太刀打ちすることが出来ない」

 

「ま、だからこその俺って訳だ。お前も魔法自体は使わないみたいだが、戦わねぇ方がいい」

 

 管理局の、文字通り最強の男と、自分が知る限りの最強の男で持ってして、苦い顔をする程の相手。その者への恐怖を助長するかのように、怯え出す管理局最高戦力の面々。

 

「この件は、俺たちだけでやるつもりか?」

 

「いや、管理局が総力を上げて行うつもりだよ」

 

「彼を脱獄させたのは、次元手配犯の二人。――腸喰(はらわたぐ)いと小鳥遊宗二(たかなしそうじ)って情報が出てる」

 

 最悪だ。と、頭を抱えだす神助。その二人が絡んでいるとすれば、JS事件の二の舞、いや、それ以上にもなりかねない。

 

「⋯⋯誰ですか?腸喰い、は聞いた事がありますが、小鳥遊宗二は聞いた事が無いのですが⋯⋯」

 

「そいつらも最初のやつ、次元手配犯のアイズ・グランフリートと並ぶ、厄介な犯罪者だ」

 

 神助の言葉で戦慄する。たった一人だけでもこれだけの騒動。それが三人。

 

「全員を捕まえる事は、出来るんですか⋯⋯?」

 

 沈黙。イエスともノーとも言えず、全員が黙り込んでしまう。

 不意にふぅっと息を吐いた神助が、

 

「ミカヤ、お前は帰れ」

 

「――ッ!」

 

「戦力外、とまでは言わねぇ。実際お前は、そこら辺の管理局員よりも強い」

 

「ッ!なら――!」

 

「たかがその程度じゃ、足でまといにすらなること無く、死ぬぞ」

 

 誰も否定しない。故の恐怖。生半可な実力で、どうにかなるような相手ではない、ということか。

 

「それでも、話を聞いたんだ!後方支援だけでも!」

 

「無駄だって。それこそ実力不足だ」

 

 どう言っても無駄なのだろう。そう悟ったミカヤは、俯きがちに席をたち、一礼して部屋を出る。

 

「⋯⋯あんな事言って、良かったの?」

 

「もう二度と、大事な仲間を失いたくない。俺や皆の、家族もだ」

 

 神助の言葉に、なのはとフェイトは悲しそうな表情になる。事を知っているだけに、ティアナも何も言えずに黙ったままだ。

 

「とにかく、話を続けよう」

 

「うん。じゃあ続きは、聖王教会の騎士カリムや、クロノ提督と一緒に」

 

「ああ」

 

 そうして四人は聖王教会へと移動する。

 かくしてこの騒動は、歴史をも揺るがす大事件へと発展する。

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