フィフス・ルナのシャアとギュネイがいる地点からかなり離れたところに、人影があった。のび太とドラえもんである。彼らはビームライフルを受けたにもかかわらず生きていた。
「……間一髪だったね、ドラえもん。」
「どこでもドア……こういう使い方をするとは……。」
彼らのそばには、半壊したどこでもドアがあった。黒焦げになって周りに破片が飛び散り、上の半分がなくなってスパークしており、とても正常に使えるような姿ではなかった。
そう、ドラえもんたちはヤクト・ドーガのビームを受ける寸前に、どこでもドアを出して別の場所に移動することで回避していたのだ。のび太とドラえもんは無事だったものの、ポケットにしまう前にどこでもドアがビームの爆風をもろに受けてしまい、大破してしまったのだ。
それが上記の状態である。
「もうこれで、どこでもドアも使えない……。」
息が上がりながらも、また一つ道具がなくなってしまったことにのび太は少しさびしさを覚えた。
「感傷に浸ってる場合じゃないぞのび太君。どこか適当にあいつらから離れた場所をセットしてここに来たけど、運がいいことに機動部の近くに来たみたいだ。」
ドラえもんが指さすと、フィフス・ルナの地表からエンジンのノズル等の機器がむき出しになっているのが見えた。
「あのロケットブースターみたいなもので、小惑星を動かしていたんだ。そこに爆弾を仕掛ければ……。」
「隕石を壊せるの!?」
「それしかない!」
ドラえもんとのび太は視認できているエンジンブロックに急いで向かった。
・・・
「ギュネイ。ここももう危険だ。探すのもたいがいにして、引き上げるんだ。お前にはまだ手伝ってもらう仕事があるからな。」
「はい。ですが、ギリギリまで粘って、だめだったら戻ります。」
シャアの乗るサザビーは速やかにフィフスを後にし、残ったヤクト・ドーガは引き続き捜索に出た。
「どうも……まだどこかにやつらがいるような、そんな気がするんだよな……。」
・・・
「着いた!!動力部だ!」
「でっかい……!」
のび太の視界には、半径でも数kmある核エンジンのノズルが目に入った。
「こんなでかいの壊すのに、その爆弾で大丈夫なの?……見てくれは例の地球破壊爆弾だけど。」
過去のネズミと爆弾の思い出があるからか、のび太は少し言葉を濁した。
「大丈夫。威力はしっかりしてるし、地球の破壊にまでは至らない。」
ドラえもんは改めて小惑星破壊用の爆弾を取り出し、起爆装置を操作した。がしかしまだ点火までには至っていない。
「この辺なら、うまく爆破できるはずだ。」
ドラえもんが爆弾を設置しようとしたその時……
「やはり生きていたか!!」
聞き覚えのあるスピーカー越しの声がドラえもんたちの後ろから響いた。ギュネイのヤクト・ドーガだった。
「あーっ!!さっきのロボット!!」
「念のために動力部のほうを確認しておいてよかったぜ。ここをやられちゃたまったもんじゃない。」
ヤクト・ドーガは臨戦態勢に入った。
「お前たち、ここがどういう場所かわかっているのか?フィフス・ルナの動力部だ。ここをやられてしまって、フィフスが落ちなかったりしたらたまったもんじゃないんだよ。」
「いくらネオ・ジオンでも、民間人を撃ってもいいのか!?」
ドラえもんはギュネイに負けじと訴えた。
「大気圏突入直前でこんなところに、しかも生身でいる民間人のほうがありえないだろ。」
「た、確かに……。」
「ドラえもん!敵に言われてどうするの!!」
いろいろと殺伐としている状況ではあるのに、思わずいつもの日常でも出そうなツッコミを入れるのび太。
「さっきは何の手品を使ったか知らんが、今度こそ仕留めてやる。」
ヤクト・ドーガは改めてビームライフルを構え、のび太たちに銃口を向けた。
「まずい!逃げろのび太君!!」
ドラえもんの号令で二人は即座に逃げ出した。
「こんな狭い場所で逃げ道なんてあるのかよ。」
挑発するかのようにギュネイは吐き捨てた。
「どこに逃げるのさドラえもん!!」
「通り抜けフープ!!」
ドラえもんは走りながら通り抜けフープを出した。
「何をするつもりか知らんが逃がすかよ!!」
ギュネイはすかさずヤクト・ドーガのビームを撃った。放たれたビームはのび太たちに向かって一直線に飛ぶ。そしてビームは向かいの壁に着弾した。フィフス・ルナ動力部の壁は戦闘も想定して作られているため、ちょっとやそっとのビームでは崩れず、黒い焦げだけができた。
その焦げの下に通り抜けフープでできた黒い穴があった。
「……なんとなくわかるぞ。あの下の穴ににげたな?」
ギュネイの考察通り、ドラえもんたちは通り抜けフープを使った回避に成功し、壁の向こうに逃げていた。
「やーいやーい!そんなでかい図体だったら、ここまで来れないだろー!!」
「のび太君、あんまり煽るなよ。」
ヤクト・ドーガの攻撃が届かないと確信して大人げなく挑発するのび太を、ドラえもんは注意した。
「……それで逃げたつもりかよ。ファンネル!!!」
ヤクト・ドーガの肩部にある6基のファンネルのうち2基が装甲から離れ射出された。
ファンネルはうまいこと1基ずつ通り抜けフープを潜り抜けた。侵入したファンネルはのび太たちの視界に入った。
「何このドラム缶みたいなやつ?」
ファンネルが何なのか把握できていないのび太は不用意に近づいた。
「危ない、のび太君!!」
ドラえもんが叫ぶのとファンネルからビームが出るのと同じ瞬間だった。
ビームは放たれたものの、のび太は間一髪回避した。
「そんな武器あり!?」
「逃げろーっ!!」
ドラえもんたちは再び逃げ出した。なるべく狭い廊下を選んで進んでいるが、ファンネルがどこまでも追ってくる。
「表に出ればモビルスーツが……かといって狭いところに入れば、あの小型遠隔兵器が……。」
「どうするのさドラえもん!?」
「今考え中!!」
正直なところ、全速力で走っているので、考えている余裕がないのがドラえもんの本音だった。
そんな時、通路の分かれ道でのび太にはあるものが目に入り、分かれ道を一瞬通り過ぎたところを後戻りした。
「のび太君なにやってんの!早く!」
「ドラえもん!これどうだろう!?」
のび太は分かれ道の前に立ち、その先にあるものを指さした。彼の指さす方向を見るべく、ドラえもんも分かれ道のところまで戻った。
ドラえもんはのび太の指さす方向を見ると、そこには開けた場所に連邦軍の主力モビルスーツ、ジェガンが横たわっていた。
「モビルスーツ……やられた奴が残っていたのか。」
「これを何とか動かせるようにしたら、あいつに対抗できるじゃないかって……。」
ドラえもんはジェガンに接近し、破損個所を確認した。今あるジェガン手足どこも欠損しておらず五体満足で、ところどころに装甲が破壊され、中の部品が露出しているところがあちこちある状態だった。
「これを直して使うつもりかい?だとしてもどうやって?」
「……タイムふろしきで何とかならない!?大きいからそれをビッグライトを使って……。」
「そうか……でも、まだあるかな……!?」
タイム電話やスモールライトのように、タイムパラドックスでなくなっていることも考えていたため、ドラえもんは恐る恐る四次元ポケットを探った。
「……よかった、まだあった!タイムふろしきとビッグライト!!」
「やった!これで早くこのロボットを直そうよ!」
道具が消えてしまう前にすぐさまドラえもんはタイムふろしきをビッグライトで、ジェガンを覆いかぶせるぐらいの大きさに拡大した。
「のび太君、反対側持って!」
「OK!」
二人掛かりで巨大なタイムふろしきをジェガンにかぶせた。
「これでいい感じに治ってくれるといいけど……。」
数秒後にタイムふろしきをジェガンから剥がした。すると、先ほどとは打って変わって、傷一つないジェガンが姿を見せた。
「やったー!なおった!」
「あとはちゃんと起動できるかどうかを……。」
ドラえもんとのび太はジェガンのコクピットに入った。そしてドラえもんが席についてコンソールパネルをいじくろうとするが、そこで手が止まってしまった。
「どうしたのドラえもん!?早く動かそうよ!!」
「……のび太君。僕は確かに未来から来たネコ型ロボットだけど……。」
「???」
「モビルスーツの動かし方……知らない。」
「ええええええええええええええええっ!?」
“まだチャンスがあると思った矢先にここまで来て!!”と激しくそう思ったのび太は直後ひどく落胆した。
そして今ののび太の叫び声が聞こえたのか、ヤクト・ドーガが近くまでやってくるのが分かった。ジェガンの中にいるドラえもんとのび太は一瞬凍り付いた。
「鬼ごっこは終わりかと思ったら、モビルスーツ(しかも連邦の)を見つけたのか。」
ギュネイの言葉からして、どうやらドラえもんたちは彼の視界に入っているようだ。
「まあ乗っていようが関係ない。ここで一気に落としてやる。」
「わぁぁどどどドラえも~ん!!」
敵が目の前まで来ているのに何もできない。なすすべがない。完全にパニックを起こしたのび太。
「今度こそ落ちろ!!」
ヤクト・ドーガはファンネルをジェガンまで飛ばして、とどめを刺そうとした。
空間には、ビームの発砲音が鳴り響く。
しかし、やられていたのはジェガンではなく、ファンネルのほうが破壊されていた。
「な、なにっ!?」
予想外の出来事に驚くギュネイ。彼の視界には、横たわりながらも腕を上げてビームライフルを構えたジェガンの姿だった。そんなビームライフルの銃口(マズル)からは、煙が立ち上っていた。
「や、やった……動いた!!」
のび太は感嘆の声を漏らした。
「鉄人兵団と戦った時の”サイコントローラー”が、まだ残ってた。」
ドラえもんの言うとおり、のび太の手にはサイコントローラーが握られていた。
サイコントローラー。手の平に収まる大きさの道具で、手に握って動作を頭に思い浮かべ、イメージするだけで意のままにロボットを操ることができる。そんな道具がまだ残っていたのだ。
ファンネルで撃たれる直前にドラえもんはサイコントローラーを思い出し、とっさに出してのび太に渡したのだ。そしてのび太はサイコントローラーを使って、持ち前の射撃技術でファンネルを撃ち落としたのだ。
「ファンネルを撃ち落としたというのか!?あの一瞬で!!」
ひるむようにヤクト・ドーガが少し後ずさった。
「よくもやってくれたなー!今度はこっちの番だ!!」
のび太はすかさず容赦なくジェガンを立ち上がらせ、ビームライフルで射撃する。
放たれたビームはヤクト・ドーガにあたったが、シールドで防がれた。
「ええい!このギュネイ・ガスに抵抗したな!?民間人とはいえ、もう容赦はしない!!」
ヤクト・ドーガは飛び上がって、上から空襲を仕掛けようとした。それに対抗すべくのび太たちの乗るジェガンも負けじとビームライフルを連射した。
普段なら、この程度の攻撃ぐらい難なく避けられるはずだと思っていたギュネイだが、ジェガンのビームを直撃はしなかったものの、何発もかすってしまう。
「バカな……俺に当ててきているだと!?」
ギュネイは焦ったのか即座にビームアサルトライフルを発射した。
「「うわーっ!!」」
そのビームがジェガンにあたってしまう。ビームの衝撃でジェガンのコクピット内は激震した。
「射撃はいいようだが、そのほかは言うほどでもないようだな……ならば、ファンネル!!」
ヤクト・ドーガはライフルをしまい、ファンネル残り4基を展開した。
「なんの!これなら!」
のび太は飛んできたファンネルに集中し、すべてのファンネルに向けてビームを撃った。のび太の狙い通り、ファンネルはすべて撃ち落とされた。
「どうだ!!」
決まった!と言わんばかりに自慢気な顔になるのび太。
しかし……。
「甘いんだよ!」
のび太は気が付くと、目の前に最接近し、ビームサーベルを持ったヤクト・ドーガの姿があった。
「しまった!懐に飛び込まれた!!」
むなしくもドラえもんがセリフを言い切る前に、ヤクト・ドーガはビームサーベルを上に斬りあげた。ビームサーベルの斬撃により、ライフルを持ったジェガンの腕が切断され、宙に舞った。直後、ヤクト・ドーガはジェガンにけりを入れてしりもちをつかせた。
「ああっ、せっかく直したのに!!」
のび太は吹っ飛んだ腕とライフルに目をやったが次に前を向くと、ジェガンのコクピット前にはヤクト・ドーガが持つビームサーベルの切っ先が向けられていた。
「いいのは射撃だけみたいだな。」
このままビームサーベルが前に押し出されればジェガンのコクピットを貫き、中にいる人間は一瞬で蒸発するだろう。人間でいうと、のど元にナイフを突きつけられているような状態なのだ。
のび太たちは滝のように汗をかいていた。ビームサーベルがコクピットのハッチすれすれまで近づけられているので、コクピット内は蒸し焼きのような状態になっており、温度が高くなっているのだ。そして、やられる寸前ということもあり緊張と恐怖も相まって汗が止まらないのだ。
「命を無駄にしたな。俺に歯向かわなければこんなことにはならなかったんだ。」
そういうと、ヤクト・ドーガはとどめを刺さんとばかりにビームサーベルを振り上げた。
「今度こそ死ねぇっ!!」
振り上げたビームサーベルを一気に振り下ろそうとした。その時だった。
別の方向からビームが飛来し、ヤクト・ドーガのビームサーベルを撃ち落とした。
「今度は誰だ!?」
ギュネイは邪魔をされ苛立ちながらビームが飛んできた方向を向く。それにつられるようにのび太とドラえもんも同じくその方向を向く。
そこには、ライフルを構えたリ・ガズィがいた。
「ロンド・ベルか!!」