そして████になった転生者   作:にわかネット文化ファン

13 / 16
星の舞

ついにひかるが飛び立つ時が近づいていた。

彼女は虎屋町学園で神楽部を結成したらしい。

孫弟子ができたということでもある。それは素直に嬉しかった。

でも、少しずつ不安が強くなっていく。

それが何なのか、彼女が飛び立つ最後の最後まで気づかなかった。

ある日、ひかるは唯華にあるものを見せたいと言った。

 

「なんと・・・ひかる独自の神楽が完成したっす!」

 

「まじか」

 

彼女は神楽鈴を持って、静かに舞い始めた。

それは決してヒノカミ神楽から派生したような神楽ではなかった。

全集中という点ではヒノカミ神楽と同じだが、それ以外は違った。

いうなれば、ヒノカミ神楽から独立した神楽だった。

なんと煌びやかで、美しい動作だろうか。

唯華は彼女の背後に星を、幽玄に煌めく星々を見た。

独立した神楽どころではなかった。

彼女の神楽は、完全にヒノカミ神楽の上位存在であったのだ。

以前、彼女の瞳には太陽が宿っていた。今は星々が宿っていた。

これが不安の正体だったのだ。

ひかるが唯華の遠くに行ってしまうこと。それで彼が一人になってしまうこと。

 

「・・・おめでとう、俺が教えることはもうなくなっちまった」

 

彼は涙を流しながら、彼女を祝った。

 

「男がめそめそと泣くなっす!」

 

ひかるにビンタされた。

 

「・・・ひかるは、いつまでも師匠の弟子っすよ」

 

彼女はどうして唯華が泣いていたのか察してくれたのだ。

彼は深く彼女に心の中で感謝した。

 

「ところで、名前はどうするんだ。その神楽の」

 

「そうっすね・・・ホシカミ神楽」

 

「師匠権限で”星の神楽”」

 

「良い響きっすね!でも、理不尽っす!」

 

「だって、俺いつまでも師匠だもん」

 

「ぐぬぬ・・・」

 

こうして星の神楽が誕生した。

ヒノカミ神楽よりはるかに優れたこの神楽はいずれ世界中に広まるだろう。

文化侵略は、色々な意味で成功といえる。

 

「ところで師匠、一緒に踊らないっすか?」

 

「おっ、そうだな」

 

それから二人は夜空をバックにそれぞれの神楽を舞い始めた。

太陽は星を消さないように、星は太陽より煌めかないように。

二人は互いを思いやりながら、神楽を舞った。

そうして時間は流れていった。

 

「・・・朝だな」

 

「・・・そうっすね」

 

ヒノカミ神楽はもともと一晩中舞うための神楽だ。

そういうわけで、いつの間にか朝になっても不思議ではないのだ。

 

「それじゃあ、またいつかっす」

 

「・・・ああ、またいつか」

 

唯華はひかるが見えなくなるまで、ずっと手を振って見送った。

最初に会った時、唯華は神楽鈴を投げ捨てていた。

しかし、今の彼はぎゅっとそれを掴んでいた。

ひかるに神楽を教えていた間、唯華の心が少しずつ変容していった。

そして、ついに覚悟ができた。色々な覚悟ができたのだ。

華道をやる覚悟、文学をやる覚悟、・・・過去を直視して乗り越える覚悟が。




まなか「先輩の影が消えてる!?」

阿見莉愛「あなたの影も消えつつあるわよ」

まなか「えっ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。