ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ   作:ディヴァ子

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アオイ:「そう言えば、カクタス号って何の為に造られたんだろうね?」


リベンジマッチとサント・アンヌ号

「チックショーッ!」

 

 目の前が真っ暗になった私は、所持金の半分を渡しつつポケセンへ向かい、アカネちゃんたちを復活させた。

 ――――――嗚呼っ、クソッ、マジで悔しい!

 確かに気の緩みはあった。道中のトレーナーが雑魚過ぎて、何とかなるだろうと慢心していた。だからってアズマオウでドリルゲーはないだろう。

 ……いや、やっぱり油断した私が悪いな。アニポケ要素がより濃くなったって事は、LPLE独自の縛りを加味しても、トサキント系を使って来ない保証などない。本来ならない早覚えの概念もあったのだし、アズマオウが想定外の戦法を使う可能性を考えもしなかった、私の驕りが今回の敗北を招いたのだ。先入観って怖いね。

 

「……よっし!」

 

 だが、いつまでもウジウジ悩む程、私の精神年齢は低くない。見た目は年頃でも、心はとっくに大人のお姉さん(25)なのである。

 負けたのなら、それを糧として、次に勝てばそれでいい。ジムリーダーは逃げも隠れもしないのだから。

 そうと決まれば、ガンガンポケモンを捕まえて、どんどこレベルを上げて、技レパートリーを揃えるとしよう。ポケモン廃人の意地、舐めるなよっ!

 

「行けっ、モンスターボール!」

 

 私は売れる物を売ってお金を稼ぎ、ボールを買い貯めてからお月見山へ引き返し、ポケモンを捕まえまくった。

 

「痛っ……!」

 

 途中、右肩を痛めてしまったので、左手に持ち替えて続投。こんなもの、不出来なトレーナーのせいで全滅したアカネちゃんたちの痛みと悔しさに比べたら、屁でもない。

 結局、両腕が上がらないくらいにボールを投げ続け、手持ちの平均レベルが30程になった所で、ようやく止めた。

 

「うぐ……ぐ……!」

「馬鹿、何やってんだよアオイ!」

 

 というか、疲労困憊で倒れてしまい、更には、いつまでも追い付いて来ない私を心配したシンくんに助け起こされるという、かなり恥ずかしい醜態を晒す破目になった。廃人に運動なんて以ての外だった……ホント、何やってんだアオイ!

 

「ほれ、傷薬。人間にも結構効果があるから使えよ」

 

 ポケセンの二階に私をおんぶで運び終えたシンくんが、手持ちの良い傷薬を差し出してきた。これを持っているという事実が、彼との進捗具合の差を如実に語ってくる。バッチの個数や進行度合いでFSで買えるアイテムが変わってくるからね。

 正直、悔しい。無様な姿を晒し、ライバルの手を煩わせ、施しまで受けるなんて。どうやら私は自分が思っている以上に負けず嫌いな子供のようだ。

 

「ゴメン、脱がして塗って」

「はぁっ!?」

「肩がね、全然上がらないの……」

 

 しかし、心境云々以前に、物理的に彼のお世話になるしかなかった。悔しい……でもっ(ビクンビクン!

 

「うぅぅ……しょうがねぇなぁ!」

 

 顔を真っ赤にしながら、それでも恐る恐る上着を捲り、患部に良い傷薬を縫ってくれるシンくん。恥ずかしいのは私も一緒なんだよ。いくら仰向けとは言え、異性に素肌を晒すんだから。

 

「おおーっ、科学の力ってすげーっ!」

 

 すると、みるみる肩の痛みが引いていき、むしろ前より丈夫になっているような気さえする。

 

「ドワォッ!? 馬鹿ヤロウ、起き上がるなぁ!」

「キャーッ、エッチ!」

「オレのせいじゃなくね!? いいから服をちゃんと着ろ!」

 

 喜びのあまり、結局前も晒してしまった……もうお嫁に行けない!

 

「……ありがとね、シンくん。私、もう行くわ」

 

 まぁ、リベンジには行くんですがね。

 

「お、おい、もう少し休んだ方が……」

「無理。この鬱憤、すぐにでも晴らさないと、今夜は眠れそうもないし」

 

 ストレスは安眠の敵だからね。今夜も安心してグッスリと眠る為にも、倒させてもらうわよ、カスミ!

 

「あーもう、分かったよ! だけど、オレもついていくからな! またぶっ倒れられても敵わないし……」

「OK」

 

 ズドンと笑顔で応え、私たちはハナダジムへ向かう。気付けば外はもう朝。徹夜で投げてたのか、私。

 だが、この戦いで報われる。そう信じている。

 

「――――――また来たのね! なら、何度でも倒してあげるわ! それがジムリーダーの役割ですもの! さぁ、掛かってらっしゃい! マイ☆ステディ!」

「しゃーっ、オラーッ!」「頑張れ、アオイ!」

 

 ――――――ジムリーダーのカスミが勝負を仕掛けて来たっ!

 

「行って、コダック!」『カァモニョハシッ!』

「殺れっ、ヒナゲシちゃん!」『ニャゾ~ン!』

 

 初手はコダック(Lv18)とヒナゲシちゃん(Lv30)。レベル差が酷いが、知った事か。進化させていのも含めて、私の意地なんだよ、これはっ!

 

「ヒナゲシちゃん、「ムーンフォース」!」『ニャゾゾゾッ!』

『ダッコォッ!』「コダック!?」

 

 ステータスが同レベルでも、レベルの差が勝敗を分ける。ようやく習得したムーンフォースが、コダックを一撃で仕留めた。

 どうだ、これがお月見山で肩を壊し掛けてまで積み上げた、努力の結晶よっ!

 だが、慢心はしない。所詮、コダックは斥候。本命たるスターミーやアズマオウは、レベル差があってもステータスでは劣っているだろう。

 だから、全力で勝ちを取りに行くわっ!

 

「戻って、コダック! 行きなさい、スターミー! マイ☆ステディ!」『グギュルァアアヴン!』

 

 出たな、カスミのエース、スターミー!

 

「戻って、ヒナゲシちゃん! 雪辱を果たせ、ハヤテ!」『ホォクゥゥン!』

 

 こっちはハヤテ(Lv32)だ!

 

「スターミー、「ねっとう」!」『ヘァッ!』

 

 チッ、さすがに素早いな。11も差があって、先手を取れないとは。

 

「ハヤテ、避けて「こうそくいどう」!」『ケァーッ!』

 

 しかし、積み上げた信頼度は、以前とは段違いである。当たり前のように「かわせっ!」を実行しつつ、高速移動を積むハヤテ。

 

「なら、面攻撃で逃げ道を塞ぐまでよ! 「サイコウェーブ」!」『スタタミィイン!』

 

 すると、今度は攻撃範囲が広めのサイコウェーブで撃ち落としにきた。さすがはジムリーダー、判断力が高い。

 

「ハヤテ、「オムがえし」で相殺してから、「ネコにこばん」で目晦まし!」『ケケェン!』

 

 ならば、こっちも面攻撃だ。波紋同士が干渉し合い中和され、突破した小判の雨あられがスターミーに降り注ぐ。大したダメージではないが、目が眩んで命中率が下がったので、問題はない。やっぱり泥掛けだよな、この技……バグ?

 まぁいい。使える物は使ってやる。

 そして、この新技で勝利をもぎ取ってやる!

 

「食らわせろ、「ドリルくちばし」!」『ホォォクゥゥン!』

『ジュワァッ!』「スターミー!」

 

 ハヤテのドリル嘴が、スターミーを捉えた。赤いコアにヒビが入り、電池が切れるようにスターミーが引っくり返る。スターミー撃破、である。

 

「やるじゃない! なら、ワタシも切り札を使うわ! 行って、アズマオウ! マイ☆ステディ!」『ズマァオオヴッ!』

 

 最後はカスミのジョーカー、アズマオウ(Lv25)。前回は角ドリルとサイケ光線で四タテしてくれたが、今回はそうは行かないぞ!

 

「出番よ、アカネちゃん!」『ピッピィッ!』

 

 私はハヤテを引っ込め、アカネちゃん(Lv32)を繰り出した。今度こそケリを付けてやる!

 

「なるほど、レベルを上げて「つのドリル」を封じて来たわね! だけど、その程度で勝てると思ったら大間違いよ! アズマオウ、「どくづき」!」『ズマォヴッ!』

『ギピーッ!』「アカネちゃん……!」

 

 と、アズマオウの無慈悲な毒突きがアカネちゃんを襲う。くさタイプ対策か……!

 

『ピッ……ピィッ!』

「なっ!? 落とせないですって!?」

 

 だが、倒れない。悔しさをバネに強くなったのは、私だけじゃないのよ!

 

「食らいなさい、「ゆびをふる」!」『ピッピャーッ!』

『アズマァアアッ!』「ア、アズマオウ……!」

 

 さらに、マイフェイバリット技、指を振る攻撃。今回はまさかの地割れ。一撃必殺をやり返した形になる。物凄く地面からドローしそう。モンスターではない、神だっ!

 とにかく、これで今度こそジム戦は終了。私たちの勝ちだ。

 

「フフッ……負けたわ。アナタたちにもポリシーって物があったようね。さぁ、これがリーグ認定証のブルーバッチよ!」

 

 そして、ブルーバッチと熱湯の技マシンを手に入れて、ハナダジムクリアである。はぁ、長かった……。

 

「おめでとう、アオイ。よく頑張ったな!」

「ありがとう。正直、私もピカチュウが欲しかったわ……」

 

 シンくんの称賛に、苦笑いで応える私。うん、マジで欲しいですピカチュウ。それが駄目ならせめて相棒イーブイを下さい……。

 

「なら、オレとピカチュウの出会い、話してやろうか?」

「喜んで♪」

 

 そんな感じで、シンくんの話を聞きつつ、ポケモンセンターに戻る私たち。やり切ったせいでどっと疲れたし、今日はここまで。冒険の続きは明日にしよう。

 こうして、私たち二人の一日は長閑に過ぎていった。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 つぎのひっ!

 

 昨夜はお楽しみでしたね。

 ……いや、男女のじょうじぃ、とかではなくてですね、普通に子供らしい会話だけです、本当なんです、信じて下さい。

 まぁ、それはともかく、次の目的地はクチバシティだ。ヒジュツ・ケサギリを手に入れなきゃいけないし、クチバジムにも挑まなければならない。やる事が盛りだくさんである。

 とは言え、その前にクリアしなければ問題もあるのだが。

 

「な、何スカ、アンタら!?」「悪党がドロボーしちゃ悪いってのかよ!」

 

 それが空き巣の犯人……ロケット団の下っ端の撃破、及び技マシン10「あなをほる」の入手だ。クチバシティに行くには、ここを避けては通れない。さっさと片付けてしまおう。

 

 ――――――ロケット団の下っ端のハルとフィロが勝負を仕掛けて来たっ!

 

 あ、こいつら名前有りなのね。原典だと一人の名無しなのに。やっぱり私と言う異物がいるせいで、本来の流れからズレて来ているのかな?

 ま、いっか。シンくんもいるし、ちょうどいい。このままダブルバトルである。

 

「行けっ、ピジョン!」『ピジョリリィン!』

「殺れっ、アキトくん!」『ホォォクゥン!』

 

 こちらの面子はピジョンとアキトくんの序盤鳥組だ。

 

「ぶっ飛ばせ、コラッタ!」『ヂュウッ!』

「やっちゃえ、スリープ!」『ロリダロリダ、グフフ!』

 

 対する下っ端共のポケモンは、アローラコラッタとスリープ。おい、鳴き声……。

 とりあえず、気持ち悪いので纏めて消去。文字通りレベルの差を見せ付けてやった。それから奴らがパクっていた技マシンを持ち主である民家の家主に渡し、感謝の気持ちとして手に入れておく。よくこんな見知らぬ他人に大事なマシンを渡せるな。盗まれたままでも良かったんじゃね?

 とにかく、これで5語番道路に進める。民家を土足で上がり、デカデカと開けられた壁の穴を通って、段差を楽しく越えながら南下していく(もちろんポケモンを捕まえながら)。

 途中、ヤマブキシティへのゲートを見付けるが、お茶を手に入れないと通れないので、今は無視してクチバシティを目指す。

 長い長い地下通路で落とし物をネコババしながら突き進み、出た先の6番道路にいる六人の雑魚を各個撃破して、ついに――――――、

 

「ここがクチバシティ!」『ピピィ♪』

 

 クチバシティに到着した。まんま港町である。

 ここで有名なのは、会長の話が長いポケモン大好きクラブ、ビリビリ野郎のマチス率いるクチバジム、すぐ近くの地下洞窟ディグダの穴。町外れにばかり名所があったハナダシティと違い、こちらは街にも見所がある。

 また、港には豪華客船サント・アンヌ号が停泊していて、居合い切りの代わりであるヒジュツ・ケサギリもここで学ぶ事が出来る。船長の船酔いによる嘔吐現場(レインボーロケットだん)と引き換えに。初代から思ってたけど、選ぶ長を間違っていると思う。

 

「実は今、サント・アンヌ号って豪華客船が港にいるんだぜー! チケットないから乗れないけどな!」『プップゥリ~ン♪』

 

 自慢げに言うシンくんだが、指を咥えて見ているしかないのだから恰好が付かない。その口振りとい、所持品の質の良さといい、さてはクチバシティで躓いてるな。チケットないとクリア出来ないもんね、クチバジム。この仕様、何とかならない物か。船長いなくなったら後続はどうすりゃいいんだよ。

 まぁ、今回は何とでもなるけどね。

 

「そーなのかー。そんなキミに、このチケットをプレゼントだ!」『ピッピッ!』

「えーっ!? 何で持ってんの!? って言うか、いいの!?」『プリャ!?』

「マサキに貰ったのよ。元に戻したお礼にね」

「ほへー」『プリーン』

 

 呆けた顔でチケットを受け取るシンくん。これで彼もヒジュツ・ケサギリを習得する事が出来る。

 さらに、今回は別口ではなく、私と一緒に乗船だ。これでサント・アンヌ号の中を、二人で楽しく散策出来る。やったねシンちゃん!

 ……あれ、これ普通にデートなのでは?

 

「じ、じゃあ、乗ろうか?」

「う、うん……」

 

 思わずお互いに顔を赤くしてしまう。ヤバい、意識したら、超恥ずかしい。確実に精神が肉体に引っ張られているなぁ、これ。生娘か私は。

 チ、チクショウ、この私が、こんな年下の男の子なんぞに……っ!

 でもね、言い訳させてくれるなら、異性とか同性とか関係なく、他人とここまで仲良くなったの、初めてなのよ。生まれてこの方ずっとボッチだったからね、私。所謂ゲームだけがトモダチである。自分で言ってて悲しくなるな……。

 と、とにかく乗船よ、乗船! これはあくまで育成ゲームのイベントなの! カードでも遊べるどっかのギャルゲーとは違うんだもん! 

 とりあえず、このままランデブーとかはないから安心して下さい。ポケモンマスターになれないし、後に置いてきぼりを食らう乗船者の事を考えると、次の停泊地は十中八九あそこだろうしね。今の手持ちで超獣(ウルトラビースト)を相手に勝つ自信なんぞないよ。

 

「船だーっ!」『ピッピ~♪』

「海だーっ!」『プリ~ン♪』

 

 金ヅルから報酬を巻き上げつつ船内を見て回り、甲板までやって来ました。船の舳先から見渡す海原って格別だよね。あ、メノクラゲ。

 

「タイタニックッ!」「いや、何してんだお前は!」

 

 豪華客船に乗るとね、ついついやりたくなっちゃうんだ。慌てたシンくんが後ろから抱き留めてきたせいで、本当に例のアレっぽくなっちゃったけど。ぐはっ!

 ちなみに、現在二人揃って貰った船乗り衣装に着替えてます。ハンカチーフはもちろん黄色。セーラー服を脱がさないで。

 さて、そんなこんなで船内のイベントを粗方片付けた私たちは、

 

「それで、オレのプリンも特別な技を覚えたんだよ」「へぇ~」

 

 全回復部屋でまったりしていた。船医のお姉さんが微笑みながら退出していったので、今は二人きりだ。

 いやね、別に何もありませんよ?

 つーか、昼間からイチャコラするとか、節操ないにも程があるだろ。どんなバカップルだよ。

 だので、昨日の続きと言うか、お互いの近況を語り合う、駄弁りを再開していた。シンくんがベッドに端座位、私が仰向けに寝転んでいるという、超だらしない格好で。色々と勘違いされそうなポジショニングだが、間違いはなかったとだけ言っておく。

 ああそう言えば、あの相棒ピカチュウはトキワの森ではなく、ハナダシティ側の4番道路で手に入れたらしい。何でもオニスズメの群れに襲われている所を助けに入ったら、甚く懐かれたとか。アニメかな?

 また、あのフシギダネは予想通り野生産だったようで、オニスズメを片っ端から捕獲していたら、いつの間にか現れていたそうな。という事は、ピカチュウとフシギダネは同時加入だったのか。意外である。

 あれからメンバーの入れ替えは起こっていないが、レベルは格段に上がっており、現状はこんな感じ。

 

◆相棒プリン Lv32:「ふわふわドリームリサイタル」「ねむる」「のしかかり」「かなしばり」

◆相棒ピカチュウ Lv29:「ばちばちアクセル」「10まんボルト」「でんじは」「あなをほる」

◆ピジョン Lv31:「でんこうせっか」「かぜおこし」「すなかけ」「はねやすめ」

◆フシギソウ Lv29:「はっぱカッター」「どくのこな」「せいちょう」「やどりぎのタネ」

 

 うん、原典よりレベルが高い上に、更にえげつない技構成になっている。眠り、麻痺、毒、命中率低下、技封じと、見事に嫌らしい搦め手が揃っているし、これ進化や技マシンの収集が済んだら、とんでもなく化けそう。さすがクチバシティで足止め食っていただけあって、成長性が半端ない。

 これ、対戦したらイライラするんだろうなぁ。使い手の性格は良い奴そのものなのに。

 

◆相棒ピッピ(アカネ)Lv33:「ゆびをふる」「アンコール」「コズミックパンチ」「ムーンフォース」

◆オニスズメ(ハヤテ)Lv33:「ネコにこばん」「ドリルくちばし」「オウムがえし」「こうそくいどう」

◆ナゾノクサ(ヒナゲシ)Lv32:「ようかいえき」「メガドレイン」「ムーンフォース」「どくどく」

◆スピアー(アキト)Lv32:「どくづき」「ミサイルばり」「げきりん」「こうそくいどう」

 

 対する私の手持ちの現状はこんな感じ。あれからゆるーくやっていたので進化もまだだが、レベルと技のレパートリーは結構いい線行ってると思う。ハヤテはとっくに進化出来るが、彼はヒナゲシちゃんと同じタイミングで進化させてあげたい。同期だからね。

 

「スッゲェ頑張ってるじゃん、アオイ。レベルもオレの手持ちより断然上だし、技も良いの揃ってるしな」

「そ、そうかな……?」

 

 やめてよ、普通に照れちゃうから。

 さて、話も一区切り付いたし、そろそろヒジュツを授かりに行こう。いい加減、心臓が持たなくなってきたし。向こうもそうだろうけど、そこは言わぬが華だ。

 

「オボロロロロロロッ!」

「「………………」」

 

 そして、この口からサイケ光線である。今までの甘々な雰囲気との落差が酷い。誰得なんだよこの光景。

 とりあえず、なるべく視界に入れず臭いも嗅がないように気を付けながら、良い傷薬(飲用)をあげて、船長の回復を図る。介護職やってるみたいで嫌だな……。

 その後、無事に復活した船長からヒジュツ・ケサギリを伝授してもらった。凄い船長の面目躍如ね。

 それから、用事を終えた私たちはサント・アンヌ号を降り、旅立つ船を相棒たちと一緒に見送った。

 

「あー、いっちゃった……どうしよう……」

 

 すると、背後から小さな女の子が登場。

 くすんだ金髪を肩口でお下げにした、若干日焼けした白人の幼女。襟口の広いスモックに紺のオーバーオールを穿き、その全てに絵の具が飛び散った、実にだらしのない格好。背中のハム型バッグには多種多様な画材が入っているのだろう。

 言うまでもない。後のフェアリータイプのキャプテン、マツリカだ。可愛いなぁ。

 

「えっと、キミは?」

「わたし、マツリカ。いま、かえりのふねにのりおくれたの」

 

 シンくんの質問にぬぼーっと答えるマツリカちゃん。そんなメリーさんみたいな言い方されても、そうですかとしか返せない。

 

「えにむちゅうで、しゅっこうじかんすぎてた」

 

 そう言えば、そんな設定だったな。ついさっきまで船長がよれよれのオロロロで留まっていたから、惜しかったわね。運がない子だな……。

 

「これからどうするの?」

「わかんない。とりあえず、えはかきたい」

「「………………」」

 

 マジでどうしようか。こんな幼女を置き去りにしたら、どこぞのロリープやロリーパーに攫われかねない。さすがに手持ちはいるだろうけど、あの系統どくタイプ技持ってるからな。

 

「しんぱいしてくれるの? だいじょうぶ、わたしにはこのこたちがいるから……」

 

 こちらの意図が伝わったのか、手持ちを繰り出してきた。面子はバリヤード(Lv28)、プリン(Lv25)、アローラロコン(Lv26)か。

 ……原典よりもレベルが高いとは言え、やっぱり心配になるな。プリンとアローラロコンはタネポケだし、バリヤードじゃあいつらの物理技に対処出来ない。せめて、プリンとアローラロコンが進化するか、ポケモンをもう一匹くらい増やして欲しいところ。

 

「……しんぱいしすぎ。そんなにしんじられないなら、しょうめいしてあげるよ……ちからずくでね!」

 

 どうやら、幼女は激おこぷんぷん丸のようです。マツリカさんもマツリカちゃんだった頃は、人並みのプライドはあるようである。子供特有の我儘とも言えるが。

 

 ――――――ポケモントレーナーのマツリカが勝負を仕掛けて来たっ!

 

「私が行くわ! やったれ、アキトくん!」『ブゥゥウウン!』

 

 という事で、私はアキトくんを繰り出した。ジム戦ではリベンジも含めて活躍させてあげられなかったからね。

 

「いって、バリバリ」『バリォン!』

 

 マツリカちゃんの先発はバリヤード。レベル的にもステータス的にも、負ける要素がまるでない。

 

「アキトくん、「どくづき」!」『ブルァッ!』

『バリリ……!』「バリバリっ!?」

 

 当然の結果だった。等倍とは言え、一致毒突きを耐えられる程、バリヤードの物理耐久は高くないからな。

 さて、こうなると最早、勝負は見えている。序盤虫だからと言ってタネポケに落とされる程脆くはないし、仕留められない程弱くもない。残りの面子はどく技に耐性がないし、一方的な勝負になるだろう。これを蹂躙と言わずして何と言う。

 

「ぬー」

 

 あっという間にアキトくんに無双されてしまい、膨れっ面になるマツリカちゃん。可愛い。

 

「わかった。ひとりじゃあるかない」

 

 それでも、勝負は勝負。自分から吹っ掛けた以上、素直になるしかなかった。

 

「……だから、つぎのびんがくるまで、めんどうみて。わたしのはじめて(のポケモンしょうぶ)、せきにんとって」

 

 しかし、マツリカちゃんは転んでも只では起きなかった。誤解を招くような事を言うなぁ!

 

「うーん……」「しょうがねぇなぁ……」

 

 こうなっては仕方ない。負かしたのはこちらだし、(精神年齢的に)大人として責任とやらを取ってあげよう。

 

「あれ、でも待って……?」

 

 そこで、ハタと気付く。

 

「どうした、アオイ?」

「確かサント・アンヌ号って、一年に一回しかクチバに寄港しないんじゃ……」

「あっ……」

 

 し、しまった、嵌められたぁ~!

 

「ぬふふ、よろしくね、おにーさん、おねーさん」

 

 私たちが頭を抱えるのと、マツリカちゃんが悪戯な笑顔を浮かべるのは同時だった。ぅゎょぅι゛ょっょぃ(強かさという意味で)。




◆マツリカ

 アローラ地方ポニ島出身の天才画家であり、後にフェアリータイプのキャプテンとなる少女。カントー地方にはアローラには無い風景やポケモンたちを描きにやって来たのだが、絵に夢中になり過ぎて船に乗り遅れた。一年に一回しか来ないサント・アンヌ号に。
 子供故の純真な悪戯心に溢れており、シンとアオイの関係を面白がって付いて行くことにした。バトルはまだまだ苦手で、その辺りも勉強したい模様。
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