そして████になった転生者 作:にわかネット文化ファン
最初に魔法少女の情勢について話をすることを許していただきたい。
PROMISED BLOODは解散に伴い、キモチの石をなんと時女一族に渡していた。
これは神浜の魔法少女たちに対する最後のささやかな抵抗であった。
一方、マギアユニオンはどうなっているかというと・・・。
いろは(光)「こっちがヒノカミ神楽に決まってるじゃないですか!」
ももこ(火)「何言ってんだ?こっちがヒノカミ神楽だよ!」
桜子(光)|・・・|
令(火)「見ちゃだめだ、こんな醜い争い」
このザマである。まあ、仕方ないね。
広江ちはるはこの惨状を見て、マギアユニオンとの同盟解消を決心した。
しかし、他の神楽を使う魔法少女からしたらいい迷惑だった。
フェリシア(闇)「助けてくれよ、かこえもん。いろはが面倒くさいんだよ」
かえで(木)「ふゆう・・・かこえもんちゃん、助けてよお。ももこちゃんが・・・」
かこ(木)「私を未来のロボットだと思ってませんか???」
あまり迷惑を被らない魔法少女もいたが。
あち死(光)「神楽踊ろうとしたら体がフワフワ・・・なんでもう一人のあちしが倒れてるの?」
このは(水)&葉月(光)「あやめー!?」
神楽を踊らない、または踊れない魔法少女にとっては関係ない話だからだ。
ちなみに、あやめは里見メディカルセンターに搬送されて助かった。
鶴乃(火)「あっ、わたしは引退してるから」
アシュリー(闇)「同じく」
とてつもない揉め事が起こっていた。
さて、そんなことはともかく、唯華は華道のために花を買いに来ていた。
「・・・雪でも降らせるつもりですか?」
「何言ってんだ?とりあえず、ヤブデマリとエーデルワイス。
あと、他にいくつか合うような花を持ってきてくれ」
「覚悟と高潔な勇気・・・わかりました!」
花を買った後、じっくりとそれらを活けることにした。
一分が一時間のようにも感じられた。
苦痛だったから長く感じたわけではない。
ただ、落ち着いていたから無限の長さを感じていたのだ。
器と花に向き合うと同時に、自分にも向き合っていた。
一本、二本と切り取って、剣山に刺していく。
華心流にいたころの記憶が蘇ってくる。
あの頃、唯華は師匠に対して一番忠実な弟子であった。
華心流の伝統を引き継いでいこうと思っていた。
ななかと一緒に花を活けるのは、楽しかった。
魔女が何かやらかしたような気がしたが、転生者だからか唯華は影響を受けなかった。
それでも、一般人である高弟たちは次々と独立していってしまった。
必死に唯華が引き留めようとするも、無駄であった。
彼らに声は届かなかった。いや、聞こうともしなかった。
それで唯華の自信がぐらついた。転生者なのに、何もできなかったのだから。
それでも、希望は捨てていなかった。まだ、唯華は華心流に残っていたのだから。
だが、理由不明の破門によって華道に関しては全てを失ってしまった。
今思うと、高弟たちの様子はどこかおかしかった。
彼らが唯華の引き留めに応じなかったのは、魔女の影響だけではなかった。
彼らは以前から唯華を嫌っていたようにも思えた。
「・・・」
ふと、嫌な考えに行き着いた。
遅かれ早かれ、華心流はいずれ崩壊したのではないのかと。
そして、その原因は唯華にあるのではないのかと。
「・・・」
思えば、師匠の唯華を見る瞳はどこか嬉しそうで、そして悲しそうでもであった。
弟子を持った唯華には、今になって理解できた。
師匠は唯華が新しい流派を生み出すことを予見していたのかもしれない。
ひかるが星の神楽を生み出したように。
だが、その生みの苦しみに華心流が耐えれる保証はなかった。
そのタイミングで、魔女の影響により華心流は混乱に陥った。
そんな華心流の中から新しい流派が生まれたら、どうなるかわかったものではない。
そこで師匠は唯華を破門とすることで、華心流の存続を図ったのかもしれない。
「・・・俺にはそんなこと大層な事できないのに」
彼は華心流に戻りたかった。
新しい流派を生むだなんて、そんなことできやしないと思った。
戻りたい。でも、戻れないのだ。
そんな時、インターホンの音が鳴り響いた。
玄関まで行ってドアを開けると、そこにはななかが立っていた。
「唯華さん・・・このみさんから聞きました。
また華道を始めたそうですね」
「さっそく聞きつけたか・・・多分、腕は落ちてると思うぞ」
「・・・見せてください」
ななかを家に上がらせ、活けてる途中のものを見せた。
「・・・こっそり練習してました?」
「何を言うんだ。ずっと中断してたんだぞ?」
「それでも腕は衰えていないようです。
それに・・・以前よりもさらに静寂が現れています」
「・・・そうか」
唯華はコーヒーを淹れた。
「あら、緑茶は飲まなくなったんですか?」
「まあな・・・苦さが気に入ったというか。
・・・少し、話をしていいか?」
「・・・ええ、どうぞ」
一口啜って、話を始める。
「俺、最近弟子をとったんだ。
最初は俺の指導ミスとかもあったけど、段々と上達していったんだ。
そしたら、俺を完全に上回っちゃったんだよ。
それも完全に独自のものを創り上げるくらいにな。
未だにアイツが俺を師匠として認めてくれているのがありがたいくらいだ」
「・・・」
「これは俺のうぬぼれかもしれないけどさ、師匠が俺を破門したのも同じ理由なのか?」
「・・・その通りです」
花の香りとコーヒーの香りが混ざり合う。
「・・・父はあなたの才能を認めていました。
その才能で華心流を昇華させた新しい流派を創り上げるだろうということも知ってました。
でも、それで華心流が消えることは望まなかったのです」
「なるほどな・・・でも、いざという時はお前を頼むとも言ってたけど?」
「それは・・・私の華心流とあなたの新しい流派でお互いに助け合えということです。
今は乱れているものの、華心流には伝統があります。
ですが、あなたがいずれ創り上げる流派には伝統がないのです。
・・・華心流の流れを汲んだ流派であることを証明すれば、話は別ですが」
「そりゃそうだな」
唯華はだんだんと師匠の意図が読めてきた。
「・・・つまり、俺の流派が伝統ある華心流の流れを汲んでいることをななかが証明して、
その一方で俺は華心流が再び乱れそうになった時に外部からななかを助ければいいと」
「そういうことですよ、唯華さん」
唯華はひかると舞った夜のことを思い出した。
太陽は星を消さないように、星は太陽より煌めかないように。
師匠は二つの流派がそうして助け合う未来を望んだのだ。
「・・・日鏡流」
「えっ?」
「あなたの流派の名前ですよ。
唯華さんの燃えるような心の静寂を体現したような作品にはぴったりですから。
今はまだ宗家を設立するには技量不足ですが、そう遠い未来ではないでしょう」
「・・・ありがとう、ななか」
「それはそうと、小学生のかこさんの絵を海外に展示したのは許しませんから」
ななかの理由しかない膝蹴りが唯華を襲う!
その後、彼女に見守られながら作品を完成させた。
もう華心流には戻れない。しかし、戻るつもりはもうなかった。
こうなったら覚悟を決めて、いずれ新しい宗家を設立するしかない。
そして、高潔な勇気をもって、華心流を助けていくのだ。
こうして一つの過去を乗り越えることができた。