ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ 作:ディヴァ子
カリン:「単なる勢いじゃない?」
「楽しいデュエルだったぜ!」
「いや、デュエルじゃねぇよ」
「俺に勝った証に、このバッチと技マシンを受け取ってくれ!」
「人の話聞けよ」
「だけど、次は勝つぜ! 必ずな!」『チョー楽しめたよ!』『カオス・エクシーズ・チェンジだ!』『絶望したぁ! ワシの頭は焼野原と化した!』
「一人ずつ話せよ」
という事で、オレは見事ウイジムを制し、バッチと火炎放射の技マシンを貰い、四人の見送りを受けつつ下山した。
「お疲れさーん。帰りも送ってあげるわねー」『ギュァアアアッ!』
ガラルファイヤーの背中に乗せられて。全然熱くないし、むしろ冷たいくらいなのだが、どうにも眩暈がする。疲れてるのかなぁ?
「ハイ、到着」「ふぃー」
その後、無事にポケセン前に到着。
「ワッハッハッハッ、素晴らしい戦いだったぞ! 思わずワシまで参加する所じゃった!」
「ホセーヨ、禿げ」
「禿げではない、カツラだぁ!」
カツラさんの暑苦しい称賛を受けたので、とりあえず受け流しておいた。疲れてるんですよ、マジで。まさか
《お疲れ様です、マスター》
「何で来たし」
さらに、何故かスピーダーが自動運転で追い付いてきた。マスターになった覚えは無いんですけど。
嗚呼、もういい。とにかく休ませてくれ。さすがにくたびれたし、これ以上無理するとマヂで死ぬ。オレはスヤスヤおやすみタイムに入るんだよ!
「あ、寝る前にホテル紹介してくれない?」
だのに、この女は……!
しかし、放り出す訳にもいかず、ジュンサーさんが紹介してくれた割と良さ気なホテルにカリンを押し付けた所で、オレは力尽きて意識を失った。想像以上に疲労が溜まっていたらしい。やっぱり、子供にトラパーごっこは無理があったよ……。
『………………』
途中、やたらとスターミーたちに見られていた気がしたが、何なんだろうね、アレ?
そうでなくとも、スターミーって何考えてるか分からないし、むしろもっと前からジロジロ見られてたような……嗚呼、もう駄目だ、オヤスミマ~ン♪
そして、数時間後。
「……ハッ!」
オレは知らない天井を見上げながら目を覚ましたのだが、
「はうぁっ!?」
どういう訳か、素っ裸だった。何でや。
しかも、寝転んでいたのはピンクい感じのダブルベッド。何がどうしてこうなった。
「あら、お目覚め?」「何でお前まで裸なんだよ!?」
さらに、お風呂場から一糸纏わぬカリンが登場。遂に女性の全裸を見てしまった……。
「そりゃもちろん、一緒にお風呂に入るからよ?」「どういう事だってばよ!?」
まるで意味が分からんぞぉ!
「だって、アンタ汗だくだったじゃない。揺すっても全然起きないし、一先ず身体は拭いといたけど、ちゃんと湯船に浸からないと疲れが取れないわよ?」
「だからって、何でお前まで一緒に入るんだよ!?」
「大丈夫大丈夫、未成年を喰う程ガッツいて無いから」
「そういう問題じゃねぇよ!」
心の問題なんだよ!
「そもそも、アンタ彼女持ちなんでしょ?」
「なっ……!?」
「出所はカツラさんね。決戦前に電話を掛けるとか、なかなか見せ付けてくれるじゃないの」
「あのクソ爺ィッ!」
火口に突き落としてやろうか。
「ま、そういう事だから、諦めて洗いっこしましょうね~♪」
「放せ! 放せ!」
だが、オレのライフはとっくに0だったようで、上手く力が入らず、そのまま浴場へと連行されてしまった。もう何をしても無駄だと悟ったので、以降はカリンの為すがままにされる。さすがに前方は死守したが。
「……結構広いな」
ホテルの浴室だから、てっきりシャワーしか無いかと思っていたが、意外な事に中はかなり広く、石造りの大浴場になっていた。陸亀っぽい浴槽に、溶岩とカタツムリの合子みたいな蛇口が温泉を注いでいる。
さすがは火山島の町である。お風呂周りへの力の入れ具合が半端じゃない。
「そりゃあ、お風呂場でも出来るようにっていう、ホテルのサービスだもん」
「は?」
何だ、その言い草は。それじゃあ、まるで此処が――――――、
「……知らずにチェックインしたの? ここ、
「アッークセルシンクロォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
もう駄目だ、
つーか、取り締まる人間が何て所を紹介してるんだよ、ジュンサーさん。もしかして、そういう趣味がお有りですか?
「うーん、アタシにそんなつもりは毛頭ないけど、これじゃあ、まるで現地――――――」
「それ以上言うなぁ!」
シズナに何て言い訳すりゃいいんだぁ!
「まぁ、それはそれ、これはこれという事で。次はアタシを洗って頂戴ね~♪」
「………………」
もう、どうにでもなぁ~れ♪
「疲れた……」
結局、色々と酷い目に遭ったオレは、そのままベッドインする事になった。別に致す気は無いよ?
そんな体力も精神力も、とっくのとうに尽き果ててるからなぁ!
「あ~ら、釣れないわねぇ~ん♪」
一体どういうつもりなんだろう。揶揄うにしても度が過ぎるぞ。
「お礼のつもりだけど?」
「あのなぁ……」
オレはシズナ一筋です。お前なんかお呼びじゃねぇ!
「それにしても、アオイちゃんだっけ? アタシも会ってみたいわぁ~」
「全力で遠慮願いたいな」
「どうして?」
「誤解しか生まないからだよ!」
ついでに修羅場も生まれるかもしれない。あいつ、容赦しない時は本当に悪鬼羅刹と化すからな。火薬庫にニトログリセリンをストレートで投げ込むような物だ。オーレン諸島始まって以来の大惨事になるだろう。それだけは防がねば。
……何でオレ、こんな目に遭ってるんでしょうね。誰か助けて。
「でもでも、シンくんはこれからもジム巡りするんでしょう? だったら、一緒に付いて行こうかしらね~♪」
「断固として拒絶するわ。それより、いい加減寝かせてくれよ。オレの身体はもうボドボドなんだよ」
「嘘だッ!」
「ドンドコドーンだ! いいから寝かせろぉぁっ!」
「ハイハイ、お疲れマンボ~♪」
「古い……ッ!」
そんな感じで、カリンの凍える風を受けつつ、眠りに着いたオレだったが――――――、
「……トイレ」
「ウ~ン……呼んだぁ~?」
「黙れ便女」
夜中に目が覚めてしまった。そう言えば、島に着いてから一回もトイレに行ってねぇや。さすがにそれだけ放置していれば、催す物くらいある。
という事で、ふざけた戯言を寝ながら呟く阿保を尻目に、ベッドから抜け出した。
「……ん?」
すると、指に何かが引っ掛かり、スルリと床に落ちる。
「ペンダント?」
それはカリンの物と思われるネックレスだった。小粒なチェーンが組み合わさっただけのシンプルな作りだが、飾り付けられた一個の宝石に思わず目が留まる。
「おいおい、これって……」
一見すると良く出来たスターサファイアでしかないが、六条の星ではなく、何故か五条の星になっている。加えて石全体が淡く発光しており、よくよく見ると粒子物質を放っているのが分る。
どう見てもカントー版願い星の加工品です、本当にありがとうございました。
この女、何て物をペンダントにしてんだよ。何処で使い方を習った?
「ムニャムニャ……説明書を読んだのよ……」
「いや、煩いけど……」
今すぐその本持って来いや寝坊助ェ。
まぁいいや。これはトイレに流してしまうとして――――――、
「……っ!」
拾った瞬間、不思議な光景がフラッシュバックする。最初に巣穴に触れてしまった、あの時と同じように。
◆◆◆◆◆◆
満天の星空。荒れ果てた大地。誰も何も居ない、死の世界。
『………………!』
そこへ墜ちる、一筋の蒼き流星。それが骸と化したナニカへと宿り、死した命に再び脈動を与えた。
蘇ったそれは、闇色の身体に七色の宝石を埋め込んだ、人型生命体。外宇宙より来たりし邪神の一柱。
しかし、
そして、人の心を宿した邪神は、己に起こった事を確認し、理解すると、
『……フフフ。誰かの為に命を張るのも、誰かを愛するのも、もうウンザリ。私も好きにさせて貰うわぁ』
本当の悪魔になった。彼女が望む、人としての姿に。
一見すると素朴で目立たない、メタモンよりも緩い顔をした、無害そうな少女だが、実際は――――――、
◆◆◆◆◆◆
「……ハッ!?」
と、映像はそこで終わり、オレは正気に戻った。
「今のは……」
言うまでも無く石に宿った記憶だろうが、時系列としては前回の怪獣大戦争が終結した後だろう。ナイラーアとかいう奴は死んでたし。
だけど、奴が取った人間形態の顔……アレって、
『………………』
「……っ、誰だ!?」
いつの間にか、ドアの近くに妙な発光体がプカプカと浮かんでいた。それは扉を音も無くすり抜け、廊下へと出て行く。
「ま、待てっ!」
オレは衝動的にその光の後を追った。どう考えても無謀な行為だが、一気に押し寄せた情報量のせいで冷静な判断が出来なかったのかもしれない。
『やぁ、シン・トレースくん。我々は君が来るのを待っていたのだ』
襖に畳、ちゃぶ台という和風の部屋に鎮座する、奇妙な物体。どこかスターミーに似ているが、身体はより刺々しい漆黒の結晶体となっており、コアは爛々と紫色に輝いている。とてもエスパータイプには見えない。
だが、そいつがスターミーのリージョンフォームだと分かる。それもオーレンの物とは違う、全く別の存在であると。
何の根拠も無いが、オレは瞬時に理解出来た。
否、
『歓迎するよ。何なら、カリンも呼んだらどうだい?』
「……どういう事だ? 何が目的で、オレを呼んだ?」
オレは警戒しつつも、奴と対面する形で腰を下ろした。どうせ丸腰なのだ。開き直ってやればいい。
『我々は君を救いに来たのだよ』
すると、スターミー(?)は素っ頓狂な事を言い出した。
「……それはオレをこのままチェックアウトさせて貰えるって事か? 経費はそっち持ちで?」
『いやいや、そんなチャチな物じゃないよ。チェックアウトするのはホテルではなく、この
「はぁ? オレに宇宙旅行しろってのか?」
『端的に言えばそうなるかな』
ますます以て訳が分からない。何でそんな事をせにゃならんのだ。
しかし、スターミーみたいな奴は話を続ける。
『この惑星はもうすぐ滅ぶ。いや、生態系と言った方が正しいかな。
さらに、とんでもない事を宣いやがった。
「何を言ってるんだ……?」
『おや? 君はビジョンを見たんじゃないのかい? 輝石に宿った破滅の記憶を……』
「………………!」
どうして、それを知っている。
『驚く程の事ではないだろう。我が同族たちは、そういう能力に長けているのだから』
こいつも記憶を見たのか、それともオレの頭を読んだのか。どっちもあり得そうで、どっちも正しいようにも思える。
もしくは
『アザストの封印はもうじき解ける。本当の悪魔となったナイラーアの手引きによってね。そうなってしまえば、今度こそアルセウスでも止められまい。だから、せめて将来が有望な若者たちだけでも、惑星の外へ逃がそうと、遥々やって来たんだよ。我々がかつてそうしたようにね』
つまり、こいつらの故郷はアザスト率いる邪神たちに滅ぼされ、母星を捨てて逃げた口らしい。
人語を介する辺り、その遣り方は――――――、
「……自分の仲間を……自分の親を見捨てたのか?」
たぶん、そういう事だろう。ユンゲラーがそうであるように、実は人間とポケモンの境は割と曖昧である。
なら、
『託されたと言って欲しいね。あのままでは、我々は完全に滅亡していた。それ程の存在なのだよ、アザストは』
「………………」
まぁ、理解は出来る。オレも親なら、道連れにするくらいなら断腸の思いで送り出すだろう。例え悲しみと憎しみを背負わせる事になっても。
だが、今のオレは子供で、そうしたいとは“まだ”思えない。
そもそも、何故わざわざオレに声を掛けたのだろう。将来有望な奴なら、そこら中にいるだろうに。例えば、シズナとか。
『彼女は駄目だ。連れては行けない』
すると、スターミーもどきが、今までの軟らかい口調とは違う、鋭く冷たい声色で断固拒否した。
「何でだよ?」
『彼女は闇に魅入られ過ぎている。ナイラーアだけではない。
「………………!」
言われてオレはハッとする。
そうだ、あいつは昔から運が悪過ぎる。どうしてそこで、という所で決まって酷い目に遭う。
そして、周りの人間は悉くそれに巻き込まれる。付いて行くだけでロケット団に足を踏み入れ、電話をしただけなのにガラルファイヤーに襲われたように。
全くの偶然かもしれないが、それにしてはあまりにも狙い澄ましている。
まるで、
それに、あの真っ黒なポリゴンだ。あいつは確実に、シズナを敵視している。自分の計画を邪魔したから。
確かに、シズナと行動を共にしていると、それらの厄介事に巻き込まれ続けるだろうな。
「――――――なら、お断りだね。悪い大人には付いて行くなって、母ちゃんに言われてるんだよ」
あいつを置き去りにするくらいなら、一緒に死んだ方がマシだ。
『なるほど、愛を取るか。実に純粋で純真な発想だ。子供らしくて大変よろしい。まぁ、子供の心が純真だと思うのは人間だけだがね……』
悪いスターミーは特に驚く事も無く、嬉々としてオレの返答を受け入れた。若干見下された気もするが、気にしても仕方ないだろう。
『だが、我々にも矜持はある。誰が何と言うと、すべき事をするまでさ。“希望を繋げる”為にね』
しかし、退くつもりは毛頭ないようで、急激に殺気を迸らせて、宙に浮いた。このまま、この部屋ごと念力で圧し潰す気だろうか。もしくは、気絶させてお持ち帰りするか。
何れにしろ、オレたちは今、完全な敵対関係になった訳だ。
『さぁ、命を捨てて掛かって来るがいい。どの道、我々を退けられないようなら、アザストに滅ぼされるだけさ』
《滅ぶのはあなた方だけです。マスターは関係ありません》「掴まって!」
と、天上を突き破って、カリンを乗せたスピーダーが乱入。奴を空の彼方まで撥ね飛ばしつつオレを回収し、外へ脱出した。
「これは……」
外の世界は、想像を絶する物だった。
「星が多い」
夜空に瞬く、異様な数の星々。もしかしなくても、アレが全部――――――、
《スピーダー、バトルモードに移行します。装着!》「……って、おい!?」
だが、悪夢から覚める間もなく、スピーダーがオレに憑依装着。どうやら、迎撃する気満々のようである。おい馬鹿ヤメロ。
「シンくん!」『ヘァッ!』「颯爽登場、ですかね?」『コォォラヌゥ!』
「アオイ!? ……と、スターミー? あと、誰?」
さらに、オーレンのスターミーに乗ったシズナが登場。お前、その状態でバンジ島から飛んで来たのかよ。何で!?
あと、どう見てもガラル出身のフリーザーに跨った、そのスカした野郎について詳しくお願いします。
「よばれてとびでてダダダダーン」『バリバラヌゥ!』
ついでに、ガラルの姿と思われるサンダーに乗ったマツリカまで馳せ参じる。飛べないからって海上を走って来るな。
「役者は揃ったってワケ? なら、遠慮も容赦も無しで行くわよ!」『ギェヴァアアアッ!』
そして、駆逐してやると言わんばかりに、カリンもそのまま戦闘に参加。
「間に合った!」「ギリギリセーフ、かしらね?」「こいつはホットだぜ!」「じっちゃんの名に懸けて!」
次いで現れた、本物の三鳥に乗った持ち主たちも駆け付け、いよいよ連合軍染みて来た。
敵は無数。瞬く星々、その全て。暗黒のスターフィッシュたちが、洪水のように押し寄せて来る。
『キャハハハハハハハハッ!』
さらに、その先頭に立つ一体が、更なる進化を遂げた。スターミーを頭に、ドレスを着こんだ女性のような結晶の身体を形成した、美しくも禍々しい悪の華。自らを偉大なる種族だと勘違いしている、ただの悪魔たち。
「どりゃぁああああっ!」『ピジョォヴァアアヴヴッ!』
サイケでサイコな空中戦が始まる。白星と黒星が舞い踊り、真偽を問わぬ火と氷と雷が轟き、眩い光と激しい爆発が夜の闇を彩る。良いも悪いも何もない、空虚で無意味な戦いは続く。
――――――そして!
◆◆◆◆◆◆
「疲れた……」
オレたちは朝を迎えた。
夜通し戦った末に、闇のスターミーたちは残念そうに何処かへと去って行き、後には疲れ切ったオレたちだけが取り残されたのだ。
結局、あいつらの真意も真偽も分からない。少なくとも、一方的にキャトルミューティレーションされなかっただけマシだった、という感じか。出来れば二度と関わりたくないね。
「昨夜はお楽しみでしたね?」
「アー、聞こえない、聞こえなーい」
と言うか、オレとしては宇宙に連れ去るくらいなら、この修羅場をどうにかして欲しかった。
皆が皆、虫の知らせがあって駆け付けたとの事だが、だからってカリンと二人でホテルから出て来る瞬間まで目撃しなくても良かろうに。
「初めまして、アオイ・シズナさん♪ アタシ、シンくんの
「そうですか。そしてサヨウナラ、カリンさん」
――――――嗚呼、誰か助けて。
◆スターミー(ティアーザのすがた)
・分類:べつのポケモン
・タイプ:ほのお/あく
・性別:ふめい
・特性:??????→発動中
・種族値
HP:97
こうげき:47
ぼうぎょ:73
とくこう:127
とくぼう:73
すばやさ:103
・図鑑説明
オオキナ ホシ オチテ チイサナ ホシ タクサン ウマレタ