ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ 作:ディヴァ子
マツリカ:「きんだいちはじ――――――」
ジュン:「違ーう! マンジョウメ・サンダーだぁ!」
『バリバラヌッ!』
『バリバリルァ!』
ガラルサンダーが上昇し、サンダーが後を追う。単純な直進速度はガラルサンダーの方が上のようで、少しずつ距離を取っていく。そうはさせまいとサンダーが10万ボルトを放った。
「バリバリ!」『バッバァン!』
だが、マツリカの繰り出したバリヤードの光の壁で防がれ、大したダメージにはならった。とは言え効果抜群の技なのでガラルサンダーも一時失速、地表スレスレの低空飛行となる。
『ゴァッ! ガォッ! ゴヴァッ!』
さらに、サンダーが電磁砲を三連打して来た。どうにか左旋回して躱したものの、直撃すれば一撃で瀕死となるだろう。ガラルサンダーは冷や汗を掻きつつ、しかし、このまま埒が明かないと、コブラ機動で転身。サンダーと真正面から向き合った。
「キュウちゃん、「れいとうビーム」!」『コォオオオン!』
『ギャヴォォオオッ!?』
反撃はマツリカが担当した。近接戦特化のガラルサンダーには飛び道具が一切なく、サンダーに対する有効打を全く持ち合わせていないので、攻撃はマツリカのポケモンに任せる事にしたのである。他力本願とか言わない。
『ギョァアアアアアッ!』
まさかの不意打ちにサンダーはバレルロールでどうにか対処したが、さすがに全弾回避は無理だったらしく、三連打の最後を食らってしまい、墜落した。輝く結晶塔を粉砕し、キラキラした煙を上げる。
『バリバルヴァアアアアッ!』
それでも撃破には至らなかったようで、自らダイマックス化して奮起した。
「「ダイマックス」!」『バリバラヌゥッ!』
だが、これはチャンスでもある。空中戦では勝ち目がなくとも、地上での接近戦ならこちらが有利だ。当たり前のようにマツリカがミサワから貰ったダイマックスバンドを起動させ、ガラルサンダーもダイマックスする。
『ガギヴィァアアッ!』
『ギゴァアヴヴヴッ!』
サンダーがダイジェットを纏ったドリル嘴で、ガラルサンダーがダイナックルの力を宿した雷鳴蹴りで応戦する。
しかし、やはり地上戦ではガラルサンダーの方が強く、サンダーのドリル嘴はダイマックス化した見切りで悉く避けられ、雷鳴蹴りで加速度的にダメージが蓄積していく。マツリカが的確に壁を張ったのも結構痛い。
『バリバラヌァッ!』『ゴギャアアッ!』
最後はガラルサンダーがドリル嘴をやり返し、サンダーを吹き飛ばした。もはや瀕死も同然だろう。
しかも、激突した衝撃で一際大きな結晶塔が倒壊。サンダーに圧し掛かって来た。潰される直前に10万ボルトを放ったものの、避ける事は叶わず、そのまま生き埋めになってしまうのだった。
◆◆◆◆◆◆
「行け、エビワラー!」『パンチィッ!』
「迎え撃て、ドードリオ!」『ドリドリオォッ!』
そして、
(対面ではこちらが有利だが……)
オーレンエビワラーはかくとう/でんきの複合タイプ。じめん/ひこうタイプであるオーレンドードリオの方が有利ではある。
だが、オーレンエビワラーは原種よりも脆い代わりに素早さが高く、冷凍パンチもしっかりと覚えるので、技の面ではオーレンドードリオの方が不利である。勝ち筋としては、いかに接近を許さず遠距離から仕留めるかに掛かっているだろう。
「ドードリオ、距離を取りながら「だいちのちから」!」『ドリォオオッ!』
「エビワラー、「みきり」で躱して接近しろ!」『ビワラァアッ!』
お互いにそれを理解し合っているのか、オーレンドードリオは逃げながら大地の力を放ち、オーレンエビワラーは攻撃を見切りながら距離を詰めていく。
ちなみに、大地の力はミサワが開発した技マシンで、見切りはオーレン諸島に住むかくとうタイプが自然習得する守り系の技である。
「ドードリオ、「だいちのちから」!」『ドリドリドリィッ!』
『グググッ!』「エビワラー!」
と、オーレンドードリオの大地の力が遂にオーレンエビワラーを捉えた。見切りにしろ守るにしろ、連続で出すと失敗し易いのが難点だ。
「よし、「エアスラッシュ」で仕留めろ!」『ギャォオオッ!』
「……掛ったな、アホが! エビワラー、「コークスクリュー」!」『ビワララァッ!』
『ドリャッ!?』「しまった……!」
しかし、チャンスと見てオーレンドードリオが放ったエアスラッシュを、オーレンエビワラーはギリギリで回避してそのまま接近。準専用技の「コークスクリュー(威力80、命中率95)」を食らわせた。
コークスクリューは回転技の一種で、拳を捻り込んで敵を怯ませるかくとう技である。エアスラッシュは羽ばたきを利用する関係上、どうしても一瞬だが動きが止まってしまう為、そこを突かれた形になる。欲張って怯みゲーを狙ったのが仇となった。
「今だ、「れいとうパンチ」!」『ドラァッ!』
『ギャオオオッ!』「くっ、戻れドードリオ!」
さらに、怯んで動けなくなった所にオーレンエビワラーの冷凍パンチが直撃。これには堪らずオーレンドードリオは倒れた。
「行け、ダグトリオ! 「ふいうち」!」「くっ……!」
だが、やられっ放しのミサワではない。アローラダグトリオ(Lv86)が早々に不意打ちを決めて、オーレンエビワラーを仕留めた。やられたら倍返しにするのが、ミサワの信条だ。
「やれ、ウツボット!」『カァアアアッ!』
「戻れ、ダグトリオ! 行け、ガルーラ!」『ガルァアアッ!』
「戻れ、ウツボット! 勝て、レアコイル!」『スチルルッ!』
続いての対面はアローラダグトリオとオーレンウツボット(くさ/でんき:Lv86)……の筈が、互いにポケモンを入れ換え合って、最終的にオーレンガルーラ(じめん/ドラゴン:Lv84)とオーレンレアコイル(はがね/でんき:Lv85)の対決となった。相性的に仕方ないね。
余談として、オーレンガルーラはサイドンのような角が生えた以外はあまり変化がないのだが、オーレンレアコイルは元の姿とは天と地程の差がある。三つのコイルが連結しているのは同じだけど、繋がり方が違う。お団子状態のコイルをそれぞれの磁石が数珠の如くくっ付けているという――――――どこぞのスグキエルとそっくりである。その見た目通り(?)、かなり素早い。
「……行くぞ、ガルーラ! 「じしん」!」『ガルォオオオッ!』
「させるか! レアコイル、「まもる」で防いでから距離を取れ! 狙いを付けさせるな!」『ジィジィイン!』
そして、ようやく交戦。いきなり地震をかまそうとしたオーレンガルーラだったが、高速特殊アタッカーであるオーレンレアコイルにはすぐに逃げられてしまった。
「「ラスタービーム」!」『キィイイン!』
『ガルゥッ!』「ぬぅ……!」
さらに、空を泳ぐように逃げながら、準専用技の「ラスタービーム(威力110、命中率85)」を放って来る。ラスターブレードと同じく、一定確率で火傷を負わせる追加効果があり、それが見事的中した。これでオーレンガルーラは機能不全に陥ったと言っていい。物理アタッカーにとって、火傷は致命傷なのだ。
「――――――「からげんき」!」『ガルァアアアアアッ!』
『ギィィッ!?』「くっ……!」
しかし、それすら見越していたのか、オーレンガルーラは空元気を発揮。火傷の攻撃力半減というデバフを無視して大暴れした。不一致かつ抵抗力の壁はあるが、素早い分原種よりも耐久力が低いオーレンレアコイルは大ダメージを受け、再び天を舞う事無く地に落ちた。
「おのれ! ギャラドス、「ハイドロポンプ」で仕留めろ!」『ゴギャアアアォス!』
『ガルォ……!』「チッ……戻れ、ガルーラ!」
だが、さすがに火傷の蓄積ダメージは如何ともし難く、次に繰り出されたオーレンギャラドス(でんき/ドラゴン:Lv87)のハイドロポンプでオーレンガルーラも倒れた。
「頼むぞ、ニョロボン!」『ボキュォン!』
次なるミサワのポケモンはオーレンニョロボン(みず/じめん:Lv87)。若干ピパピパに似た、沼蛙風の姿をしている。金ぴかの鯱染みた鯉のぼりと妙にやる気のあるピパピパが対峙する光景は、若干シュールである。
「ニョロボン、「だいちのちから」!」『ボンボォーン!』
「ギャラドス、「りゅうのはどう」!」『ギャォオオオ!』
どちらも攻撃的な性格であり、お互いに真っ向勝負だ。災害級の大怪獣バトルが繰り広げられる。
「――――――「れいとうパンチ」!」「ぬぅっ……!」
そして、一瞬の隙を突き、オーレンニョロボンがオーレンギャラドスを沈めた。
「名誉挽回だ、ウツボット! 「パワーウィップ」!」『カァアアアヴッ!』
『ボンバァ……!』「……お疲れ様、ニョロボン」
しかし、ノーガード戦法をし過ぎたので、再び召喚されたオーレンウツボットのパワーウィップでオーレンニョロボンも退場する。
ここまでは、まさに一進一退の攻防。
だが、これからは違う。押され気味のミサワだが、彼にはまだ切り札が残っている。
「……勝つぞ、グラードン!」『ガヴォォオオン!』
そう、デカいサンド……ではなく、グラードン(Lv93)の登場である。
「ウツボット、「パワーウィップ」!」『カァクァアアアッ!』
「グラードン、「ほのおのパンチ」!」『グラァアアドォン!』
さらに、オーレンウツボットのタイプ一致パワーウィップを物ともせず、炎のパンチ一発でKOしてしまった。
「くそっ、行け、ケンタロス! 「フレアドライブ」!」『ブモォオオオッ!』
「耐えろ! そして「だんがいのつるぎ」だ!」『グヴォオオオオオオオッ!』
そして、ジュンの最後の手持ち、オーレンケンタロス(でんき/ほのお:Lv88)の放った渾身のフレアドライブで大ダメージを受けたものの、倒れる事無く反撃。断崖の剣で串刺しにして倒した。
傍から見た者の一部は、「これだから伝説厨は」などと揶揄する事だろう。
しかし、これはルールに則った勝負。別に伝説が禁止という訳ではないし、そもそもお互いに一体ずつ持っている。自ら手放したのはジュンの方だ。自分からケンカを売っておいて卑怯もクソもあるまい。
「……クソッタレ! オレが負けるだなんて、あり得るかぁあああああっ!」
ただし、理解と納得は別物。元より捩じくれ捻くれているジュンは、己が挑んだ勝負に敗けた事が認められず、あろう事かミサワにリアルファイトを仕掛けた。もはやジムリーダーの矜持など頭にない。単なる悔し紛れの腹いせである。
「ウーハーッ!」「ぐへぁっ!?」
だが、ポケモンバトルにラフファイトは許されない物。ジュンの悪足掻きは、今頃になって目を覚ましたシバに阻止され、勝負も決した。
「――――――向こうはどうなった!?」
ようやく終わったバトルの余韻に浸る事無く、ミサワはマツリカたちの姿を探した。
その視線の先では――――――、
◆◆◆◆◆◆
『………………』「………………」
瓦礫と一定の距離を保ちつつ、様子を窺うガラルサンダー(とマツリカ)。
『……ギャオォオオオオッ!』
すると、突然瓦礫の山が閃光を放ちながら爆裂四散、目を覚ましたサンダーが10万ボルトをビーム状にして発射した。
『………………!』「バリバリ……!」『バリヤーッ!』
『バリバラルァッ!』
ギリギリで避けたガラルサンダーはそのまま空へ逃げ(マツリカはバリヤードに壁を貼って貰い必死にしがみ付いている)、サンダーも後を追って上昇する。
雲を突き抜け、成層圏すら飛び越えて、大気圏へ。澄んだ青が遠ざかり、暗黒の海が見え始めようと、二羽は尚も上へ上へと昇り続ける。
『ゴギャォッ!』
と、怒りでブーストの掛かったサンダーがガラルサンダーを僅かに追い越し、翼を広げて襲い掛かった。
『バリバラヌッ!』
しかし、ガラルサンダーはこのまま逃げて落とされるならばと、自爆覚悟で突撃。両脚で組み付き、自ら飛行を止めて自由落下状態となる。
『ギャォオオオオオオオオオッ、ゴギャァアアアアアア!』
『バリバリダーッ!』「………………!」『バリバリィ!』
空気摩擦により、燃え上がりながら墜ちていく二羽の鳥(と背中のオマケ)。サンダーが下で盾代わりになっているので、ガラルサンダーやマツリカたちは少しだけマシなものの、膨大な熱に晒されている事に変わりはない。それぞれの肌をこんがりと焼き上げ、重度の火傷を負わせていく。
『ギャォアアアアッ!』
もちろん、黙ってフライドチキンにされるサンダーではない。落ちている間も10万ボルトを直接流し込み、ドリル嘴で少しでも体力を奪おうと必死に足掻く。
だが、常時炎に晒されながらでは集中出来ないし、何より逃げに徹していたガラルサンダーと違って、余計な体力を使い過ぎている。空振りが続くというのは、肉体だけでなく精神にも多大な負担を強いるのだ。それが“苛立ち”から来るものであれば、尚更。
『……ギィッ!』
だので、サンダーは遂にガラルサンダーを振り解く事が出来ないまま、地面に叩き付けられた。火傷を負った状態でそれは、とてもキツい。
『バリバリルァッ!』
それでも、伝説のポケモンとしての矜持なのか、覚束ないながらも、サンダーは立ち上がった。
さらに、電磁砲を撃つ為にエネルギーを溜め始める。体力的も、これが正真正銘、最後の一発だろう。全身全霊を掛けたであろうその威力は、ウルトラ級に違いない。
『………………』「………………」
対するガラルサンダーは、黙って睨み付けるだけだった。背中のマツリカも無言でバリヤードを引っ込め、別のボールを構える。敵が撃つと同時に動く腹積もりだろう。
『『………………』』
睨み合う両雄。張り詰める空気。刹那の静寂。決着の時は、近い。
「「はかいこうせん」!」『トリャーッ!』
『ギャォオオオオオオオオオオオオオオ!』
サンダーの電磁砲が火を吹き、マツリカのプクリンが破壊光線を見舞った。ガラルサンダーは見切りで回避に全力を注ぐ。
『……ガッ!?』
そして、破壊光線がサンダーの頭部に見事命中。大爆発を起こした。
消耗した体力では見切れなかったのか、ガラルサンダーも少し掠ってしまい、麻痺を食らった物の、先に盗み食いをしていたいかり饅頭のおかげで自然に回復出来た。
『………………!』
ゆっくりと、仰向けに倒れていくサンダー。断末魔のように10万ボルトが放たれたが、誰にも当たる事なく虚空へ消えた。
「かったー♪」『バリバラヌッ!』『ハッピ~♪』
こうして、ガラルサンダーとマツリカたちは、空と地上を舞台とした激しい死闘の末に、レベル的にも努力値的にも格上で相性も最悪な怪物を打倒したのだった。
◆マンジョウメ・サンダー・ジューンブライド
常に台風に見舞われる過酷なマゴ島でジムリーダーを務める若き天才。ファンからも自らも「マンジョウメ・サンダー」と呼ばれ呼ばせている(親しい者には「ジュン」と呼ばせている)。
しかし、実際は複雑な家庭事情とジムリーダーというお勤めによる多大なストレスを抱えた、かなり可哀想な人。そのせいか非常にストイックで、攻撃的かつ過激な性格となっている。
ただし、妙な所で詰めが甘く、たまにポカをやらかす可愛い一面もあり、そこが良いと人気がある模様。
先祖は海外出身のとある貴族であり、数世代前にカントー地方へ亡命して来た。彼はその末裔で末弟、しかも優秀過ぎる兄が二人もいて、親も明らかに兄たちばかりを贔屓していたりと、家庭環境にかなりの問題と爆弾を抱えている。