背が低いだけのモンスターに憧れて   作:名も亡き一般市民

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処女作です。よろしくお願いします。


第1話

バレーボール(排球)

 

コート中央のネットを挟んで2チームでボールを打ち合う

 

ボールを落としてはいけない 持ってもいけない

 

三度のボレーで 攻撃へと

 

              繋ぐ

                   球技である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これぞ正に、小さな大エース!!」

 

そう、アナウンサーが興奮しながら、叫んでいた。

 

画面の先にいる選手達はみな、180を有に越す背丈があるという事実は、当時の自分にとっては驚くべきことだった。

当然、背の低い選手は 空中 で勝つことは出来ない、というより勝つことが許されていないように感じた。

 

 

 

──が、そのコートの中を縦横無尽に動き回る160程の小さな背中があった。

 

「また決めたー!!レフトから強烈インナークロス!!小さな背中の背番号5が光ります!!」

 

 

その選手が動き回り、得点を決める度に広がる声援。

八面六臂の大活躍に観客は熱狂し、体育館はどよめきで揺れる。

 

 

 

 

その姿に強烈に憧れたことを

 

 

 

 

 

 

──よく、覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

目を覚ます。知らない天井──があるわけではなく、いつも通りの自宅の天井である。

 

ピピピ、ピピピ、ピピピ…

 

数刻遅れて無機質かつ鬱陶しい音がなる。手を伸ばし、ゆっくりとそれを止めた。家には自分しかいないため、静寂に包まれている。

 

時刻は午前5時ちょうど。早起きにはもうすっかり慣れたが、時計の音にはどうしても嫌悪感を感じてしまう。

そもそも時計のセットをしなくとも起きられるように体を慣らしているのだが、今日は大事なことがある日のため、昨夜に念を入れてセットしていたのだった。

 

「…ふわぁあ…むにゃむにゃ…」

まるでテンプレのような寝起きの声に、我ながら笑えてくる。

以前合宿の時に同じ部屋の人から、「うわ、あざと…」ということを言われたことを思いだし、また笑ってしまう。

 

しかし、久しぶりにあの夢を見た。

いつも、たまに見る夢は大概録なものではない。今回のように懐かしさを感じる夢は一年に一度あれば良いものであろう。

 

このタイミングでこの夢を見たのは、やはり今日から始まるものが少なからず影響しているのだろう。

 

 

 

全日本中学バレーボール選手権大会、通称「全中」

宮城県予選一日目

 

中学生の大会としては、全国へ行ける唯一の大会。

 

9ブロックに分けられた地域予選を勝ち上がった35校に加え、開催都道府県からの1校を入れた計36校が出場。

 

全出場校を4校1グループの計9グループに分けて予選リーグを戦い、

各グループの上位3校が決勝トーナメントへ進出、そこで勝ち残れば優勝、全国制覇となる。

 

うちの中学校は毎年予選決勝に残るほどの強豪ではあるが、実力が飛び抜けた学校があるため準優勝に甘んじることが多くなっている。

 

 

もう三年で、今年は全国へ行ける最後のチャンス。

あの夢を見たのは少し気合いを入れすぎた結果なのだろう、と自分に納得させる。

 

…気持ちを入れるのはいい、けどパフォーマンスを最高へともっていくのは試合前。今から入れることは最善とは言えない……。

 

「……ふぅ、よし。」

 

自分の中で気持ちに整理をつけ、布団から起き上がる。こういう時はいつも通りの動きをすれば良いことは既に知っている。

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りウェアに着替え、いつものようにランニングシューズを履き、携帯と鍵を持って家を出る。

まだ5時を少し過ぎたあたりだが、十分に視界がきく。まだ気温が上がりきる前の、程よい気温のため、ランニングにはもってこいの時間である。

 

本来なら試合前に体を動かしすぎるのは良くはない。が、このままでは試合までそわそわした気持ちで過ごさなくてはならないので一度体を動かし、ある程度疲れさせることで気持ちを整えよう。

 

 

 

「フゥ~…。」

 

約30分ほどのランニングをし、家に戻る。普段のランニングと比べると少し軽めのものとなったが、試合前なのでこれぐらいでいいだろう。

 

学校集合時刻は7時半、試合会場まではバスで約1時間、うちはシードのため試合は2試合目から、予定開始時刻は10時40分。

 

汗をシャワーで流しながら今日の予定を頭の中で反芻する。

これは試合前のルーティーンのようなものだ。これをしておけば試合以外の余計な心配をする必要がなくなる。

 

ただ純粋に体育館にバレーボールをしに行くのだから、余計な心配は必要ない。そんなものでプレーに影響が出てしまったら、流石に笑えない。

小学生の頃は何も考えずただボールを追いかけていたが、中学に入ってからは試合に出ることになったため、教えに沿ってやるようになった。あまり効果があるようには思えないが、不思議と落ち着く感覚がした。

 

よし、これでいつも通りだ。

 

体を丁寧に拭き、髪を乾かし、部のジャージに着替え、洗面所を出る。

 

前日から用意しておいた朝食を食べ、忘れ物がないか荷物の確認を改めて行い、家に唯一ある畳の部屋にある仏壇の前に座る。

 

両手を合わせ目を瞑り、「…行ってきます。」と心の中で唱える。

 

先程のルーティーンで気持ちを落ち着けた後にすると、ぐっと気持ちが引き締まる感覚がする。改めていつもの自分だと再確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学までは徒歩で約20分と言ったところではあるが、今日は余裕がある。

 

このままゆっくり行っても7時前には着くだろう。集合時刻より30分以上も前に到着すればおそらく一番乗りだと思うが…。

 

 

(まぁ…今日も俺より早いよな、あいつ(···)は。)

 

 

学校の門をくぐり、体育館前に行く。今日は休日で体育館は空いてないだろうが、外でも出来ることはある。

 

「やっぱいたか。」

 

全く音を立てない完璧なオーバーハンドパスを頭の上で行う、所謂直上トス。恐らく何度も繰り返していたであろうその動きを止め、ボールを両手でキャッチし、彼はゆっくりと此方を振り返った。

 

中学校三年生ながら170後半はある身長、バレーボールをする上で支障にならない程度に伸びた黒い髪、そしてこちらを射るような鋭い視線。

 

北川第一中学三年バレーボール部 背番号2 セッター 影山飛雄

 

彼はやはり今日も誰よりも早く集合していたのであった。

 




なんか前振りのつもりが、妙に長くなってしまいました。面倒でしたらすみません。
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