「…………」
いやなんだそれは!
意味がわからないよ!
レベルアップ⁉︎
「レベルアップって何ですか⁉︎」
「こっちが聞きたいよこのナマモノシスター!」
「ナマモノシスター⁉︎ なんか酷いです! 同人用語と勘違いされそうですー!」
涙目で返した俺に、同じく涙目でポカポカ殴ってくる刺身。
……訳のわからない状況は、訳のわからない二人組を生んでしまうらしい。
まあ、せっかく涙目になったわけだし、妹の涙を味わわせてもらおうか。
「……んんっ! 待ってくださいお兄様! 現実逃避をしている場合じゃありません!」
……はっ! そうだった!
考えなければ理解できない状況はもっと理解できなくなっていくばかり。
こうしちゃいられない、妹のレベルアップについて頭をフル回転させ――
――やっぱり美味いな刺身の涙。
「だから現実逃避してる場合じゃないですー!」
再び妹に怒られてしまった。
まあ、怒られると興奮するから別に嫌じゃないんだけど、嫌われるのは避けたい。
だから今度は素直に有能司会者さしみちゃんに頭を下げて会議を円滑に行うことにする。
「仰向けになった状態で頭を下げるってどういうことですか」
すぐにヤジが飛んできた。
あれま、先ほどまでの有能司会者ぶりはどこへやら。
知らないうちに屁理屈ばかり言う会議滞らせ名人に退化してるぞ。
妹よ、お兄ちゃんはお前をそんな子に育てた覚えはない!
まず育てたのは俺じゃなくて父さんだけど!
さっきもそんなこと考えた気がするな。
……まあいい、こうなったら意地だ。
意地でも仰向けのまま頭を下げてやろうじゃないか。
だから、ええと……この状態で腰を折ると腹筋みたいになるわけだな。
それがすなわち仰向けで頭を下げるということだろう。
だから――えいやっ!
やったぞ、成功した!
仰向けで頭を下げる――変な体勢での腹筋に成功したぞ――
「いや待ってくださいお兄様色々と大変なことになってます苦しいですー!」
――ん?
なんか頭の上の方で妹の泣き叫ぶ声が聞こえるぞ?
……いやいや、そんなわけがない。
俺が仰向けで頭を下げただけで、妹が苦しむなんて……
「早く退いてくださいー! おっぱいがちぎれちゃいますー!」
……うん、あるらしい。
可哀想だから退いてあげよう。
「ええと、お兄様?」
「……どうした、生魚?」
「生魚って呼び方はやめてください! 金輪際、絶対に!」
激昂する妹。
ふむ、多少は自分の名前にコンプレックスがあるらしい。
確かに、名前は生まれた時に親がつけるから自分で決められないし辛いよな。
うんうん、分かるぞ妹よ。
「……で、言いかけたのは何だったんだ生魚」
「ちくしょうです! 納得していたように読心したのですがあれは間違いだったんですか!」
さらに激昂する妹。
顔が真っ赤に熟れたトマトのようだ。
砂糖をかけて食べてしまいたい。
……え? ウチの地域では砂糖はかけないって?
そんなことは知ったこっちゃないよ。
だって砂糖かけたほうが甘味が増してだな――
「誰と話してるんですか! わたしにも喋らせてください! ほら!」
――トマトが噴火した。