そして████になった転生者 作:にわかネット文化ファン
ある日の昼下がり、唯華は調整屋でケーキを食べながら原稿用紙と睨めっこしていた。
リヴィア・メディロスからちょっとした無茶振りがあったからだ。
「・・・文学、ですか」
「そう。アンタ、ダヴィンチと呼ばれてるんやろ?
小説や詩くらい簡単に書けるんちゃう?」
「ダヴィンチは小説を書きませんでしたが・・・」
「そう固い事言わんといてや。
ウチらの事情、ちょっとは知ってんやろ?
まあ、”お客様”が来ても退屈させないために欲しいんや」
「・・・」
「小説か詩、どっちでもええで?」
「・・・」
有無を言わせないプレッシャーに押されて、仕方なく引き受けた。
みたまの調整屋で作業しているのは、雰囲気が落ち着いているからだ。
あっ、ケーキは買ってきたものなのでご安心を。
本当は文学なんかやりたくなかったのだ。
「動くと当たらないだろ!動くと当たらないだろ!」
汚い作業曲を止めた。それでも、状況は変わらなかった。
ふと、考えた。どうして自分は文学をやりたくなかったのか。
「どうしたの?」
「いや、考え事をしていただけだ・・・あれ?」
隣には誰も座っていなかった。自分は誰と会話していたのだ?
急に頭に激痛が走った。何も考えられない。
床に崩れ落ちる。何も見えない。
「調子はどうかし・・・唯華くん!?しっかりして!唯華くん!」
唯華は里見メディカルセンターに搬送された。
「調子はどうだい?唯華くん」
「・・・院長さん、また俺は血反吐を吐いて倒れたんですか?」
「今更、血反吐なんて君だったら吐かないだろ?
今回は精神的なショックによるものだ・・・原稿用紙と睨めっこしてたようだね」
「ええ・・・前みたいなことになってしまいました」
「まあ、しばらく安静にしているんだ。
それはそうと、君はここ最近予防接種を受けに来ていないようだね」
その瞬間、唯華はベッドから消えていた。
「恐ろしい結末を悟ったな・・・逃がすか」
唯華は走って、走って、ロビーの方まで逃げてきた。
しかし、既に院長はそこに立っていた。
「さ、先回りされただと!」
「この注射針が光って唸る!お前に刺せと輝き叫ぶ!」
グサッ
「アー、逝く・・・」
チーン
「病院内で医者に勝てると考えないことだな・・・もう聞こえてないか」
予防注射には気を付けよう!
ACジャパンはこの活動を応援してくれていたらよかったのに
・
・
・
なんやかんやで、唯華はベッドに戻された。
「また昔みたいに一緒なの!」
「ふーん、アンタが唯華?覚えてないケド」
「・・・」
しばらくすると、阿見莉愛とまなかがお見舞いに来てくれた。
「・・・二度と文学はしないと誓ったのは誰だったかしらね?」
「うぐっ・・・」
「ほら、愛媛県名物の大番よ。これ食べて元気出しなさい」
「まなか特製のオムライス弁当ですよ!みんなで食べてくだ・・・。
なんか、いてはいけない人がいるような気がするんですが、先輩」
「気にしちゃだめだわ」
その帰り道、まなかはあることが気になった。
「先輩、そういえば唯華さんはどうして文学をしていないんですか。
あれだけたくさん芸があるのに、文学だけは・・・」
「・・・彼も人間っていうことよ。
どれだけダヴィンチだの万能人だの天才だと称えられていてもね」
「・・・?」
「まなか、あなたは恋愛したことがある?」
「・・・ありませんね」
「唯華も昔は付き合ってた女の子がいたの」
「ホモじゃなかったんですか」
「その噂、間違いなくデマよ。浮いた話が少ないせいね」
その時、二人はななか一派にばったりと出会った。
「むむっ、この流れからして、ななかさんと付き合ってたことに・・・」
「違うわよ、サブタイトル見なさい。確かにななかさんとも仲良かったけど」
まなかはスマホを取り出し、サブタイトルを確認した。
「・・・かこさんと?」
「・・・」
かこは静かに頷いた。
「先輩、三年前と言いましたよね???
その時、かこさんは小学四年生くらいのはずですが???」
「・・・唯華は十四歳だから、四歳差で済むわ。わ、私だって最初は反対したのよ!」
しかし、無情にもかこを除いたななか一派は魔法少女姿に変身していた。
「・・・かこさんは帰ってください。これから血が流れますので」
「ロリコンは絶対に許さないネ」
「かこに手を出すなんて、ボクは絶対に許さない・・・!」
「唯華くん、死相が滲みでてるの!」
「えっ!?」
とりあえず、阿見莉愛、まなか、かこの三人は神浜現代美術館に訪れた。
「先輩、どうしてここに連れてきたんですか?」
「見せたいものがあるからよ・・・かこさん、見せても大丈夫かしら?」
「ええ、大丈夫ですよ。いい思い出みたいなものですから」
三人はある絵の前に立った。
美しい絵だった。そこには鮮やかな緑色の長髪の少女が描かれていた。
ルネサンス様式の絵だ。作者名は聖道唯華。
「・・・もしかして、かこさんですか」
「ええ、昔は髪を長くしてたんです」
「確かこれは・・・唯華が中等部一年生のころに書いてたはずよ」
「先輩、だんだんアウトに近づいていますよ???
つまり、この絵のかこさんは九歳っていう計算になるじゃないですか???」
「・・・一目惚れ、って唯華は言ってたわ」
かこは恥ずかしそうに顔を赤くした。
まなかは考えるのをやめ・・・ようとしたら阿見莉愛にビンタされた。
「しゃんとなさい。今はあなたが一番のツッコミ役なんだから」
「あっ、はい」
それから阿見莉愛は唯華とかこの出会いについて話し出した。
ある日、偶然にも唯華は夏目書房の前で血反吐を吐いて倒れた。
「その日の神楽の練習は厳しいものだったわ。
いくら中学生とはいえ、彼の肉体には負担が大きかったのよ。
それなのに、私がいくら止めようとしても、言うこと聞かずに遊びに出かけたの・・・。
だから、家で休んでろって言ったのに・・・思い出しただけでもイライラしますわ」
幸運だったのは、夏目書房の前だったということだろう。
倒れた唯華を、かこが発見してくれたのだ。
そして・・・。
「私に一目惚れして、急に治ったっていうんです」
「先輩、考えるのやめていいですか?」
「まだ駄目よ」
さらに言えば、偶然にも美術の先生から出された宿題が彼にはあったのだ。
「・・・その宿題をやった結果が、これですか」
「そうです。あまりにも美しいのでこの美術館に展示されることになりました」
「なんの脈絡もなく出てこないでください、麻友先輩」
「美術館のあるところ、私あり。マギレコRTAの基本ですよ?
私が好きな走者の皆さんは、積極的に美術館に来てください」
「作者が器物損壊罪で訴えられなくても、詐欺罪で訴えられますよ?」
話が脱線しそうになったので、阿見莉愛は麻友を腹パンで気絶させた。
「・・・さて、話を続けますわ」
それから一年ほど、彼は夏目書房に通うようになり、紆余曲折あって二人は付き合った。
「シャマラン監督並みに無駄な贅肉のない地の文ですね。
これだったらセリフの多いハムレットだって簡単にまとまりますよ」
王子さまはおじさんがきらい
さあ大変
WRITTEN AND DIRECTED BY M.NIGHT SHYAMALAN
「仕方ありませんわ。かこさんをいじめようとした奴をヒノカミ神楽でボコボコにしたり、
かこさんに贈るためのを探しに住民が全員人形の不思議な街に行ったり、
かこさんに危害を加えそうな悪魔の箱とやらを処分するために鉄道の旅に出たり、
誘拐されたかこさんを助けにデスバレーに乗り込んだり、
考古学者兼ロイド保険組合調査員の元軍人と一緒にかこの好きな物を推理したり・・・。
挙句の果てには、かこさんのお父さんとサーベルで決闘したり・・・。
それ一つ一つを書くだけで文字数がとんでもないことになりますわ」
「とんでもない紆余曲折ですね。これはシャマラン監督が必要そうです」
ここで麻友が復活した。
麻友「地の文減らして、SSみたいにすればいいんですよ」
あきら「今日は素敵な日ですね」
美雨「花も咲き誇って、小鳥もさえずってるネ」
ななか「こんな日にこそ、唯華さんみたいなロリコンには・・・」
ななか・あきら・美雨「地獄の業火に焼かれてもらおう」
唯華「」
麻友「ほら、文字数少なくなったで・・・」
亜米利加「阿見莉愛よ。これ以上脱線するといけないから、眠ってもらうわ」
阿見莉愛は麻友の頭を掴み、彼女を壁に叩きつけた。
彼女はぐっすりと気絶した。
「・・・唯華さん、大丈夫でしょうか?」
「ゆーくんだったら大丈夫ですよ。強いので」
「あっ、唯華さんのことゆーくんって呼んでるんですね」
ここで、まなかは閃いた。
「わかりました!まなか、わかりました!
おそらく、唯華さんとかこさんは酷い別れ方をしたんです!
そのショックで・・・」
まなかは床に叩きつけられ、巨大なクレーターが完成した。
「・・・ごめんなさいね、かこさん」
「いえ、いいんです。ある意味当たっているので」
まなかは血を流しながらも、根性で立ち上がった。
「ある意味・・・?」
「・・・唯華とかこさんは円満に別れたわ。
でも、人によっては酷い別れ方とも捉えられるわ」
「そ、それは一体どういうことですか・・・?」
しかし、これ以上は文字数が多くなりすぎる。
「「「えっ」」」
続く
そのころ・・・
院長「病院で暴れるんじゃない」
ななか一派(かこ除く)「もうダメだ…おしまいだぁ…」
かりん「唯華先輩、息してないの!」