ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ 作:ディヴァ子
シン:「お前は何を言ってるんだ」
マツリカ:「あんぱんおいしい」
あくるひっ!;つД`)
「ふぁーあ……」
私は拠点であるタマムシマンションの部屋で目を覚ました。隣ではマツリカちゃんとシンくんがスヤスヤ眠っている。半開きのクローゼットの中では、アカネちゃんとプリンが仲良くお互いを枕にしていた。持った空瓶が絶妙に親父臭い。
いやー、昨夜はお楽しみ会でしたよ。
お酒は未成年だから飲んでないけど、サイコソーダで乾杯して、デリバリーで頼んだピザや照り焼きチキンを頬張り、お菓子食いながらくっちゃべり、最後は疲れ果てて皆仲良く眠り状態になりましたわ。
一応、途中から眠気も出て来たという事でベッドの上に移動してたけど、それでも布団も掛けずに寝ちゃいましたよ。それくらい楽しかったわ、マジで。
こんな日が……喋り疲れて皆で寝ちゃうなんて日が、来るだなんて……どうしよう、目頭が――――――、
「んー、おはよう、アオイ」「ふにゃー」
と、二人が起きた。アカネちゃんとプリンはまだ寝てるけど。
「さぁ、今日も張り切って行くわよ!」
「「おー」」
私は誤魔化すように声を張り上げ、まだ微睡から覚めやらないマツリカちゃんとシンくんを叩き起こしてやるのだった。
「……今日はグレンタウンに行くのか?」
朝シャンと軽めの朝食を済ませた所で、シンくんがマツリカちゃんの着替えを手伝いながら尋ねてくる。もう完全に親子だねキミら。母親は私かな?
どんんだけ素早く大人の階段駆け上がったんだよ。マツリカちゃん原典よりも幼い感じだから、たぶん五歳前後だぞ。年齢換算すると小学生どころか幼稚園児で夫婦になった訳で……。
『大事件! 幼児二人がまさかの出産!?』とかいう見出しで三面記事を飾りそう。で、後に『あの若過ぎる夫婦は今……!』とかいう、恒例の倫理観なんぞクソ食らえな番組でスクープされるんですね、分かります。
いや、ホント、マジで勘弁して下さいって。私とシンくんは健全な関係なんです、信じて下さい。
ああっ、一週間の謹慎はおよしになって~!
「そうね。早くオーレン諸島行きたいし」
あと、いい加減にヘドロ爆弾の技マシン欲しいし。
という事で、双子島は無視する方向で。スマンな戦闘力53万、そっちのルートは遠回りなんだ。後で必ず捕まえてあげるから安心して。具体的に言うと、殿堂入り後くらいに。
さぁ、ひとまずマサラタウンにひとっ飛びして、それからグレンタウンに行こう。
「……帰って来たな」「うん……」「ここがシンおにいちゃんと、アオイおねえちゃんのふるさと……」
そして、一瞬で里帰り。それでも上空から懐かしい景色が見えて来た時はドキドキしたし、着陸した時には感無量な気分になった。
そう、私たちは帰って来たんだ、
「それじゃ、ちょっと挨拶してくるな」「あ、私も」「わたしはバウワウとスケッチしてる~」
そんな感じで、とりあえず実家に近況報告。旅立ってから全然連絡を取ってなかったし、何だかんだで久し振りになる。
ハ~イ、母上様、たっだいま~♪
「馬鹿者ぉおおおおっ!」
「ベホマぁああああっ!」
殴られた。何でやねん。
いや、気持ちは分かるよ。完全に音信不通だったもんね。だけど何でやねん。そこは言葉数少なく迎え入れてくれる所やろ。
「お黙り。こっちは心配でしょうがなかったわよ。旅の邪魔になると思ってしなかったけど、何度電話しようかと……」
「スイマセンごめんなさい御許しを」
「だが断る!」
だが断られた。だから何でやねん。
「――――――今日一日、旅の話を聞かせてくれるのなら、許してあげるわ」
「あ、ハイ……」
これは、グレンタウン入りは明日に延期だな。
おそらく、シンくんも同じような目に遭っている事だろう。母は強し、だわね。しゃーなしだなっ!
という事で、本日の遠征は中止。急遽親子水入らずの時間となった。マツリカちゃんを家に上げてるから、厳密には違うんだけどね。
「あらー、可愛い子ね。二人のお友達?」
「むすめです」
「えっ!?」「義理のね、義理の! 流れで疑似家族になってるだけだから!」「よろしくおねがいします、おかあさん」「ややこしくなるから黙ってろ!」
「う、う~ん……しかし、思ったよりしっかりした子ね。ユーモアもあるし。ねぇ、どこから来たの?」
「あろ~ら~」
「アローラから来たの? 一人で?」
「これでもみらいのキャプテンなので~」
「へ、へぇ~。何にしても凄いわ~」
というか、むしろスーパーマツリカちゃんタイムだった。こういう小さい子って、絶対に構われるよね。
まぁ、可愛いのは事実だし、ユーモアもあるのは認めるけど、しっかりしているかと言われると疑問符が付くぞ。今朝もシンくんにお着替えしてもらってたし。話が拗れるから言わないけど。
「それにしても、ジムバッチが六個かぁ……」
「もうすぐ七個になるわよ」
「フフフ、大した自信ねぇ?」
「そりゃ、お母さんの娘ですから」
「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない」
本心ですよ。私のお母さんは、貴女だけだ。
この後、滅茶苦茶お話した。初めてのジム戦とか、ロケット団との出会いとか、ハナダジムとクチバジムの洗礼とか、シンくんとの共歩きとか、マツリカちゃんとの初邂逅とか、シオンタウンやタマムシシティでの新たな出会いと別れとか、ヤマブキジムとセキチクジムでの激戦とか、もう色々と。
むろん、ロケット団員への加入とか、ムコニャの素性とかは明かしていない。言える訳ないからね。
それでも、身近な人に武勇伝を語るのは何か良いな、新鮮で。今までそんな相手、いなかったし……アレ、また目頭が――――――、
「……よーし、それじゃあ、お風呂に入ろうか、マツリカちゃん!」「シンおにいちゃんとでもいんだよ?」「だから勘違いされるような事を言うなぁ! 私たちはプリピュアなんだよぉ!」
「いや、プリピュアって何よ……」
誤魔化そうとしたら、別の意味で勘違いされそうになった。この悪ガキぃ……!
でも可愛いから許す。可愛いは正義です、エロい人にはそれが分かるんです。
という事でザッパ~ン♪
「「はーふー」」
広い湯船で、伸び伸びとだらける私たち。
今更だけど、私の家って結構裕福だよね。湯船は大人三人分くらいあるし、子供は二階の個室を占領してるし。三人家族である事を想定しても、絶対に広過ぎると思うのよ。実は母上様(もしくは今は亡き父上様)って、富裕層だったりする?
「ママさん、もとジムリーダーだったんだってー」「へぇ、そーなのかー」
灯台下暗し。意外と身近な人間程、分からない事も多い物である。今度もっとゆっくり聞きたいなぁ。
「いいいえだよねー」「そうだよねー」「……なんでそんなにたにんごとなのー?」
一瞬、言葉に詰まる。そうだよね、変だよね。
だけど、仕方ないんだ。転移前の“この身体”が持つ記憶はあるけど、所詮は他人の人生だし、どうしても実感は湧き難い。
でも、私はこここそが故郷だと思っている。心の、という意味で。
「天邪鬼だから」「ふーん」
マツリカちゃんはそれ以上追及して来る事はなかった。この子も結構謎が多いな。立ち振る舞いは子供同然なのに、妙な所で大人びてるし、勘の鋭さは大人顔負けである。いくら未来のキャプテンとは言え、それだけでは説明が付かないミステリアスさが、彼女にはある。
ま、気を利かせてくれたのなら、乗っておこう。それがお互いの為だ。
「それじゃ、ジムバッチ六個獲得と久し振りの顔合わせに、カンパ~イ♪」
「「「イェーイ!」」」「ヒューヒュー♪」
そして、夕食にシンくんとママさんもお誘いし、ご近所同士の祝賀会と相成った。シンくんもパパさん、いないんだよねぇ。何でかは聞かないけど。
そんなこんなで、私たちははしゃぎにはしゃぎまくった。楽しかったよ、本当に……。
◆◆◆◆◆◆
よくじつっ!(*^-^*)
「今度こそ行くぞぉおおおっ!」
「「イェーイッ!」」
「「いってらっしゃい」」
「「「いってきまーす!」」」
二人の母に見送られ、私たちは故郷を後にした。
目指すはグレンタウン、目的はグレンジムの打倒とヘドロ爆弾の入手。ヘドロ爆弾欲しいよヘドロ爆弾んんっ!
という事で、21番水道なう。ラプラスとかギャラドスを持ってれば専用ライドが出来るんだけど、連れ歩いてないからボードに乗るしかない。
あんまり突っ込みたくないけど、これのどこがヒジュツなんだろう。単にサーフィンしてるだけじゃん。一応はアカネちゃんがバランス調整してくれてるみたいだけど、やっぱりこれを波乗り扱いするのは無理あると思うのよ。危ないし。特に私の方はマツリカちゃんも乗せてるから余計に怖い。
「おーっと、生きのいいトレーナー発見!」
しかし、そんなの知った事かとばかりにポケモン勝負を挑んでくる海パン野郎ズ。何でこの海域、大人のお姉さんいないの?
むろん、そんな不届き者たちは海に沈めておきました。このロリコン共め!
途中、コーチトレーナーのオオタさんから冷凍パンチの技マシンを強奪。彼女しかこの水路に癒しがいないのがキツい。
だってさ、やっぱり選択なのか、どいつもこいつも最終進化形使って来るんだもん。初っ端からギャラドス六連打は厳しいわ。ラスト一匹はメガシンカしてきやがったし。モブがキーストーン使うなよ。あれか、コイキングから大切に育てたからか。ホップタウンにでも行ってろ、きっと優勝出来るから。
そんなこんなで、割と満身創痍になりながら、21番道路を泳ぎ切った。水場だとファルコン組かアキトしか繰り出せないのが辛いね。アンズちゃんに波乗りでも覚えさせときゃ良かったかな。カツラ対策にもなるし……いや、じめん技あるから別にいいか。
ともかく、何とか到着はした。いよいよ以てグレンタウンに上陸である。
まずはポケセン、ポケセンはどこだぁ!
「……ハイ、お預かりしたポケモンは、皆元気になりましたよ♪」『ラッキ~♪』
「「あざーす」」
結構こっ酷くやられていた手持ちのポケモンたちも、これで全快。
相棒技の更新や技調整も終わったし、準備は万端。恒例のマップ探索と洒落込もう。まずは、かの有名なポケモン屋敷からかな~?
「なぁにこれぇ?」
そう思っていたんですけどね。
「……テーマパーク、かな?」「すごーい」
シンくんとマツリカちゃんが茫然と見上げる、視線の先にある物。
それは「ダイグレンビオトープ」と書かれた、巨大な門だった。岩が積み上げられたかのような戸枠に、RPGによくよく出てくる木の門戸を嵌めた、いかにもなデザインのゲートが、島の南西端に聳え立っている。すぐ隣には
さらに、門の奥にはグレン火山と、後付けされた人工島がある模様。規模からして、かなり広大に造られている様子。感覚的にグレンタウンと同じか、それ以上はありそう。
いや、ホント何これ? ジュ○シックワールドか何かですか? もはや探索どころじゃないんですけど。
「と、とりあえず、ラボラトリーの人に聞いてみよう。絶対管理してるのあそこだし」
「そ、そうだな」「けんきゅーじょー♪」
……ってな訳で、グレンラボラトリーにお邪魔します。
「ようこそ、ダイグレンビオトープへ! ここでは、現代に蘇った古代に生きたポケモンたちを、間近で観察する事が出来ます! 入場料は大人1000円、子供500円になります!」
入場早々にガイドのお姉さんに出迎えられた。何なんだよ一体。中も研究所というよりかは、その手のパークのロビーみたいに見えるし。
つーか、この人って、
「……アテナさん、何やってんすか」
「バイトよ! ……悪い?」
「いいえ……」
後の女幹部がこんな所で受付嬢やってるってのもどうなの?
いや、でもこの施設ってロケット団の息が掛かってるし、幹部候補生がいてもおかしくはないのか。今は下積み中なのかな?
なら、深くは追求せず、そっとしておこう。
「アナタたちが、あの有名なアオイちゃんとシンくん、それにマツリカちゃんね。話は聞いてるわ。アナタたちはフリーパスのVIP待遇で通せと所長から言われてるわ。しっかり楽しんで行きなさい。……自分たちが何を為したかをじっくりと、ね」
とか思ってたら、向こうから爆弾を投げられました。やっぱそういう事なのかよ!
「えっと、所長にご挨拶する事は?」
「出来るわよ。今アポを取るわ」
という事で、急遽予定を変更。グレンラボラトリー改めダイグレンビオトープの所長さんに面会する事にした。
「ハーイ、ワタシがエラーイ所長のウー博士ネ!」
で、登場したのが、ガラルのウカッツ博士にも負けず劣らずに胡散臭いエラーイ博士こと、ヘンリー・ウー博士だ。
いやいや、この手の施設にその名前はアカンでしょ。将来的に絶対やらかすもん。その前にグレン火山が噴火して、ダイグレンビオトープ/炎の王国とかになっちゃうかもしれないけどね。
「アナタが、例のメシアさんネ? その節はどうもセンキューアルよ!」
相変わらず似非チャイナですねアナタ。その喋り、どうにかならない?
「――――――その、ここって……」
「ハイハイ、分かってるネ。ご自分の成し遂げた、イダーイな功績を確かめたいのでショウ? ご案内いたしまースヨ!」
「あ、ハイ」
これ、村人Aと同じ類だ。話を進めるまでずっと同じ事を繰り返すアレ。
まぁ、ちょうど良いし、お世話になろう。よろしくね、ウー博士。
「まずは園内をエスコートするネ!」
さっそく、ウー博士がガンガン行こうぜしてくる。アンタ意外とアグレッシブだな。研究家って割とアウトドアだって言うしな。
「ここから先はコレに乗るヨ、危ないカラ」
で、この紅白カラーのハマーである。完全にそういうパークかワールドだろ、ここ。
「今日は午前上がりだし、ワタシも乗せて頂戴な」
ついでにアテナさんも相乗り。
「さぁ、ご覧アレ! 我がラボラトリーが到達した、人類の英知の結晶ヲ!」
「わー」「これは……」「きょうりゅうだー」
そして、ラボラトリーから駆り出されたハマーに乗せられ、中生代過ぎるゲートを潜った先に待っていたのは――――――まさに、恐竜時代でした。
プテラは当然として、ズガイドス系にタテトプス系、チゴラス系とアマルス系……と、何だあいつら。転移前でも見た事ない奴もいるぞ。この世界線限定のポケモンかな?
ただ、“カントー地方の生態系を崩さない”というLPLEのルール上、観るだけだけどね。
うーん、これ逃げ出したらどうなるんだろう……。
「その心配はないネ。ビオトープには至る所にグリーンバッチが仕掛けられてるから、誰も逃げられないネ」
「………………」
出所が分かり易過ぎる。
「(ちなみに、ロケット団員のワッペンにも廉価版のグリーンバッチが縫い付けられてるのよ)」
なるほど、だから盗んだポケモンも従うのか。野生ならいざ知らず、人から
ちなみに、アテナさんを含むロケット団員が表立って動く場合、トキワコンツェルンの社員として活動するらしく、「T」と「K」が重なるように刻まれたバッチを付けるのが義務付けられている。
これ、よく見ると「R」になるのがミソだよね。裏の顔がチラチラ垣間見える感じ。
もちろん、私たちも付けている。おかげでトキワコンツェルン(もしくはロケット団)の関連企業は割引、または無料で利用出来るようになっている。便利な世の中になったものだ。私たち限定で、だけど。
「ほへー」「うはー」「わー」
それにしても凄いな、ここだけまさに別世界だよ。
常に雨が降り頻る鬱蒼としたジャングル、整った芝生の広がる大草原、何故か氷に閉ざされた岩山地帯、その中心に聳え立つグレン火山の威容。あからさまに人工的な環境だが、RPGのワールドマップを一ヶ所に凝縮したかのようなそのやらせ感が逆に良い。
さらに、そこかしこ――――――エリアごとに、異なる種類のポケモンたちが闊歩している。イキイキと生き、スクスクと成長して、ノビノビと生きている。
なるほど、だから
当たり前だが、時代によって環境はガラリと変わるし、ニッチも千差万別である。異なる生態のポケモンを一ヶ所に収めるとなると、やはり人の手を加えざるを得ないのだろう。
あー、ウー博士の気持ちメッチャ分かる。これが観られるなら、倫理観とかどうでも良くなるわ。神への冒涜上等、創造主に抗ってこそ、人間だろう?
くーっ、これを観る事しか出来ないなんて、凄く悔しいっ!
「殿堂入り出来るだけの実力があるなら、使用許可が出るわよ?」
「「「マジか!」」」
よっしゃあ、やったぜぇえええっ!
これはもう、リーグチャンピオンになるしかないよね!
いやー、ホントにマジで、ロケット団潰さなくて良かったぁ……。
これ、ロケット団が解散してたら絶対に無かった要素でしょ。必要悪って言葉もあるし、勧善懲悪が正しいとは限らない。「正義は必ず勝つ」だとか「悪は必ず滅びる」だとか、いつの時代の話だよ。
「では、お次は我らがラボラトリーの中枢に行きまッショ!」
その後、ゲートに戻った所で、ラボラトリーの核心にご案内。VIP過ぎませんかね、私たち。それ、絶対に職員以外立ち入り禁止だろ。
「こちらデース!」
「ここって……」
だが、案内された場所は、本来ならばポケモン屋敷が立っているべき場所。
しかし、蔦が巻き付いたお化け屋敷状態だった原典と違い、古風な――――――というか、ガラルに建っていても違和感の無さそうなレンガハウス風になっており、中では明らかに人が働いている。絶賛稼働中って感じ。
えっ、ここも様変わりしてんの?
「どうでスカ? 素晴らしいでショー?」
「「「おーぅ!」」」
自動ドアを潜ったその先は……何と水族館でした。
もちろん、水槽の向こうを泳ぐのは、古代の化石ポケモンたち。ダイグレンビオトープが中生代の大地なら、こちらは古生代の海だ。
スゲーッ、カブト系にオムナイト系、リリーラ系やアノプス系もいるよ!
あと、やっぱり見覚えのないポケモンが――――――形状的にウィワクシアとハルキゲニア、かな?
ま、いいか。とにかく言葉が出ない。ダイグレンビオトープは最高にハイって奴になるけど、こっちは厳かに興奮する。
「ここは「ダイグレンアクアリウム」。ご覧の通り、古代の海の化石ポケモンたちを展示しておりマス。ダイグレンビオトープは親子連れに人気ですが、こちらはカップルやお年寄りに人気があるでスヨ」
ああ、やっぱり水族館なのね。そうだろうとは思ってたけど。
どうでもいいけど、
まぁ、双子島に居座ってるのは戦闘力53万の冷凍ポケモンだし、グレンは炎と氷を兼ねた、地獄をイメージした名前なのかもしれない。知らないけどね。
いやー、でも水族館って良いよなぁ。単にガラスの向こうで水棲生物が蠢いているだけなんだけど、その何でもない事が心の情景を満たしてくれるんだよ。
世のカップルが数あるデートコースの一つに水族館を選ぶのも分かる気がする。
何と言うか、“静か”なんだよね、動物園と違って。ガラス越しだから水の音以外聞こえないし、基本室内だから薄暗く、何より雰囲気が静かにしろと言っている。ムードを作るにはピッタリだろう。
「……あれ?」
つーか、これ水族館デートじゃね?
「「………………!」」
そう思うと、急に恥ずかしくなってきた。大分慣れたと思ってたけど、まだまだ初心でピュアな子供なのよね、私たち。二人はプリピュア。
「――――――まぁ、ここは隠れ蓑でしてネ。本題は、地下にあるのでスヨ」
と、ウー博士が怪しく笑う。ああ、そういう事ね。
「なるほど、屋敷の地下施設を接収したんですね」
「そういう事ですネ。ちなみに地下でラボラトリーと繋がってまスル」
「うーわー」
さすがロケット団がパトロンに付いているだけの事はある、悪どい。そんなキミが素敵です。いいぞ、もっとやれ。愛と正義の悪を貫くんだっ!
「(もちろん、フジ博士の研究データも回収済みよ)」
「(ほうほう、それは素晴らしいじゃないですかー)」
これでフジ博士も肩の荷が下りるでしょ(笑)。
正直ねぇ、いくら悔やんだところで仕方ないと思うんだけど。いつかは誰かが辿り着く技術だし、何でもかんでも悪い方に考えてもしょうがないっしょ。せっかくの叡智と一度きりの人生なんだから、もっと楽しまなきゃ。
どっちにしろ、生き物は他の命を犠牲にして生きているのだから。そこに良いも悪いもない。
ミュウスリーの完成はいつですかー?
「では、ご案内致しまショ♪」
そんな感じで表の顔であるアクアリウムを楽しんだ後、本命たる化石研究施設にお邪魔する事に、
「オーッス、皆集まれーいっ!」
……なる筈だったのだが、どこからか喧しい声が聞こえてきた。
「何でしょうか?」
「ああ、カツラさんがクイズを始めるんでショー。外のアクアショー会場の辺りにいまスヨ」
カツラかよ。あの熱血クイズオヤジがここにいるのか。
まぁ、カツラも元々はポケモン屋敷の関係者だし、いてもおかしくはないのか。カギも本来はここの地下マップで手に入れる物だし。
つーか、うるせぇよ。何で外から中まで声が聞こえてくるんだよ。
「ちなみに、賞品は?」
「いくつかの技マシンや高価なアイテム、それにジムのカギ貰えまスル」
「マジかー」
地下の置き土産回収されとる……。
「どうされマス?」
「うむむむ……」
ラボトリーの中枢は気になるけど――――――ここは挑戦しよう!
バッチは欲しいし、何よりかによりヘドロ爆弾が欲しいからなぁ!
「ごめんなさい、とりあえずサラッとブッ飛ばして来ますから」
「エラーイ自信でスネ。ま、お待ちしておりまスヨ。
おい、何だどっちにしろって。強調するなよ気になるだろ。
「なら、ワタシはしばらくアテナ様と今後についてお話して待ってまスヨー」「勘違いされるような言い方しないでくれます?」「ではでは~♪」
という事で、ひとまずラボラトリーの関連施設巡りは一旦中止して、私たちはカツラが騒いでいるであろうショー会場に向かった。
「……うわっ、いちゃったよ」
「アオイ、もっと優しく言ってあげて……」
そして、件のショー会場。プールを中心として扇状に観客席が並ぶ、いかにもパウワウかジュゴン辺りがショーをやっていそうな場所の真ん中に、彼はいた。
太陽よりも眩しい禿げ頭に白い箒のような髭を生やし、黒くて丸いグラサンを掛けたおっさんという、マッド味溢れる容姿。紺のYシャツとグレーのズボンに白衣を纏う、はぐれ研究員っぽい格好。炎の要素は赤いネクタイ以外は存在しない、詐欺にも程があるセンス。
ああ、間違いない。禿げてんのにヅラを名乗るカツラさんや。相変わらず怪しい奴だな。グレンタウンはこんなのばっかりか。
「オーッと、そこの二人はチャレンジャーか! よかろう、挑んで来るがいい!」
すると、カツラと目が合ってしまった上に、有無を言わさず大会に参加させやがった。
いいだろう、この野郎。全問正解して、ヘドロ爆弾もジムの鍵も手に入れてやんよぉ!
つーか、意外と参加者いるのね。パッと見でも五十人弱はいるんですけど。知識には自信があるけど、これ勝ち残れるか不安になって来たな。
いや、私は手に入れるんだ、ヘドロ爆弾の技マシンを。ついでに鍵とバッチが貰えるとなお嬉しい。
いい加減どくの特殊技が溶解液止まりじゃねぇ、やってらんないんだよっ!
しゃーオラーッ、掛かって来いやぁっ! どうせ死ね死ね光線とかそんなレベルなんだるぉぅ!?
「では、第一問! “「ふんか」も覚える、イケてる「かざんポケモン」と言えば、次の内どれ!? 「マグカルゴ」「バクーダ」「バクフーン」「ヒードラン」”」
「よ、四択問題、だと……!?」
くっ、このオヤジ、ガチなクイズを……!
しかも、平然と他地域のポケモンの名前を出しちゃう辺り、手加減する気が一切ない。何て野郎だ。
だが、私はアオイ・シズナ、異世界人の転移者である。この程度の問題、ノープログレムなんだよ!
「えっと、マグカルゴ!?」「うーんと、ヒードランかな!?」「うーん、どうだったっけ……?」
挑戦者たちはそれぞれの知識と勘に従い、各々の解答席にゾロゾロと分かれていく。観客席が解答席も兼ねているらしく、問題に合わせて自動で色分けされたりなど、何気に芸が細かい。
おい、待て、もしかしてこのノリって――――――、
「正解は「バクフーン」です! それ以外の解答者は外れです、馬鹿……」
やかましいわ。正解したけど。
「そんな馬鹿たちは、ボッシュート!」
「「「ぎゃあああああああああ!」」」
ガコンと音がして、私たちの立つ席以外の底が抜け、挑戦者たちが落下した。マジでやりやがったよ。
「ちなみに、落ちた人はダンジョンをクリアしないと再挑戦出来ませーん! それと、ダンジョン内にはワシの弟子がいるから、そいつらを倒さないとクリアと認められませーん! では、頑張ってちょうだ~い♪」
さらに、舞台のバックにダンジョン内の様子が映し出され、中で四苦八苦する挑戦者たちの姿が窺えた。
ああ、これジム戦も兼ねてるのか。ポケモン屋敷の頃と同じく野生のポケモンもうろついているし、修行にもなって一石二鳥だろう。ブーバーに焼かれてるよあの人、アハハハハ。
余談だが、この様子は「カツラのクイズ
「正解した人には、このカツラさん人形をプレゼントします!」
いらねぇっ!
でも、これ集めないと挑戦出来ないんだろうなぁ……。
「続いて、第二問! “ポケモンリーグで戦う人数は何人!? 「四人」「五人」「六人」”」
次の問題はちょっと優し目。四天王と現チャンピオンを含めた「五人」が正解だ。
「正解は……「五人」です! それ以外のお馬鹿さんはボッシュート!」
「「「ぐわぁああああああっ!」」」
ああ、また挑戦者が物理的に脱落していく。どうしよう、もう二十人くらいに減ってるんですけど。
「続いて第三問! “「ゴーストタイプ」のポケモンの攻撃は「かくとうタイプ」に……!? 「こうかはばつぐん」「ふつう」「こうかはいまひとつ」「こうかがないようだ……」”」
フム、これは基礎中の基礎だな。
だけど、これ案外忘れてる人多いと思うのよ。ゴーストタイプとノーマルタイプは互いに無効だけど、かくとうタイプってどうだっけ、みたいな。かくとう側からの攻撃は無効になるからね。
正解は「ふつう」。等倍である。ノーマルタイプよりもかくとうタイプの方が、ゴーストタイプに不利なのだ。
まぁ、サブウェポンでどうにでもなるのがポケモン勝負でもあるのだが。
「正解は「ふつう」! 不正解の愚か者はお取り潰しでーす!」
「「な、なにをするだぁああああっ!」」
数名の田舎紳士がボッシュート。人間を超える者になって再挑戦して下さい。
「第四問! “技マシン028とは「しねしねこうせん」でなければ、何? 「あなをほる」「きゅうけつ」「トライアタック」”」
死ね死ね光線に拘るよねアナタ。
正解は「トライアタック」。他の技は初代や別地方で収録されている技である。LPLEに限定しなければ全部正解というのが質が悪い。ホントに性格悪いなこのオヤジ。
「正解は「トライアタック」! バカモン共はボッシュート!」
「「はぐわぁああああああ!」」
杜○町の殺人鬼みたいな声で落ちていく不正解者。くさタイプにでも生まれ変わってきて下さいな。
「第五問! “ワシの命の恩人であるポケモンは、どれ? 「ファイヤー」「サンダー」「フリーザー」”」
おっと、最後は身の上話か。原典だとどれを選んでも正解だったが、さすがにそう上手くはいかないらしい。
一応、グランタウンをしっかり探索していれば救済措置がある。島民からその逸話を聞けるのだ。
という事で、正解は「ファイヤー」。その昔、雪山で遭難し掛けた時に現れ、彼を救ってくれたらしい。温めてくれたんだろうか。シチュエーション的にはフリーザーがトドメを刺しに来そうなもんだけど。
「正解は「ファイヤー」! 間違えた者はボッシュート!」
「「ヅラァアアアアアアアアアアッ!」」
ヅラじゃない、カツラだ。
さて、最終的に残ったのは私たち三人と、エリートっぽい人がちらほらと。合計で七人程だった。皆ポケモンの本場に住んでるのに、何で間違えるんだろう?
まぁ、それはそれとして、全問正解したんだから、しっかりと頂こうか……ヘドロ爆弾を!
「ヨーシッ! まずは第一次クイズ大会を終了! 全問正解を成し遂げた、エリートなお前たちに、賞品を渡そう!」
そう言って、カツラが一人一人に手渡しで賞品を授与していく。
貰えたのは予想通り、本来ならポケモン屋敷で拾う筈だったアイテムたちで、ピーピーマックスなどの高級品に技マシン、ジムの鍵(今回は何故か「しょうりのカギ」になっている)と、良品ばかりだった。
これは挑戦者も視聴者も減らない訳である。勝てば一攫千金、負けてもダンジョンで強くなれる上に同じレベルの物を手に入れられるのだから。
「さぁ、ワシ自慢のクイズをクリアしたお前らを、我がジムへ案内しよう! ついて来るがいい!」
おっと、カツラがジムに移動するようだ。ここでジムのクイズ戦を終わらせたんだから、相応しい舞台に改変されてんだろうな?
「わぁ~、カツラさんだ~♪」「そう言えば、今回は結構合格者いるんだよねー」「皆見に行きますよ~♪」「挑戦者の人も頑張って~!」
おおぅ、出た瞬間に浴びせられる、この老若男女を問わない島民たちからの熱い視線と声援よ。人気者ですね、カツラさんや。これは期待してもいいのかな~?
「……着いたぞ。ここが我がジムにして公共のスタジアム、「グレンジム」だぁ!」
そして、このスタジアム化である。
ええっ、マジかよ。ガラル地方ばりの本格的なスタジアムなんですけど。ライトアップとかもしてくれるし。この狭いグレンタウンに何造り上げてんだ、このオヤジは。
しかし、燃える物は燃える。こんな仙台スタジアムみたいな大舞台でポケモン勝負が出来るなんて、夢のようじゃないか。
ああ……ど、どうしよう……何かすでに気分はクライマックスなんですけど!?
つーか、グレンタウンに来てからずっとこの調子なんだけど、このサプライズ具合は何なんだよぉーっ!?
「さぁ、我が試練をクリアした勇者たちよ! いよいよ勝負の時が来た! 知っての通りワシは燃える男、グレンジムのジムリーダー、カツラだ! ワシのポケモンは全てを焼いて焦がしまくる強者ばかりなのだぁ!」
さらに、カツラのこの演説。大々的かつ連続的な爆発が起きたかと思うとフィールドに大文字が描かれ、その中心でカツラのグラサンも燃え上がっている。
うわぁ、まるで剣盾のOPに立ち会っているようだ。ダイマックスとかしないだろうな……しないよね? してもいいのよ!?
「ウォースッ! 火傷治しの用意はいいか!?」
「いいともーっ!」
――――――ジムリーダーのカツラが勝負を仕掛けて来たっ!
さぁ、燃える男カツラとのジムバトル、行ってみよう!
◆グレンラボラトリー
元の名前は化石研究所。所長はとってもエラーイ博士。ここに化石を持ち込む事で、カブト・オムナイト・プテラを復活させてもらえる。ポケモン屋敷とも関わりのある施設で、所長共々かなり胡散臭い。
この世界線では、アオイの干渉によりラボラトリーの規模拡大どころか、島の約半分がビオトープ化し、ポケモン屋敷が水族館になっていたりと、原形の「げ」の字すらない。