背が低いだけのモンスターに憧れて   作:名も亡き一般市民

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エタりまくりました。申し訳ございませんでした!!!

いや本当に試合描写って難しいなぁって思いつつちょくちょく書いていたんですけど、まさか一年以上空いてしまうとは思いませんでした。

待っていた方いましたら本当にお待たせしました。特に待ってなかった人は前書き気にせず普通に読んで下さい。


第9話

土曜日。

 

新1年生にとっては、高校に入って初めての休日。ゆっくり休む人もいれば、早速入部した部活動へと精を出す人もいる。

 

そんな中、烏野高校の体育館ではバレー部の3対3の試合が始まろうとしていた。本来であれば、試合を通して新入生の空気を知ること、または1年生同士の交流の意味もある試合である。

 

しかし、今回の試合は入部を認められていない2人にとって、そんな軽いものではない。今後の進退を賭けた、といっても過言でない試合となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すでに部員全員集まっており、3対3の試合が始まるまで間もなくである。

 

「とりあえず作戦とかは後にして、ポジション的にトスあげる人がいないけど臨機応変にってことでいいですか?」

「いんじゃない、出来る人がするって感じで。」「うん、分かった!」

「それじゃあその方向で。」

 

話が纏まったところで、いつも通り翔陽飛雄田中さんのチームを観察する。

 

田中さんは3年生のマネージャーの人に今日も綺麗ということを添えた挨拶をし、翔陽はその綺麗さに興奮しつつ「なぁあの美女マネージャーかな!?」と飛雄に話しかけている。

しかし、飛雄はそれを完全無視。試合前で集中してるから。とも言えなくもないが。

 

(飛雄、やっぱり昨日言われたことを気にしてるのか。)

 

中学のチームメイトとしては、飛雄のらしくない姿をみて何も思わない訳ではない。が、それと試合は関係のないことである。

 

(俺には試合中にプレー以外のことを考える余裕なんてない。全力でいく。)

 

「じゃあそろそろ始めるぞ。25点マッチで、3セット制。…まぁ色々あったが、今日は全力でプレーしてくれ。」と澤村さんから指示が出る。

 

試合に挑む6人が各々コートに散ったところで……

「あ~~オフンっ。小さいのと田中さんどっちを先に潰…抑えようかな~?あ、あと王様を狙うのもいいよねぇ?」と月島君。

「ちょっ、ツッキー聞こえるよ?!」

「聞こえるように言ってるんだろうが。集中を乱してくれると嬉しいなぁ。」

 

たしかに集中力を乱すために相手を煽るのはよくある手といえばそうであるが、ここまであからさまなのは流石に見たことがない。しかも先輩相手に潰すとまで…。

 

しかし、

「ねぇねぇ、聞こえた?月島君てばあんなこと言っちゃって、もうほーんと……擂り潰す!!!」とドスの効いた声で田中さん。とそれに便乗して舌を出す翔陽。

 

それを見た飛雄の顔が少し緩んだのを見て、改めて本気でやれると思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの坊主のセンパイを丁度いい感じに煽り、それに乗ってくれたので内心ほくそえんでいると、

 

「月島君煽りなれてますね。しかも先輩相手に。」と宇代が少し苦笑いのまま言う。

「光栄デス。まぁあのチビは兎も角、王様が中学の時みたいに崩れるところは見てみたいだろ?」と返す。

 

「責任感じてる身としてはそれは見たくないかな。けどまぁ、」

 

とそこまで言ったところで、宇内の表情が変わる。

この程度(・・・・)の煽りでプレーが乱れるなら高校じゃ通用しないだろうし、丁度いい機会ですかね。」

 

昨日の帰りで見せた鋭い目付きとはまた別、冷酷といってもいい目でそう言った。

 

さらりと煽られたことに若干ムカッとしたが、

「…なんだかんだいい性格してるよね、君。」と言葉を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が始まった。

 

サーブは1年生チームの山口から。

フローターで打ち出す。それを処理するのは田中、ゆるいサーブのため難なくセッターの頭上へ返した。

 

そしてオープンで上がってくるボールに、先程生意気な後輩に煽られた怒りを乗せ…

「そォォォ!!らァァァ!!!」という掛け声とともにスパイクを放つ。

 

高さが上の月島が1枚とはいえブロックについていたが、高さで勝てなくともパワーで圧倒。手を吹き飛ばし、そのままコートに着弾させた。

 

「ジャアアアシャーッ!!!シャラァァァ!!!!」

「うるせーぞ田中ァ!!」「まだ1点だろ!」「おい脱ぐな!はえぇよ!!」

…得点に対して3倍のヤジが飛んできているが。

 

 

続いて田中のサーブ。

安定感はあるが威力のないフローターだが、田中のパワーで打つとそれなりの威力になる。

 

「山口。」「山口君!」「ッ!」

 

山口のレシーブは完璧なセッター位置とはいかず、コートの中央あたりに上がる。

 

「ごめん、カバー!」

その声と共に、位置的に近い月島が、若干面倒くさそうな表情をしつつボールの下へ入る。

 

「月島君!レフト!高く!」とレフト位置から宇内。

 

その指示を踏まえ、月島はアンダーでレフト位置へと大きく上げた。セッターのようにオーバーで完璧に、とはいかないがネットからやや手前。スパイクを打つには良い位置へと上がった。

 

「止めるぞ!」「おうっ!」と影山日向。間を抜かれないように閉め、抜かれてもストレート側にいる田中が拾える範囲に行くようにブロックを配置する。

 

しかし、

 

ダンッ!!

 

という音と共に跳躍。2人のブロックの上から正確にクロスのコート奥に叩き込んだ。

 

「うぉぉ…!」「練習で見て分かってたけど、あの背で凄いジャンプ…!!」

という驚きの声があがる。

 

「ツッキーナイストス!宇内、ナイスキー!!」

「…ナイスキー。」

「月島君ナイストスでした。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ、くそっ。」と影山は歯ぎしりする。

アイツの凄さは分かってるつもりだった。が、一度敵に回ると厄介そのものだ。

 

「すっげーな、蒼馬。」

「ッ!?」

いつになく冷静な日向の声で我に返る。

 

「本当に小さな巨人みたいだ。俺とそんなに身長変わらないのに、俺よりずっと凄い。」

「…当たり前だろうが、ボケ。」

「けど、俺だって負けない!影山、次俺に上げてくれ!」

 

 

得点は1ー1。宇内のサーブを田中が処理。

「日向!」

「おおっ!!」

 

高く上がったボールに向かって跳躍する。イメージするのは先程の宇内のスパイク。

 

(高校の試合1発目!決めてやる!!)

その思いを乗せスパイクを放つ。

 

ドチッ!!

 

 

が、その思いも空しく、放ったスパイクは月島のブロックに阻まれてしまった。

 

(…ここにも、また、高い高い壁。)

「昨日も思ったけど君本当よく飛ぶねぇ、それであとほ~~んの30cm程背があればスーパースターだったかもね。」

「(どんなにデカくったって相手は1人、次は決める!)も、もう1本!!」

 

 

 

 

 

 

試合が進む。

田中、宇内の両スパイカーは田中が決めれば宇内も決めるという、一種の均衡状態になっていた。

 

「ここまで田中と宇内スパイク決定率どっちが上だろ?」

「どっちも同じくらいじゃない?シーソーゲームだなぁ。」

「けどだんだん点差開いてるよな。」

「あぁ、それは…あ!また日向止められたか…。」

「これで何本目だ?田中は結構決まってるけどなぁ。」

 

田中が決めているおかげで大きく離されてはいないが、田中へのトス一辺倒になれば捕まるリスクも高くなる。

 

影山は徐々に焦っていた。宇内のスパイクだけでなく、月島のブロックも厄介。まだまだ技術の足りていない日向が決めきれないのは、ある程度仕方ないことではあるが…

 

 

 

山口がサーブをミスり、サーブ権がこのタイミングで影山に回ってきた。

 

(これ以上離されるわけにはいかない!ここはサーブでまとめて点を稼いでやる…!!)

 

狙いはコートの真ん中の月島やレフトにいる宇内ではなく、ライトにいる山口。頭にある先輩のサーブトスをイメージしつつ、ボールをヒットする。

 

「っ!!」

 

ボールは狙い通り山口へ向かい、ボールを後方へと吹き飛ばした。

「うしっ!」

「影山ナイス!」「いよっ!流石殺人サーブ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(今のはナイスサーブだったな、スピードもコースも良かった。)

 

県予選の時よりもパワーアップしているサーブを見て、少し力が籠る。

 

「月島君。レシーブ位置変わってもらえますか?」

「…真ん中で王様のサーブを受けるってこと?」

「うん。あとは二人とも、もっとサイドラインによったポジショニングしてほしいです。正面付近のサーブの時は任せるけど、間にきたのは俺が拾います。」

 

月島君は少々驚いたように、「コートの半数を君が守るってこと?王様のサーブ結構強烈なようだけど?」と言う。

 

「飛雄のサーブは威力はあるけど、コントロールが今一つだから俺の取れる範囲にくると思います。上手くいくとは限りませんが、二人ともお願いします。」

「…分かったよ。」「宇内!ごめん、よろしく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(せめてあと3~4点は取る…!)

影山の2本目のサーブ。相手の守備陣形が変わったが、先程と同じように山口狙いで放つ。が、今度は正面とは行かず僅かに反れ、山口宇内の間に飛んだ。

 

「オッケー!」と宇内が声をあげつつ、素早いステップでボールの正面に低い体勢で入り、地面スレスレの所で体全体を使ってレシーブ。

緩い音をたてながら、ボールは綺麗にセッター位置へ上がる。

 

そのまま月島→山口の速攻で得点を奪った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(影山のジャンプサーブを2球目できっちりあげ、当然のように攻撃に参加。あっさりやってるが淀みのない動き、一年生とは思えない完成度だな…)

 

澤村は影山に視線を向ける。

(どうする影山。日向を使えない今のままじゃ、勝ち目はほぼ無いぞ。)

 

澤村が危惧しているのは、負けることよりも追い詰められたことによる影山の自己中なプレーだった。

ここで中学の悪癖が出れば、試合には勝てず公式戦で影山がセッターとして出ることはない。少なくとも自分がキャプテンのうちは。

自分で言ったこととはいえ、あの才能を燻らせたままなのは惜しいと思う。

 

その視線に気付かない影山は下を向いたまま悔しそうにしていた。

 

(俺は何をしてんだ!あいつの守備範囲が広いのは分かってたことだろ!多少威力を抑えても他の二人を狙ったり、緩いサーブで前に落とすことも出来たのに!)

 

プレーが終わった後に色々思い付くということは、プレー中は余裕がないということ。影山は自分が必要以上に焦っていることに漸く気付いた。

 

 

そんな影山を見て、

 

「僕ら庶民相手に随分焦ってるねぇ王様?そろそろ本気出したほういいんじゃな~い?」とここぞとばかりに煽る月島。

 

「あの決勝の時みたいに、王様のトスすればいいじゃん!スパイカーが打てるかは知らないけどね。」

「!!!」

「おい!なんだよお前!昨日から突っかかってきて!王様のトスってなんだ!」

「あれ?君なんで影山(コイツ)が王様って呼ばれてるか知らないの?怪物君から聞いてると思ったけどなぁ。」

 

そう言って月島は後ろを向く。

「君は知ってるよね、怪物君。君もあの決勝出てたよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負けた試合、というよりこれまでに負けた事柄は全部鮮明に覚えていると思う。

いつからというのではない。恐らく生まれた時から負けることが嫌いなのだ。親の影響を受けているのかもしれない。

 

全中予選決勝。初戦から変わらず飛雄と他のメンバーとの仲はぎくしゃくしていた。

それでもこれまではチームの自力で勝ってこれたが、決勝の相手は光仙学園。

持ち味である強力なブロックで、白鳥沢中を準決勝で破った。

セッターであり、ネット際での仕事が多い飛雄は、そのプレッシャーを誰よりも感じていたのだろう。

 

 

 

「もっと早く!!」

 

これまで何度も聞いた言葉であるが、その試合ではこれまでにないほどその言葉を聞いた。

 

「ふざけんな!!無茶すぎんだよお前のトス!!打てなきゃ意味ねぇだろうが!!」

 

いつもは面と向かって文句を言わない勇太郎も、声を荒げる。

他のメンバーの飛雄に対する視線も鋭くなる。

 

「もっと速く動け!!もっと高く跳べ!!俺のトスに合わせろ!!勝ちたいなら!!」

 

俺は何も言えなかった。いや、言わなかったが正しいかもしれない。試合中は自分のプレーばかり考えてしまう。結局俺は自分のことを優先して何も言わなかったのだ。

 

次に飛雄が上げたトスには、誰も跳ばなかった。飛雄への拒絶を示した一球だった。

自分がいた位置とは逆の方向に上がったが、そんなことは言い訳にもならない。あの場面であげてもらえない自分が悪いのだ。フォローに行っても間に合わず、1セット目を取られることになった。

 

そして、飛雄は交代。2セット目に出ることはなく、そのまま試合に破れた。他の人は認めないだろうが、良くも悪くも飛雄中心のチーム。司令塔なしで勝てるほど甘くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うん、知ってる。飛雄のプレーが根底にある渾名であることは間違いない。」

「だよねぇ?それで、今日速い攻撃使わないのも、あの決勝の出来事にビビってるとか?」飛雄に視線を戻し、月島君が言う。

 

「あぁ、そうだ。トスを上げた先に誰もいないっつーのは、心底怖えぇよ。」

 

「…。」あの時と同じ。俺は何も言えてない。それでも口を開こうとした時、

 

 

「えっ、でもそれ中学のハナシでしょ?」と、飛雄の後ろから声があがる。

 

「おれにはちゃんとトス上がるから、別に関係ない。どうやってお前をぶち抜くかだけが問題だ!」 

翔陽がビシッ!と月島君を指差す。

 

「月島に勝って部活に入って、お前は堂々とセッターをやる!そんで俺にトスをあげる!それ以外なんかあんのか!?」

 

飛雄の顔は微妙な顔をしていたが、やはり先ほどよりも緩んだ。ほっとする反面、やはり何も言えないと自己嫌悪する。

 

「そういう如何にも純粋で真っ直ぐみたいなの、イラっとする。気持ちで身長差は埋まらない。努力で全部なんとかなると思ったら大間違いなんだよ。」

「あの、月島君?それしっかり俺にも刺さってるんだけど…」

「君はまた別でしょ。あのチビとは。」

「なんだとぉ!」

 

 

試合再開してスコアが動く。飛雄は翔陽の言葉を受けて、速い攻撃を試すことにしたようだ。

だがやはりというか、上手くいっていない。俺も飛雄に頼んで速い攻撃の練習をしたことはあるが、どうにも上手く行かなかった。

 

しかし、何となく嫌な予感はした。翔陽の勝ってずっとコートに立ちたいという言葉に、飛雄が同調した。少なくとも中学では見られないことだった。

 

あの2人は実力はかけはなれていても、姿勢は似ている。その2人が噛み合わさった時、何かが起きそうであると。

 

「技術があってヤル気もありすぎるくらいあって、何より周りを見る優れた目を持ってるお前に、仲間のことが見えないはずがない!!」

 

菅原さんのその一言で、飛雄の空気が変わった。

 

「お前の一番のスピード、一番のジャンプで、飛べ。ボールは俺が持っていく!(・・・・・・)

 

 

意味は理解出来なかった。が、何かが起こるのは分かった。

「月島君、山口君。翔陽のマーク強めてもらっていいですか?」

「はぁ?あのチビにあげたってまたミスるだけじゃん?」

「うん、多分そうだと思う。けど何となく。田中さんへのトスは見てからで間に合うと思うから、ちょっとだけ意識してみて下さい。」と言って守備につく。

月島君は不満そうな顔をしていたが、多少意識してもらうだけで構わない。最も、意識したぐらいでは止められるものではないかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪物君にあのチビを意識しろと言われてから、すぐ後のことだった。チビは性懲りもなく突っ込んできたので、軽く視線を向けたところ、目を瞑って飛び込んで来ているのが見えた。

 

(このチビ何してる?)と思った瞬間、ボールはコートへ叩きつけられた。

何が起こったのか分からなかったが、日向の「手に当たったぁ!!」という声で我に返る。

大袈裟、まぐれ。そう思って守備に戻る。案の定チビの顔面にボールが当たりこちらの得点となった。

結局まぐれ。そう思ったが、日向がブロックを避わし、移動攻撃で再び点を取った時から流れが変わった。

 

追いつけない。怪物君の言った通りマークしてても。想像を遥かに超えるスピード。柄にもなく熱くなって必死に日向の正面へ飛んだが、トスはレフトの田中さんへあがり「ごっつぁん!!」という声と共に自コートへ叩きつけられた。

田中さん+チビに煽られ返されるが、歯を噛み締めてベンチへ戻る。そして怪物君へ目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1セット目は取られた。まだまだこれから、ではあるが勢いは向こう。手を打つべきだ。1セット目の速攻が決まりだしてからのプレーを頭の中で振り替える。

まず、翔陽の動きについていくのは恐らく難しい。翔陽と同じ身体能力でもない限りは。2人3人でマークすれば出来ないこともないかもしれないが、田中さんをフリーにする訳にもいかない。

 

「宇内、少し休んだら?ほら、ドリンク。」と山口君から渡される。

「ありがとうございます。」

「あのさ、宇内。今言うことじゃないかもだけど、敬語じゃなくてもいいんじゃない?同い年だし。」

「そうですか?2人がいいならタメで話しますが。」

「俺はいいよ!ツッキーは?」「…何でもいい。」

「それじゃ、普通に。そんで、2人とも翔陽とマッチアップしてなんか気付いたことある?」

「気付いたことかぁ、兎に角速い!ってことぐらいしか感じてないかなぁ。ツッキーは?」

「あのチビ、目瞑ってる。」

「目を?スパイクの時に?」

「君に言われてチビを良くみてたから気付いたよ。飛んでからスパイク打つまで目ぇ瞑ってる。」

 

つまり飛雄が翔陽のスイングに完璧に合わせてるということになる。有り得ない、とは言わない。何せセッター影山飛雄だ。それでも驚くべきことであるが、勝つためには驚いてばかりでいられない。

 

 

考えろ。冷静に。スペックで劣る俺はその分頭を使え。他の選手のように力押しで勝てるほど優秀じゃない。とうの昔に知っている(・・・・・・・・・・)

目を瞑り、1セット目を頭の中で振り替える。何度も。どういう形での失点が多かった?相手にとって一番嫌なことはなんだ?相手の攻撃の軸はなんだ?

「…」

目を開き、二人の方を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2セット目。スコアは14-9。日向影山田中のチームが5点リード。

日向の超速攻とも言える攻撃で、よく点を取っている。にも関わらずあまり点差が開かない、と影山は思っていた。

(やっぱり守備のフォーメーションが変わった。1セット目はブロッカーもレシーバーもローテする形だったのに。)

 

影山の言う通り、月島山口宇内のチームは守備重視のフォーメーションとなっていた。

まず、月島山口の2人は田中へコミットブロック。田中がどの位置で打っても必ず2人ブロックが付く。

そして宇内はブロックに参加せず、レシーブに専念。3対3としてはレシーバー一枚という偏った形となっている。

 

(常にノーブロックの日向に点を取らせる絶好の形だと思ったが、思ったよりも上手くいかない。やっぱり宇内(アイツ)、対応が早い!田中さんの徹底マークと同時に日向の弱点を早くもついてきた訳か!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「田中さんに二人でコミット?」「そう。」

宇内の発言を聞き「いやチビを何とかするって話じゃなかったっけ?」と月島が反論する。

「どちらかと言うと、1セット目の最後の形にされるのがまずい。田中さんはフリーだとレシーブするのが難しいと思う。けど翔陽のだとまだ楽なはず。」

「なんで?どっちもフリーにしたらキツいのは変わらないんじゃ?日向はあれだけ速いし。」と山口。

「翔陽が目を瞑って打っているなら、コースの打ち分けは出来ない。その点田中さんはフリーにしたら抜かれる。」

「なるほど、確かにそうかも。」と再び山口。

「レシーブは君一人になるけど?大丈夫なの?」

「まぁ正直、慣れるまでキツいとは思う。でも翔陽の動きに釣られそうになっても田中さんを徹底マーク。これをお願いしたい。」

 

 

 

 

ライトから翔陽が突っ込んでくる。田中さんはワンテンポ遅らせてレフトに。飛雄のフォームからは読みきれないので、スパイカーの動きで判断する。

(田中さんのレフト平行は見てからで間に合う。)

田中さんを視界を端で見つつ思考する。

(翔陽の体の向きは中へ切り込む形。あれじゃストレートは打てない。)

思考しつつも体は動く。スパイスコースに当たりをつけてポジショニング。

 

影山からの高速セットアップ。放たれた瞬間に日向の手に収まり、振り抜いた。

 

(コース、スピード、威力、回転。漸く…ドンピシャだ!)

ボールの正面に入った宇代の、勢いを殺した完璧なレシーブ。乾いた音が体育館に響いた。

そのボールを山口がセット。月島が高さを生かしてブロックの後ろへ落とした。

 

スコア14-10。一歩詰め寄った。

「宇内がとうとう上げたぞ、日向のスパイク!」

「フォーメーション見た時は無茶なことすると思ってたけど、よく上げたなぁ!」

 

 

「うぬぐ~っ!次はぶち抜くぞ蒼馬ぁ!!」

「いやいや、漸く1本。やり返したうちに入らないって。」

「オイ日向!次も上げんぞ!ビビんなよ!!」

「ビ、ビビんねーよ!もう1本持ってこい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピーと笛が鳴らされる。

2セット目終了。得点は29-27で日向影山田中チームがセット獲得。

セットカウント2-0で日向影山田中チームの勝利。

 

どちらのチームの選手も満身創痍で、皆肩で息をし、日向に至っては床に突っ伏している。

 

「二人とも、ごめん。」と宇内は声をかけた。

「…は?何が?」と息を整えながら月島。

「いや、俺の策で試合進めたのに勝てなかったからさ。」

「…そういう全部自分のせい、みたいな言い方、ムカつく。デュースまで行けたんだからいいでしょ。」

「そうだよ宇内。作戦はハマってたんだし、あと一歩だったよ。」と山口。

「それはそうなんだけど…」

 

 

「月島。宇内。今日の試合どうだった?」と澤村から声がかかる。

「…別に。何でも。エリート校の王様相手ですし、勝てなくても不思議じゃないです。こっちにもエリート校の人がいたんで多少接戦にはなりましたが。」

「…ふーん。宇内はどうだった?」

「はい。フォーメーションの方は機能したと思いますが、やっぱり俺が慣れるのが遅かったですね。もう少し点差離されなければ勝てたかなと思います。」

「そうか。月島はああ言ったけど、ちゃんと本気でやってて良かったよ。宇内は、あまり自分ばかり責めるなよ。これからチームになっていくんだからな?」

「…はい。」

 

 

 

 

 

その後、勝利した日向影山は無事入部を認められ、正式に部員となった。烏野高校バレーボール部のジャージも配られ、漸く一年生全員が揃うこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ。」

1人、体育館のトイレにて嘆息をついた。

練習は終わり、まもなく帰る時間である。が、どうにも家に帰る気にならなかった。

 

ぼんやりと鏡の中の自分を見つめる。そこには今にも泣き出しそうな子供の顔があった。

たたでさえ童顔なのに、余計幼く見える。小学生の時を思い出すので、俺は自分の顔が嫌いだ。

 

手に握りしめられているノートは、すっかりシワが寄りクシャクシャになっている。ノート代えたばかりなのに、今日の試合について読み返せるかな、などと何処か他人事のように思った。

 

「宇内~!そろそろ体育館締めんぞ~!!」と田中さんの声が聞こえた。どうやら自分以外皆外に出たらしい。

「はい!今出ます!」と聞こえるように返事をした。返事をしない訳にもいかないだろう。チーム内のギスギスは中学でたくさんだ。

 

もう一度鏡を見て、深くため息をついた。

 

「…負けたなぁ。」と小声で言いながらトイレを出た。




沢山書いたつもりでも字としては一万字行ってないのか、と驚きました。もっと短いスパンで沢山書いてる人尊敬です。

さて、オリ主君の方にも何やら問題がありそうなラストとしました。日向のように純粋100%でやれる人ってそうそういませんしね。

あくまでハイキュー!なのでギスギスもドロドロもしません。が、作品を通して成長する主人公君を見て頂けたらなと。

それにはまず上手く書けなきゃ意味ないですけどね。ということで、次回も気長にお待ち頂ければと思います。
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