聖王教会に着いた四人は、騎士カリムとクロノ・ハラオウンと共に円卓を囲んでいた。
「それで?これからどうする」
「これからする事は幾つかある。まず一つ目に、レリックの護衛だ」
「それが狙われるってのか?」
「確定では無いが、可能性は十分にある。プレシア・テスタロッサ、ジェイル・スカリエッティ、アイズ・グランフリート。共にレリックを狙っての犯行だ」
「あの二人がそいつと組んだのも、それが狙いか?」
「小鳥遊宗二はそうだろう。しかし腸喰いは、そうでない可能性もある」
「彼は純粋な戦闘狂ですから、ただ単にその二人と組み、我々と戦いたいだけなのかもしれないですね」
「そうです。そして二つ目が、神助。君はパルトメストと共に前線に出てもらいたい」
「元々そういう要件だったしな。いいぜ」
「ありがとう。ただ、君が前線に出るにあたって条件がある」
目を伏せ、静かに息を吐いた所でクロノは、管理局員としてでは無く、一人の人間の目を神助に向ける。
「君はデバイスを使えない。だから、非殺傷も出来ない」
「ああ」
「こんな事、言いたくはないが、君にしか頼めない」
「言えよ」
「――その三人に会ったなら、戦闘に発展したのなら、⋯⋯迷わず殺して欲しい」
クロノの言葉に皆は目を見開いて驚く。当の神助は、目を細めクロノを見つめていた。
「殺せ、か。穏やかじゃねぇな。ま、あれだけの犯罪者だ。法で裁くより、直接首を切り落とした方がいいって事か」
「⋯⋯すまない」
「謝んなよ。ここの連中は皆甘いヤツばっかりだからな。――いや、パルトメストはどうする」
神助に皆の視線が集まる。管理局は正義の味方では無い。なのは、フェイトを始め、話し合いでどうこうしたがる者が多いが、実の所、現場で殺傷している事の方が多いのだ。
「あいつも一人、殺してんだろ。アリア・ハシャトルテ、だったか?」
「⋯⋯ああ。だからこそ、彼にはもう殺害という選択を取って欲しくないんだ」
「俺なら構わないって聞こえるが、そう言ってねぇ事は理解してるよ。分かった。――俺が戦うなら、殺す気で行く」
ドスの効いた声に、部屋に緊張が走る。耐え難いその空気を壊すべく、クロノが口を開く。
「そして三つ目。これは管理局上層部の決定でね。――機動六課、再結成だ」
悲しみの表情のなのは、フェイト、ティアナ。アイズ・グランフリートとの一件で、エリオ、キャロ、ギンガの三人は、未だ昏睡状態に陥っているからだ。その三人なくして、機動六課とは言い難い。
「欠けた三人の穴は、誰が埋める?」
「埋める事はしない。彼らの帰るべき場所を、作っておかなくては行けないからね」
クロノの発言にふっ、と笑うと、神助は立ち上がる。
「じゃあとりあえず、俺はパルトメストと合流してくるわ」
「あ、神助君」
「あ?」
「インターミドルの方はどうするの?ヴィヴィオが戦えるかもってワクワクしてたよ」
「あー⋯⋯。一週間で片がつくなら出る。つかないなら出ない」
そう言い部屋を出た神助は、「ミカヤに謝っとかなきゃなんねぇな」と呟いた。
× × ×
場所は変わり、第八十七管理外世界『ベテルギウス』
この世界は荒廃している。管理局すら管轄する事が出来ない程に。故にこの世界は、犯罪者の世界と呼ばれている。次元手配犯が街を闊歩する。
その中に、フードを被った者が三人。
「これからどうする?」
「とりあえず、管理局を潰す。――それから、世界征服なんてのもいいかもな」
「いいねぇ。凄く滾るよぉ、それぇ」
「⋯⋯レリックはどうする」
「管理局を潰す時に、ついでに頂く。――そして、アリアを生き返らせる」
「アルハザード、か。そんなものが現実にあるとは思えないけどな」
「あるなしじゃない。作るんだよ」
「作る⋯⋯?どうやって」
「創造の前には破壊が必要だ。管理局を潰し、レリックを奪い、世界征服をしたら、レリックの力で全ての世界を壊す。レリックが導くんじゃない。レリックによる全次元を巻き込むほどのハイパーノヴァ。その後に現れるのが、アルハザード。プレシア・テスタロッサの失敗はそれだな。冷徹非道を行っていようが、ただのクローンである女を、自分の娘と重ね合わせた。その情が、自分を殺したんだよ」
「その考察ってさぁ、合ってるのぉ?」
「さあな。実際にやってみない事には、結果は分からん。いわゆるシュレディンガーの猫ってやつだな」
「それを言うなら、シュレディンガーのアルハザードだねぇ」
三人の内の一番細身の人物はケタケタと笑い、フラフラと隣の通行人の肩に腕を回す。
「君はさぁ、嫌な臭いがするからぁ、殺すねぇ」
言われた通行人が威嚇するより早く、細身の人物がナイフで通行人の首を切り落とす。
しかし周りは騒がない。ここは犯罪者の世界。法は無い。生殺与奪がいつ行われようと、奪われた方が悪い。だからこそ、犯罪者にとって生きやすい。
ただしその分。秩序はない。
「おいコラてめぇ!よくもボスをやってくれたな!」
一人の怒声を皮切りに、三人の周りを数十人が取り囲む。しかし、
血の雨が、三人を打つ。
何が起こったのか、周り数十人の首が一斉に吹き飛んだ。
「――うるせぇぞお前ら。マルコォ!」
呼ばれたマルコォ。世間では腸喰いと呼ばれるクリウス・マルコォ。殺害数測定不能の凶悪犯罪者。
そんなマルコォは、呼ばれた方を向き、
「なんだぁい?」
「無駄に騒ぐな」
「アハハハァッ!一番の騒ぎは君だろぉ?アイズ」
呼ばれたアイズ。最悪最強と名高いレアスキルを持ち、脱獄不可と言われた拘置所を脱獄し、全ての魔力変換を使う、殺害数測定不能の次元界最悪の犯罪者。アイズ・グランフリート。
アイズはもう一人の方を睨むと。
「小鳥遊。あいつを引きずってこい」
呼ばれた小鳥遊。元管理局員であり、機動六課の一員であった小鳥遊宗二。犯罪歴はアイズを脱獄させた事。殺害数はゼロであるが、管理局が確認しているだけの範囲であり、本当にゼロかは定かではない。
その宗二はマルコォの頚椎を強打し気絶させると、肩に担ぐ。
「決行は来週、お前の娘が出る、インターミドルの日だ」
「⋯⋯」
覚悟をした目、決意をした目、狂凶とした目。三者三葉の目をして、街を歩き出す。
ただし一人は気絶しているが。