背が低いだけのモンスターに憧れて   作:名も亡き一般市民

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結局また2ヶ月以上空きました!ごめんなさい!!亀更新タグ付けときます!!!新年迎える前に出したかったです!!!!明けましておめでとうございます!!!!!ではどうぞ!!!!!!


第8話

翔陽のゲロ騒動の日の放課後。

 

片付けるのはいささか大変ではあったが、なんとか澤村さんが来る前に終わらせることが出来た。

まぁ勿論今日の朝練はかなり物足りないものとなったが。

 

体育館に行く前に翔陽飛雄を見送り、今は部活の準備中である。

 

北川第一と違い、烏野は上下関係がそこまで厳しくないのもあって先輩たちも準備を手伝ってくれるが、後輩としては先輩の手を煩わせたくない。かといって一人で全部やろうとすると練習開始時刻ギリギリとなってしまいがちなのだ。

 

そもそも準備の時だけに限らず、一年生が少ないと感じていた。

翔陽飛雄を入れたとしても三人。公式戦のことを考えるとやはり心許ない。常に同じ人が出れるとは限らないのだから。

 

そのようなことを考えつつ、準備を終えたところで…

「宇内、疲れとかはないか?」

と澤村さんから声がかかる。

 

「疲れですか?いや特には、」

と言ったところで、なぜか挙動不審な菅原さんと田中さんが目に入る。

「朝練久しぶりにするって言ってただろ?それでいつも俺より早く来てるし、練習の準備もほとんどお前に任せてるからさ。」

 

…なるほど、二人が挙動不審なのは澤村さんに朝練のこと聞かれたからかな?と推測する。

今日は体育館の清掃(なお原因はゲロ)に時間を取られたせいで、朝練前に汗をかくということが出来なかった。普段とは違う、汗をかいていない様子に少し不信感を抱いたのだろう。恐らく多分。

 

怒られることは兎も角、主将の指示に従わず例の二人と練習していたことがバレると、今後の試合に影響が出るかもしれないのでバレたくない。まぁ勿論怒られたくもないが。

 

「御気遣いありがとうございます。朝練の時間はもう慣れたので大丈夫です、どちらかというと準備に時間かかってしまうのがネックですかね。一年今は(・・)俺しかいないので。」

と平静に話す。

 

「そうか。けど準備に関しては問題ないかもな。今日からの新入部員がいる。」

「あ、そうなんですね。何人ですか?」

「さっき会ったからもうそろそろ来るはずだけど…お、丁度来たな。全員練習前に集合ー!!」

 

 

「今日からの新入部員を紹介する。じゃあ二人とも、自己紹介。」

「一年、月島蛍でーす。宜しくお願いしま~す!」

「一年、山口忠です。よ、よろしくお願いします。」

「二人ともMBで、小学校からバレーをやってる経験者だ!これからよろしくな!」

 

澤村さんから紹介された二人はどちらもタッパがかなりあった。

一人は180ぐらいで平均といえばそうだが、もう一人は190近い。

 

「宇内、折角だし同じ一年として自己紹介しておくか?」

「そうですね。それじゃあ、宇内蒼馬です、ポジションはWSです。これからよろしく。」と簡単な自己紹介をする。

 

その時、ずっと笑顔だった月島君の顔が一瞬ひきつった、気がした。

 

「宇内……ふーん、ねぇ君って北川第一の『小さな怪物』でしょ?そんなエリートなんでもっと強豪校に行ってないの?」 

「小さな怪物?って何ですか?」

「知らないんだ?君の異名だよ。160ぐらいの身長で、ブロックをものともせず得点を重ねる。あの決勝でのプレー見た奴らが付けたみたいだよ。」

「はぁ、異名ですか。決勝はまぁ、やることやっただけなので。」

「へぇ、意外と謙虚なんだね。あの王様と同じチームだったとは思えないね。」

 

謙虚というより、異名が気にくわないだけ。とは言わなかった。

 

「もう一人は山口君ですよね。これからよろしくお願いしますね。」

「あっ、うん。よろしく。」

 

「よし、それじゃ練習開始だ!準備や片付けは宇内、後で二人に説明してあげてくれ。」

「はい、分かりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習後

 

「……けっ!なァ~んか気に入らねぇなさっきの新一年!」と練習後に田中さんが言う。

「お前初対面のやつ大体気に入らないじゃん。あれだろ、そういう習性だろ?」

「いやスガさん、習性って…。宇内、お前はどう思ったよ?」

「言葉の節々に刺を感じましたけど、それ以外はまぁ普通ですかね。あと張り付いた笑顔というか、それが印象的です。」

「あーそれ思った。エリートとか意外と謙虚とか。なんかいきなり敵対されてなかった?」

「みたいですね。けどまぁ、同じチームだからって無理に仲良くする必要はないですし。それに今日まだ会ったばかりなので、これから色々知っていけたらと思います。」

「…田中見習えよ。宇内のほうが大人だぞ。」

「ちょっ!スガさん!!」

「まぁそれは兎も角、田中入るとはいえ日向影山大丈夫か?あの二人経験者なだけあって、結構出来てたよな~。それにあの身長だし。」

「そうですね、翔陽もですけど、飛雄の出来次第ですかね。」

「影山なぁ…。なーんか、中学の時よりおとなしい気がすんだよね。中学のプレー見た感じだと、絶対的自信!とか破天荒!とかが似合う感じだったのに。中学の影山を知ってる宇内はどう思う?」

「…はい。菅原さんの言う通り、中学の飛雄とは全然違いますね。それでその原因は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃の日向影山は、明日の試合の最終調整として、外でパスの練習をしていた。

暗くなり下校時間が近いこともあり、影山からの指示する声も自然と大きくなる。

 

「おらっ!次後ろだ!」「よっしゃ!」と日向が声をあげたところで…

 

ぬっ。と空中で、尚且つ背後から片手でボールが捕まれる。

「!?」

「へー!ホントに外でやってる!怪物君の言った通りじゃん!」

「むっ!?」と日向が声をあげつつ後ろを向く。

 

「君らが入部初日から問題起こしたっていう一年?」「うわっTシャツ?!寒っ!!」

 

そこには日向よりも確実に20cm近くは大きい、二人がいた。

 

「(で、でかっ!!)か、返せよボール!」

「小学生は帰宅の時間じゃないの?」

「!!って誰なんだお前!!」

 

日向が声をあげる中、「入部予定の他の一年か?(…タッパあるな。)」と影山が冷静に返す。

 

「へー、キャプテンと怪物君から話は聞いてたけど、ホントにいるじゃん。『コート上の王様』なんでエリートがこんなとこにいるのさ?」

「!おい!その呼び方ーー」

「おおっ!ホントだ!噂の通りこれで呼ばれるとキレるんだ!いいじゃん王様!かっこいいと思うよ王様!!」

 

影山にとって禁句である王様を連呼するデカイ男に若干ビビりつつ日向は影山の後ろに入る。

 

「お前、なんなんだよ。」

「…県予選の決勝、見たよ。あーんな自己中なプレーよく他の連中我慢してたよね!僕なら無理。」

「…!!」

「ああ!我慢出来なかったからああなったんだ?」

 

その言葉を聞いた瞬間、決勝のあのシーンが思い浮かぶ。

トスを上げた。その先には、誰もーーー

 

「…おい、もう上がるぞ。」

「はっ?!おい!言い返せよ!いつもみたいに!!」

「へー逃げるんだ?王様も大したことないね~、こっち側には怪物君もいるし、明日のゲームも王様相手に勝てちゃったりして~。」

 

その時月島の背後から小さな影が空中でボールを奪う。

余裕な表情を崩さなかった月島も、これには驚きに変わる。

「王様王様うるせぇ!俺もいる!明日の試合でその頭の上打ち抜いてやる!!」

「……は?」

「うっ、な、なんだこらぁ…やんのかこんにゃろぉぉ…」

……すぐに怯んでしまうところが日向らしいと言えるが。

 

「そんなに気張らないでさ、楽しく程々にやろうよ。たかが部活なんだから。それじゃまた明日ね。」

「たかがってなんだ!ていうか結局お前、どこのどいつだ!?」

「……一年四組月島蛍。今日から君らのチームメイトだよ。まぁ、明日は敵だけど。王様のトス楽しみにしてるよ。」

そう言って、二人は去っていった。

 

「なんだよあいつ、感じわりー!おい明日は絶対勝つぞ!!」

「…言われるまでもねぇよ!!」

「!やっぱお前も感じわりーー!!」

「うるせぇよ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、待ってツッキー!どうしたの!?」

「…イライラすんだよ、無駄に熱い……」

 

とそこまで言いかけたところで、行く手に人の姿が見えた。

黒髪ショートに小さい身長、その癖目付きは鋭い。イライラしている今会いたくない、彼がいた。

 

「……怪物君じゃん。もう帰ったと思ってたよ。こんなところで何してるの?」

「翔陽飛雄と話してるのが聞こえたからたまたま、盗み聞きするつもりはなかった。というかその怪物君っていうの止めてくれません?」

「いいじゃん、折角付いた異名なんだからさ。それより、話終わったのに帰ってないってことは、僕に何か用でもあったの?王様の中学のチームメイトだから、王様のフォローでもするつもり?」

「いや、言ってることに間違いはないからフォローするつもりはない。ただ、」

「ただ?」

「あの件は、飛雄だけの責任じゃないってこと。それを刻み込むために黙って話を聞いてた。ただそれだけ。」

「……ふーん、君ってホントに謙虚なんだね。あの決勝のトス回しみただけで、相当苦労してたのが垣間見えたけど?」

「まぁ勿論苦労はしてましたけど。…それじゃ、もう帰ります。呼び止めてごめん。明日のゲームについて、何か言っておくこととかあります?」

「まともに攻撃できそうなのがあの田中さんだけなら、問題ないデショ。怪物君もいるしね。」

「…うん、分かった。それじゃあ、また明日。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って去っていった彼の姿を見ると、どうしても心がざわついてしまう。

彼のプレーを見たのはあの決勝だけだが、それでも過去の記憶を呼び覚ますのには充分だった。

 

黒髪で、小さな体。その体でコートを縦横無尽に動き回り、得点へと結びつける。

 

その姿はまるで ーーー

 

 

とそこまで考えたところで思考を遮断する。これ以上考えると、確実に愉快とは逆の感情へ向かってしまうだろう。

 

自分には関係ないことであると、自分自身に言い聞かせる。

 

 

それでもざわついた心が安らぐことは、ついになかった。




ツッキーとオリ主の関係拗れそうやなぁ……まぁこの話を思い付いた時から分かっておりましたが。
オリ主のプレーといい、見た目といい、あの方に似てしまっているので、仕方ないですね。

そんなにギスギスさせないつもりではいます。
では次の更新も気長に待って頂けると幸いです。
最後まで作る気はあるので!

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