そんなこんなで失禁の後処理をしていた俺たちは、遅刻しそうになりつつもなんとかプラネタリウムに到着。平日の昼間ということもあって、チケットを入手することができた。
俺たちが選んだのは、世界を旅しながら星空を眺められるという上映作品。
上映時間になるまでは、二人でツーショットの写真を撮ったりしながら過ごした。
それにしても、周りはカップルばっかりだな……。
世のリア充どもは、普段からこうして楽しそうにお出かけしてるのか……。
それで、さらにこうしてイチャイチャしてるわけだな!
クソ、羨ましいな……。
勘違いしてもらっちゃ困るが、別に俺だって好きで引きこもってるわけじゃない。
できることなら楽しい所に出かけたいし、大勢でワイワイ遊びたい。
恋人だっていずれは欲しいし、たくさんデートを重ねたい。
でも……俺はそれが苦手で、必要以上に疲れを感じてしまう。
常に気を遣ってしまうし、反省も他の人以上にしてしまう。
だから自分のせいで空気を悪くしてしまったことや自分の発言がグループの輪を乱してしまったことなんかは、すぐに思い出せるほど心に刻まれてる。
その逆もそうだ。
自分が言われたこともずっと覚えてるし、今後忘れることもないだろう。
きっと、俺の心は対人に優れていない。
だから、引きこもる。
学校以外はできるだけ、家の中で一人で過ごす。
なぜなら、その方が楽だから。
楽しいことなんて初めから望まない方が、楽だから。
しばらく経つと、長めのブザーが鳴って案内係のお姉さんが説明を始める。
その声をBGMに刺身を見ると、刺身もまた俺の方を見ていた。
「……どうした、何かあったか?」
聞くと、心配そうに俺の目を見つめながら刺身。
「いえ……なんていうことはないんですけどね? その……なんというか……」
歯切れが悪い。
いつもならもっとハキハキと話すはずなのに、なぜかこちらの顔色を窺っているような様子だ。不思議に思っていると、意を決したような彼女が言う。
「……お兄様が、すごく辛そうな表情をしていらっしゃったので……」
「ああ……」
どうやら、気がつかないうちに卑屈な顔になってしまっていたらしい。
きっと、嫌なことを思い出してしまったからだろう。
中学時代、いじめられていたころの記憶。
妹に、いらない心配をかけてしまったみたいだ。
「ちょっと考え事をしてたからかな。心配かけてごめん」
手を合わせてつとめて明るく謝ると、慌てた様子でわたわたとする妹。
「い、いえ……それならいいんですけど……」
それから、彼女は俯いて黙ってしまう。
案内中だから黙っているのはいいことなのだが、なんだろう。
少しだけ、モヤモヤする。
彼女は今、どんなことを考えているんだろうか。
それを、表情から読み取ることはできない。
でも、何かを真剣に考えているということだけは、隣にいるだけで自然と理解できた。