そして████になった転生者 作:にわかネット文化ファン
「それはそうと、お前は破門だ。二度と華心流に入るな」
誰かに自分をはっきりと否定された最初の瞬間。
「唯華くんの占いは形式的すぎるです」
これはまだマシだった。
「才能のある奴にはわからないですよねー」
「本当は俺たちのこと見下してるってはっきり言えよ」
「消えて」
まさか、転生特典のせいでクラスメイトたちに暴言を吐かれるとは思わなかった。
「貴様には失望した!散れ!」
その後に、大事な友人からそんなことを言われてしまった。
「君の絵はまさにルネサンスの再来と言っていい。でも、それだけだ」
「・・・所詮、フラワーボーイの絵は教科書に過ぎないんだよネ。ツマラナイ」
叫びたかった。でも、そんなこと一度もしたことがなかったから。
ただ、舞い続けた。肺が焼けそうな感じがする。
前世のとある人気漫画に出てきた神楽をただ舞い続ける。
北養区の人気のない電波望遠鏡の敷地に忍び込んでは、練習していた。
一度だけ、動画サイトに自らの舞を投稿したことがある。
結果は華々しいものであった。
「コイツは何者だ!?」
「なんて美しい神楽なんだ!」
「こんなの常人にはできないよ!」
ヒノカミ神楽は確かに常人にはできない芸当だ。
動画サイト以外では、里見メディカルセンターで舞ったことぐらいか。
あの時も、動画サイトと同じように褒められた。
でも、十七歳になった現在、相変わらず褒められることはあるが、怖くなった。
また何か言われるのかと思うと、やる気が湧かなくなるのだ。
「・・・もうやってられっか」
彼は神楽鈴を放り投げる。
その瞬間、なぜか突然現れた少女にビンタされた。
「諦めるなっす!今、すっごく上手かったのに、どうしてそこでやめるっすか!」
「えっ・・・誰?」
「ひかるが何者か、そんなのはどうでもいいっす!
どうしてそこでやめるっすか!それだけを聞きたいっす!」
名前言ってるじゃねえか、というツッコミは控えることにした。
「・・・意味を見出せないからだよ。俺の全ての芸術行為とやらにな。
昔は褒められたのに、今では破門だの消えてだの散れだの上手いだけだのつまらないだの・・・。
形式的って言われた方がまだマシだったよ・・・」
「そ、それは確かにきついっすね・・・。でも、それで本当にいいっすか!?
そもそも、アンタが躍ってるのは、褒められるためだけっすか!?
アンタは・・・他人に尺度を計ってもらわないといけないっすか?
いったい、何がアンタの望みっすか・・・?」
その言葉に、転生者は、聖道唯華は、はっとさせられた。
そうだ、褒められるのを第一の目的としてこんなことをしていたのではない!
十七年前、自分が慈悲深い神の前で何を誓ったのか思い出せ!
「・・・そうだ、思い出したぞ!俺は何を望んで生まれてきたのか!」
「それは一体何っすか!」
「それは秘密だ!でも、ありがとう、ひかる!」
「どういたしましてっす!ところで、どうしてひかるの名前を・・・あっ」
唯華は神楽鈴を拾い上げて、改めてヒノカミ神楽を舞おうとした。
「あっ、今からここはひかるたちが使うので家でやってほしいっす」
「わかった」
猛スピードで家に帰りながら、彼は自分の誓いを思い出していた。
マギレコ世界で文化侵略
神楽、華道、絵画、ピアノ、パンフルート・・・。
そういったものをマスターできたのも、誓いの効力のおかげだ。
でも、それらは目的達成のための手段に過ぎない。
彼はひかるに深く感謝した。
「・・・すごい才能の塊の男だったわね。
ところで、どうして力づくで追い出さなかったのかしら?」
「・・・アイツの瞳、少し前のひかるに似ていたっす。
だから、どうしても放っておけなくて・・・」
「そういうことね」
「でも、舞わせてもよかったんじゃないの?」
笠音アオは不満だった。なにしろ、あのヒノカミ神楽を生で見れたからだ。
「何言ってんだ、アオ。ここは戦場になるんだぞ。一般人は邪魔なだけだ。
・・・アレが一般人とも思えないけどな」
大庭樹里は唯華の動きが常人には真似できないことを見抜いていた。
「・・・まさか、本人じゃねえよな?」
ヒノカミ神楽の動画を投稿した者の正体は現在でもネットで考察が続いているくらいだ。
第二部がまさに始まろうとしていたが、唯華はそれに気づいていなかった。
正確に言えば・・・第二部の存在自体忘れていた。十七年も生きていれば、そうなる。
なにしろ、誓いさえも忘れてしまっていたくらいだから。