そして████になった転生者 作:にわかネット文化ファン
最初に無があった。そして、光が生まれ、ホモビが再生された。
ホモビが再生され終わると、そこはいつもの天井だった。
唯華はオリジナルのホモビを夢の中で創り上げてしまったのだ。
さて、例のホモビに関してはこのマギレコ世界にも存在する。
事実、それは天井裏に厳重に保管されている。
あの野球選手は前世と違って、出演がバレることもなく活躍していた。
しかし、そのサクセスストーリーも終わりを迎えるだろう。
唯華のするべきことは、ただガイドラインに投下することのみ。
今までは勇気が湧かなかったが、今の彼は誓いを思い出していた。
ボタンは押された。この瞬間、多田野はTDNになった。(映像の世紀風)
さて、唯華の一日は早い。水名区に住んでるのに、通ってる学校は大東学園だからだ。
ちなみに、電車通学ではなく徒歩だ。もう一度言おう、徒歩だ。
ヒノカミ神楽を踊れるから、多少はね?
「あの才能に満ち溢れた子のことだ。大東学園に通うのも考えがあるのかもしれない」
そういうわけで、大東学園に通っていても特に怪しまれることはなかった。
実際、そこまで高尚な考えはなかった。ただ、今の神浜市の雰囲気に反抗しているだけだ。
「あっ、唯華お兄さん!今日も早いですね!」
「おはよう、理子。今日は唐揚げ弁当で」
工匠区ではお弁当を買っていく。
しかし、今日はお弁当だけではない。
久々に、あの工房に立ち寄った。
「おっさん、パンフルートのメンテ頼む。
ここ最近、使っていなかったからさ」
「・・・まだ朝だぞ」
「朝だからこそさ。帰りには終わってるだろ?」
「そうだけどさ・・・ようやく眠れる獅子のお目覚めか」
そして、大東学園に到着。この時点でも、教室に一番乗りだった。
「さて・・・俳句でも詠みますか」
ぬばたまの黝き月か吼ゆるとき
別に俳句はこの世界にもあるのだが、無性に何かをしたい気分だった。
「情景に合ったものを詠まんか!馬鹿者!」
「ひでぶ!?」
唯華は腹を蹴られ、吹っ飛ばされ、黒板に叩きつけられた。
「この清々しい朝の教室のどこに黝き月があった!?言ってみろ!」
「し、仕方ねえだろ・・・詠みたくなったんだからよ。・・・ガハッ」
「出直せ」
その後、一日は平穏に過ぎていった。
・・・周りから無視されている状況を平穏というかどうかは人それぞれだが。
ある一件で、クラスにおける評判は完全に地に堕ちていた。
もし、多田野をTDNにした件がバレたら、今度は奈落に堕ちるだろう。
放課後、彼は部活に入っていなかった。入れてもらえなかったのだ。
「どうせアイツの独壇場になる」
文化部でもそんな扱いで、運動部でも・・・。
「サッカーは団体競技だ。個人競技じゃない。帰れ」
「野球も団体競技だ」
「バスケも団体競技だ」
「卓球も誰が何と言おうと、団体競技だ。
だから、絶対に入らないでください。お願いします」
そういうわけで、唯華は帰宅部に入るしかなかった。
帰り道に、また弁当屋に立ち寄った。
「理子、美味しかったよ」
「ありがとうございます!それで、今夜は何を食べますか?」
「この野菜弁当を頼むよ」
そして、工房でパンフルートを回収する。
「・・・ところで、俺の工房で働かんか?」
「えっ、いいのか?」
「・・・やっぱやめだ。お前の独壇場になっちまうからな。
悪い事は言わん、何かやるならお前ひとりでやった方がいい」
「食いはぐれないと思ったのに・・・」
「お前さんの技能だったら、簡単には食いはぐれないだろうに」
パンフルートを回収した後、ボロボロになった中央区を歩く。
ワルプルギス襲撃以前は活気があったのに、今では寂しくなっている。
ちなみに、興味本位でワルプルギスに挑んでみたが、かすり傷しか与えられなかった。
その時は動画投稿時と同じ格好で変装していたので、周りにバレることはなかった。
『ヒノカミが異常気象下の神浜市を神楽で救った』という都市伝説が生まれた。
ヒノカミというのは動画サイトでのチャンネル名のことだ。
廃墟になったビルを上がって、屋上でパンフルートを吹き始める。
曲は”テルーの唄”。非常に残念なことに、この世界には宮崎駿がいないのだ。
同時に、嬉しいことにゲド戦記のアニメ版も作られなかったのだが。
ちょうど夕方で、曲と情景が見事に一致している。
これも一つの立派な文化侵略。ジブリ文化はこの世界にはないのだから。
「・・・アンタ、唯華ちゃうか?」
背後から突然、知らない褐色の女性に声を掛けられた。
「・・・そうですが」
「やっぱり。みたまから聞いたんや、この街にパンフルートの名手がいるって」
唯華は思い出した。リヴィア・メディロスだ。
「突然、真上から綺麗な音色が聞こえたから、そんな気がしたんや。
最近、スランプになったっていうことを聞いたんやけど・・・」
「昨日ようやく立ち直ったというか・・・」
「そうみたいやな。それで、曲名はなんていうんや?」
唯華は返答に困った。テルーの唄はこの世界にないからだ。
「・・・T、まだ仮の名前しかないんですよね」
「アルファベット一文字かい。じゃあ、そのTとかいうのしばらく演奏してくれん?」
「お安い御用」
陽が完全に沈んだ後は、秘密の練習場に向かう。
そこは里見メディカルセンターの近くにある野原。
なぜ街のど真ん中に野原があるのか気にしてはいけない。
月が黒い雲に隠されつつあった。
ぬばたまの黝き月か吼ゆるとき
なるほど、十七夜の言ったことはこのことだったのだ。
俳句は情景に合った時に詠まなくてはいけない。
そんなことを思いながら、ヒノカミ神楽の練習を始めた。
この神楽を始めたのは小学生の時ぐらい。その時は辛かった。
しかし、余計な動きや呼吸を省くことができるようになってからは違った。
月が完全に隠されて、さらに暗くなったが、彼が神楽を止めることはなかった。
ふと、彼はこんなことを思った。
ホモビに合わせて神楽を舞ったらウケるんじゃないのか?
練習を止めて、野菜弁当を食べる。
その際、スマホでニュースを確認した。
「当時は若くお金が必要でした」
可哀想だが、これも誓いのためだ。