そして████になった転生者   作:にわかネット文化ファン

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誓いを忘れ、幸福に満ちていた日々

「・・・しっかりしてください、師匠」

 

「はは・・・すまんな、唯華。

私はもう駄目みたいだ」

 

「お父さん・・・」

 

「・・・ななか、一門を取り戻せ」

 

「・・・はい」

 

「唯華・・・いざという時はななかを頼む」

 

「・・・わかりました、師匠」

 

「それはそうと、お前は破門だ。二度と華心流に入るな」

 

「師匠???」

 

あの日の夢を見た。なぜ、師匠はななかを頼むと言った直後に破門したのか?

その謎がどうにも頭の中でぐるぐるとしている。

結局、それ以来、華道に手を出すことはなかった。

思えば、ななかの父が病に伏せるまで、彼の人生は幸せだった。

だが、華心流が乱れ始めてから、彼の心は冷える一方だった。

でも、もういいんだ。誓いを思い出したのだから。

それでも、やっぱり華道に手を出すのは恐怖を覚える。

また、あんなことになるのではないかと思うと・・・。

一旦、ネットの様子を確認する。ついに『野獣先輩』の考察が始まっていた。

淫夢文化はもともとの寛容さゆえに、ネットに浸透しつつあった。

あの文化の最大の長所は乗っ取りだからだ。

 

「・・・よしよし、良い感じだ」

 

他のホモビも発掘されつつあるので、ここで第二の投下を開始した。

はっきり言って、それは普通のホモビよりもはるかに危険だ。

そもそも、マギレコ世界にも存在していること自体が不思議だった。

見ている者の精神を破壊しかねないような代物なのに。

なにしろ、出演者でさえも・・・

 

「ンンッ… マ゜ッ!ア゛ッ!↑」

 

と叫んでしまうくらいのホモビだからだ。

だが、もはや誓いに従って生きる唯華にためらいなどなかった。

たった数十分で、ネットの掲示板は阿鼻叫喚という状況になった。

少しの罪悪感を覚えながら、彼は出かけた。

街は心地よい日差しと風に包まれていた。復興が進んでないけど。

特に用事があるというわけではない。ただ、散歩したいだけなのだ。

こうしていると、ここが本当にゲームの世界なのか怪しくなってくる。

彼を暖かく照らす太陽も、彼を優しく包み込んでくれるそよ風も、現実(Real)

決して虚構(Fiction)なんかじゃないと、断言できる。

自分はマギレコに生きているのではない。現実に生きているのだ。

現実という名の幸福が、彼に温もりを与えてくれている。

これは唯華がすっかり失った幸福。そしてようやく取り戻しつつあるもの。

ひかるという少女には感謝しなくてはいけない、と彼は思った。

熱意を失っていた唯華に再び熱意を与えてくれたのだから。

 

「・・・いい天気だ」

 

思えば、散歩といった形で外に出ることがなくなっていた。

あの頃は本当に幸せだった。

アリナと意見をぶつけ合いながら散歩していた。

 

「だからフラワーボーイの絵は生き生きとしすぎているんだってノ!」

 

「うぐっ・・・でも、仕方ないじゃないですか。人間好きという表現をするためには・・・」

 

「・・・二人とも、何言っているのかわかんないの」

 

幻覚だったのだろうか?唯華とアリナとかりんが一緒が目の前で歩いていた。

手を伸ばそうとすると、ふっと消えてしまった。やはり幻覚だったのだ。

 

「よいしょっと・・・重いな」

 

「まったく・・・一人で全部持つなんて・・・」

 

「いえいえ、これくらいは余裕ですよ。ななかさん」

 

華道のための花を運んでいる唯華とななかが目の前に現れたが、それも消えてしまった。

 

「お前はいったいどうやって芸を身に付けたんだ?」

 

「練習」

 

嘘ではない。あくまで誓いの効力でやりやすくなってるだけで、努力は必要なのだ。

事実、ヒノカミ神楽を習得しようとして、小学生の時は何度も血を吐いた。

なんの努力もなしに王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を使える二次創作の主人公が羨ましいくらいだった。

 

「練習・・・なるほど、それも一つの才能といえるか」

 

「そうなんだよな・・・俺よりもたくさん練習して、すごく上手い人はごまんといるし。

結局、練習こそが本当の才能なんだよな。俺にはそんなのがないけど」

 

転生特典とやらよりも輝くのが『努力』であると、転生してから思い知ったのだ。

 

「お前が言うと説得力があるな・・・それでも、お前はすごい奴だ」

 

そんな唯華と十七夜の姿もふっと消えてしまった。

物事が暖かく単純で、夏の太陽と冷たい草に満たされていた日々・・・。

それはもう二度と手が届きそうになかった。

失ってしまったものを思い出す度に、彼の心は凍り付く。

どうしてこうなってしまったのか、考えようとする。

その度に、やはり彼の心は凍ってしまう。

心が悲鳴を上げているのも感じ取れた。

また幸福が逃げてしまうのではないかと震えてしまいそうになる。

こういう時、どうすればいいか。彼は知っていた。

 

「よし、神楽の練習しよう!」

 

過去を振り返るな。今に熱中しろ。

そうすれば、辛い事も忘れられ・・・

 

「この馬鹿!」

 

後に、唯華が殴り飛ばされた距離を計測した者がいる。

その者による計算によると、だいたい百メートルくらい吹っ飛ばされたそうだ。

 

「なーにが、練習しよう、よ!さっきからうじうじと・・・!」」

 

「・・・阿見莉愛、突然殴るとはどういう了見だ?」

 

「アンタが私をイライラさせたからに決まっているわよ!

いい加減、過去をちゃんと直視しなさい!

どうしてアンタが幸せを失ったのか、ちゃんと見なさい!」

 

その瞬間、新しい映像が彼の目の前に現れようとしていた。

しかし、彼はそれを根性で打ち消した。見たくない、とにかく見たくない!

 

「やだ!小生やだ!」

 

その後、唯華が巨大なクレーターの真ん中で倒れているのが発見された。

 

「・・・先輩、あの人って確か”神浜のダヴィンチ”って呼ばれてる人ですよね?」

 

「そうよ、つい最近までスランプの真っ只中だったわ。

ようやく目がマシになったと思ったんだけど・・・」

 

「スランプだったんですか!?」

 

胡桃まなかも水名女学園に通っているので、自然と唯華のことは耳に入ってくる。

しかし、スランプだという噂は聞いたことがなかった。

 

「どうしてそんなことを知ってるんですか?」

 

「幼馴染だからよ」

 

「なーるほど、道理で先輩の名前を正確に答えられたわけですね。

それはそうと、あんな状態で神楽の練習できるんでしょうかね?」

 

「それは問題ないわよ。もともと小学生の時から血反吐を吐いて練習してたし。

どれだけ体がボロボロでも、今ではもう神楽の練習くらい余裕でこなせるわよ」

 

「い、いったいどれだけ過酷な練習だったんですか・・・!」

 

「そりゃ過酷に決まってるわ。ヒノカミ神楽だもん」

 

「・・・???」

 

まなかは亜米利加が何を言っているのか・・・

 

「阿見莉愛よ」

 

・・・加奈陀が言っていることを

 

「それは上の方にある国よ」

 

チッ、うっせーよ!反省してまーす。

 

「聞こえてるわよ?それが物書きとしての態度?だからお気に入り増えないのよ?」

 

「先輩、さっきから会話しちゃいけない何かと会話してませんか?」

 

とにかく、まなかは阿見莉愛が何を言っているのか理解できなかった。

ヒノカミ神楽はヒノカミ以外に踊れる人間が少ないのだ。

踊れたとしても、ヒノカミと比べると見劣りしてしまう。

その神楽を、阿見莉愛の幼馴染である唯華は小学生の時から練習してるというのだ。

 

「・・・うん?小学生のときから?」

 

ヒノカミがヒノカミ神楽の動画を投稿したのはここ一年のこと。

しかし、唯華は小学生の時から練習していたという。

ヒノカミは特定班の必死の作業により、十代後半であることはわかってた。

そして、唯華は十七歳である。

 

「・・・まさか」

 

「そのまさかよ。アイツがヒノカミよ。知っているのは極一部だけどね」

 

「えええええええ!?」

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