永遠の親友(ライバル)   作:烊々

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おまけ

 ネプギアとユニの激闘から数日後、コロシアムにて、二人の女神が向かい合いながら立っていた。

 

「珍しいですわね。ブランから試合の誘いとは」

「……確かにそうね」

「まぁ、理由はわかっていますわ。ネプギアちゃんとユニちゃんの戦いに触発されたのでしょう?」

「……わかっているなら話は早いわ。あんなものを見せられたら、戦いたくてしょうがなくなってしまうでしょ?」

「ふふ、ちょうど良いタイミングでしたわ。あなたが誘ってくれなかったら、私から誘おうと思っていましたし」

「そう、なら始めましょう。……あ、ネクストフォームは無しにした方が良さそうね。あれはシェアを多く消費してしまうから」

「そうですわね。流石にこんな野試合で大量のシェアを失うわけにはいきませんもの……では」

 

 そのまま両者とも変身し、武器を構える。

 

「久しぶりですわね、あなたとこうして一対一で戦うのは」

「そうだな。さぁ、どこからでもかかってきやがれ!」

「それはこちらの台詞ですわ!」

 

 急遽始まった試合により、当然実況も解説もなく、適当なタイミングでの試合開始となった。

 

 スピードタイプの近接アタッカーであるベールと、パワータイプの近接アタッカーであるブラン。MOV(機動力)もAGI(瞬発力)もベールの方が圧倒的に上。ブランから攻撃を仕掛けても、ベールの速さで簡単に捌かれる。しかしDEF(物理防御力)とMEN(魔法防御力)はブランの方が圧倒的に上。ベールが戦闘の流れを握れても、ベールの攻撃のタイミングに合わせてブランにダメージ覚悟で突っ込んで来られると、逆にベールの方が大きなダメージをもらうことになる。

 

 つまり、この二人の戦いは攻撃を仕掛ける側が不利。所謂『待ちゲー』に徹した方が有利となる……

 

「「はぁぁぁっ!」」

 

 ……のだが、二人ともそんな戦い方はするつもりは微塵もなく相手の方に接近していく。その理由は単純、『そんな勝負は面白くないから』

 

「『ツェアシュテールング』……!」

「『レイニーラトナビュラー』!」

 

 ブランの大振りの一撃の前に、ベールは持ち前の速さを活かした槍の連撃を刺しこみ、ブランの技が出る前に潰そうとする。

 

「……らぁっ!」

 

 しかしブランは敵の攻撃が当たろうがお構いなしに技を出し、ベールに斧を叩き付けようとする。ベールは咄嗟に身体を大きく捻らせ回避するが、それにより大きく態勢を崩したところに、ブランはそのまま追撃と言わんばかりに斧を振り下ろす。

 

(くっ……攻撃を当てているのに怯まない……まるでスーパーアーマーですわね……っ! ブラン本体に攻撃を当てて技を潰すのは不可能……ならば!)

 

 斧が振り下ろされる瞬間、迅速かつ的確に斧の側面に槍を突き出し、最小限の力で斧の軌道を逸らす。

 

(ちっ、私じゃなくて武器の方を狙ってくるか……けどな!)

 

 ブランは攻撃の仕方を変える様子はなく、振り下ろされる斧は何度も軌道を逸らされて宙を切る。しかしそれでもなおブランは攻撃の仕方を変える様子はない。

 

 そう、ブランの狙いは単純。半端な力を込めて狙いを逸らされるなら、逸らされないぐらいの更に強い力を込めればいい。

 

(力ってのは、正義なんだよ!)

 

 段々と増していくその力を前に、ベールは斧の軌道を逸らせなくなっていくのを察する。

 

(なんというパワー……正面からやり合うのは流石に分が悪い……少し距離を取りましょうか)

 

 ベールは叩きつけられる斧の衝撃を利用して後方に飛んだ。一先ず逃げの一手を打ったとはいえ、距離を取ってすぐに攻めに転じる。

 

「『シレットスピアー』!」

 

 技名と共にシェアエネルギーにより創造された巨大な槍がブランに向かって射出される。

 

 迫り来る巨大な槍をブランは避けようとはしない。それどころか両手を動かす素振りすら見せない。

 

「……たぁっ!」

 

 ブランの迎撃方法はまさかのヘッドバット。気合の入った掛け声と共に巨大な槍に思い切り頭をぶつけてそれを粉砕する。

 

「……嘘でしょう?」

 

 自分の技が容易く破られたことよりも、その迎撃方法に驚きを隠せないベール。

 

「頭は使いようってな」

 

(そういう意味じゃないでしょうに……流石の耐久力ですわね。なら、戦い方を変えましょうか)

 

 ベールの次の戦法は、ブランの周りを高速で旋回しヒットアンドアウェイを繰り返す機動戦。ブランが迎撃のために斧を構えた時には既に背後に回って攻撃をする。刺突だけでなく時には風魔法の攻撃を織り交ぜ、ブランの耐久力を少しずつだが確実に削っていく。

 

(くっ、流石に速え……斧振り回して迎撃すんのは難しいな。ならまずは、動きを止める! これ使うの久しぶりだな……)

 

 ブランは、ベールが攻撃のために再び接近してくるタイミングを狙い……

 

「そこだっ! 『エターナルフォースブリザード』!」

 

 氷魔法による範囲攻撃で迎撃する。

 

「しま……っ!」

 

 予想外の一手により反応が遅れたベールは接近を止めきれず、そのまま氷塊に閉じ込められる。

 

「粉々にしてやるよ……『テンツェリントロンペ』!」

 

 無防備になったベールに対し、繰り出されるブランの大技。

 

(……そういえばルウィーは魔法の国ですものね。その女神であるブランに魔法が使えないはずはありません。けど、こんなもので私の動きを止めた気になってもらっては困りますわ!)

 

 ベールは即座に内部から氷塊を破壊して拘束を脱し、ブランの斧を回避する。

 

(一瞬かよ……やっぱ私の魔力じゃあんなもんか)

 

「……妹たちの魔法を使ってくるなんて、妹がいない私への当て付けですの?」

「そういうわけじゃねえよ。それに元々これは私があいつらに教えた魔法だ。あいつらが使う方が強いから、私は使うのをやめたんだけどな」

「……妹が優秀なのも考えようですわね」

「まぁな……なぁベール」

「何ですか?」

「さっきお互いネクストフォームは無しって言ったけどよ。やっぱそれやめねえか?」

「……はい?」

「本気じゃねえお前に勝っても何も面白くねえ。お前だって本気じゃねえ私に勝ったところで何も面白くねえだろ?」

「それは……」

「正直お前にはノリで挑んだけど、実際やり合ってみてわかった。お前と戦うのは楽しいよ。だから悔いは残したくねえ、本気のお前と本気でぶつかり合いてえんだ」

「全く、変身で消費したシェアを取り戻すのも楽じゃないんですのよ?」

「そうか……」

「……けど、私もそう言おうと思っていたところですわ! 本気で戦いましょう、ブラン!」

 

 両者ともハイパーシェアクリスタルを顕現させ、それを使用しネクストフォームへと変身する。

 

「ノリが良くて助かるぜ! さぁ、第二ラウンドを始めるか、ベール!」

 

 ネクストフォームに変身すると、ブランは機動力が大幅に上昇し、ベールは攻撃力と防御力が大幅に上昇する。つまり、先ほどあった二人のステータスの差がある程度均されるということである。そして、ステータスがほぼ同じなら、勝敗を分けるのは戦闘技量の差。

 

 しかし、二人ともこのゲイムギョウ界の戦闘力の頂点を極める守護女神であり、その差はほぼないに等しい。

 

 コロシアム内を縦横無尽に飛び回りながらぶつかり合う二人。そのあまりにもスピードから発生する残像が、まるでオーロラのような輝きを放つ。

 

「『ゲフィーアリヒシュテルン』!」

 

 ブランは細かい氷塊を斧で弾いて撃ち出す。

 

「甘い!」

 

 ベールは両手で槍を高速で回転させ、その全てを弾き飛ばす。

 

「お返しですわ! 『インビトウィーンスピア』!」

 

 今度はベールが小型の槍を大量に召喚し、ブランに向けて射出する。

 

「……!」

 

 ブランは斧を盾のように構え、怯むことなく槍の雨の中を突き進む。

 

(やはり飛び道具などでは削れもしませんわね。直接技を叩き込むしかありませんか)

 

 槍の雨の抜けたブランはそのまま斧を叩きつける。対するベールは槍を思い切り突き出す。

 

 ガツン、とお互いの武器がぶつかり合う鈍い音が鳴る。

 

「「……っ⁉︎」」

 

 そのあまりにもの衝撃にお互いの武器が腕から離れ上空に吹き飛んでいってしまった。それを拾いに行くことはせず、拳を突き出すブラン。

 

「おらぁ!」

「くっ……⁉︎」

 

 対してベールは、一瞬だけ飛んでいった槍を拾うことに意識が向いたため、反応が遅れてしまっていた。

 

(反応が遅れた! 今は受けに回るしかありませんか……!)

 

 ベールはその突き出された拳を、上手く掌を使いいなしていく。

 

(ちっ……やるな! だが!)

 

 ブランはベールがいなす以上に鋭く何度も拳を突き出す。

 

(知り合いに徒手空拳で戦うやつがいるからな! 多少の心得は私にもあるぜ!)

 

 そして、ついにいなしきれなくなったブランの拳がベールに炸裂する。

 

(……痛っ! 全く、乙女の顔を……! けど、隙ができましたわ!)

 

 そう、ベールはあえて拳を受けることを選んでいた。そして、その瞬間に発生した僅かな隙を狙い、ブランの横腹に蹴りを叩き込む。

 

「がはっ……!」

 

 打撃と蹴りの衝撃でお互い吹っ飛ばされ、その先にちょうどよく落ちていた武器を手に取り、仕切り直す。

 

「はぁ……はぁ……」

「ふぅ……」

 

 二人とも少しずつ息が上がってきていた。ネクストフォームは通常の変身以上の絶大な力を得ることができる代わりに消耗が早い。手を抜けない同格の存在が相手なら尚更。

 

 しかし、二人ともそれを表情に出すことはない。それどころかうっすらと笑みを浮かべている。今二人が感じているのは、疲労や苦痛よりも、目の前の相手と全力でぶつかり合うことができることの愉悦。

 

 とはいえ、消耗を気にしなくてもいいわけではない。当然、望まずとも限界は来る。

 

(あと……一、二ターンってところか……)

 

 そして限界が近いからこそ、両者とも100%……否、120%の実力を発揮するに至っている。

 

(最高の気分ですわ。この瞬間が永遠に続けばいいのに、とすら思ってしまいますわね。でもお互い限界は近い。だからこそ……!)

 

「最高の幕引きを飾ってあげましょう!」

「上等だ! アゲてこうぜベール! 私とお前! 最後のぶつかり合いだ!」

 

 ブランは自身のシェアエネルギーを最大まで高め、新たな武器を創造する。

 

「『ブラスターコントローラー』!!」

 

 ネクストホワイトの究極必殺技、巨大なビーム砲で敵を焼き尽くす『ブラスターコントローラー』。いくらネクストフォームとなったベールでも直撃すればひとたまりもない。

 

(決めにきましたか……っ! しかし、そんなもの私には当たりませんわ!)

 

「おらぁああっ!」

 

 ブラスターコントローラーから大出力のビーム砲が放たれるも、当然にようにベールには回避される。

 

(まぁ当たんねえよな……なら、絶対に当たるようにしてやるよ!)

 

「うおおおおおおおおおあっ‼︎」

 

 ブランはブラスターコントローラーを持ち上げて振り回す。それにより、当たったらひとたまりもないビーム砲が全方位に飛ぶことになる。正に、必殺を必中へと昇華させる術であった。

 

「嘘……っ⁉︎」

 

 もはや逃げ場などどこにもなく、ベールはビームの光に呑みこまれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……かのように見えた。

 

「はぁぁぁぁぁぁああっ‼︎」

 

 なんと、ベールはビームを突っ切ってきたのだ。

 

「なん……だと……⁉︎」

 

 ビームを回避することは諦め、姿勢を低くし、必要最低限の範囲だけ前面にシェアエネルギーのバリアを貼り、真正面から突撃するという策。

 

 しかし、いくらバリアを張っていたとしても、大きなダメージであることには変わりはない。プロセッサユニットは所々破損し、身体中は傷だらけになっている。

 

 それでもまだ敗北はしていない。そして敗北さえしてなければ、どれだけのダメージを喰らおうと止まることはない。

 

「『スパイラルブレイク』ーー‼︎」

 

 必殺技の反動で無防備に隙を晒したブランに正面から炸裂するベールの必殺技。

 

(くそっ……私の負け……だな……)

 

 そして今度こそ、決着となった。

 

 

 

 

 戦いが終わり、静寂が支配するコロシアム。二人とも体力も気力も使い果たし、倒れ込んだまま動かない。

 

 横になりながら、先にベールが口を開く。

 

「今回は私の勝ちですわね」

「……そうね」

「けど、こんな一回の試合で私の方が強いなんて言うつもりはありませんわ。またやりましょう」

「当たり前よ、今度は負けないわ」

「こちらこそ、次も勝って差し上げます」

 

 それ以上何も喋ることなく、そのままゆっくり立ち上がりコロシアムを去る二人。今回の戦いは両者にとって、言葉を交わすよりも濃厚なコミュニケーションとなっていた。

 

 そして、その翌日から数日間、両者とも筋肉痛でまともに動くことができなかったという。

 

 




 他人様の作品と対戦カードが被ったのでお蔵入りにするつもりでしたが、ヤクz……フォロワーに詰められたので書き上げました。

 槍キャラと斧キャラの戦闘描写が思った以上に難しくかなり雑な内容になってしまい反省しています。

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