息継ぎ 作:華メル
地下を出てから何度目かの誕生日を迎え、とうとう俺は訓練兵団に入団できる歳になり、ウォール・ローゼ南方に位置しトロスト区近郊に置かれた兵団訓練施設、そこの第102期生として入団した。
まあ、やるからには首席を狙うべきだろうな。とりあえず、訓練兵として培うべき力は多く見積って三つくらいだろう。
まずは技巧に富むことが新しい兵器発案に繋がる。
次は兵法、軍術論。
そして他の訓練兵を突き放せる程の戦闘力を身につけること。
肉体、立体機動については他の訓練兵に比べ俺は少しのアドバンテージがある。調査兵に学び、調査兵と共に訓練をした俺は周りよりも立体機動装置に対する理解が深いからだ。
「なあペア!お前やっぱすげぇよ! コツとかあるんだろ?出来ればすこーしだけ─」
「コツなんかない。説明された事をちゃんと理解し、十分に注意して実行するだけ。やる前から無理無理言ってたり、自分で少しも考えれねぇ奴が上手くなる訳ないだろ。」
実際そうだろう。何事も初めからコツを教えられても身にならない。
それをビビって訓練に出遅れているヤツらに向けて発する。あいつらは誰かがやったあとや、誰かと一緒じゃないと動かないからな。
自分自身が少しは思考して苦労して身につけてこそ力になるのだと俺は思っている。
「おいロルフ!…七光りなんかに構ってんじゃねぇよ。そんな奴から学ぶもんなんてないぜ」
あまり訓練兵内で俺はいい目で見られていない。書類上調査兵団分隊長の保護者を持ち、数年前から調査兵に混じって訓練を受けていた俺の成績がいいのは必然だからだ。
中間順位などでも当然のように上位に入ることが他の訓練兵の気に触るのだろうな。だが、初期成績が良くてもあとから抜かれる可能性もある。だから努力は怠らない。
俺自身この状況が宜しくないことは理解している。自分自身どうせ駐屯兵団に入団する奴らと仲良くする必要はないと思っていた。
だが、兵団間で交流があることは事実。同期とこれっぽっちも親しくならないのは悪手と言える。まあ、言ってしまえば隊長クラスの上官とのコネクション以外に必要性を感じてはいないがな。
さっき話しかけてきた人懐っこい笑顔と薄い金髪が特徴的なロルフは気軽に俺に話しかけてくる数少ない同期といってもいい。
そしてロルフを回収した茶髪のチビはヘレス。俺のことがたいそう気に入らない様子のチビだ。
同期で絡みがあるのはだいたいこのくらいだな。あとはチラチラとアドバイスを求めに来るやつら、調査兵団の実態を知りたがるヤツらとか色々だ。
「つまんねぇの」
訓練を終え、立体機動装置の整備をしていたら、息をするかのように言葉が漏れてしまった。ここに来る前は、もう少しやる気があったと思っている。
ここで学び、力をつけ、調査兵として役にたとうと考えていた。
始まってみたらどうだ。
やる気のない訓練兵たち、たいしたことない訓練、嫉妬やらなんやらを向けられる日々。
あまりにも簡単で、ムカつく日々だ。
調査兵団で訓練していたからぬるく感じるのは当たり前だろう。常に死地で戦う彼らと同等の訓練をまだ入団したての訓練兵たちができるわけがないからな。
あと自分が悪く言われるのは別にどうだっていい。俺を悪く言いながら、調査兵団をバカにしてくる奴らがいる。
それがムカつく。
もちろん、手を挙げたりなんかはしない。こちらが仕掛けても、あっちから仕掛けても、罰則を受け、これからに響くのは困るからな。
「はぁ…息苦しい三年になるな…」
立体機動装置のワイヤーを見たら、頭にハンジさんが浮かんでくる。自慢げにこのワイヤーを使った捕獲器の説明をされたな。
「ハンジさんに会いたい…」
俺の声は訓練終わりのざわめきに飲み込まれ、この場の誰も耳にすることはなかった。