ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ 作:ディヴァ子
シン:「いや、知らんがな」
マツリカ:「ビターチョコにがい……」
「行けぃっ、ブースター!」『ブゥルルルルッ!』
「行けっ、アンズちゃん!」『クゥァアアアン!』
対面はブースター(Lv65)とアンズちゃん(Lv64)。おっと、ブーバーじゃないのか。
だが、タイプ相性的にはこちらが有利だ。それにブースターは攻撃と特防こそ高いが、HPが低いので基本的には打たれ弱い。フレアドライブは怖いが、反動技なので更に撃たれ弱くなってしまうという欠点もある。
つーかね、唯一王如きに負ける程、私は弱くねぇんだよ、ハハハハハ!
「燃えよブースター! その威容で眼前の敵を焼き尽くせ! ダイマックスだ!」
「何ィッ!?」
本当にダイマックスしてきやがったぁ!
えっ、嘘、マジで!? どういう事なの!?
『ブゥルォオオオオオオン!』
私が驚愕している間に、ブースターのダイマックスが完了する。デカい。圧倒的に。
しかし、通常のダイマックスと違い、グリッド化したボールに一度収納するのではなく、ボールから白いビームが放たれ、それがポケモンを螺旋状に包み込んで巨大化させるというシークエンスを経ており、纏う粒子や頭上の雲も赤ではなく青になっている。
何と言うか、出方が完全にカプセル○獣だ。青いオーラを放っている事からも、ムゲンダイナとは別系統の力が適用されているのだろう。
「これはガラル地方で伝わる「ダイマックス」という現象だ! このバンドに仕込まれた特別な石と反応させる事により約三分間だけ巨大化し、技も特殊な物に変化する! だが、ワシが発見したこれは、ガラルで伝承される物とは別系統! 効果はほぼ同じだが、起源が全く違う! 故に面白い! だから、ワシはクイズを全問正解した強か者にのみ、この技術を見せる事にしているのだ!」
な、なるほど~、懇切丁寧な説明、ありがとうございます。
そうか、やっぱり起源が違うんだ。台詞からして大元がどんなポケモンなのかは研究中のようだが、使えるから使ってるって感じか。向こうでもそんな感じだからね。
――――――いや、もしかして、もしかしなくとも、あったりすのか、この地下に……パワースポットになるアレが!?
こ、これは是非とも快勝して、ウー博士にご案内してもらうしかない!
「アンズちゃん、「ドリルライナー」!」『クルルルルルッ!』
ともかく、今はポケモンバトルである。幸い素早さはアンズちゃんの方が高い。というかブースターは何であんなにすっトロいんだろう?
「そんな物でブースターは沈まない! 行け、ブースター! 反撃の「ダイバーン」!」『ブゥゥスタァアッ!』
だが、ダイマックス化してHPが倍になっているブースターは効果抜群でも半分程度しか取れず、反撃の狼煙ならぬ火柱をぶちかまして来た。
くそっ、フレアドライブをデメリット無しで打つとかズルい。ついでに晴れに状態になるから、ほのお技の威力が更に上がるし。
つーか、対戦環境が殆ど初代レベルなこのLPLEで、ダイマックスからの天候操作とか、卑怯にも程があるだろ!
ただ、やはり特性が適用されていないので天候パーティーを組むのは難しく、精々威力アップや一部のデメリットを無くすくらいしか使い道がない。そう思うと、まだまだ黎明期なんだよねー、この時期のカントー地方って。
『クァァァ……!』「耐えて、アンズちゃん!」
しかし、耐久自慢のアンズちゃんは、さすがに一発では沈まないよ! HP八割方持っていかれたけど!
そして、確定二発という事は、これでトドメだ!
「アンズちゃん、「ドリルライナー」!」『クルルォォォッ!』
『ブゥルォオオオオオオオオオオオッ!』
アンズちゃんのドリルライナーに穿たれたブースターが、爆発と共にボールへ回収される。戻り方もカプセル怪○っぽい。まさに元ネタ回収。
「スッゴーイ!」「カッコいいー!」「あんなデッカいブースターを倒しちゃうなんて、ビックリだよ!」
おおぅ、歓声がヤバい。テンション上がってくるわぁ!
「ほほぅ、ダイマックスしたブースターを倒すとはなかなかやるな。だが、勝負はまだまだこれからだっ! 行けぃ、キュウコン!」『コォォヴォオオォン!』
カツラの次鋒はキュウコン(Lv67)。晴れた状態で放たれる大文字は正直キツいぞ。
いや、でもまぁ、この時代はエナジーボールも神通力もないから、大分マシな方か。催眠怪しい光とかしてきたら殺す。
「まずは落とす! 「でんこうせっか」!」『クゥン!』
『ガァ……!』「戻って、アンズちゃん……」
これは順当な結末。瀕死寸前のアンズちゃんで無理をするよりも死に出しした方がいい。ごめんね、アンズちゃん。
「さぁ、仇を取るんだ、ハヤテ!」『ホォグルドォッ!』
私の二番手はハヤテ(Lv67)。今回はタイプ相性でアンズちゃんを選んだけど、本来はこいつが先鋒かつ偵察役だからね。
だが、今回は違う。しっかりとアンズちゃんの仇を討ち取るんだっ!
「キュウコン、「だいもんじ」!」『コォォォ……!』
「ハヤテ、食らう前に「ネコにこばん」」『ケェアアアアン!』
『コァッ!?』
よしよし、大文字を外してやったぞ。元より命中率の低い大技だし、更に目晦ましを食らっては、それこそ目も当てられまい。実はまともに猫に小判の追加効果っぽい物が初めて役に立ったのは内緒。
「ぬぅ……命中率が下がったか。「ネコにこばん」にそのような効果が……面白い!」
ごめんなさい、たぶんそれ、ウチのハヤテだけです。もしかしたら修行次第で出来るのかもしれないけど、やり方は分からないんです、スイマセン。
「ならば、お前にも眩んでもらおう! 「あやしいひかり」!」『クォォオオオン!』
すると、カツラはあっさりと大技攻めを捨て、変化技による搦め手に切り替えて来た。追尾式の怪しげな光がハヤテに迫る。
「させるか! ハヤテ、引き付けながら「とんぼがえり」!」『ホォグルドァッ!』
しかし、食らう前に逆にトンボ返りを直撃させ、私の手元に戻り、見事に回避した。
さっきは「アンズちゃんの仇を取れ」と言ったな、アレは嘘だ。ハヤテはあくまで偵察要員。引っ掻き回して情報を集めるのが仕事である。
キュウコンの技構成はほぼ把握した。残り一枠はおそらく催眠術だろう。恐れる必要はない。ハヤテは充分に仕事をしてくれたからな。
「行けっ、ユウキ!」『ブッブィィッ!』
ハヤテの代わりに繰り出したのはユウキ(Lv65)。この子にはいきいきバブルがあるからね。
「食らえ、「いきいきバブル」!」「その前に「でんこうせっか」!」
フン、無駄無駄無駄ァ!
いくらダメージを残そうとしても、攻撃すると同時に回復するいきいきバブルの前では無駄なのだぁ!
『クゥゥン……!』
弱点を突かれた上に体力を吸い取られたキュウコンが倒れ伏す。姑息な蓄積ダメージもあったからな。これは耐え切れまい。
「……これが話に聞く、“相棒ポケモン”とその技か! 進化出来ないというハンデを背負ってもなお輝けるその能力、素晴らしい! これだからポケモンは面白い!」
キュウコンが倒されたと言うのに、すっごく楽しそうですねカツラさん。やっぱり科学者だなぁ。
「ならば、ワシも全力で挑もう! 倒せ、ウィンディ! 「フレアドライブ」!」『グルヴァォォォッ!』
『ブィィィ……!』
ぐっは、開幕フレアドライブはよせっ!
だが、HPを減らしたのは命取りだったな。その体力、吸わせてもらう!
「ユウキ、「いきいきバブル」で反撃しろ!」『ブィィッ!』
『グゥゥゥゥッ!』
――――――しかし、ウィンディ(Lv68)はカツラを悲しませまいと持ち堪えたっ!
「嘘ぉっ!?」
「……スマン、ウィンディっ! 「フレアドライブ」で道連れにしろ!」『バウワァアアアッ!』
『ブィァッ!』「ユウキ!」
くっそ、やられた。まさかカツラも絆補正を使って来るとは。
いや、おかしくはないか。カツラは科学者であると同時にジムリーダーでもある。様々な角度からポケモンを観測する彼は、ある意味どんなジムリーダーよりもポケモンと理解し合っているのかもしれない。
燃える男カツラ……名前通りに熱くさせてくれる奴だぜぃ!
「行けっ、ハヤテ!」「勝って来い、ギャロップ!」
『ホォグルドォッ!』『ヒィィイインッ!』
次なる対面はハヤテとギャロップ(Lv67)。レベルは互角だが果たして……。
「ギャロップ、「つのドリル」!」「躱して「ネコにこばん」!」
あっぶねっ! 意外と芸達者で知られるギャロップだけど、いきなり角ドリルしてくるなよ!?
「……未だ、「フレアドライブ」を叩き込め!」「しまった!」
クソッたれが、角ドリルでビビらせた隙を突いて、猫に小判を食らう前にフレアドライブを入れて来やがった。
『……キィァァァ!』
しかし、ハヤテは私を悲しませまいと持ち堪えてくれた。よし、いいぞ。
「ハヤテ、「ドリルライナー」!」「こちらも「ドリルライナー」だ!」
『ギャルルルルルッ!』『ヒヒィィルルルッ!』
お互いに同じ技を放つハヤテとギャロップ。
「……と、見せ掛けて「とんぼがえり」!」「何だとぉっ!?」
だが、それは囮だ。ハヤテは自分で止めを刺すタイプじゃないんだよ!
「代わりに「ドリルライナー」を食らわせてやれ、アキト!」『ブゥゥルルルルッ!』
『ブルァッ!』「くっ、戻れギャロップ!」
入れ替えで出て来たアキト(Lv67)のドリルライナーで不意を打たれたギャロップがスタジアムに沈む。
フレアドライブは諸刃の剣である。絶大な威力と引き換えに体力を消耗し隙を作る大技というのは、敵に流れを掴まれていると容易に突破されかねない。今回のようにね。
しかし、ハヤテが深手を負い、交代先が限られる今、同じ手は二度と通用しないだろう。
「――――――大技故の穴を突く、その戦法、見事だ。ポケモン勝負は力業だけではないからな。だが、教えてやろう! 世の中には、抗い難い圧倒的かつ理不尽な暴力があるという事を! これがワシの切り札! 行けぃ、ブーバー!」『グァボォォォラァスッ!』
何故なら、次の相手は最後の敵――――――カツラの切り札なのだから。
「……オーレンのブーバーか」
形状にそこまで差異はないが、体色が青と銀に代わっており、その姿はさながら凍てつく炎、燃え上がる冷気だ。爪や目付きが鋭利な物になっている事も相俟って、どこかクールな印象も見受けられる。鳴き声が青色発泡怪獣だけど。赤色火炎怪獣じゃねぇのかよ。
ちなみに、図鑑によるデータはこんな感じ。
◆ブーバー(オーレンのすがた)
・分類:ばくえんポケモン
・タイプ:ほのお
・レベル:70
・性別:♂
・性格:ひかえめ
・種族値: HP:80 A:95 B:77 C:110 D:85 S:103 合計:540
・図鑑説明
蒼い炎は目に映る全ての物を蒸発させる。
一兆度ってアンタ、宇宙が収縮しちゃいますよ。どこぞの宇宙恐竜じゃないんだから、少しは自重してください。
そうか、見た目的にこおりタイプが加わりそうなもんだが、ほのお単タイプのままなのか。
まぁ、炎は青い方が高温だって言うし、ステータスもブーバーンと同レベルなので、問題ないのかもしれない。
あと、図鑑に書いてあるからって、マジで蒼い炎使って来るんじゃないだろうな。それ伝説の技だからね、分かってる!?
「ブーバー、「あおいほのお」!」『ガァヴォォォオオッ!』
『ブッ……!?』「ア、アキト~!?」
だが断られた。アキトが一瞬にして火蜂に早変わりする。
チクショウ、オーレン諸島のポケモンって、自前の専用技だけじゃ飽き足らず、伝説系の技まで習得するのかよ!?
「フフフ……」
いいじゃない。その喧嘩、買ってやるわよ。
そっちがチート使うなら、こっちも主人公補正を見せてやるわっ!
「……狩り取れ、アカネ!」『ピッピィィッ!』
という事で、行って来いアカネちゃん(Lv70)!
「ほぅ、そいつも相棒ポケモンのようだな。だが無意味よ! ブーバー、「あおいほのお」!」『ギュォォッ!』
オーレンブーバーの蒼い炎が、今度はアカネちゃんを火炙りにしようとする。
「アカネちゃん、「コズミックパンチ」!」『オラーッ!』
『ゴァアアアアッ!』「ブーバー!?」
しかし、アカネちゃんは怯むどころか正面から薙ぎ払い、コズミックパンチをカウンターで叩き込む。
「フハハハハハッ! どうだ、驚いたか! これがアメの力よっ!」
そう、アカネちゃんはセキチクジム戦後、これから増えるであろうオーレン系のポケモンに対抗する為、手持ちのポケモンのアメ(LPLE版における努力値を振れるアイテム。オーキド博士にポケモンを送り付けるとお礼に貰える、やり込み要素の一つ)を殆ど全て投与したのである。今まで全然と言っていい程使ってこなかったので、上り幅が物凄い事になってしまった。相棒ポケモンである事を鑑みても、そのステータスは600族にも劣らない物となっている。文字通り我がパーティーの切り札だ。雑魚とは違うのだよ、雑魚とは!
ちなみに、種族専用の余り物はジム戦後に投与する予定。ステータスがまるで違う物になるからね。ヌルゲーになるかと思って使って来なかったけど、さすがにセキチクジムでこりごりしてます、本当に。
『ブゥゥヴヴゥゥ……!』「まだやれるな、ブーバー!」
だが、さすがはカツラの切り札、そう簡単には落ちてくれない。種族値合計540は伊達ではなかった。多少なりとも努力値は振ってあるだろうしね。
「なら行けぃ、「あおいほのお」を撃ちながら「ほのおのパンチ」!」『グァヴォォオオオッ!』
さらに、オーレンブーバーは体勢を立て直すと同時に蒼い炎を盾にしながら、炎のパンチで襲い掛かってきた。シールドバッシュを仕掛けるとは、味な真似を……。
『ピィィッ!』「負けるな! ステータスはほぼ互角だ! やられる前にやれ! 「コズミックパンチ」!」
しかし、そのくらいの小手先で倒れる程、アカネちゃんも場数を踏んでいない。そっちが殴り合いを望むなら、真っ向から打倒してやろう。
『グァボォォォラァスッ!』『ドリャーッピッピッピッ!』
炎と流星を纏った拳が交差し、お互いの急所を的確に打ち合い、それでも両者一歩も譲らない。隕石が衝突したかのような轟音が断続的に響き、双方の顔や身体にクレーターを作っていく。隙を見て飛び道具を挟む事も忘れない(おかげでアカネちゃんは蒼い炎で火傷を負った)。
行けっ、そこだ! フックフック! アッパーァアアアッ! 1、2、スマッシュ! 振り抜き様に指を立てて目潰しを食らわせるんだぁっ!
『ブバァァ……!』
押し負けたのは、やはりオーレンブーバーの方だった。渾身のコズミックパンチが彼の顎を捉え、フィールドに沈める。
アメの差ってね、それくらい凄いのよ。数値で言えば200も差が出るからね。少し振った程度では、全振り相手には絶対に勝てないのである。
『ゴガァアアアアアッ!』
だが、それでもオーレンブーバーは戦闘不能にはならず、それどころか蒼い炎で反撃して来た。
“少し振った程度”というのは訂正した方が良いかも。おそらく、防御系かHPに大分振っている。そうでなければ、アカネちゃんの暴力に耐え切った説明が付かない。さすがは科学者と言ったところか。熱いながらも、的確に数値で物事を見ている。ゲーマー向きだなこの人。
しかし、耐えると言うのなら、倒れるまで攻撃するまでだ。君が死ぬまで、殺すのを止めない!
「アカネちゃん、「ゆびをふる」!」『ピァッ!』
アカネちゃんの指を振るがトライアタックを引き当て、オーレンブーバーの顔面に直撃させる。
『グァヴォオオオオオッ!』
「躱せっ!」『ピィィッ!』
だが、なおもオーレンブーバーは斃れず、蒼い炎を放って来た。アカネちゃんはギリギリで躱し、もう一度指を振る。今度はハイドロポンプを引いた。
『カァアアォオオオッ!』
「避けろ!」『ピァッ!?』
しかし、それでもオーレンブーバーは耐え切り、蒼い炎はPP切れになったのか、代わりに大文字をぶっ放す。いや、こいつどんだけ硬いんだよ。だけど、それも限界のようだな。
なら、今度こそトドメを刺してやる!
『ピピピピィ……ドリャーッ!』
肩口を大の字が掠り、既に負っていた火傷の分も加えた激痛に悶えながらも、アカネちゃんは指を振って攻撃した。最後の一発は破壊光線である。
――――――ギュヴォォォォ……グヴァビビビビビビビビッ! ズワォッ!
『……、…………! ………………』
ついに、ようやく、やっとこさ、オーレンブーバーは戦闘不能になった。タフネスにも程がある。斃れるその瞬間まで敵を殺しに掛かるとか、超獣かお前は。反撃されてたらやばかった……。
「くっ、負けたか……! だが、芯から燃え上がる熱い戦いだった! その証に、このクリムゾンバッチを進呈しよう! それと「だいもんじ」の技マシンもな。ジョウトの名物技で、向こうでは送り火とも言うそうだぞ」
「あざーっす!」
そして、この瞬間グレンジムのクリアも達成となった。やったね☆!
「……信じてるからね!」「任せとけ!」
もちろん、お次はシンくんの出番。ハイタッチで後を任せて、私はポケモンセンターに向かおう。さすがに火傷は案外厄介な怪我だからね。アカネちゃんに至っては蒼い炎を連打で食らってるし。
さぁ、早くしないと、シンくんの雄姿を見逃しちゃう~♪
「おやおや、大分苦戦なされたようですね」
そんな私の前に、立ちはだかる強敵――――――ではなく、
「アポロさん!? 何でここに!?」
ロケット団最高幹部のアポロさんだった。後方のトップクラスのお方がホイホイ出歩いていいのか。
「なぁに、少しばかりラボラトリーの様子を見に来ただけですよ。アテナを派遣したのはワタシですからね」
「そうなんですか」
有能な部下に相応の現場で実績を積ませ、それをちゃんと自分の目で確かめに来る、理想の上司ですね。何でロケット団やってるんだろう、この人。
「ついでに、貴女方の様子も拝見に参りました。貴女には色々な借りがありますからね。大いに期待していますよ」
「ハハハハハ……」
ポケモンでもないのにプレッシャーを掛けないでください。PPじゃくて
「――――――そして、貴女はさっそく期待に応えてくれました。まさか、この極東の地で、由来は違うとは言え、ダイマックスを見られる日が来ようとは……」
さらに、追加の精神攻撃。観られてたのかよ。止めて下さい。案外、私上司の視線に弱いんです。
「そ、そう言えば、アポロさんはガラル地方の出身なんでしたねぇ~?」
「ええ。あの日見たキレイハナのダイマックス、ワタシはまだ忘れていません」
あの花みたいなノリで過去を語るの止めてくれませんか。仇名をあ○るするぞ。
「ですので、ご一緒しませんか? シンくんのバトルはまだ始まったばかりなのでしょう?」
「えっ、でも私、ポケモンの回復が――――――」
「こちらをどうぞ」
チャンチャンチャチャン♪
回復の薬と元気の塊とピーピーマックスの雨あられで、あっという間に全快してもらっちゃった。これはもう断れませんね。
「……分かりました。喜んでご一緒します」
「では、行きましょうか」
チクショウ、まさかアポロさんにエスコートされる事になろうとは。
勘違いしないでね、シンくん! これ、浮気とかじゃないからね!?
「あれれ~、もどったの~?」
まだ観客席にいたマツリカちゃんが、不思議そうな顔でこちらを見る。私としても予定外だったんだよ。
「まおとこまでつれちゃって~♪」「間男言うなや」
一体誰が仕込んだんだ、そんな知識。
「隣、失礼しますよ」
そして、当たり前のように私の隣に座るアポロさん。や、止めてよね、シンくんに誤解されたらどうするのよ!
「ほほぅ、今度は初手にウィンディをダイマックスしましたか。「ダイバーン」と「ダイフェアリー」からの「げきりん」に繋げる辺り、さっきのアオイさんとの試合で闘志に火が付いたようですね。全く以て容赦がない」
まぁ、当人は試合の方が気になるようだが。何だろう、この拍子抜け感。それはそれでムカつくな。
だが、確かに容赦がないと思うのは同意する。ダイバーンで火力を上げつつ水技の威力を下げ、ダイフェアリーでミストフィールドを張り、混乱しない状態で逆鱗をぶっ放すとか、ガチガチにも程がある。おかげでシンくんにしては珍しく、ピジョット(Lv72)にフシギバナ(Lv70)と、いきなり手持ちを2タテされた。やっぱダイマックスつえぇ……。
つーか、マジで大人気無いな、あのハゲ。シンくんもノリノリだからいいけど。嵐の中でも輝いてる~♪
「……そうですね。しかし、力押しが過ぎるのも事実です」
ただ、ウィンディも被ダメを省みずゴリ押しした為、倍化したHPでさえ赤ラインに迫る程のダメージを受けた上、ピジョットとフシギバナが遅延戦闘に務めたせいで、ダイマックスは時間切れとなり、日差しも弱まってしまった。残るは、現状あまり意味のないミストフィールドのみ。
そう、これこそがダイマックスの弱点。“ダイマックス中は技が全てダイマックス技となる”という特性上、小回りが利かないのだ。“力押しする”のではなく、“力押ししか出来ない”のである。シンくんのように時間稼ぎに徹されると、逃げ切られてしまう場合も多い。そういう意味では、ピジョットもフシギバナも充分に役割を果たしたと言える。
「そして、アローラガラガラで止めを刺して、終いですか。熱くなってる割にはクレバーな戦い方ですね、彼」
さらに、万全の状態で繰り出されたアローラガラガラ(Lv73)に一閃され、ウィンディは遂に倒れた。続くブースターやキュウコンも、アローラガラガラのホネブーメランで纏めて薙ぎ倒される。ダイマックスを耐え凌ぎ、
その後はギャロップとロデオごっこを楽しんだものの、さすが被ダメが蓄積したのか、振り落とされた所にメガホーンを食らい、アローラガラガラも倒される。
だが、次に繰り出された相棒ピカチュウ(Lv70)がばちばちアクセルで逆にギャロップを翻弄し、ざぶざぶサーフで麻痺にした後、ふわふわフォールで仕留めた。実に理想的な勝ち方だ。やっぱり相棒技が揃うと強いなぁ。
「でも、油断は出来ませんよ。次はあのオーレンブーバーですからね」
問題はカツラの切り札、オーレンブーバーである。そこそこ硬い上に火力が高く、加えて生来の凶暴性で死ぬまで殺しに掛かって来る。言い方は悪いが、まるで生物兵器のような強さなのだ。いくらシンくんと言えど、苦戦は必至だろう。
「……まぁ、大丈夫でしょう。初見ならいざ知らず、すでに貴女が大分データを取りましたからね。多少は手古摺るでしょうが、問題なく勝てると思いますよ」
しかし、アポロさんは大して心配していないようである。
「随分と信頼してますね」
「彼というより、貴女を信頼しているのですがね」
「はぁ?」
と、ここで謎の発言。どういう事だそれは。
「――――――貴女がロケット団に齎した利益は、計り知れない物があります。ラボラトリーとの関係回復、スパイの駆逐、フジ博士の発見とミュウツーの手掛かりの入手、そして
「カツラ博士の再起?」
「ええ。ジムリーダーのカツラはフジ博士の盟友でしたが、彼が行方をくらませてからは、どこか消極的になっていました。しかし、貴女の介入によりラボラトリーが活性化し、更にフジ博士を発見した事で、再び研究者としての彼が復活しました。曰く「あんなしみったれた男にはならん!」そうですが、ワタシが思うに、ライバルの行方が分かって燻っていたやる気が再燃したのでしょう」
なるほど、分かりやすい。疎遠になってた友達とバッタリ会うと、色々と込み上げて来るだろうねぇ。私にはいないけど。
「おかげで、
ありゃま、そんな経緯があったのね。きっとランスやラムダ辺りが現場に駆り出されて、急ピッチで造ったんだろうなぁ。高々数ヵ月でようやるよ。
「ワタシが貴女を信頼している理由、ご理解頂けましたか? 何より、このワタシに真正面から挑んで倒した者を認められない程、狭量ではないのですよ」
ははぁん、何だかんだ言いつつ、そこが一番の理由か。やっぱり貴方はロケット団の最高幹部ですよ。“力こそが全てなり”ってね。
「……おっと、もう決着のようですよ」
「うわぁ……」
そうこうしている内に、相棒プリン(Lv75)がオーレンブーバーを吹っ飛ばしていた。
決め手となったのは、「スヤスヤおやすみタイム」という新たな相棒技。効果は「ねむる」と同じなのだが、接触状態で発動すると攻撃判定(技タイプ:エスパー、威力180、命中75)が出るという一風変わった物で、凄まじい威力と引き換えに成功の可否に関わらず無防備に眠ってしまう、まさにハイリスクハイリターンな技だ。
他にも「プリプリほうふくビンタ」(技タイプ:フェアリー、威力40、命中90)という“フェアリー版往復ビンタ(強)”やころころスピンアタックで牽制し、ふわふわドリームリサイタルで眠り状態に陥れて動きを止めるなど、もうこいつ一匹でいいじゃないかな状態だった。
技構成が完全にスマブラな上にバランスが取れてるとか、そんなの卑怯よ。これ絶対タイマン張ったらアカネちゃんが負けるな。器用過ぎるもん。つーか、Lv75って……。
「さぁ、貴女の
くっそ、ムカつくなこいつら。
「……勝って来たぜ、アオイ!」「信じてたよ、シンくん!」
まぁそれはそれとして、私はちゃんとシンくんを出迎え、ハイタッチを交わした。思わずハグしちゃいそうになったのは内緒。まだそこまでは踏み込めないのよん。つーか、常日頃からベタベタくっ付いてるのもどうなの?
さてさて、シンくんもジム戦をクリアした事だし、ウー博士と落ち合って、ラボトリーの中枢とやらに連れて行って貰おうかしらね~♪
◆◆◆◆◆◆
そして、その日の夕方。
「これがラボラトリーの中枢――――――つまり、“
ハート付けんなよ気持ち悪いな。
という事で(?)、ジム戦をクリアした私たちは、ポケモンラボラトリーの中枢部――――――つまり、旧世界で言うポケモン屋敷の地下マップの最深部にやって来ていた。LPLEの原典では壊れた培養カプセルがあっただけだが、この世界ではラボラトリー&ロケット団に接収されている為、物凄くご立派な研究施設になっている。
何と言うか、暗黒政府を築き上げそう。アポロさんがいるせいで余計にそう思える。
……で、
「なぁにこれぇ?」
「一応は隕石でスヨ。
それは生きた隕石だった。
直径は約2.4メートル。群青色の結晶体が凝り固まったような美しい外見だが、鉱物であるにも関わらず鼓動を打っており(その度に淡く点滅している)、これがただの石ではない事を如実に示している。形が歪なので、おそらくは大元から離れた“欠片”なのだろう。
そんな色々と事案な隕石が、元はミュウツーが収まっていたであろうカプセルの中で息衝いている。悪の組織感がヤバい。フレア団もここまであからさまじゃなかったと思うぞ。
「これは、「ねがいぼし」なのですか?」
おっと、ガラル出身のアポロさんがさっそく突っ込んで来ましたよ。
「詳しくは分かりませんガ、おそらく別物でショー。たぶん、ムゲンダイナとは別系統のポケモンの一部デース」
ウー博士がドヤァっと答える。
ガラル地方に降り注ぐ願い星と呼ばれる石は、ムゲンダイナというポケモンの一部と言われている。それをダイマックスバンドに仕込み、ガラル粒子なる物が発生する特定のパワースポットで使う事によって、ダイマックス化が引き起こされるのである。
ようするに、ダイマックスとはムゲンダイナの力を借りる――――――と言うよりは、影響を受ける現象なのだ。
本来はパワースポットで突発的に発現する自然災害のような物で、古い伝承などでは災厄扱いされているが、最近ではそのスケールの大きさに魅かれた一部のトレーナーたちが、公式の戦術として取り入れようと躍起になっているのだとか。言うまでもなく、その一部にはローズ委員長が含まれているのだろう。
これらの情報は研究段階かつ極秘事項で、世間ではまだ公表されていないのだが、裏社会の有力者の間では結構有名な話らしい。ガラル出身かつ悪の組織の最高幹部であるアポロさんが詳しく知っているのは、逆に当然と言えるだろう。蛇の道は蛇か。
だが、これがムゲンダイナと関りが無いのだとしたら、一体“何”の一部なのだろうか。これは転移前の知識にも無いので、全く以て分からない。アンノーン以上にアンノウンである。
「しかも、この隕石には“ポケモンの特性を打ち消す能力”があるようでシテ」
「えっ、特性? 何それ?」
ウー博士の「特性」という発言に、シンくんが首を傾げる。ああそうか、知る訳ないもんね。
「ああ、カントーやジョウト以外の地方では、種族ごとに“特性”という固有の能力を持っているのですよ。技や道具とは関係ない、“体質”とでも言いましょうか。だので、他地方ではその特性を加味したバトルを行うのです」
「へー、例えば?」
「こちらではドガースにじめん技が当たりますが、他地方ではドガースにじめん技が効きません。「ふゆう」という特性で無効化しているのです」
「おおっ、そりゃ面白いなぁ! いつかオレもやってみたい!」
分かり易い受け答え、ありがとうございます。アポロさんの解説はGOODだし、シンくんの反応はEXCELLENTでございます。可愛いなぁ~、お持ち帰りぃ~♪
しかし、LPLEに特性が無い理由はそういう事だったのか。この世界線だけの話かもしれんけど。
だけど、カントー地方だけでなくジョウト地方にまで影響が出ているって事は……あるのか、シロガネ山に。
「おや、察してくれたようでスネー、鋭い! その通りでございマス! まだ予想の段階ですが……あると思いまスヨー、シロガネ山に! それも特大のがザックザク~!」
ちょくちょく発言が気持ち悪いねアナタ。いいんだけどさ。
フムフム、ちゃんとジョウト地方もシロガネ山もあるけど、そこに私も知らない謎が隠されてるのか。レッドもそこの頂きにいるのかな?
いやー、これはそそられますね。オーレン諸島といいジョウト地方といい、この世界線やり込み要素多過ぎでしょ~♪
「……まぁ、ようするにまだまだこれからって事でスヨ。ポケモンバトルはまだまだ発展しマス。新たなローカルルールだけでなく、地方を上げての大事業になるかもしれまセン。未来は限りなく広がっているのデース!」
良い事言うね、ウー博士。是非そのまま突き進んで下さい。自己責任でね。
「さて、見ただけというのもアレですから、形のある物でお礼をしまショ。こちらをどうぞ~♪」
さらに、言うべき事を言って満足したウー博士は、今度は白衣のポケットから見覚えのある輝石が。
「……さすがにダイマックスはまだ一般解禁出来ないので、代わりにメガストーンをお渡ししまショ~♪」
「「おおっ!」」「おー?」
予想通り、メガストーンとメガバンドだった。御三家だけでなく、他のカントーポケモンの物も勢揃いしている。これもロケット団の伝手か、もしくは。
何にしても嬉しい。本来なら御三家はバッチ全部入手後、それ以外は殿堂入りしないと手に入らないからね。その上、馬鹿高いし。あれ、絶対に転売ヤーだろ。
「カントーではまだまだ希少な物でシテ、風の噂ではポケモンリーグで転売してる輩もいるそうですノデ、皆さん気を付けてくださいネ」
マジで転売ヤーだった。どうなってんだ、ポケモンリーグのセキュリティは。
つーか、マッドに渡される代物の方が真面とはこれ如何に。倫理観仕事しろ。
まぁ、それはそれとして、これで我がメンバーも大幅なパワーアップだ。特にハヤテとアキトの蜻蛉返りによるサイクル戦を組み込めるようになったのは大きい。ハヤテはまだしも、アキトは素のステータスに不安が満載だからね。
そして、シンくんの手持ちはそれ以上に強化されている。何せメガシンカ持ちが二体だ。原典通りなら十中八九メガピジョットを繰り出すだろうが、この世界線ではそれも怪しい。下手すると見せ合いで心理フェイズを仕掛けて来る可能性すらある。決闘者かお前は。
何にせよ、これで私たちは兼ねてより感じていた、火力不足を解決する事が出来た。手持ちを替えればいい話なんだけど、それが出来たら苦労しないのよねー。
「でも、こんなに良いのかな? それも只で」
「正当な報酬ですよ。それ程、ワタシたちは貴方々に期待していると思ってください」
あまりの棚から牡丹餅具合にシンくんがちょっと怯んだが、そこへすかさずアポロさんがフォローを入れる。出来る上司は飴と鞭の使い方が上手いですなぁ。
「さて、我々から見せられる物は以上デス。機会がありましたら、いつでもお越しくだサイ。大歓迎でスヨ~♪」
今度こそ店じまい、という感じで、ウー博士が別れを切り出して来た。所長という立場上、彼も色々と忙しいのだろう。それは私たちも同じだが。
「ありがとうございました」「ありがとな!」「バイバ~イ」
「それでは、地上に戻りましょうか」
そういう事になった。
「ちょっと振りね、ジャリンコ共!」「俺たちは帰って来たぜ!」『ニャハハハハッ!』『ミュウミュウ~♪』
だが、ラボラトリーを出た私たちに立ちはだかる強敵が。言うまでもなく、ムコニャ+ミュウの四人組である。
「おやおや、貴方たちがここに来たという事は……やり遂げたようですね?」
しかし、アポロは驚かず、むしろやって来て当然、という顔だった。どういう事?
いや、待て。確かムコニャたちは、幹部昇格の試験も兼ねてジム巡りに旅立った筈だ。その四人がここにいるって事は……?
「まさか……」
「モチコース!」「しっかり分捕って来たわよ、バッチ七つ!」『カツラにはさっき勝って来たばかりだにゃ』『ミュミュ~ン♪』
「「「おおーっ!」」」
こいつはスゲェや!
最後に把握している面子だとヤマブキジム辺りが鬼門になりそうだったが、そうか、無事に成し遂げたのか。
つーか、早過ぎね?
「ウフフ~ン♪ このプテラちゃんのおかげで、どんな悪路も一っ飛びよ!」「俺のギャラドスなら水路も関係ないからな」『群がる雑魚はニャーのミュウでイチコロにゃ』『ミュウミュウ!』
手持ちを使いこなしているようで何よりです。
それはそうと、何故にそんな闘志ビンビンなんですかね?
「決まってるじゃない。アンタたち、オーレン諸島に行くんでしょ? その腕があるかどうか、見極めてやんのよ」「ついでに言えば、お前らとの“勝負”が幹部昇格の最終試験なのさ」『という事で、速やかにボコってやるのにゃ! ニャーたちの昇進の為ににゃあ!』『ミュッミューン!』
なるほど、そういう事ね。アポロさんがわざわざここに来た本当の理由がこれか。立会人としてこれ以上はサカキ本人くらいしかいないだろう。
つまり、舞台は整った訳だ。
いいねぇ、そういうの。原典と違ってムコニャは味方だから、中々バトルの機会に恵まれなかったけど、原作以上の実力を持ったであろうこいつらと、こんな形で戦う事になるなんて、最高の展開じゃない。
「いいわ、掛かって来なさい!」「全力で行くぜ!」「わたしもやるー!」
「言われなくとも!」「我らロケット団!」『輝く未来が待っているのにゃ!』『ミューッ!』
――――――ロケット団のムサシとコジロウ、ニャースが勝負を仕掛けて来たっ!
◆ダイマックス
ガラル地方に見られる、ポケモンの巨大化現象の事。ガラル粒子という赤い粒子物質ととあるポケモンの体の一部であるらしい願い星が密接に関係しており、今でこそバトルでも活かせるようになりつつあるが、本来は人間・ポケモン双方にとっては自然災害である。その起源は、遥か昔にガラル地方を滅ぼし掛けた「ブラックナイト」にあるという。
カントー地方で見られる物は青い粒子物質が影響している為、おそらく起源が違うと思われ、赤道付近の大陸に伝わる「マガツキの悪夢」なる存在が関係していると考えられている。