ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ 作:ディヴァ子
カスミ:「本当よねー」
カンナ&イツキ「………………」
「……着いたわよ」
カンナさんに導かれ、辿り着いたのは、バンジ島の最奥地であるダイオウ山の頂上。そこにバンジジムがある。
「ハァ……ハァ……!」
つまり、滅茶苦茶疲れた。何が悲しくて、こんなサスツルギが波打つ大雪山モドキを、徒歩で登らにゃならんのだぁ、凍死するわっ!
「だらしないわねぇ」
「四天王の体力と同じにしないで下さい」
チクショウ、涼しい顔しやがって。厚着してても寒いんだよ、こっちは!
「フーッ……フーッ……こんなんじゃ、カンナさんには……追い付けな――――――」
「とりあえずユウキに暖めて貰え! 今寝たら、確実に死ぬぞ!」『ブッブイィィ!』
見ろ、この有様を。カスミの意識に霞が掛かってるじゃないか……ってつまらぁぁん! 何を言ってるんだ、私はぁあああああっ!
クッソ、私も半ば意識が遠退いてやがるからな。頭の中までお寒いよ畜生め。
つーか、何でカンナさんは平気なの? 本当に同じ人間なんですか、貴女は?
ちなみに、イツキさんは既に地点登録しているらしく、ネイティオに跨って一っ飛びしていた。ズルい!
「ほら、早く入らないと死んじゃうわよ?」
「誰のせいだと思ってんだぁ、このほでなしがぁっ! カスミぃ、しっかりしろぉ!」「嗚呼、お母さん……そこにいたのね……」「違うから! それスマイル0円の死神だからぁ!」
と、ともかく、中へ退避しなければ……。
「――――――って、中も寒いのかよぉっ!」
しかし、避難先であるジムの中も氷漬けのスケートリンク状態だった。これ、ゲームで見たぞ。チョウジタウン辺りでなぁ!
さらに、待ち構えるトレーナーたちの格好と来たら、タキシードやドレス+スケート靴と、今にも氷上でミュージカルをやりそうな物ばかり。服のチョイスとメイクから考えて、お題目は「美女と野獣」だろう。こいつら正気か。
「ラ~ララ~♪ 私はラ・ベル~♪ 羊飼いの末娘~♪」
「だから何だぁああああああああああああああああっ!」
まずは一人目。自分で美女を名乗るな。手持ちはもちろん、こおりタイプ。オーレンスターミー(Lv75)を繰り出して来た。
「ユウキ、「めらめらバーン」!」『ブィイイッ!』
「あ~ん♪」『ギュァ~ン♪』
むろん、ユウキのめらめらバーンで一発である。レベルを上げて出直して来い!
『ア~ア~♪ 俺は~、醜い野獣のリンドブルム~♪』
「二度と陽の目を拝めない顔にしてやらぁあああっ!」
氷上をガチガチになりながら進んだ先にいたのは、カエンジシっぽい仮面を被った男性役者。手持ちはオーレンニドキング(Lv78)。
「ニドキング、「れいとうビーム」~♪」『ガァギィイインッ!』
「すっこんでろぉ! アカネちゃん、「コズミックパンチ」!」『オンドリャーッ!』
「『ギャアアアアアッ!』」
精進が足りんわ、このライオン丸モドキがぁ!
「僕らは双子の王子様~♪」「スワンナとクレイナンだよぉ~ん♪」
「鶴は亀と躍ってろやぁ! テメェら焼き鳥にして食ってやるぁ!」
「「ヒィイイイイイッ!?」」
手足の感覚がなくなり始めた頃に出くわしたのは、白鳥と鶴のコスプレをした王子様。その癖出してくるのはアローラサンドパン(Lv79)とアローラキュウコン(Lv79)。そこはスワンナとかじゃねぇのかよ。
「ユウキ、「めらめらバーン」! アカネちゃん、「コズミックパンチ」!」『ブッブィッ!』『ピィーッ!』
「「ドワォ~♪」」
今更四倍弱点持ちが相手になるかぁ!
クソッタレが、あまりにも寒過ぎて苛々して来た。もう取り繕う余裕もない。凍えている筈なのに何故か身体が段々熱くなって来たし、いい加減に店長……いや、ジムリーダーを呼べぇえええぇいっ!
ぶっ殺してやるからよぉおおおおおおぅ!
「……来たわね」
そして、ちょっと小太りな姉妹コンビや世界一ツイてなさそうな王様を撃破した果てに、私は辿り着いた。
純白に青いラインが入ったドレスを纏う、金髪巨乳の美少女。頭には赤と白の薔薇の付いたカチューシャをしている。何か変人な兄貴がいそう。
「私はアスカ! バンジジムのジムリーダーよ! ここバンジジムは――――――」
「御ぉぉ託はいいからぁ、さっさと掛かって来ぉぉおい! さもなきゃクチバジムみてぇに放火してぇ、ここを火の海にしてやんぞぉぁっ!?」
「ええぇっ!? ちょ、待っ……れ、冷静に――――――」
「喧しいやぁっ! ハラワタが凍り付きそうなせいで、頭が煮え繰り返ってんだぃよぉっ! ぶっ殺してやるから、その首差し出せってんだぁああああっ!」
「何この子!? カ、カンナさーん!? 久し振りに来てくれたと思ったら、どうしてこんな犯罪者を連れて来たんですかーっ!? だ、誰か助けてーっ!」
じゃかぁしいわ、こちとら天下のロケット団ぞ。そこらのチンピラと一緒にするんじゃねぇ!
余談だが、そんな私たちのやり取りを見ていたカンナさんの反応は、
「アッハハハハハハッ! 表裏のありそうな子だとは思ってたけど、予想以上ね! 本当に最高よ、最高ッ!」
抱腹絶倒の大笑いだった。
あんた、人の事そんな目で見てたのか。ぶっ殺すぞ!
「コホン……と、とにかく、挑んで来ると言うなら相手になるわ。行くわよ、テンジョウインの名の下に!」
――――――ジムリーダーのアスカが勝負を仕掛けて来たッ!
「凍り付かせなさい、マルマイン!」『コッコォオリッ!』
「やってみろやぁ! 逆にローストしてやらぁ! トレーナーごと食っちまえ、ユウキぃ!」『ブ、ブィ!?』
「何なのよマジでこの子はーっ!?」『ボォ~ル……!』
初手はアスカがオーレンマルマイン(Lv83)、私はユウキ(Lv84)を繰り出した。何か全員に怯えられているような気がするが、知るか。私は早く麓に帰りたいんだよぉっ!
「お、脅かしてイニシアチブを握ろうったって、そうはいかないわよ! マルマイン、「でんじは」!」『コォボォール!』
まずはオーレンマルマインが麻痺を撒いてきた。速さは元からこっちが負けているので、バグり狙いか後続への繋ぎでしかない。
「ユウキぃ、気合で直して「めらめらバーン」だぁっ!」『ブィ……ブィイイッ!』
「嘘でしょ!?」『バリマルゥ……!』
ユウキは私を悲しませまいと自力で麻痺を治して、代わりにめらめらバーンをオーレンマルマインに叩き込んで火傷状態にした。
「マルマイン、あなたならまだ行けるわ!」『バリ……コォオオオオル!』
だが、向こうも気合で火傷を治癒して、スリップダメージを防いだ。さすがジムリーダー、ポケモンとの絆はバッチリのようである。
「マルマイン、麻痺はもういいわ! 「れいとうビーム」よ!」『コォボォオオオル!』
さらに、搦め手を即座に諦め、冷凍ビームをぶっ放して来た。良い判断だ、このアマァッ!
「ユウキ、「いきいきバブル」!」『ンンン……ブイッ!』
だので、こっちもゴリ押しする事にした。残り僅かなその体力、糧とさせてもらう!
「……戻って、マルマイン。凍えさせるのよ、カビゴン!」『ガァビゴォオオオン!』
倒れたオーレンマルマインと交代で現れたのは、オーレンカビゴン(Lv82)。出たな鳴き声:伝説怪獣め。
「ユウキ、「めらめらバーン」!」『ブイッ!』
とりあえず、火傷は入れておく。こいつ、素早さと特攻をかなぐり捨てた代わりに、原種以上の耐久力を持った物理アタッカーになったからな。攻撃力を下げておいて損はない。効果は抜群だしね。はがねタイプが欲しい。
「カビゴン、「れいとうパンチ」!」『ゴォオオオン!』
「当たるなよ、ユウキぃ!」『ブッブーイ!』
攻撃力が下がっていようがお構いなしか。どうせ眠るだろうしね。
ならば、ライフちゅっちゅギガントしてくれるわ!
「ユウキ、「いきいきバブル」!」『ンン……ブイッ!』
「カビゴン、「ねむる」!」『ンズズズ……ZZZzzz……』
「やはり眠って体力回復を図ったな! 戻れ、ユウキ! 行け、アカネちゃん! 「コズミックパンチ」でカビゴンを亡き者にしろッ!」『ウリャーッピ!』
『………………!』
眠ってしまったが故に、見す見すポケモン交換を許し、アカネちゃんのコズミックパンチによる四倍ダメージを食らってしまうオーレンカビゴン。いくら硬くとも、さすがに四倍ダメージは痛かろうて。それでもHP半分削れてないんだけどな!
しかし、コズミックパンチにはコスモパワー効果もある。寝ている間に要塞化させてもらうよ。
『……ンゴァアアアアッ!』
おっと、思ったよりも早く目覚めたな。
だが、時既に遅し。もう耐久力は一段階上がっている。このまま硬さを前面に出してゴリ押しだ!
「アカネちゃん、続けて「コズミックパンチ」!」『ウリャーッ!』
「カビゴン、「れいとうパンチ」で殴り返しなさい!」『ゴァッ!』
くっ、さすがに体重差があるか。火傷も治ってるし、パワーは向こうのが上だからね。
「カビゴン、「ねむる」!」『ZZZzzz……』
しかも、また眠りやがった。ニート過ぎんだろ。叩き起こしてやる!
「アカネちゃん、「ゆびをふる」!」『ピェーイ♪』
引いたのは嫌な音。若干地味だが、最初から城塞なオーレンカビゴン相手には絶妙な技だ。遠慮なく永眠させてやる!
「アカネちゃん、「コズミックパンチ」からの「ウルトラクッキング」!」『ゲンキもりもりピーッ!』
『ゴァアアアアッ!』「カビゴン!」
そして、下がった防御を突きまくる弱点攻撃により、オーレンカビゴンは陥落した。
「相手は動けない。仕留めるチャンスよ、ニドクイン!」『コァアアン!』
次なるアスカのポケモンは、通常色のオーレンニドクイン(Lv84)。素早さはアカネちゃんの方が勝っているが、どの道今は太って動けないので、考慮する必要は無いだろう。
「ニドクイン、「アイアンテール」!」『キュァアアン!』
『ギエーッ!』「アカネちゃん!」
耐久力の一段階アップに成功していたおかげで一撃では落とされなかったが、さすがにもう無理か。
「更に「こおりのつぶて」よ!」『コァアアアン!』
『ピィ……!』「戻って、アカネちゃん。……八つ裂きにしろ、アキトぉ! メガシンカぁ!」『ブゥウウン!』
瀕死になったアカネちゃんを戻し、私はアキトを展開してメガシンカさせた。タイプ相性は微妙だが、こいつには逆鱗があるんだよ!
「「こおりのつぶて」!」『コァッ!』
「このぉっ! 「げきりん」!」『ビァアアアアアアッ!』
『コァァァ……!』「戻って、ニドクイン!」
氷の礫で鼬の最後っ屁を食らってしまったが、問題なく八つ裂きにしてやった。イピカイエ~♪
「氷結させるのよ、オムスター!」『コルァアアアッ!』
お次はオーレンオムスター(Lv83)か。原種よりも種族値配分が良くなり、特攻も上がっている。こいつも特攻種族値がガラルフリーザーなんだよなぁ……。
「オムスター、「アクアジェット」で離れて「からをやぶる」!」『オッスタァアアアッ!』
チクショウ、積まれた!
逆鱗で暴走状態になっている隙を突かれたな。やってくれる。
「「アクアジェット」で動き回りながら、「れいとうビーム」を連打よ!」『オッスオッス!』
「「とんぼがえり」!」『ブブ……ブヴォオオン!』「チッ……!」
くそぅ、駄目か。混乱しちゃったからな。仕方ない、次はこいつに任せるか。
「冷凍食品にしてやれ、アンズちゃん!」『コァアアン!』
こおりタイプにはこおりタイプでしょ。お互いに抜群の有効打が無いけど、アンズちゃんには飛び道具だけでなく、地形攻撃も揃っている。逃げるだけじゃ勝てないぞ!
「アンズちゃん、「じしん」で足止めしてから「りゅうのはどう」!」『クァアアアアッ!』
さっそく地震でジェットの限り逃げ回っているオーレンオムスターの動きを乱し、竜の波動を食らわせようとした。
「オムスター、「なみのり」!」『オッムスターン!』
だが、オーレンオムスターは地面が揺さぶられたのを逆用して波に乗り、反撃して来た。やりやがったな、この野郎!
「「れいとうビーム」で凍らせろ!」『クォォオオオッ!』
しかし、私は転んでも只では起きない。発生した大波を冷凍ビームで凍らせ、乗りに乗っていたオーレンオムスターの動きをさっき以上に乱した。これにはオーレンオムスターもバランスを崩し、隙を晒す。
「更に「じしん」、そして「れいとうビーム」!」『コォルァアアアアアン!』
さらに、氷山となった波を地震で崩して、落ちて来た所を冷凍ビームで狙撃した。
「「どくづき」!」『コァアアアン!』
『キュゥ……!』「オムスター……!」
そして、一気に懐へ飛び込んで、毒突きで仕留めた。いくら素の耐久力が高くても、殻を破った状態で、あの怒涛の連撃を受け切れる訳がない。
これで私の残りは手負いのアンズちゃんとユウキ、無傷のヒナゲシちゃん。アスカは正体不明の一体のみ。
さぁ、最後のポケモンを出すがいい、バンジジムのジムリーダー、テンジョウイン・アスカぁっ!
「……まさか、ここまで追い詰められるとはね! だけど、この子を引き出した以上、容赦はしないわ! 行きなさい、フリーザー!」
『コォォラァスゥ!』
繰り出されたのは、伝説の鳥ポケモンであるフリーザー(Lv90)。それも色違いの個体で、より吹雪の化身を思わせる姿をしている。
……さすがはカンナの弟子、切り札に伝説のポケモンを持ち込むとか、本当に容赦ない。
「良いだろう、フリーザーなんて捨てて掛かって来い! 怖いのかぁ!?」
「誰が捨てるか! 滅茶苦茶ビビってるじゃないの、いい加減にしろ!」
チッ、捨ててくれないのか。なら、命を捨てて掛かって行くしかないなぁ!?
「戻れ、アンズちゃん! 行け、ユウキ!」『ブイッ!』
今、私の手持ちにいわ伎を持っている子はいない。四倍弱点を突けないのは痛いが、ここは確定麻痺で動きを封じるとしよう。
「フリーザー、「れいとうビーム」!」『ビュィイイヴッ!』
「頑張れ、ユウキ! あなたなら耐えられる!」『ブィィ!』
準伝説級の冷凍ビームは正直キツいが、耐えられない事も無い。元々フリーザーの特攻はパッとしないからね。ピカブイ世代だと真面なひこう技も無いし。
「食らえ、「びりびりエレキ」!」『ブッブゥーイ!』
ユウキのびりびりエレキが当たり、フリーザーが麻痺状態になる。
「……治しなさい、フリーザー!」『ヒュォオオッ!』
当たり前のように麻痺を治すなぁ!
「フリーザー、「エアスラッシュ」!」『ビュゥイイヴヴッ!』
「何ィ!?」『ブイッ!?』
さらに、この世代では覚えるはずの無いエアスラッシュで怯ませてきた。一体どうして!?
「こう見えて、オーレン諸島は技マシンの開発に余念が無いのよ。技レコードが大量に手に入るからね」
「くっ……そういう事か……!」
技レコードを含むレイドバトルの報酬は、主ポケモンたちが宿していたエネルギーが固形化した物であり、それを研究すればカントー地方には存在しない技マシンの開発など朝飯前なのだろう。この世界はポケモン在りきだからね。
……となると、本土に公開されてないだけで、既に100番台まで製造されてるんじゃないか!?
マズいな。今更と言えば今更だけど、既存の知識が通じないのは、こっちが不利だぞ。
「「いきいきバブル」!」「「ミラーコート」!」
『ブィァ……!』『コォラスゥッ!』
クソがっ、ミラーコートも搭載してるのかよっ!
どうする、ユウキが落ちたとなると、本格的に有効な奴がいないぞ!?
「――――――仕方ないわね」
私はそっと、ヒナゲシちゃんのボールを触った。ミラーコートを持ったこおり/ひこうタイプを相手に、彼女を出した所で狩られるだけである。
「頼むわよ、ヒナゲシちゃん!」『ラフリィイイイイイッ!』
全てを分かり合った私たちは、フリーザーの前に立った。
「……フリーザーを前にくさタイプを出すとはね。焼が回ったのかしら? でも、容赦はしないわ! 食らいなさい、「れいとうビーム」!」『ギュィイイイヴヴッ!』
そんな私たちに、無慈悲なれいとうビームが襲い掛かる。
「――――――ヒナゲシちゃん、「どくどく」!」『ラッフゥッ!』
「くっ!?」『コォォォ……!』
だが、只ではやられない。何度でも言うが、フリーザーの特攻そのものはパッとしないのだ。だからこそ、一撃程度なら耐えられる。
そして、どくタイプが放つ猛毒は躱しようが無いし、簡単に治癒も出来んぞ。その毒々には、散って行った他の子たちの
「「エアスラッシュ」!」『キョァアアアッ!』
「お疲れ、ヒナゲシちゃん……良くやったわ」『フリィ……』
追撃のエアスラッシュでヒナゲシちゃんは倒れたが、猛毒に犯されたフリーザーはどんどん体力が削られている。彼女の瀕死は無駄ではないのである。
さぁ、覚悟は良いか、フリーザー!
いくらミラーコートを張っていてもダメージ全てを無くす事は出来ないし、物理攻撃の前に反射も何もないだろう!
「仇を取って、アンズちゃん! 「どくづき」!」『コァアアアアン!』
「「はねやすめ」!」『コォラスゥ……!』
アンズちゃん渾身の毒突きと猛毒によるスリップダメージで、フリーザーが堪らず羽休めをする。
「無駄だ! 猛毒は時間が経てば経つ程効果が強まる! 仕留めろ、アンズちゃん!」『ギャォオオオオッ!』
「「エアスラッシュ」!」『ビュィイイヴヴ!』
さらに、エアスラッシュで見事に怯ませてきた。
しかし、やっぱり無駄な足掻きだ。土壇場でそこまでやれるのはさすがだけど、着陸した時点でお前の負けなんだよ!
「「じしん」!」「しまった!?」
『コァアアアアッ!』『コォラスゥゥ……!』
羽休めをしたばっかりに地震が当たるようになってしまったフリーザーは、そのまま二度と再び飛び上がる事なく瀕死となった。回復技も使い様ね。
「……勝った」
あれだけ煮え滾っていた頭は、クールに熱くなっている。血が滾る勝負というのは、些細な苛々など忘却の彼方に吹っ飛んでしまうのだろう。何とも清々しい気持ちだ。
だから、
「……さて、元気の塊でユウキを復活させなきゃ。「めらめらバーン」で早く放火しないと」
「やめてよ!? カンナさん! やっぱこの子怖いです! 早く、早く連れて帰って下さい!」
ちくせぅ、放火し損ねちゃった♪
◆◆◆◆◆◆
「ハァ……疲れた……」
「お疲れさん」
「お互いにね」
バンジジムを後にして、ポケセンまで帰って来た私は、カスミと一緒に思いっきりダレていた。
だって仕方ないだろう? 寒かったんだからさぁ。ポケセンだけが私とカスミの安息地なのよ。
「いやぁ、まさかフリーザーを使ったあの子に勝つとはねぇ」
近くでお茶を啜るカンナさんが嬉しそうに言う。対面ではイツキさんがケーキを食べていた。平和だなぁ、こいつら。
「……そう言えば、アンズちゃんって何で急にオーレンの姿になったんですかね?」
「今更ねぇ」
「確かに今更ですけど、そもそもゆっくり聞いてる暇がなかったでしょうが……」
ようやく落ち着いた事だし、この機会に聞いてみようか。
「オーレンのリージョンフォームは、“適合した土地で経験値を得てレベルアップする”と変わるのよ。とは言え、普通はレベルが1や2上がった所じゃ変化しない筈なんだけどね。アンズちゃんは特別適合し易い子だったのっかも」
「はぁ……」
褒められているんだろうが、やっぱり出自を知ってると、ちょっと怖いな……。
「それで、この後はどうするのかしら?」
「うーん……」
レベルアップで変化すると言うのなら、他の島にも行ってみるかな?
「とりあえず、マゴ島に行ってみようかと思います」
誰かはがねタイプになってくれないかなー。
「あらそうなの。なら、ここでお別れね。ワタシもいい加減、ポケモンリーグに戻らないといけないし」
「ボクもそろそろ行かないと……」
「アタシもジムに帰らなきゃなー。姉さんたちが何してるか分かったもんじゃないしね」
フム、異色過ぎるこのチームも、ここで解散か。
だが、旅に別れは付き物だし、新たな出会いへの前振りでもある。何だかんだで楽しかったし、連絡先も貰ったから、充分に成果は上げたと言えるだろう。
という事で、私たちはポケセンの前で笑顔のお別れをしようとしたのだが、
『ギュルルルル!』『ギュルァアン!』『ヘァッ!』『デュア!』
「な、何だ!?」
突然、何処からともなくオーレンのヒトデマンとスターミーが大集結して、私たちを取り囲んだ。
「何々、何なのよ、この状況!?」
「知らないわよ!」
「ワタシにも分からないわねぇ……」
「謎過ぎる……」
しかし、攻撃するでもなく、敵意も感じない。一体何が目的なのだろう。
「……、…………っ!?」
すると、オーレンスターミーたちが何かの映像をテレパシーで送って来た。
「……シンくん!?」
そこに映っていたのは、不気味なポケモンと対峙するシンくんの姿。状況はよく分らないが、剣呑としている事だけは確かである。虫の知らせって奴だろう。
「シンくん……」
海を隔てたウイ島で、一体何が……!?
◆テンジョウイン・アスカ
バンジジムのジムリーダーにして、カンナの弟子。彼女に師事された事を誇りに思っており、いつかその氷壁を乗り越えようと弛まぬ努力を続けている。使用ポケモンはこおりタイプで、切り札はフリーザー。一応はダイマックスも扱うが、あんまり好きではないので極力しないようにしている。
ちなみに、風来坊で変人な困った兄がいる。