クロノ達と別れてから程なくして、神助は電話を掛けた。
相手はもちろんミカヤだ。
「もしもし、ちょっと話があるんだが、今いいか?」
『⋯⋯なんだい?足でまといの戦力外に、何の用があるのかな?』
「ひねくれんなよ。話ってのはインターミドルの事だ」
拗ねた声色のミカヤを宥めつつ、本題に入る。
「さっきの話でよ、俺前線で動くことになったんだわ。一週間で事が片付かないなら、インターミドルは棄権する」
『――そう、か、それは仕方ないね。何せ相手はとてつもない強さなのだろう?』
「ああ。だから、ヴィクター達に伝えといてくれ。その時はすまんってよ」
『ヴィクター達はガッカリするだろうね。相当、楽しみにしていた様だから』
「だろうな。そんじゃ、行ってくるわ」
『ああ。気を付けて、五体満足に帰って来るんだよ』
「はっ。そんなヤワなやつじゃねぇよ俺は」
『知っているとも。それでも心配なんだよ。あれだけの強さを持つ人が怯える程の者と戦うというのが』
深く静かに、ミカヤは深呼吸をする。そして意を決した声色で話す。
『君が無事に帰って来たら、話したい事がある。――聞いてくれるかい?』
「なんだそりゃ?フラグ立てんなよ。――いいよ、そんときゃ聞いてやる」
ふっ、と短く笑い、ミカヤは静かにありがとうと告げる。それに神助は、なんで礼なんかと笑う。
「じゃあ、切るぞ」
『ああ。気を付けて』
電話を切った神助は、今自分の目の前にいる男、管理局最強と名高いパルトメスト・アーリーズに視線を向ける。金髪の髪を逆立て、瞳の色も金色。その綺麗な金色の瞳を、ニヤニヤと神助に向けている。
「なんだよ」
「いやぁ?彼女との電話はもういいのかなと思って」
「彼女じゃねえっつうの。俺の女は今も昔も、たった一人だ」
「全く、本当に一途だな、お前」
苦笑気味に息を吐いたパルトメストは、先程と打って変わって真剣な表情になり、
「聞いているとは思うが、お前は前線で俺と一緒に戦ってもらう。もちろんそれは、アイズ・グランフリートとだ」
「他の二人はどうすんだ?」
「小鳥遊宗二と腸喰いに関しては、俺となのは、フェイトの三人で相手をする。ただし、小鳥遊宗二には、もしかしたらお前の出番があるかも知れねぇ」
「お前らで何とかなるだろ。一対一なんて騎士道精神、お前らにはないだろ?」
「ああ、そんな正々堂々なんか真っ平御免だね。だが小鳥遊宗二は義手義足してんだよ。それにAMFの機能を追加してあったという情報があったんだ」
「アンチ魔法の魔導師が二人もね。クソほど厄介だな、そりゃ」
「そうなんだよ。というわけで、今から捜査、って簡単な話じゃない」
「あ?」
「俺の信頼に足る情報源によれば、三人は今、ベテルギウスにいるらしい」
「なら、そこに行きゃいいだろ」
パルトメストは笑って、馬鹿かと言うと、
「そこは管理局でも容易に手が出せない管理外世界だ。犯罪者達がうようよいる、な。そんなとこに俺たちが紋章付けて行ってみろ。即囲まれてフルボッコだ」
「返り討ちにすりゃいい」
「単細胞かよ。お前だって聞いた事あんだろ?犯罪者しか居ねぇ。歩く度歩く度喧嘩売られちゃ捕まえれるもんも捕まえられねぇ」
「なるほどな。ならどうする?相手の動きを待つってのか?」
「それもひとつの手ではあるが、そんな奥手じゃダメダメだ」
と、パルトメストは一枚の紙を神助に見せる。
「管理局特殊捜査班のアルベド・アラーシャだ。そいつは便利なレアスキル『
「なるほどな。こいつの力で、ベテルギウスに行くって事か?」
「まあそういう事になるが、一度こいつに見に行って貰わにゃならん。それに、アイズ・グランフリート達がいる場所もな」
「危険な出張だな」
「ああ。だからこいつとお前で、ベテルギウスに行ってもらう。もちろん私服でな」
「俺の私服はこれだぜ」
神助が今着ているのは、赤を基調とし、黒い線が所々に入り、陰陽勾玉巴が胸元に縫われている着流しだ。
「なら別にそれでいいよ。とりあえず、こいつを呼んでるから、来るのを待つか」
数秒の時を空けて、二人のいる部屋がノックされる。ドアが開き、入って来たのは女性。栗色の髪を方まで伸ばし、赤色の眼鏡を掛けていて、理知的な印象を受ける。彼女がパルトメストの言っていた、アルベド・アラーシャだ。
アルベドは部屋に入り一歩進むと、一度お辞儀をする。
「失礼します。アーリーズ執務官、要件とはなんでしょう?」
「来たな。用ってのは、ここにいる神助と一緒にベテルギウスに行ってもらいたい」
「犯罪者の巣窟にたった二人で、ですか?」
「私服で行きゃ、下手なことしねぇ限り何も起きねぇだろ。ま、なんかありゃ神助が何とかするさ」
「⋯⋯分かりました。それではまず次元航線まで行きましょう。私はまず、私服に着替えてきますので、少々お待ちください」
次元航線とは、次元世界間を移動する飛空機や列車。それがある場所だ。
アルベドはまた一礼して部屋を出る。
「勝手なこと言うよな、お前」
「はっはっは。ま、お前なら何とかするだろ?」
「まあ、確かにな」
文句を垂れたが、自身の評価に納得する。神助は紋章を外していつでも行ける状態にと準備する。
× × ×
場所は変わりベテルギウス。
現在管理局に追われる身である小鳥遊宗二は、自身のデバイスで通信中だ。
「そうか、こちらに管理局がやってくるのか。二人で確定だな?一人は山形神助か。こちらも準備しよう」
言って通信を切る。宗二はそばに居たアイズに一言。
「行ってくる」
とだけ言うと、アイズも分かったと返す。
すると、宗二の目の前の空間が歪み、人一人通れるサイズの穴が出来る。その穴に、足を踏み入れながら、「気持ち悪くなるんだよな、これ」と文句を呟く。
宗二が歩みを進めると、穴は閉じた。
先程まで穴があった虚空を睨み、アイズは口を開く。
「これがお前の、最終試験だ。愛も、情も、何もかもを捨てなければ、俺はお前を認めない。だから、管理局の戦力を何人か殺してこい」
無論、返事はない。それでも、アイズは言葉を紡ぐ。
「お前がいなければ、俺の計画は完成しないのだから」
疑念と信頼。その両方をもって、アイズは待つ。宗二の帰りと、朗報を。
「何もなければ、お前と娘を、先に殺すだけだ」
次元航線は多分原作に無いと思います
勝手に作りました