ポケットモンスター Let’s Go! ピッピ 作:ディヴァ子
それからそれから。
「おーす、未来のチャンピオン!」
「「こんにちはー」」「あろーらあろーらぁ」
マツリカちゃんの面倒を見る事になってしまった私たちは、仕方がないと諦め、そのままクチバジムに挑む事にした。元々それが目的でサント・アンヌ号に乗船したんだからね。ヒジュツ・ケサギリでミッションの細い木をバッサリですよ。これ、向こう側の解説さんまで切れてないよね?
「ばっとる、ばっとる~♪」
滅茶苦茶嬉しそうなマツリカちゃん。曰く「いきいきとしたポケモンたちをスケッチしたい」そうな。何とも画家らしい理由だ。
だけど、目まぐるしいポケモンバトルを描写なんて、出来るのだろうか。
「だいじょうぶ、わたし、みただけでせいしょできる」
葛飾北斎かお前は。富岳三十六景ならぬ、シロガネ三十六景とか描きそう。
まぁ、描けると言うのなら、好きに描かせよう。危険地帯をウロチョロされるよかマシである。
さてさて、無事にクチバジムへの挑戦と相成った訳だが……このジム、ひたすらに面倒臭い。相手がではなく、ギミックが、だ。何が悲しくてゴミ箱を必死に漁らなきゃならんのじゃい。
だがしかし、私たちには相棒がいる。不思議なセンサーで感知すれば、楽勝よ!
……それでも十回くらいやり直しになったけど。この戦いが終わったら、私たち、放火するんだ♪
「オーッ、アナタたちがキョウのチョウセンシャでスカ! こんなオコドモがアイテとは、おわらいデース!」
出たな、ライトニングタフガイ。実はロケット団の工作員とかじゃないだろうな。
つーか、子供が相手だからって舐め過ぎだろこいつ。アンビリーボーな喋り方しやがって。マジでムカつくわ。野郎、ぶっ殺してやる!
「まずは私から行くわ」「おう、やったれやったれ」「がんばれー」
「HAHAHAHA! ベリーブレイブ、すばらしい! ……ですが、ポケモンバトル、そんなにあまくナーイ! みんなビリビリ、シビれさせてあげマース!」
――――――ロケット団の、じゃなかった、ジムリーダーのマチスが勝負を仕掛けて来たっ!
「GO、マルマイン!」『ヴィリイッ!』
初手は爆弾ボールのマルマイン(Lv30)。原典ではビリリダマだが、今までの傾向が傾向なので、これくらいは想定内である。
「行って、アキトくん!」『ブゥゥン!』
私の先発は、マツリカちゃんの時に引き続きアキトくんが勤める。そこそこの特殊耐久と攻撃力を買っての選抜だ。ドリルライナーがないのがちょっと辛いが、ないものは仕方ない。諦めよう。
「マルマイン、「10まんボルト」デース!」『ボォォォルッ!』
「アキトくん、耐えて「こうそくいどう」!」『ブブゥーン!』
さっそく10万ボルトを食らってしまうが、どの道初代最速のマルマインを素の速さで追い抜くのは不可能なので、大人しく受けてから高速移動を積んでおく。幸いマルマインは絶望的に火力がないので、一発くらいは耐えられる。麻痺らなくて良かった。
「アキトくん、「げきりん」!」『ブヴヴヴヴヴヴッ!』
『マルマレェェン!』「Oh,NO! もどりなサーイ、マルマイン!」
と、速さで追い抜いたアキトくんの必殺技、逆鱗が発動した。専用技以外で最強の威力を誇る物理ドラゴン技である。不一致だが、元々の威力とアキトくんの攻撃力が合わされば、モンスターボールのお化けくらい簡単に仕留められる。
「ゆきなサーイ、レアコイル!」『トラコルルイッ!』
「ぶっ飛ばせ、アキトくん!」『ブルヴァアアアア!』
さらに、後続のレアコイル(Lv30)も、そのままブッ飛ばす。
「「ラスターカノン」デース!」『コルィィィン!』
『ピァ……!』「お疲れ、アキトくん」
さすがに一撃必殺とは行かなかったが、敵の体力を半分以上削ったので、充分働いてくれたと言える。ド疲れさん。あとはアカネちゃんに任せなサーイ。
「殺れ、アカネちゃん!」『オラッピーッ!』
まずは指を振るで炎のパンチを食らわせ、鋼ボディごとレアコイルを撲殺する。
「カタキをとるのデース、エレブー!」『ブールゥァッ!』
「同じ所に送ってやれ、アカネちゃん!」『オリャッピ!』
続くエレブーズのマスコットキャラ、もといエレブー(Lv30)にはコズミックパンチをお見舞いしてやった。
向こうも雷パンチで打ち合いに持ち込んで来たが、コズミックパンチの効果で耐久が上がったアカネちゃんを攻め落とすには至らず、やがて押し負け撃沈する。
フン、お前はマイナー落ちだ。時代はやっぱりコイキングスよ。
「ウヌヌヌヌーッ! もうカンベンなりまセーン! ゆくのデース、マイ・フェイバリット、ライチュウ!」『ライヂュイン!』
いよいよ進退窮まったマチスが繰り出したのは、彼の代名詞、ライチュウ(Lv32)。
ただし、アローラの姿である。
ただでさえ俺ガイルって感じの見た目してる癖に、アローラライチュウ使うなや。出身地的におかしくはないけどさ(※イッシュ地方とアローラ地方は割と近場)。
「ライチュウ、「ねこだまし」でヒルませて、「メガトンキック」デース!」『ライチュチュッ!』
『ギエピーッ!』
その上、ピカ版の頃の名残りなのか、バリバリの武闘派だ。さすがストリートファイターの手持ちポケモン、テアーラだぜっ!
「イマデース、「サイコキネシス」!」『ヂュワッ!』
『ピピーッ!』
そして、このサイコキネシスである。両刀とかズルい。
この怒涛の攻めにはアカネちゃんも耐えられず、KOされた。クソッ、やるじゃない!
「……行って、ヒナゲシちゃん!」『ニャゾォッ!』
うぬぬ、ヒナゲシちゃんを出したはいいが、勝てる未来が見えない。原種なら対抗出来なくもなかったのに、何でアローラなんだよ、ホント。
「むだデース! 「サイコキネシス」に「10まんボルト」デース!」『ヂュルァアアアッ!』
『ニャゾ~!』『ケェーン!』
こうして、私たちはハナダジムに引き続き、またしても全滅の憂き目に遭った。やっぱレベルだけがポケモンバトルやないやなって、思いましたわ。
「HAHAHAHA! ショセンはおこども、でなおしてきなサーイ!」
うわっ、何コイツ殺してぇ……!
「……仇はオレが取ってやる。お前は、早く回復して来い。リベンジ、するんだろう?」
「うん。……ごめんね?」
「イイって事よ!」
という訳で、偽ガイルはシンくんに任せて、私は出戻るとしよう。
もう、変に拘ってる場合じゃない。どんな矜持があろうが、勝てなければ全て無意味だ。やはり、“あの子”を連れて来るしかないだろう。
それから、長い時間が経った……。
「――――――またかよ、おい」「ごめんチャイナ」
私はまたしてもシンくんにおぶられていた。
あの後、マチスに対抗する為、近場のディグダの穴でとあるポケモンを育てていたのだが、またまたやり過ぎちゃった結果、前回同様動けなくなった所を、見事に勝ち抜いて帰って来たシンくんに助け起こされた、という訳である。今度はマツリカちゃんというおまけ付きで。
あーん、はーずかしー♪
「それで、次は勝てそうなのか?」
言っても無駄だと思ったのか、それとも彼らしい優しさなのか、シンくんは特にお説教はせず、ただ勝てるのかどうか聞いてきた。
「モチのロン!」
自信満々に答える私。おんぶされてるから、締まらないけどね。
「ほーほー、これがバカップルかー」
おい、スケッチすんなや。
「……そ、それじゃあ、明日に備えて、今日はもう寝るか」
「そ、そーだねー」
マツリカちゃんからの生暖かい視線から意識を逸らしつつ、私たちは眠りに着いた。
「いよっしゃあっ!」
そして、次の日。私は帰って来た。にっくきクチバジムに。覚悟しろよ、マチス。今度はこっちが蹂躙してやる……!
「オーッ、ショウコリもなくやってきましタカ! でスガ、ナンどやってもム――――――」
「うるせぇ、死ねぇいぁあっ!」
「サイゴまでいわせなサーイ!」
――――――ジムリーダーのマチスが勝負を仕掛けて来たっ!
「マッタク、これだからおこどもハ……キョウイクしてやりなサーイ、マルマイン!」『マルヴァアアッ!』
マチスの先発は、いつも通りのマルマイン。
「行っけぇ、アンズちゃん!」『クァアアン!』
対する私の先発は、
「ニ、ニドクイン、でスト!?」
色違いのニドクイン(Lv30)、アンズちゃんだ。実は最初の方で捕まえていたのである。使うつもりはなかったから、今の今までボックスに預けてたんだけどね。
だが、ああも煽られちゃあ、こっちも手段は選んでいられない。じめんタイプでガチガチに対抗してやんよっ!
「こうなったら、「じばく」デース!」
「躱せっ!」『クァアアン!』
「NO~!」
まずはマルマインの自爆を「かわせっ!」でスカして、
「ヌヌヌ! ならばレアコイル、「ラスターカノン」デース!」
「「あなをほる」!」『クワワワァン!』
「What!?」
鈍いレアコイルを穴を掘るで下し、
「エレブー、カタキをとりなサーイ!」
「「あなをほる」!」『ククゥィン!』
「アッー!」
対抗手段がまるでないエレブーを再びマイナー送りにして、エースのアローラライチュウを引きずり出した。
「もうユルしまセーン! ライチュウ、「サイコキネシス」!」『ララバァイ!』
さっそくサイコキネシスを食らわせて来るが……アンズちゃんは落ちない。弱点技だろうと、彼女の耐久力なら一発くらいは耐えてくれる。
「「いかりのまえば」!」『グィィン!』
『ヂュア……ッ!』
という事で、反撃の怒りの前歯で半死状態に追い込み、
「ヤられるマエにヤるだけデース! ライチュウ、「サイコキネシス」!」『ライヂュヂュッ!』
「躱して「かみくだく」!」『クァアアヴォン!』
『ヂュワアアアアッ!』「ライチュウゥゥゥ!?」
さらに、サイコキネシスを躱して、文字通り噛み砕いて瀕死にしてやった。ざまぁ見さらせぇっ!
ねぇ、どんな気分? ポッと出のポケモン一匹にやられるとか、ジムリーダーとして恥ずかしくないの~ん?
「オーノー、まけてしまいましタカ。きたえなおしデース……」
そして、超悔しそうなマチスの顔(とオレンジバッチ&技マシン36「10まんボルト」)を報酬に、クチバジムをクリアした。殺ったネ!
「よーし、それじゃ記念に放火しようかぁ!」
「オーノーッ! やめ……やめなサァーイ!」
「気持ちは分かるけど、やめたげてよぉっ!」
「わ~、すっごくみにくいあらそいだぁ~♪」
その後、積もりに積もった恨みつらみを晴らす為に一悶着あったのだが、それはまた別の話。
放せ、放せっ! 私はこのジムを消し炭にしてやるんだぁーっ!
◆◆◆◆◆◆
べつのひっ!
「さて、出発しますか」
「「おーっ!」」
リベンジを果たし、ついでにちょっとだけ燃やす事に成功して気分良く眠った私たちは、日の出と共に新たな旅路へと立った。シンくんとマツリカちゃんも一緒である。
目指すはシオンタウンのポケモンタワー。そこでロケット団に関わるイベントが待っている。
しかし、辿り着くまでに恐ろしく遠回りをしなければならない。まずはディグダの穴を抜けてヒジュツ・カガヤキを伝授してもらい、それからハナダシティに戻って9番道路及び10番道路、その先の岩山トンネルを抜け、ようやく到着となる。この間も小イベントが挟まってくるので、更に時間が掛かるだろう。
それもこれも、ヤマブキシティを通らせてくれないからだ。ホント、お茶ぐらい我慢しろよ、クソ警備員が。
まぁいいさ。行程が長いという事はレベリングになるし、何より皆とワイワイしながらの旅も乙な物である。せっかくの団体旅行なのだから、この機にいろいろと仲を深めたいものだ。
「まずはディグダの穴から……」
「だいすきクラブにはいかなくていいの?」
「あ、忘れてた」
うーん、締まらないな。
という事で、ポケモン大好きクラブの会長さんの有難い長話を聞き流して「おきがえセット」を頂き、ついでにジュンサーさんから性悪ゼニガメを貰い受け、空手王の意味不明なミッションもこなしてウィンディとペルシアンも入手。アローラなイシツブテもラッシャイ。
「あら、久しぶり。ちょっとディグダの穴に用事があるんだけど、一緒に行く?」「アッ、ハイ」
で、何故かクチバに来ていたカスミの案内も受けつつ、ようやくディグダの穴に足を踏み入れた。とは言え、私は既に修行場として使ってたから、初めてじゃないんだけどね。
「バウワウ、おっきい」『グワゥン』
ちなみに、貰ったウィンディはマツリカちゃんにあげた。幼女に歩かせるのもなんだし、ライドポケモンとして役立ってもらう事にした。実にジブリな光景である。
『ピキュキュ、クゥン!』
おっと、早々にディグダの登場だ。その節はお世話様です。
「それじゃマツリカちゃん、捕まえてみようか?」
「うん? わたしがつかまえるの?」
「そりゃあ、トレーナーとして付いてくるなら、当たり前でしょ」
面倒は見るが、甘やかすとは言っていない。自衛手段を確保する為にも、手持ちのポケモンは育てておかなきゃね。
「えーい♪」『キュー!』
この後、めちゃめちゃゲットした。さすが後のキャプテン、なかなかやる。
結果、マツリカちゃんの面子はこうなった。
◆バリヤード(バリバリ)Lv34:「サイケこうせん」「ひかりのかべ」「リフレクター」「10まんボルト」
◆プクリン(おやかたさま)Lv33:「うたう」「ねむる」「のしかかり」「かなしばり」
◆アローラロコン(キュウ)Lv33:「ふぶき」「マジカルシャイン」「あやしいひかり」「あなをほる」
◆ウィンディ(バウワウ)Lv50:「じゃれつく」「おにび」「げきりん」「フレアドライブ」
何か一匹だけ桁違いかつ技構成もガチガチだが、人からの貰い物だから仕方ない。レベル以外は最初からこんな感じだったからね、この子。
むしろ、よくもこんな良個体を譲る気になったな、あの空手王。勿体ないだろに。
つーか、ニックネーム「おやかたさま」なのかよ、プクリン。将来銭ゲバになりそう……。
「出たーっ!」『ピッピィ!』
「「いぇーい!」」『プリリッ!』『バウッ!』
特筆すべき事なく、ディグダの穴を通過した。だってディグダとダグトリオしか出て来ないんだもん。初代と違って、そこまで強敵じゃないし。
それからヒジュツ・ケサギリで行ける所に行って、アイテムを回収していく。もちろん、リーフの石も。
「行くよ、ヒナゲシちゃん!」『ハナァ~ン♪』
さぁ、ようやく進化の時間だぜ、ヒナゲシちゃん!
『ラァフリィィィィィッ!』
眩い光が花開くように輝き、ヒナゲシちゃん(クサイハナ)が最終進化形態であるラフレシアに進化する。
うん、ワタッコの親戚みたいで可愛い。鳴き声はプテラっぽいけど。
『ホォグルドォッ!』
むろん、同期のハヤテも不思議な飴を使い、オニドリルへ進化。何だかんだでレベルが40になってしまった。
「これからもよろしくね、ハヤテ、ヒナゲシちゃん!」『ケァーッ!』『ラァン♪』
嗚呼、皆良い子だなぁ。こんな采配ミスやらかすようなトレーナーに文句一つないなんて……。
あ、今の面子はこんな感じです。
◆相棒ピッピ(アカネ)Lv42:「ゆびをふる」「アンコール」「コズミックパンチ」「ムーンフォース」
◆オニドリル(ハヤテ)Lv40:「ネコにこばん」「ドリルくちばし」「オウムがえし」「こうそくいどう」
◆ラフレシア(ヒナゲシ)Lv40:「ようかいえき」「メガドレイン」「ムーンフォース」「どくどく」
◆スピアー(アキト)Lv39:「どくづき」「ミサイルばり」「げきりん」「こうそくいどう」
◆ニドクイン(アンズ)Lv38:「どくどく」「かみくだく」「いかりのまえば」「あなをほる」
いやぁ、感無量ですね。元より進化出来ないアカネちゃんを除いて、ようやく皆進化しましたよ。技構成は全然変わってないけど。早くタマムシデパートに行きたい……。
◆相棒プリン Lv45:「ふわふわドリームリサイタル」「ねむる」「のしかかり」「かなしばり」
◆相棒ピカチュウ Lv43:「ばちばちアクセル」「10まんボルト」「でんじは」「あなをほる」
◆ピジョット Lv43:「でんこうせっか」「エアスラッシュ」「すなかけ」「はねやすめ」
◆フシギバナ Lv42:「はなびらのまい」「すてみタックル」「どくのこな」「やどりぎのタネ」
で、これが今のシンくんの手持ち。数が少ないからか、レベルで追い越されている。ステータス的にも分が悪い。これでガラガラとか加わるんだから、洒落にならねぇ。これは頑張らないとな!
さてさて、やる事はやったし、ただの研究員如きが何故か知っているヒジュツ・カガヤキを伝授して貰ってから、ハナダシティへ逆戻り。
お次は岩山トンネルのクリアが目標なのだが、
「やぁ、久しぶりっスねー」「あん時ゃあ世話になったな。たっぷりお返ししてやるよ」
「「「俺たち全員でなぁ!」」」
9番道路に行こうとしたら、あの時のロケット団の下っ端コンビに絡まれた。それもいらんオマケ付きで。
「わ~、ポケットだんだ~。スケッチさせて~」
「ロケット団っス!」「何だよ、ポケット団って!?」
こんな時までマイペースなマツリカちゃん。向こうはレベル50のバウワウが睨みを利かせているせいで手出し出来ないようだが、いつまでも指を咥えている筈がない。その為の“数”である。
「オマエら、そっちのガキンチョを見張っとけっス!」「こいつらは、俺たちが潰してやるぜぇ!」
マツリカちゃんを仲間に任せて、ハルとフィロがダブルバトルを仕掛けてくる。やっぱりそうなったか。
しかし、舐めてもらっちゃ困るよ。私たちも、あの時のままではないのだから。
と、その時。
「あらあら、大のオトナが子供相手に袋叩きなんて、感心しないわね」
背後を流れる水路から、凛とした女性の声が。
「あ、貴女は……!」
その姿を見たシンくんが、驚きのあまり言葉を失う。それも仕方ない。
橙色のポニーテルにキリッと眼鏡。端麗ながらも、ちょっとキツめの顔立ち。抜群のスタイルを紺のスーツにタイトスカートというピッチリした礼服で包む、艶美かつ力強い妙齢の女性。
このラプラスの背中に女王様なポーズで座っている彼女こそ、カントー四天王が一番手、氷使いのカンナ、その人だ。
「……こっちのモブは引き受けるわ。そっちの二人はお願い出来るかしら?」
「「もちろん!」」
「いい返事ね。それじゃ行くわよ!」
こうして、通りすがりのカンナさんに雑魚を任せ、私たちは思う存分ハル&フィロをボコる事になった。
「ヤロー、舐めやがって! 行くっス、ラッタ!」『ヂュアヴッ!』
「叩きのめせ、スリーパー!」『ロリダロリダ、ヒャッホウァッ!』
おい、だから鳴き声。しかも、今更気付いたけど色違いだし。ただでさえロリコンなのに全身ピンクとか……。
それにしても、アローラコラッタ(Lv22)はアローララッタ(Lv35)に、ロリープ(Lv22)はロリーパー(Lv35)に進化したのか。頑張って育ててるようだけど、正直役不足なのよね。
「ハヤテ、「ドリルくちばし」!」『ドリルルルッ!』
「ピカチュウ、「10まんボルト」!」『ピッカァッ!』
「「『『ヴァー!』』」」
「スマイル0え~ん!」という謎の捨て台詞を残して、ハルとフィロは星になった。アニポケのやな感じポジションはこいつらなのかー。
「おほしさまきれい~♪」
言ってやるな、マツリカちゃん。
「こっちも終わったわよ」
こうして、エースのアカネちゃんやプリンを使うまでもなくロケット団をあしらった私たちに、カンナさんが優し気に声を掛けてくる。マジで三人相手でも物ともしなかったらしい。
「ロケット団は?」
「自己紹介したら勝手にビビって逃げて行ったわ」
だらしねぇなぁ、ロケット団。それでも大人かよ。
「フーン、なるほど。バッチを集めているのね」
こちらを値踏みするように見ながら、カンナさんがポツリと呟く。実際、値踏みしているのだろう。自分が後に対峙するかもしれない相手なのだから。
「ま、頑張りなさいな。……待ってるわよ」
そう言って、カンナさんはラプラスと共に去った。滅茶苦茶クールでカッコいいけど、そもそも何しに来たんだ、あの人は。
まぁいいや。冒険を再開しよう。
その後は順調そのもので、特に苦も無く9番道路と10番道路を攻略。今更レベル20台じゃ相手にならんとですよ。マツリカちゃんの実践訓練になったからいいんだけどね。
さらに、岩山トンネルも問題なし。暗いだけだから、多少はね?
――――――初代の時は、フラッシュすら必要なく攻略しちゃったのはいい思い出よね。
あ、でもポケモンゲットは頑張りましたよ。ワンリキーとかサイホーンとかガルーラとか、しっかり集めたし。またキンツブテが出て来た時は、何も言えなくなってしまった……。
「シオンタウン、到着~♪」
「「わーい……」」
そして、ただ長いだけの旅路を終えて、ようやっとシオンタウンに着いた。ホント、何とかならないのか、この遠回り道。
さてさて、到着したシオンタウンだが――――――相変わらず不気味な街だな。
紫苑をメインにした街路は昼間だと言うのに薄暗く、紫掛かった屋根がそれに拍車を掛けている。アジサイが咲き誇っているのは奇麗だが、雰囲気のせいでホラーの演出にしか見えない。街行く人々も高齢者が多く、町そのもの活気の無さが窺える。
つーか、まんまゴーストタウンである。BGMはない筈なのに、耳にこびり付いて離れないのは何故だろうか。森の洋館といいストレンジャーハウスといい、ゲーフリ悪ふざけし過ぎだろ。
『カラァ~!』
「ん……?」
と、私たちの目の前を、一匹のカラカラが通り過ぎて行く。向かう先は、死んだポケモンたちを供養するポケモンタワー。
これはイベント案件ですね、分かります。
「アオイ……!」
「分かってる。追い掛けましょ」
「まてまて~」
こうして、私たちは初代屈指のホラースポットへ足を踏み入れる事に相成ったのだった……。
◆ロケット団のハルとフィロ
ロケット団の下っ端コンビ。
ポケモンを道具だと考えている所謂「下衆な悪党」で、カリスマ性どころか矜持やプライドすらなく、自分たちさえ良ければそれでいいと思っている、救いようのない奴ら。
二人共幼い頃にポケモンの暴走による災害で孤児となっており、傷を舐め合うように泥を啜りながら生きていた所を“団長”に拾われ、後にロケット団に入団した。
その為、本質的にサカキを上司と認識しておらず、サカキを慕う連中の事を同じ人間とすら思っていない。