現代日本で突然妹がレベルアップした件。   作:雨宮照

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【最終話】愛は勝つ。

   エピローグ

 

「お兄様…………っ!」

「刺身! 生きてたのか!」

 地球機関が崩壊して、地球人が救われてから一週間後の朝。

 妹の刺身が、家に帰ってきた。

「お兄様……わたし、宇宙にさらわれちゃいました……。怖かったんですよ? 一人で寂しかったんですよ? それに、九州から埼玉まで帰ってくるのは大変でしたし……」

「ごめん、俺が宇宙人に騙されたばっかりに……」

 肩を落として謝る俺。

 刺身はこんなにボロボロなのに、それでもキラキラと笑っている。

「いいんです。だって、お兄様は……わたしのことを想って、宇宙人に勝ったんですよね?」

「ああ……そうだ。ずっと伝えられなかったけど、本当はお前のことが好きだったから!」

「愛してますよ、お兄様」

 刺身が、俺の胸にやさしく顔を埋めた。

 お日様の香りが鼻腔をくすぐる。

「わたしは、ずっとお兄様のことが好きでした。小さい頃から、ずーっと」

「俺も、ずっと刺身のことが好きだった。それこそ、宇宙人に対抗できるほど強く愛してた」

 刺身が俺の腰に手を回して、ギュッときつく抱きしめる。

 俺もそれに応えるかのごとく彼女の背中に腕を回し、そっと力を込めた。

 そして、数分間沈黙したまま抱き合って。

 それから、しばらくの間見つめ合う。

「刺身。俺と付き合ってくれ」

「……はい。よろこんで……」

 遅過ぎた告白。

 その間には、兄妹恋愛の壁や病気、宇宙人の襲来などたくさんの障害があった。

 でも、俺たちはその全てを乗り越えていける力を有している。

 それは、愛という名の確かなパワーだ。

「……ありがとう。刺身、愛してるよ」

「はい、お兄様。刺身はすごく嬉しいです…………それじゃあ、早速ベッドのほうに」

「早いよ! まずはその一週間でボロボロになった服を着替えてお風呂に入りなさい!」

「まずはシャワーというわけですね! 先に入ってるので途中から突入してきてください!」

「違うよ! ただ風呂に入って欲しかっただけで……! ああもう、急にグイグイ来る!」

「じゃあせめてチューを! チューだけでも!」

「今の状況じゃやだよ! もっと落ち着いたときにしたいよ――!」

 

 ――レベルアップ。

 それは、人間が考えたフィクションの中の現象である。

 しかし、虚構であるフィクションが実は現実とリンクしていたとしたら――

 人間の頭の中で考えたことが、実際は全て現実と繋がっているとしたら――

 

 あなたは、それでも「愛」を思い出せますか?

 

   * * *

 

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