緑豊かなコロニー、ロンデニオン!
光あふれるコロニー、ロンデニオン!
観光はもちろんのこと、現地での冠婚葬祭、式典、その他イベント、
サイド1内でも環境が整った美しいコロニー、ロンデニオンは
そんな催しにまさにもってこいなユートピア!
皆さんも、ぜひロンデニオンにお越しください!!
「……っていうCM、よくやってるでしょ?」
いつもの空き地にスネ夫の興奮気味な声が響く。
「ええ、テレビ見てたらよくそんな旅行のCMやってるわね。」
ええっとと、日頃のことを思い出そうとするしずか。
「でしょでしょ!?」
「そのロン……なんたらコロニーがどうしたってんだよ?」
相変わらずテンションの昂るスネ夫に対して、ぶっきらぼうに質問するジャイアン。
「ええ、ごほん!失礼。ここで本題に入ります。不肖、この骨川スネ夫……みんなにいろんな場所への旅を提供してきたけど……ついに……ついに……!!」
勿体ぶり、これでもかとセリフためるスネ夫につられて、ジャイアンは思わず固唾をのんだ。
「ジャン!!手に入れました!!ロンデニオンコロニーへの切符を!!」
テンションに合わせて、スネ夫は手を後ろにしていたのを、勢いよく振り上げ、手にしている”3枚”の切符を掲げ、3人に見せつけた。
「ロンデニオン行きのコロニー?っていうことは……宇宙に行けるってこと!?」
しずかは、空を見上げながら聞き返した。
「ズバリ、その通り!!ついに、宇宙旅行にみんなを連れていけるんだ!!」
スネ夫はまさに勝利を宣言するかの如く、自身の人差し指を天に突き付けた。
「素敵!あの満天の星空を、直に眺められるのね!」
「おお~!ほんとかよ!!でかしたスネ夫!!俺は……俺はお前のような友をもって、今猛烈に感動している!!これからも永遠に深い絆でつながっていよう、心の友よ!!」
テンションと勢いのあまりに涙を流すジャイアンのオーバーリアクションに若干スネ夫は引き気味になっていた。
「宇宙に行くの!?じゃあ、何を準備すればいいんだろう!?歯ブラシかな?おやつかな?まくらか……」
というのび太の発言で、一瞬で凍り付くかのように、スネ夫は静寂した。そして次の瞬間……
「のび太さ、なんか勘違いしてない?」
「勘違い?」
のび太は今でこそ、鳩が豆鉄砲食らったような顔になった。
「誰ものび太連れて行くなんて言ってないんだけどな。」
「ええ~!?なんでさ!!?」
「なんでってそりゃ根本的な問題さ。だって切符は3枚しかないんだよ。」
スネ夫は自身が手にしている3枚の切符をしっかりとのび太の目の前に見せつけた。どうあがいても、何度のび太が目をこすっても、切符は3枚しかない。
言い出しっぺのスネ夫が行くのはもちろん、しずかとジャイアンを誘えば、ちょうど3枚使い切り、残りはゼロとなる。
「ぼくとしずかちゃんとジャイアンとで行けば、もう切符なんてないよ。そういうわけで悪いけど例のごとく、のび太の分は……」
もう、言わずもがなという感じで、スネ夫は最後まで言わずセリフを途中で切った。
「……ま、のび太くん。人生生きてりゃいろんなことあるって。」
うんうん、と頷きながらわざとらしく同情する素振りでのび太の肩をポンポンとたたくジャイアン。
そして、数分間の間を置いた後、のび太はゆっくりと飛び立つロケットのごとく、空き地を爆発するかの如く猛ダッシュで走り去っていった。
・・・
ドラえもんは、のび太の部屋でいつものごとく好物のどら焼きをほおばり、平穏を満喫していた。
平穏……と思っていたが、その空気は数秒後にかき消された。
「……この感覚はッッッ!!!!」
この瞬間は何もないが、ドラえもんは確かに感知していた。あたかも電気ショックを感じ取るかのような感覚だった。のび太の部屋から外の数メートル先から高速で向かってくる、プレッシャー……に似た気配を。
「……わかる。ものすごい勢いが、こっちに向かってくる……!!そしてこの感覚は、今に始まったことじゃない……もうずっとずっと前からある……!!」
ドラえもんは、そのだんだん近づきつつある感覚に、驚くことはなかったが、呆れを覚えていた。
そして次の瞬間。窓の外から……
「ド ラ え も~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!」
のび太の叫び声が、数メートル先、しかも窓を閉め切っているのにも関わらず、ビリビリとドラえもんの耳に響いた。
超音波のショックに、多少ひるんだ直後、「ああ、またか。」とドラえもんはどら焼きを掴んでいる手を下ろし、改めて呆れて、うなだれた。
部屋の下のほうで、玄関のドアが勢いよく閉まるのが分かる。そして激走するのび太の足音が、ドラえもんに近づいてくる。
そしてのび太の部屋のドアが勢いよく開いた刹那、泣きべそ書きまくったのび太が突撃してきた。
「ドラえもん!!」
と大声で突撃するのと同時に、のび太はドラえもんに抱き着き、その勢いでドラえもんは倒れた。
「……今度はなんだいのび太君?スネ夫に何を自慢された?それで仲間外れにされた?」
「すごい!まだ何にも言ってないのになんでわかるの!?ニュータイプ!?」
「これだけでニュータイプに……しかものび太君のそれでなれるもんなら、ジオン・ダイクンも頭を抱えるよ。」
「ひどい!!」
「こんなやり取りもう何十回……いや、何千回やってると思ってんの。それだけやってりゃいやでも覚えるよ。」
やれやれ、とドラえもんは抱き着くのび太を振り払って、起き上がった。
そして泣きじゃくりながら言うものでほとんどなに言ってるかわからないのび太の話をドラえもんは解読し、ことのあらましを聞いた。
「今度は宇宙旅行を自慢されたのか。しかもコロニーって……。」
「みんなで僕を仲間外れにして!!!!」
「……で、僕にまた宇宙へ行く道具を出せとでもいうの?宇宙旅行なんて過去に何回も行ってるのに、なんで今更そこまで泣きつくほど……。」
「だってスネ夫に自慢されて仲間外れにされたんじゃ、悔しくて悔しくて!!!」
「それもいつものことじゃないか。」
ドラえもんは食べかけだったどら焼きを一気にほおばり、一つを完食する。
「ま、僕がこのまま出し渋って、そのままギャーギャー喚かれ続けても困るから、なんか宇宙に行ける手ごろなものあったかな……?」
「なになに!?何かあるの!?」
ドラえもんが四次元ポケットに手を突っ込んだ瞬間、泣きわめいていたのから一転して、一気に期待の表情となるのび太。
するとその時、四次元ポケットの中から、けたたましい軽アラームのような音が鳴り響いた。
「な、なに!?」
あまりの突然の音に、のび太はドラえもんから飛び退いた。
「着信だ。タイム電話。」
ドラえもんは四次元ポケットからタイム電話を取り出した。先ほどのけたたましいアラーム音、もとい着信音が直に響いてくる。
「ドラミからだ……もしもし、ドラえもんです。」
ドラえもんはタイム電話の液晶に移っている通話ボタンを押すと、液晶にはドラミちゃんの顔が映った。
「あ、お兄ちゃん!つながった!!!」
「なんだいドラミ?なんか慌ててるみたいだけど。」
「ゆっくり説明してる時間はないの!単刀直入に言うから聞いて。」
液晶に映るドラミの表情は、何やら切羽詰まっている表情だった。
「お兄ちゃんよく聞いて……未来が……22世紀が……!!」
すると、ドラミの音声と画面にノイズが走り、まともな通話ができなくなった。
「あれ?つながりが悪い……ミノフスキー粒子が濃いのかな?もしもし!?ドラミ!?何があった!?未来がどうしたの!?」
ドラえもんは必死に電話に問いかけるがノイズは次第に激しくなり、やがては砂嵐がドラミの姿と声をかき消した。
そして、完全にノイズだけになった直後、ぷつりと通信が切れて、液晶画面は真っ暗になった。
「切れちゃった……ドラミちゃん、なんか必死に言ってたみたいだけど、未来で何があったんだろう?」
先ほどまで感情の起伏が激しかったのび太は、現在の異様な事態に不安な顔つきになった。
「……だめだ。かけなおしたけどつながらない。」
「圏外かな?」
「……いや、今、音声ガイダンスを聞いてるけど、その電話自体が存在しない扱いになってる。」
ドラえもんはタイム電話を必死にいじくりまわした。しかし、いじくればいじくるほど、ドラえもんの表情は険しくなっていった。それを見たのび太も、つられてさらに不安さを増す。
「な、何ドラえもん?さっきからなんかだんだん怖い表情(かお)になってるけど……どうしたの?」
「……おかしい。」
「おかしいって?」
「このタイム電話は、通話するだけでなく、カメラ機能とかを通して、いろんなデータが入ってるんだ。」
「それがどうしたのさ?」
のび太はドラえもんが手にしているタイム電話の画面を覗いた。
「その中に入ってるデータ……特に未来で撮った写真とかなんだけど……次々と消えて行ってるんだ。」
「それって機械の故障じゃないの?」
「それも考え……いや、その兆しはない。何も操作していないのに、勝手に消えて行ってる。故障だったら一気にデータが消えるはずなんだ。それも一個一個ゆっくりと……不気味だ……あ、また消えた!!」
タイム電話の液晶画面に表示されていたデータフォルダの中身は、先ほどまで画像ファイルで敷き詰められていたのは、のび太も確かに目にしていたのに、次の瞬間一個一個消え始め、フォルダには真っ白の画面が表示されるだけとなった。
「あ、ほんとだ!みんな消えていく!」
「いったい何が起こって……ああっ!?」
そしてついには、ドラえもんが手にしていたタイム電話そのものが消えた。フェードアウトするように消えてしまったのだ。
「た、タイム電話が!!!」
「……まさか……まさか!!!」
すると何かに気が付いたドラえもんは、四次元ポケットを激しく探り出し、中に入っている秘密道具を追い出すかのようにすべて外に出した。
「……あった。これだ。」
「その本は何?」
ドラえもんの手には一冊の少し古こけた本があった。
「22世紀の歴史書だよ。今までこの地球上で起こった出来事が自動で追記されていくんだ。」
ドラえもんは本の説明をしながらパラパラとめくっていく。
「……やはりそうか。」
「どうしたのさドラえもんさっきから!」
「簡単に言うよ、のび太くん……僕のいる22世紀は……未来は……。」
ドラえもんの声は先ほどとはさらに重いものになっていた。そんな険しい空気に固唾をのむのび太。
「未来の世界は……消えてしまった。」