ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ 作:ディヴァ子
ミサワ「勘のいいガキは嫌いだよ」
ガラルサンダーとシバさんの喧嘩に出くわし、島を締めに来たジュンを何とか倒した俺たちは、傷を癒す為にポケモンセンターを目指して下山していた。
「………………」
「おい、貴様。心の中で負け犬とか言って嗤ってるだろう!」
「エスパータイプかお前は」
「本当に考えていやがったのか!」
「鎌を掛けられただと!?」
「意外と表情に出るんだよ、貴様は!」
「そうなの!?」
それは知らなかった。
ちなみに、シバさんとはニュートン山で別れている。何でもこのまま修行に励むのだとか。
もう一つちなみに、ガラルサンダーはどうなったのかと言うと、
「ドードー、ごーごー!」『バリバラヌ!』
無事にマツリカの乗り物になりましたとさ。ニックネームが「ドードー」なのは、俺がついつい呟いた「ドードー(ガラルのすがた)みたいだ……」という台詞のせいかもしれない。正直、スマンと思ってる。お前は誰が何と言っても、サンダーだよ。図鑑によると、でんきタイプの技を全く覚え無いみたいだけど……。
ともかく、お互いに和解(物理)した事だし、今までの事は水に流して、まったりしようじゃないか。
「だが、バッチは寄こせ。マツリカちゃんへの慰謝料にする」
「カツアゲだろう、それは!」
「知らん、そんな事は俺の専門外だ」
「コイツ……!」
さらに、俺はジュンからマゴジムのアームドバッチを回収し、マツリカにプレゼントした。不思議そうな顔で「ロリコン?」と聞かれたが、断じて俺はその手の変態ではないとだけ言っておこう。純粋な善意と、ちょっとした嫌がらせだ。他意はない。
「お待たせした。ポケモンたちは皆元気になりましたよ!」『ソーナンス!』
「いつも済まないね」「どーもねー」「………………」
そんなこんなで俺たちはポケモンを回復させ、
「さて、ポケモンたちも回復し終えた事だし、一先ず腹ごしらえでもしようか」
「さんせー」「フン……好きにしろ……」
そういう事になった。
フーム、何処に行こうか。甘味はもう味わったし、何だかんだで日も暮れてしまったから、ここはしっかりとした物が食べたい。ならば、“あそこ”しかないな。
「よし、ここにしよう!」
「なにここー?」
「俺の行きつけの店さ」
そして、俺たちはお洒落な食事処の前に立った。ここはオボン島の名物料理が食べられる店。ガッツリ食べたいなら、ここしかない。
「おい、貴様……ここは居酒屋だろうが!」
「酒は控えるから問題ない」
「子供を連れ込む事自体が問題だと言っている!」
「君も大概子供だと思うがね」
癇癪起こして人に八つ当たりする程度にはガキだろう。
それに居酒屋と言っても、どちらかと言うと小料理屋に近く、身内同士で輪が出来ているような店なので、親戚の子だと言えばいい。女将さんも子供好きだしね。
「ここのウミガメスープが美味いんだよ」
「……それはちゃんとウミガメを使ってるんだろうな?」
「それはそうだろう?」
意味☆不明★である。
まぁ、どの亀を材料にしているのかは、俺も知らんがね。美味い物は美味い、それで良い。
ともかく、さっきから腹の虫が煩いし、さっさとお邪魔するとしよう。なぁに、突き出しで何か作ってくれるだろうし、その間に注文を決めてしまえばいい。後は野となれ山となれだ。
「さて、店に入ろうか、マツリカちゃん……あれ?」
「おい、アイツが居ないぞ!?」
しかし、俺がマツリカの方に振り向くと、そこに彼女の姿は無かった。ガラルサンダーも。子供の自由奔放さも善し悪しだな。こうして少し目を離しただけで迷子になる。特に今は逢魔ヶ時だしね。
「フーム、仕方ない。ポケモンの手も借りて、探すとしよう」「全く……」
そう言いつつ、ちゃんと探すつもりじゃあないか。
という事で、俺たちはポケモンを繰り出し、周囲に探りを入れた。流石にさっきの今で遠くには行っていないだろう。ガラルサンダーを出しっぱなしなのだとしたら、案外すぐ見つかるかも。
『ドリドリドリォ!』
と、俺のオーレンドードリオが見付けたようだ。
だが、近くには居ないらしい。付いて来い、という事だろう。
「おい、ここは……」
「「あやかしの森」じゃないか!」
……で、オーレンドードリオに案内されて辿り着いたのが、悪戯好きなフェアリータイプが群生している「あやかしの森」。一度迷い込んだら二度と戻って来れない危険地帯として有名である。
しかし、それは一人で入った場合の話。複数人のトレーナーで、きちんと準備をしてから挑めば無事に帰って来れる。
つまり、一人迷子になっているマツリカは、しっかりバッチリ惑わされているのだが。フェアリータイプに好かれ易い体質ならもしかしたらワンチャンあるかもしれないが、逆に付け込まれてしまっている可能性もある。何れにしても、このまま見過ごす訳にはいかない。
幸い、今ここには二人のジムリーダーがいる。充分に踏破し、マツリカも探し出せるだろう。そうと決まれば、
「行くぞ、マンジョウメ!」「マンジョウメ・サンダーだ!」
俺たちはあやかしの森へ踏み入った。各々のポケモン(俺=オーレンドードリオ、ジュン=オーレンケンタロス)に乗って。
「レアコイル、索敵しろ」『レァァアル!』
「ダグトリオ、臭いを探れ」『ダグダグダグ!』
まずは周囲の様子を探りつつ、マツリカの痕跡を追う。周りはフェアリータイプのポケモンだらけ。特に危険なのは、花粉や鱗粉で幻覚を見せるオーレンラフレシアとオーレンバタフリー、何でも丸呑みにするオーレンベロリンガ辺りか。
だが、一番危ないのは彼らではない。
『ロリコロリコ、ンフフフッ!』
「「うわ出た」」
そう、あやかしの森で最も危険なフェアリータイプのポケモン。それはオーレンのスリープとスリーパーだ。それは図鑑を見てもらえれば分かる。
◆スリープ(オーレンのすがた)
・分類:ゆうかいポケモン
・タイプ:エスパー/フェアリー
・種族値: HP:90 A:48 B:55 C:43 D:60 S:32 合計:328
・図鑑説明
子供の夢が大好物。気に入った子を見付けると催眠術で操り、棲み処に連れ去ってしまう。象のように長い鼻から陽気な笛の音を奏でる。
◆スリープ(オーレンのすがた)
・分類:ゆうかいポケモン
・タイプ:エスパー/フェアリー
・種族値: HP:115 A:73 B:80 C:73 D:85 S:67 合計:483
・図鑑説明
小さな子供が大好き。特に幼い女の子が大好物で、出合頭に掻っ攫う。スリーパーが笛を吹けば、子供たちは眠ったまま踊り出し、そのまま行方不明になる。
……良い所が何一つ書かれていない上に、完全に犯罪者である。ころロリコン共め!
ちなみに、オーレンのスリープとスリーパーは体色がピンクで、頭にベレー帽のような毛があり、音を媒介にした催眠術を得意としている。その為、スリープの鼻はリコーダーのように穴が開き、スリーパーは振り子ではなく自作の笛を吹く。
さらに、こいつフェアリータイプの癖に、レベル技で毒々を覚えたりする。図鑑の別バージョンに「身体から未知のウィルスが見付かった」と書かれているので、こいつの場合は化学反応による毒素ではなく、潜伏している病原体をばら撒いているのだろう。
ロリコンであり、ベクターでもある。それがオーレンスリーパー。マジで自重しろ。
『ドリドリォ!』『ダグダグトーリォ!』
「匂いは……やはりこいつらから出ているようだな」
オーレンドードリオやアローラダグトリオの反応を見るに、やはりオーレンスリープたちがマツリカを攫ったのだろう。スリープばかりでスリーパーが見当たらない事を鑑みると、実行犯かつリーダー格もそいつか。
「……押し通るぞ!」「言われるまでもない!」
『ノースリープ!』
俺たちはポケモンを繰り出し、オーレンスリープたちを突破した。笛吹きをするだけあって体力が高いのは厄介だが、決定力不足かつ速度が足りない連中を相手に負ける程、鈍間な奴は出していない。しっかり弱点も突けるしね。
そして、周囲からの干渉をポケモンたちの力で跳ね除け、森の奥へ奥へと進んで行くと……いた。マツリカだ。
『ロリダロリダヒャヒョォヴ!』「………………」
しかし、どう見てもオーレンスリーパーに操られている。
さらに、ボールを構えて臨戦態勢だ。どうやらポケモンバトルをご所望らしい。うーん、ちょっとやり辛いなぁ……。
「オレが行く」
すると、ジュンが一歩前に出た。どういう風の吹き回しだ?
「……大丈夫か?」
「何を心配しているのかは知らんが、問題ない。それに、ジム戦もしてないのにバッチを渡すのは癪だしな」
なるほど、分かり易い。
「ツンデレだな」
「馬鹿な事を言ってないで、周囲を警戒していろ。……行くぞ、マツリカ!」
「………………!」
――――――ポケモントレーナーのマツリカが勝負を仕掛けて来たッ!
「………………」『バリバリィッ!』
「行けっ、ギャラドス!」『ガヴォオオオオオッ!』
初手はバリヤードとオーレンギャラドス。対面としてはジュンの方が有利と言える。バリヤードは体力が無いからな。
『バッバァーン!』
「無駄だ! ギャラドス、「ハイドロポンプ」!」『ギャルォオオッ!』
『バリリ……バリアーッ!』
「む、小癪な! ギャラドス「10まんボルト」!」『ギャラァアアッ!』
サラッとリフレクター&光の壁を張られたが、危なげなく突破。
まぁ、向こうとしても壁張り要員として先発に出したのだろうから、仕事はされてしまったとも言えるが。
『コォオオン!』
次のポケモンはアローラキュウコン。特攻はそこそこだが、高めの素早さと見た目のふつくしさで人気のポケモンである。あと、普通にこおり技が痛いし、マジカルシャインは控えめなものの範囲が辛い。全く以て嫌なポケモンだ。
「戻れ、ギャラドス! 行け、レアコイル!」『ビィービィーッ!』
むろん、みすみすオーレンギャラドスを落とす訳にはいかないので、ジュンはオーレンレアコイルと交代した。
『ホォオォォ!』
「くっ!」『コカラララッ!?』
だが、交代読みで怪しい光を入れられてしまった。ここが原種・変異種共通のキュウコンの嫌らしい所。技範囲が広い上に補助技まで豊富なのである。
だからこそ、火力は控えめなのだが、
『コォォン、クォンクォン!』
そんな問題を解決するのが、この悪巧みだ。一度でも詰まれてしまうと、キュウコンの特攻でも致命的になる。冷凍ビームが吹雪になるくらいの変わり様と言えば、そのインフレ具合が分かるだろう。吹雪に至っては、体感的に自爆を喰らったぐらいの勢いはある。
怪しい光で時間を稼ぎ、積み技でパワーを上げる。実に利用的な戦い方である。力押し気味のジュンにも見習って貰いたい……って、そんな事を言ってる場合じゃない。
『コァアアアアッ!』
『ビィー……!』「クソッ、戻れレアコイル!」
自傷でダメージを受けている所に悪巧み済みの吹雪を叩き込まれ、一撃で叩き落されるオーレンレアコイル。オーレン種は素早い分だけ耐久力が低いので、これは仕方ないだろう。
問題は、特攻が二段階も上がってしまったアローラキュウコンをどうやって突破するか、である。こおりタイプは半減し辛いし、威力も高い。生半な特防では耐えられないだろう。
ここはオーレンケンタロスを出して、早々に処理したい所だが……そうすると、控えのオーレンサイホーンが辛くなる。あの要塞っぷりは、それこそ弱点を突かないと厳しいだろう。ただでさえオーレンレアコイルを失っているからな。
「行けっ、エビワラー!」『ビワァラッ!』
そして、ジュンが選んだのはオーレンエビワラー。原種よりも素早く、やはり耐久力は低いが、“躱して殴る”事に特化しているので、一先ず速さは足りている(アローラキュウコン:109<オーレンエビワラー:110)。割とギリギリとか言ってはいけない。
『クァォオオオオッ!』
「エビワラー、「みきり」!」『エビッ!』
まずは見切りで躱して立ち位置を変え、
「今だ! 「コークスクリュー」!」『ビワーラッ!』
コークスクリューで怯みを入れて、
「トドメだ、「かみなりパンチ」!」『ビギュラァッ!』
『コォオオオン……!』
必殺の雷パンチで止めを刺した。まさにオーレンエビワラーの必勝パターンだ。こおりタイプのおかげでかくとう技が等倍ダメージを与えられるのが幸いしたな。相手はマジカルシャインをぶっ放そうとしていたので、結構危なかったのだが。
「………………!」『タァーッ! トモダチィーッ!』
「危なっ!?」『ドワォッ!?』
次なるマツリカのポケモンはプクリン――――――なのだが、開幕から破壊光線を発射して来た。何でマジカルシャインじゃないんだ……。
「エビワラー、「コークスクリュー」からの「かみなりパンチ」!」『ビワーラッシュ!』
『プクゥゥ……トリャーッ!』
「何ィ!? 馬鹿な……!」
むろん、何時もの必勝パターンをぶち込んだのだが、それでもプクリンは倒れない。HPが高過ぎる。
『トモダチハゴチソウ!』
「怖っ!?」『ビワーッ!』
さらに、マジカルシャインで目晦ましを食らわせてからトライアタックで逆襲して来た。流石にこれには耐え切れず、オーレンエビワラーは倒れた。
だが、ここまで来れば後は楽勝である。
「行け、ギャラドス! 「10まんボルト」!」『ギャォオオオッ!』
『トモダチ……ガクッ!』
オーレンギャラドスの10万ボルトが炸裂し、トモダチは倒れた。21世紀に帰れ。
さて、次に出て来るのは……、
『バヴワアアアヴッ!』
「なっ、オーレン化しているだと!?」
何とオーレンの姿となったウインディ。この短期間でオーレン化するとは、余程素養があったのだろう。
と言うか、これはマズい。オーレンウインディはステータスはほぼ同じだが、タイプにフェアリーが加わる。でんき/ドラゴンの複合であるオーレンギャラドスには厳しい相手だ。
しかし、残りの手持ちでは有効打が無いのも事実。ここはギャラドスのみず技で無理矢理突破するしかない。
『バヴヴァアアアッ!』
『ギャヴォッ!?』「ぐぉおおおっ!?」
だが、予想外の大ダメージ。何の強化も無しに一撃でHPがタスキラインまで持って行かれてしまった。そう言えばこの個体、他の面子より二回りくらいレベルが違うんだったな。そりゃ勝てんわ。
「ギャラドス、「ハイドロポンプ」!」『ギャヴォオオッ!』
『バヴゥゥン!』
そして、起死回生のハイドロポンプも、とんでもなく素早い動きで躱され、じゃれつくで止めを刺された。
ヤバい、予想以上に強過ぎる。流石にLv98は高いよ……。
マズいな、このままだとマジで3タテされる可能性もある。ジムリーダーとしてそれはどうかと思うが、ここは番外戦術でマツリカを正気に戻すしかないだろう。
それはつまり、
「おねんねだよ~♪」『ダグダグダグッ!』
『ロィイイイイイイイッ!?』「……はっ!?」
不意打ちでオーレンスリーパーを倒す事である。ジュンが勝てそうなら見守ってやる所だったが、オーレンウインディは無理だわ。下手すると、俺の手持ちでも押し負けるもん。
「………………」
それは本人が一番分かっているのか、ジュンは悔しそうな顔をするだけで、何も言う事は無かった。今何を喚いても、負け犬の遠吠えにしかならないからま。それが分からぬ程、ジュンは弱くない。
「……負けたよ。オマエの勝ちだ!」
「う、うん? どうもありがとう?」
さらに、正気に戻ったマツリカに、電磁砲の技マシンを自ら渡すという、ある種賞賛とも言うべき行為をした。舌打ちして、頑なに目を逸らしながら。やっぱりツンデレじゃん。需要はあるのだろうか。マツリカもチンプンカンプンだし。
「大人しくしろ!」『ロリガロリガァ、チクショォオオオオッ!』
余談だが、オーレンスリーパーは俺が捕まえておいた。生態的に仕方ないとは言え、町まで繰り出して誘拐するような輩を見過ごす訳にはいけない。これでもジムリーダーなんでね。つーか、それ以上喋るなロリコン。
ともかく、これで一先ず一件落着……と言いたい所だったが、
「……ハッ! シンおにいちゃんがわるいひとにゆうわくされて、なんかおそわれてる!」
「「まるで意味が分からんぞ!?」」
突如としてマツリカに天啓が齎され、
「……いや、これは冗談ではないかもしれないぞ!?」「何ッ!?」
そして、俺のポケギアにも凶報が。流れ星が異常に多く見られ、どうもそれがポケモンらしいと、カツラさんから連絡があったのだ。
こうして、俺たちは休む間も無く、発信源であるウイ島へ向かうのだった……。
◆あやかしの森
ニュートン山近くにある、フェアリータイプの群生地。悪戯好きなポケモンが多く、中にはオーレンスリープ&スリーパーなどの悪質な者もおり、一人で入ると二度と帰って来れない危険地帯として有名。地面や木の根元を掘り返すと無数の人骨が見つかるという。