現代日本で突然妹がレベルアップした件。   作:雨宮照

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女子高生。

 だって、これじゃあ妹が思考に介入してくるのを止める理由がないもん!

 このままじゃずっと刺身に思考を読まれてることを意識しながら生活しなくちゃいけなくなっちゃう!

 そうなると、エッチなこととか、エッチなこととか……あとはエッチなことが考えられなくなってしまう!

 男は五十二秒に一回性的なことを考えるらしいけど、それが封じられてしまう……!

 ってことは俺、もう男の子じゃいられなくなるのか⁉︎

 じゃあ、男子高校生として生活するのも今日まで……!

 嫌だよ母さん、俺はまだ死にたくな……

 ……ちょっと待てよ?

 俺は今、男子高校生じゃなくなると言ったな。

 ……ふはは、そうか、そうなのか!

 つまり、俺は今日から花の女子高生だ!

 女子高生といえば……ルーズソックスで携帯デコって、プリクラ撮ってタピオカだ!

 ――いやどの時代の女子高生像だ今のは!

 いかん、今の女子高生と関わりがなさすぎて想像図が悲惨だ!

 よく考えろ……教室にいる同級生を思い出せ……!

 例えば、俺の隣の席によくたむろしてるギャルの会話だ。

 放課後――そう! あいつらはよくカラオケに行く!

 それと、パンケーキにウィンドウショッピングだ!

 俺なんて買いたいものが明確に決まってなければ買い物になど行かないが、女子高生は特に欲しいものがなくても店を見て回る。

 ――そんなのはネットだけで十分だ!

 ネット通販ならば検索履歴や過去の注文から導き出したおすすめを提示してくれるため、いくらでも飽きずにショッピングできる。

 足腰も痛くならないし、よっぽどこっちの方が頭がいい。

 それに、重いものを買っても持ち運ぶ必要がないしな……。

 ……で、なんだっけ?

 あ、そうそう、女子高生がどんな生活をしてるかって話だったな。

 確か、女友達と胸を揉み合って――

「あの、水を差すようで申し訳ありませんが、お兄様」

「……どうしたのかな、読心大臣の刺身殿」

「……そんな不名誉そうな響きの役職はやめていただきたいのですが……まあとにかく、わたしから物申したいことがあります」

 女子高生同士のお戯れを想像していたら、ジト目の妹が割り込んできた。

 それも、かなりのジト目。

 梅雨で例えると、ジメジメ具合にも飽きてきた七月中旬の雨のよう。

 そんな湿気たっぷりの妹が、潤いたっぷりの唇を開いて事実を俺に突きつける。

「……正直、お兄様は脳内会議が下手すぎます!」

「ぐはぁっ!」

「先ほどは司会のわたしがいたから脱線を防げていましたが、いなくなった途端なんですかこの体たらくは! 馬鹿なんですか、死ぬんですか!」

「ぐはぐはぁっ!……ちょっ、やめて刺身」

「やめませんお兄様! ええ、刺身はやめませんとも! だって、なんですか女子高生になったらって! なるわけないでしょう漫画やアニメじゃあるまいし! そこに至るまでの考えの飛躍なんて、見てられたもんじゃないです――!」

「勘弁してぇ! 心がズタズタのボロボロだよ! 箸でつまんだショートケーキだよぉ!」

 妹による容赦のない攻めが俺を襲う。

 キツイよお……精神に作用する攻撃だよお……

 くらうならまだ物理攻撃のほうが良かったよ……。

 心の傷に特効薬はないからねえ!

 胸を押さえてうずくまる俺だったが、刺身はそんな俺の姿を見て口の端を吊り上げる。

「……ふふっ。お兄様は、頭の中でもわたしがいないとダメダメなんですから……」

 よくわからないが、こんなダメ兄貴でも妹の好感度はアップしたようだ。

 なんでだろう、さっぱり意味が分からん。

 さっぱり意味はわからないけど、まあよしとしよう。

 兄として、やっぱり最愛の妹には素敵な笑顔でいてほしい。

「そんなこと考えて……照れちゃいますよお兄様……濡れちゃいます!」

 ……やっぱり多少、苦しんでる姿も見せてくれないかなあ。

 


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