ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ   作:ディヴァ子

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シン:「何でわざわざ火山島に住みたがるんだろうね?」
???:「温泉が湧くからじゃない?」


火山の人工島とスピードバトル

「来たな、チャレンジャー! 俺はユウギ! ウイジムの十代目ジムリーダー、ユウギだ! 俺の扱うポケモンは燃え盛るほのおタイプだ! さぁ、楽しいポケモンバトルをしようぜ! ガッチャ☆!」

 

 火山をモチーフにしたステージのど真ん中で、オッドアイの茶髪少年――――――ユウギ・ジューダイ・ムトーが二本指をピッとこちらへ突き付けて来た。

 彼はウイジムのジムリーダーにして、熱血クイズ親父の孫……ようするに燃える男だ。専門タイプはもちろん、ほのおタイプ。火傷治しの用意が間に合わない程の苛烈な戦い方をするらしく、一部では「覇王」とまで呼ばれている。正しき闇の心でも持ってるんだろうか。

 そんな最初からクライマックスなスタジアムに立つのは、このオレ――――――シン・トレース。数々の苦難を乗り越え、立ちはだかる強敵を打倒し、遂にこの場へ辿り着いた。目的はただ一つ。ユウギからバッチをもぎ取る事である。

 つまりは、戦って勝つだけだ。

 だが、事ここに至るまでの過程が無ければ、盛り上がりもクソも無い。

 だから、オレが島に到着し、ジムリーダー戦になるまでの事を話そう。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「ここがウイ島……」

 

 どんぶらこっこどんぶらこっこ、小型船に揺られる事、約一時間。オレは火山の島、ウイ島へ到着した。

 とは言え、直接島の土を踏んだ訳ではない。

 ウイ島は巨大な海底火山の海面から出た先端部分で、言うなれば島そのものが大きな火口だ。

 当然、内部に秘めるエネルギーは膨大であり、常に煙が立ち込め、場合によっては噴火する事もある危険地帯である。

 だので、人々は島の沿岸部を取り囲むように、人工島を添え付けた。アローラ地方ポニ島の「海の民の村」を参考にしているらしく、緊急時には人工島自体が船となって分散し、避難する事が出来るそうだ。火山島ならではの対策だろう。そう言えば、アローラ地方も海底火山が隆起して形成されたんだっけな、マトリ曰く。

 そんなウイ島周りの人工島に上陸した、その時、

 

「おめでとうございまーす!」「入島1000人目のお客様を記念して、島内の施設をフリーパスで豪遊し放題ですよー!」

「は、はぁ……」

 

 何か大歓迎された。ジョーイさんとジュンサーさんがチアリーダーの恰好でポンポン☆ダリアしてる。

 その上、入島1000人目の記念とやらで、島中の施設を只で使い放題らしい。こりゃあ、ツイてるぜ~♪

 

「よーし、それじゃあ、バッチリ楽しませてもらうかな~♪」

 

 どうせ、ジムに挑むには準備がいるしね。何でジムだけが山頂の火口付近にあるんだよ、おかしいだろ。

 

「まずは腹ごしらえでもするか」

 

 腹が減っては戦も出来ぬ。シズナとお別れしてから何も食べてないからなぁ。

 さーて、良いお店は……「カロス料理店:ファイアロー」……ここにしよう。看板に偽りがなければ、本格的なカロス料理が楽しめる店だそうだからね。海産物の豊富なオーレン諸島の特色を活かした味わいを、是非とも堪能したい所である。

 

「……ん?」

 

 と、入店直後に、物凄く見覚えのある人物の姿が。白衣にグラサンでハゲの髭オヤジという、特徴のあり過ぎる男。

 

「……おぅ? オーッス、マサラの青少年! ここへは観光か?」

「ジムへ挑戦するんですよ。今は羽休め中ですがね、カツラさん」

 

 言うまでもなく、グレンジムの燃える男、カツラさんだ。全く以て違和感は無いが、どうしてこんな辺境に?

 

「――――――“恩人”に、会いに来たんだよ」

「恩人?」

「ああ。ワシを命の危機から救ってくれた“女”さ」

 

 それって……。

 

「それと、久々に孫の顔を見ようかと思っての」

「えっ、お孫さんがいるんですか?」

「ああ。ここのジムリーダーを務めとるよ」

 

 納得した。ウイ島はほのおタイプが隆盛だって同船した観光客が言っていたし、ジムリーダーがほのおタイプを専門にしていてもおかしくはない。そのジムリーダーが燃える男の孫である事も。

 

「……言っとくが、あの子の情報を渡す気はないぞ?」

「構いませんよ。大体予測が付きますし。そもそも、事前情報があっても強くなければ意味はない」

「ハッハッハッ! 言いよる。まぁ、その通りではあるわな。それより、何か注文したらどうだね? ここは料理店だ。席に着くなら何か頼まねば」

「そうですね、その通りです」

 

 そういう事になった。

 やがて、注文した大盛りのキッシュと熱々のフリカッセが運ばれて来て、目の前に置かれる。どちらも美味しそうである。

 ……うん、良い腕してる。

 

「ちなみに、今後の予定は?」

「これを食べ終わって、腹ごなしをしてから、すぐに向かうつもりだが、一緒に来るかね? 案内してやろう。“ワシを倒した強者”だと紹介してやれば、大喜びで挑んで来るだろう。全力でな」

「ありがとうございます!」

 

 やった、色々と手間が省けたぞ。こうもトントン拍子で話が進むとはな。幸先が良過ぎて怖いくらいだよ。

 だが、有難い事には変わりないので、遠慮なくご一緒させてもらおうか。

 という事で、さっさと食事を済ませ、登山の準備に入る。まずは買い物だな。

 ――――――いや、その前にシズナに電話しなきゃな。無事にウイ島へ到着したって連絡入れないと。

 

「あー、もしもし、アオイか?」

《あら、シンくん、もう着いたの?》

「そっちはまだなのか?」

《船がエンストした。今救助を呼んでる》

「そ、そうなんだ……」

 

 開始早々何をやっているのだろう、あの子は。

 

「大丈夫なのか?」

《大丈夫よ。救助艇に燃料貰ったし、もうすぐ着くわよ》

「そうか……とにかく、気を付けろよ?」

《心配性ねぇ》

「お前には色々と前科があるからな……遭難したり、放火したり……」

 

 まぁ、それだけが理由ではないけどね。

 

《大丈夫よ……たぶん》

「おい、その間は何だ」

《アッハッハッハッ、愛してるわシンく~ん♪》

 

 そう宣って、シズナは慌てて電話を切った。追及を逃れる為だろう。……オレの気も知らないで。

 

「愛の語らいは終わったかね?」

「ええ、バッチリと」

 

 カツラさんを待たせるのもアレだし、早く移動するか。

 

「……ズワォ!?」「何じゃーい!?」

「うぅ……!」

 

 と、思った瞬間、空から女の人が降って来た。何でや。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「うぅぅ……ラオス!」

「大丈夫そうだなぁ!」

 

 ふざけてんのかこいつは。寝言にしても酷過ぎるぞ。

 しかし、彼女が落下の衝撃で気絶しているのも事実。放っておく訳にもいくまい。傷だらけだし、折角の美人さんが台無しだ。

 というか、この人は一体何故に空から落ちて来たのだろう?

 だが、答えは向こうからやって来た。ウイ島本土の方から。

 

『ガァァヴォオオオッ!』『コギュイイイイッ!』

 

 それは、争い合う二体のポケモン。一体はオーレンブーバーで、もう一体は――――――オーレンのシードラか!?

 と、とにかく、図鑑で詳細を……!

 

◆シードラ(オーレンのすがた)

 

・分類:かいりゅうポケモン

・タイプ:みず/ドラゴン

・レベル:73

・性別:あり

・種族値: HP:95 A:95 B:95 C:95 D:95 S:65 合計:540

・図鑑説明

 深海からの使者。遥か海の底に眠る王の命令で動き、あらあゆる敵を殲滅する。頭頂部の長い鬣にある毒の棘は猛毒で、刺すだけでなく発射する事も出来る。口から吐く竜の波動は鋼鉄をも原子に分解してしまう。オーレンのブーバーとは仲が悪く、出会った傍から戦い始めてしまう。

 

 海底の王って何やねん。

 つーか、とうとうドラゴンタイプになったのか、シードラ。ドラゴンポケモン(笑)だった時代が懐かしいね。見た目も竜宮から使わされたニシンの王様ってくらいに派手だしな。

 図鑑説明から察するに、毒突きや竜の波動を覚えている筈。種族値とタイプ的に耐久力も結構あるし、厄介な相手である。一筋縄では行かなそうだ。

 しかも、奴さんは不倶戴天の敵と対面してブチ切れ中。とても“話し合い”で治まる状態じゃない。このお姉さんも、この二体の諍いに巻き込まれたのだろう。

 だが、オレたちが立っているここは人工島。本物の陸地程の耐久性は望めない。このまま殺し合いを黙って見ていては、いずれ沈んでしまう。もしくは、沈む前に切り離されるか。

 何にしても、奴らを倒す以外の道は無い。オレたちが生き残る為にも。

 

「おい、そこの青い火男と赤い笹かま野郎! こっちを向けぇ!」

『ゴァアアアッ!?』『キュィィィッ!?』

 

 オレの言葉が分かっているのか、それとも直感的に馬鹿にされていると思ったか。どっちにしろ頭に来たのは変わらないようで、怒髪天を突く勢いで襲い掛かって来た。

 

「カツラさん!」

「分かっとる!」

『プリーン!』『バァヴォォン!』

 

 オレはプリンを、カツラさんはウインディを繰り出した。即興のタッグバトルである。先に潰すべきはオーレンシードラだ。幸いこちらはドラゴンタイプの弱点を突ける。ダブルバトルの基本は、片割れを落とすのが定石だからな。

 

『コギュァアアアッ!』『ガァヴォオオオラッ!』

 

 さっきまでの諍いは何処へやら、一転して協力し合い、不意を突くような形で同時に攻撃を仕掛けてきた。ハイドロポンプがウインディ、蒼い炎がプリンに飛んで来る。

 

「「躱せ!」」『プリッ!』『ヴァォン!』

 

 しかし、当たらなければどうという事は無い。相棒との信頼関係はバッチリだからな!

 

「プリン、「ふわふわドリームリサイタル」でオーレンブーバーを眠らせろ!」『プゥ~、ププゥ~、プ~プリ~ン♪』『ZZZzzz……』

「よし、良いぞ! ウインディ、シードラに「じゃれつく」!」『バヴァッ!』『ホグュィィッ!?』

 

 よっしゃ、効果は抜群だぜ!

 

『コギュィイイイッ!』

「…………っ! プリン、「ころころスピンアタック」でウインディを守れッ!」『プリッ!』

 

 クソッ、さすがに耐久力があるな。ハイドロポンプで反撃して来るとは。

 だが、弱っているのは事実だし、何よりオーレンシードラはウインディよりも遅い。

 

「ウインディ、今度は「げきりん」だ!」『ガヴォオオオッ!』

『ギギュゥヴヴヴヴ……!』

 

 二度に渡る弱点攻撃で、遂にオーレンシードラが倒れる。残るはオーレンブーバーのみ。

 

『ガァヴォォオオオオッ!』『プリャッ!?』

 

 すると、タイミング悪くオーレンブーバーが目を覚まし、プリンにアイアンテールを当てて来た。チクショウ、やりやがったなぁ!

 

「ウインディ!」『ガヴォオオッ!』

『ガヴォォォオラァッ!?』

「ありがとうございます! プリン、組み付いて「スヤスヤおやすみタイム」!」『プリ~ン♪』

『ゴァアアアアアアアアアアアア!』

 

 カツラさんのナイスな横槍のおかげでプリンが接近でき、必殺のスヤスヤおやすみタイムを食らわせてやった。プリンの添い寝が、オーレンブーバーを永遠の眠り(瀕死)に誘う。

 

「今だ、シン!」「了解です! 行っけぇ、モンスターボール!」

 

 さらに、気絶した二体を無事ゲット。とりあえずボックス送りにしておいた。オレに火男や深海魚を使う趣味は無い。

 ともかく、これで島に平和が戻った。

 

「……フゥ、良くやったぞ、シン」

「それ程でも。それより――――――」

 

 後は、この女性だな。詳しい話を聞かないと……。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 それからそれから。

 

「いやー、助かったわ。ありがとネ♪」

 

 人間の病院も兼任している島のポケセンへ緊急搬送された彼女は、落下の勢いこそ凄かったものの大した怪我はなく、割とすぐに目を覚ました。丈夫な人だな。

 

「………………」

「なぁ~に見てんの?」

「な、何でもないよ!」

 

 クソッ、からかいやがって。美人なのは認めるけどよ。

 青白いウェーブヘアに端麗な容姿。艶めかしい身体を露出度の高い黒のボディコンドレスで包み込み、これでもかと色香を醸し出している。

 彼女の名前はカリン。シロガネ山を挟んだお隣さんであるジョウト地方から遥々やって来たらしい。あくタイプを専門にしているようで、ブラッキーというイーブイの新たな進化態を連れ添っていた。

 

「それで、カリンさんとやら。どうして空から降って来たんだね? まぁ、大方の予測は付くが……」

 

 オレが話していても埒が明かないと見たか、カツラさんがさっさと話を切り出した。事実その通りだから何も言えない。

 

「アナタの思っている通りよ。あの二体の諍いに巻き込まれたの。強いポケモンを探していたらね」

 

 うん、何の変哲もない理由だな。実に分かり易い。

 しかし、あくタイプの専門家が、どうしてほのおタイプばかりのウイ島に?

 

「チケットを買い間違えたのよ。初めてだったからね」

 

 まさかのドジっ子だった。可愛いなアンタ。

 

「……言っとくが、ここはほのおタイプばっかりだぞ?」

「知ってるわよ、言われなくとも。だから、どうするか迷ってるの。もうお金が無いしねー」

 

 貧乏旅行かよ。

 ちなみに、999人目のお客様だったそうな。運の無い人である。

 

「……しょうがねぇなぁ!」

「急にどうしたのかしら?」

「泊る金が無いんだろう? なら、一緒に来なよ。1000人目記念のフリーパス貰ったから、“お連れ様”って事で何とかしてもらえるだろうからさ」

「フーン……」

 

 オレの提案に、カリンが艶めかしく微笑む。その顔止めろ。

 

「それはそうと、アナタ強そうね?」

「いきなりですね」

 

 まぁ、それなりに強いとは思うよ?

 

「なら、ちょっと勝負してくれない?」

「何でだよ……」

 

 唐突過ぎるだろうに。

 

「トレーナー同士、目と目が合ったら勝負の合図でしょ?」

「挨拶もままならないだろ」

 

 死の淵から覚めたら即バトルって、死体蹴りと何が違うんだ?

 

「えー、いいでしょー? ロクにポケモンも捕まえられなかったし、誰かに八つ当たりしたいのよー」

「手前勝手にも程がある」

 

 だけど、この強引なノリ……誰かに似てるんだよなー。

 

「カツラさん、どうしましょう?」

「フーム……ま、一試合くらいならいいだろう。ただし、1VS1の一本勝負で頼むぞ。さすがにフルバトルする程は待てんからな」

「スイマセン……」

 

 カツラさんも待ってくれるようだし、ここは勝負を受けた方が良いだろう。そうでもしないと、この女は絶対に認めないだろうからなぁ。

 うーん、やっぱり誰かに似ている気がする。誰にだろうねー?

 

「よっしゃ! それじゃあ、外に出ましょう。船で聞いたんだけど、ここならではの戦い方があるらしいから、それで勝負ね!」

「おう、良いぜ!」

 

 正直、無視して先に進みたいが、そのウイ島ならではのバトル形式というのには興味がある。是非とも体験してみたい。

 という事で、オレたちはウイ島のバトルコートに移動したのだが、

 

「……何でバイクなんだよ!?」

 

 何故かサイバーパンクなバイクが並ぶガレージに辿り着いてしまった。どういう事だってばよ。

 

「“スピードの中で進化したバトル”らしいわよ。人呼んで「スピードバトル」だって」

「まるで意味が分からんぞ!?」

「あ、子供はそっちのスケボーを使うそうよ。足に付けるだけで疾風(かぜ)になれるんだって」

「更に意味☆不明だわ」

 

 何でバイクやスケボーに乗ってポケモンバトルせにゃならんのだ。おかしいだろ。

 だが、ここまで来て尻尾を巻いて引き返す気はない。オレはシズナみたいに“見た目は子供、頭脳は大人”って訳じゃないけど、それならそれで子供らしく、楽しませて貰おうじゃないか!

 あと、単純にあのエンジンと合体してしまったスケボーに乗ってみたい。面白そうだもん。あのバイクが走る姿も見てみたいしな!

 

《スピードバトルが始まります。スピードバトルが始まります。ルート上の島民の皆様は直ちに退避して下さい。バトルレーンの形成を開始。ウイジムに申請、オーソリゼーション》

 

 と、人工知能のメタルボイスが島中に鳴り響き、人工島が形を変え始め、瞬く間にスピードバトル用のコースが形成される。エラい大事じゃないですか、やだー。

 

《さぁ、始まりましたぞ、「スピードバトル」! スピードの中で進化した新たなポケモンバトル、たっぷりとお楽しみ下さーい!》

「カツラさん?」「ノリノリねぇ……」

 

 実は一番楽しみにしてただろ、カツラさんや。司会までしちゃってさ。

 

《それでは……バトル開始ィイイイイイイイ!》

 

 そして、オレとカリンは疾風(かぜ)になった。マシンのエンジンが唸り、オレたちをスピードの世界へ誘う。レーンと化した街並みが落書きのように左右を通り過ぎていき、火山の麓が故の熱風が頬を撫ぜる。

 うん、普通に危ないからね。カリンはバイクだし、オレはスケボーだし、その癖マジもんのレース用のマシン並みの速度出てるし。これ、転んだらクラッシュだけでは済まないぞ。粗挽き肉団子になっちゃうぜ!

 マジでさ、何でこんな事するの? 普通にバトル出来ないの? 馬鹿なの、死ぬの?

 しかし、ルールそのものは割と面白い。

 コース上に用意されている立体映像(ソリットビジョン)のアイコンを通過すると、ステータスアップや回復をする事ができ、それらはポケモンだけでなくマシンも対象に入っている。

 さらに、周回ごとに「スキルカウンター」というポイントを稼げ、点数を消費する事で様々な有利効果を得られる。どちらもレースを盛り上げる要素だろう。

 そして、相手の手持ちを全て倒すと勝利となる。大体そんな感じだ。レースとミニゲームを上手く組み合わせた、優良なバトル形式と言えるだろう。

 これでスピードの世界に溶けるような勢いがなければなぁ。本当に惜しい。

 ともかく、今は勝負(レース)に集中しよう。疾風(かぜ)になれと言うのなら、ひこうタイプで行ってやろうじゃないか。

 

「行け、ピジョット!」『ピジョォヴァアゥッ!』

 

 という事で、オレはピジョットを繰り出した。大きな翼を広げ、オレと一緒に風を切る。

 

「頼むわよ、ドンカラス!」『ドワォオオオッ!』

 

 対するカリンは、見た事も無いポケモンを繰り出した。ワタリガラスとソフト帽のマフィアを組み合わせたような姿をした、首領(ドン)を名乗るに相応しい鳥ポケモンである。タイプもあく/ひこうの複合みたいだし。

 

「何だそいつ!?」

「ジョウト地方のポケモンよ。ヤミカラスという鳥ポケモンが闇の石で進化するの。……と言っても、最初に確認されたのはシンオウ地方なんだけどね」

「そーなのかー」

 

 つまり、ジョウトからの刺客、という事か。カリンもジョウトの出身だから、ある意味カントーVSジョウトの戦い、と言えるかもしれない。受けて立つぜ!

 

「ピジョット、「メガシンカ」!」『ピジョォォヴァァアヴヴヴヴッ!』

《あーっと、シン選手、さっそくピジョットをメガシンカさせたぁっ!》

 

 まずはピジョットをメガシンカ。ステータスで有利に立つ。それから砂を掛けて、熱風疾風エアスラッシュだ。

 

「甘いわね、チョコレートより!」

 

 だが、カリンはこちらには目もくれず、「スピーダー」のアイコンを通過する。これによりドンカラスのスピードが飛躍的に上がり、メガピジョットと大差ない速度を得た。

 

「ドンカラス、「ふいうち」で牽制して「あやしいひかり」!」『ドワァアアアォッ!』

《おおぅ、スピードバトルならではの技の使い方! 初参加とは思えない技巧だぞぉ!》

 

 さらに、不意打ちで出鼻を挫き、怪しい光で混乱させてきた。クソッ、初参加の癖に手慣れてやがるな。

 しかし、何時までもやられっぱなしではない。アイコンはオレにも利用出来る。ドンカラスの熱風による追撃を敢て何もせずに受け、「なんでもなおし」で回復するのを優先した。

 

「ピジョット、「とんぼがえり」で距離を開けて、「ねっぷう」!」「こっちも「ねっぷう」よ!」

《おーっと、ここで「ねっぷう」同士の撃ち合い! メガピジョットが「スペシャルアップ」、ドンカラスは「スペシャルガード」を取っているので、互いに全く譲らなーい!》

 

 そして、それぞれ「スペシャルアップ」と「スペシャルガード」のアイコンを通過してからの、熱風同士の撃ち合い。互いに命を削り合う、まさにデッドヒートだ。燃えるぜぇ(物理)!

 

「「……ん?」」

 

 と、そこへ水を差すような出来事が。

 

「おい、何だアレ?」「空が……割れた……!?」「何、あのポケモン!?」

 

 騒ぐ群衆の指差す先……そこに居るは、空間を鏡のように割って現れた、邪悪な鳥。何処かファイヤーに似ているが、全身が赤黒く燃え上がっており、大分禍々しくなっている。

 そんな邪炎の怪鳥が、今まさにヒートアップしているメガピジョットとドンカラスの間に割って入る。燃え上がる怒りを伴って。

 ……お前は一体、何だ!?

 

『ギャヴィィヴァアアアアアッ!』

 

 ――――――野生のファイヤー(ガラルのすがた)が現れたッ!




◆ファイヤー(ガラルのすがた)

・分類:じゃあくポケモン
・タイプ:あく/ひこう
・性別:ふめい
・特性:ぎゃくじょう→無効化中
・種族値
 HP:90
 こうげき:85
 ぼうぎょ:90
 とくこう:100
 とくぼう:125
 すばやさ:90
・図鑑説明
 邪悪なオーラを炎のように燃え上がらせるその姿から、ファイヤーと名付けられたポケモン。その邪炎に当てられると精魂が尽き果て、真っ白に燃え尽きてしまう。傲岸不遜で嫉妬深い、かなり拗れた性格。何十年に一度かの間隔でカンムリ雪原に降臨する。
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