「楽しかったですね、お兄様!」
人生初のプラネタリウムを楽しんだあと、駅ビル内のカフェにて。
「ああ、凄かったな! 俺、プラネタリウムって偽物の星を見るだけだって勝手に思い込んでたけど……最近の技術ってほんとに進歩してるんだな!」
テンション高く、俺たちはプラネタリウムの感想を言い合っていた。
いや、ほんとにすごいんだってプラネタリウム!
最初想像してたのは、真っ暗な空間で星の映像を見ながら「これが夏の大三角だ」とか「これが何座だ」とか、そういう学術的な説明を受ける退屈なものだった。
でも、いざ始まってみると引き込まれるのなんの!
あれは、ただ星を眺めるなんてものじゃなかった。
言うならば、星空の海に飛び込んだような感覚だ。
天の川銀河の中に潜って行ったり、流星群を間近に見たり。
普通に生きていたら絶対にできない経験をプラネタリウムが与えてくれた。
それに加えて。
「それにしてもお兄様……見過ぎでしたよ?」
「…………ナンノコトデスカ」
「惚けないでくださいー! 上映中ずっとわたしの方をみてたじゃないですかー!」
……そう、俺は刺身の方をずっと見ていた。
いや、そりゃ星だって見てたよ⁉︎
プラネタリウムに来たんだから、星を見なきゃ仕方ないじゃんか!
……でもさ、気付いちゃったんだよ。
プラネタリウムの座席ってリクライニングシートなんだけど……
なんと、すぐ近くに刺身の整った顔があるんだよ!
じゃあ、見ちゃうじゃん!
星より綺麗な顔が間近にあるんだからさ!
心の中で刺身の顔をベタ褒めしていると、それを読んだ刺身が激昂する。
「見ちゃうじゃん! じゃありませんよ! 恥ずかしくて集中できなかったじゃないですか!」
「いや、俺だって星を見る気だったよ! でも可愛かったんだもん! 見ちゃったんだもん!」
「ああっもう!……なんでそんなに平然と恥ずかしいことを……っ!」
「だって本当なんだもん! かわいいんだもん!」
「っ……んんんん! もう! お兄様は『だもん』禁止です! 金輪際言っちゃダメ!」
涙目で、フレアスカートの裾をギュッと握って吠える刺身。
ちょっとからかいすぎてしまったかもしれない。
可愛すぎて見つめちゃったのは本当だけど、嫌われてしまうのは困る。
だから、俺は素直に刺身の言いつけを守ってこう言った。
「かわいいんだもの」
「みつをですか! 『だもん』を『だもの』に変えたら許されるとでも⁉︎」
……うーん。
どうやら、火に油を注ぐ結果となってしまったらしい。
どこを間違えてしまったのかはわからないが、これも奇行の一つなんだろうか。
真っ赤になって怒る刺身に、赤の反対色の、緑色のメロンのケーキを注文する。
すると、刺身は少し表情を緩めたあと、怒りの矛先をなくしてどうしたらいいのかわからないといった風にこっちを睨みながら「うううう……!」と唸った。
その唸り声を聞いて、思い立つ。
(もしかして、これは怒りでレベルアップさせるチャンスでは……?)
普通なら、刺身を怒らせようなんて発想が思い浮かぶはずもない。
なぜなら、怒らせてしまえば俺は妹に嫌われてしまうからだ。
しかし、刺身にはレベルアップという感情を発散する機能が備わっている。
ということは……いくら怒らせても、レベルアップさえしてしまえば彼女は怒りの感情を忘れてくれるのでは!