「おはよう飛雄。相変わらず早いな。」
「……おう、おはよう。」
そう言ったきり、彼は背中を向けて再びパスを始めてしまう。
はっきり言って無愛想ではあるが、彼はいつもこうである。だから今更気にならない。むしろ急に愛想良くなられても正直怖い。
その背中を眺める。
やはり、いつ見ても綺麗だと思う。ボールに触れる時間は極僅か、ほんの一瞬にも関わらず、指先から頭上への真っ直ぐパスしている。これを見るだけでも、技術の高さが伺える。
まぁそんな彼には大きな欠点があるのだが。
「なぁ、皆来るまでまだ時間あるし対パスやろうぜ」
「…」
彼は黙ってこちらを向き、ボールを投げ渡してくる。
そのボールをアンダーで彼の頭上に正確に返す。振りかぶって強力なボールが飛んでくるが、再びアンダーで上げる。オーバーで上げられたものを、今度は自分が打つ、を繰り返す。
朝一ということを考えるとまぁまぁ容赦の無いボールが打ち込まれるが、まぁそれも普段のこと、アップがてらに調度いい。
15分ぐらいこなしていると、メンバーが集まってきた。
「オッス。」「…おはよう。」
「勇太郎、英。おはよう。」
三年MBの金田一勇太郎、三年WSの国見英。どちらもうちの主力メンバーである、と挨拶をする。
「何時から対パスしてたんだ?」
「大体15分ぐらい前からかな。飛雄は俺より早く来てたけど」
「マジか、朝早えな。」
という軽い談笑をしてから、飛雄のほうを振り返る。
「飛雄、もう集まってきたしここまででいいよな?」
「……おう」
彼は短く返すと、そのままボールを戻しに行ってしまう。
(まぁ無愛想なのはいつものこととして、相変わらず俺以外との会話がないな。朝の挨拶ぐらいあってもいいのに。はぁ、こんな状態で今日からの公式戦大丈夫かな…)
二年生の頃から続く解決してない問題に対し、内面で大きな溜め息をはくのだった。
「うおぉ、人がいっぱいだ…!! 体育館でけぇ…!!
そして、エアーサロンパスの匂い!!!」
体育館を見て、感激しながらそう言う人物。
雪ヶ丘中学三年主将 日向翔陽。
バレーボーラーとしてはどう見ても小柄な体の彼もまた、中学最後の大会に出場するために、部員を率いて来ていた。
「チョット翔ちゃん緊張しすぎじゃない?エアーサロンパスって何?ていうか、感動ばっかしてないでちゃんと仕切ってよ?」
「そーだよ、俺達急に引っ張ってこられてルールもよく分かんないんだから!」
「わ、わかってるよ!三年目にしてやっと出られたんだ、出るからには勝つぞ…!!」
その強気の発言に、(その強気どっからくるんだ?)と部員全員が思ったが、形はどうあれ主将からそう言われれば否が応でも気合いが入る。
「ホラ、あいつらだろ?一回戦でいきなり北川第一と当たる雪ヶ丘ってチーム」
「無名校がいきなり優勝候補と?!運悪っ。」
「あ、ほら来たぞ、北川第一だ。うわ~、デカいの多いな……威圧感半端ないな。」
まるで軍隊のように音を立てながら歩く大柄の集団。部員数を見るだけでも、やはり普通の中学とか違うことが分かる。
「あっ、おい見ろ、あいつってアレだろ。
北川第一セッター、コート上の王様 影山飛雄!」
そう言った瞬間、ギロリと鋭い視線を少しだけこちらへ向ける。
「うひぃ!? …恐えぇ、超睨まれた。んで何だ? その王様って?」
「由来は知らないけど、兎に角スゲー上手いんだってさ。抜群のセンスの優れた司令塔なんだって。」
「へー…」
北川第一観客席兼荷物おき場
「あれ? 二年のドリンク作りのやつら、まだ戻ってきてないのか。そろそろ公式ウォーミングアップ始まるってのに。」
「そういやそうだな、んじゃ俺が見てくるわ。すぐそこだし。」
「悪いな、頼む。」
キャプテンとそうやり取りしてドリンク作りしているであろう水道場へと向かう。サボっている訳ではないだろうが、少し時間がかかりすぎである。
(あれ、そういや飛雄どこ行った?いつの間にかいなくなってたな…さっきまでいたのに。トイレか?)
そう考えながら水道場へ向かうと、
「勝ってコートに立つのはこの俺だ!!」
と大声出していた飛雄、と少し怯えている二年生を見つけた。
「お、ドリンク作りはもう終わった?」
「あ、はい! 今終わりました!」
「んじゃウォーミングアップの用意してくれ。これ以上飛雄に怒られんなよ。」
「は、はい。すみません、すぐ用意します!」
そう言って二年生の三人はそそくさと戻っていった。ありゃ相当飛雄に怒られたな……。と、それはいいとして。
「飛雄、何怒鳴ってたんだ?誰に向かって…」
と言いかけた所で、飛雄の影になって見えなかった人物を見つけた。
特徴的なオレンジ色の髪に、小柄な身長、1番のキャプテンマークを着けた男が立っていた。
(見たことないユニ…雪ヶ丘?今日の対戦チームか。)
「飛雄、対戦相手にいきなり何で絡んでるんだよ。試合で十分やりあえるのに。」
「試合前なのに体調管理すら出来てないようなコイツが悪い。だから二年にバカにされるんだ。」
「な、なんだとぉ…!!」
「あー、もう、そういう言い方止めろっての。本当すみません、今日の試合、宜しくお願いしますね。ほら、飛雄行くぞ。ウォーミングアップに間に合わなくなるから!」
と、飛雄を引っ張っていくことで、漸く事態は落ち着いたのだった。
「……」
「翔ちゃん!?何怒らせてんの?!トイレに行ってたんじゃないの?!」
「イヅミン!早く戻ろ!腹イタもどっかいったし!!」
「??」
(くっそ、さっきの奴! 俺がチビなことぐらい分かってるんだよ! 見てろ! 上から打ち抜いてやる!!
…でも、途中から入ってきたチームメイトみたいな人、あのガーッ!!って奴をすぐに宥めてたな…しかも、身長俺より少しだけ高いぐらいだったような?)
「翔ちゃん! ウォーミングアップ始まるよ!」
「あ、うん! 今行く!」
彼らの試合開始まで、あと僅か。
んんん~~~、難しい。ちょっと何書きたいか訳分からなくなっちゃいました…このへんはあんまり原作に変化をつけにくいのでそのせいもあるかと思いますが…次はもっと頑張ります。