ソード・ワールド2.5(sw2.5)エピックトレジャリー リプレイ風オリ主小説「レプラカーンの冒険」   作:すー2018

1 / 11
Session-1
第一話 プロローグ前のプロローグ?


「うーがー! ますたー、どこ行ったです……?」

 

ルーンフォークのトットは、今日自分の主人となったばかりの少女をいきなり見失っていた。マスターとなったレプラカーンの少女が使う「姿なき職人」の力だ。トットは目の前からフイッと姿を消してしまったマスター、チェルシーのことにおろおろとするばかりだった。が、そこらじゅうの家具や、机や椅子の下を探してみてもまったく見当たらず、腹立たしさすら感じ始めたようだ。

 

「出てくるです!」

 

「やだよー! ボクの従者になるなら、これくらいついてこれないとねっ。じゃないと、ボクにいっつもついてくるなんていう、うっとうしくて面倒くさいこと、認めないから!」

 

そう言いつつも、ひょっこりと部屋から外へとつながるドアの前に現れるチェルシー。

 

「はっはっは、参ったなあ」

 

髭もじゃの壮年のレプラカーン、シュタインバッハがその様子を見て苦笑した。彼はチェルシーの親代わりとなり、赤ん坊のときから面倒を見てきた叔父だ。ここは"はきだめの"魔動死骸区にある「威勢のいい」遺跡ギルドの幹部のひとりが持っているいくつかの別邸。その空(から)になったひとつの屋敷の広々とした快適な地下室で、そっとふたり暮らしてきたのだ。家の主である遺跡ギルドの幹部の男、テディは、珍しいレプラカーンが自分の家に暮らし始めたことをとても面白がり、アルケミスト(錬金術師)兼インベンター(発明家)でもあるシュタインバッハの奇抜な道具がいつでも作れるように、広い地下室の一角を工房にすらしてくれている。上の家も空いているのだからふつうに住んだらいい、ともテディは一度勧めもしたが、レプラカーンとしては地下室の方が落ち着くらしい。遺跡ギルドの幹部の家を空き巣に入ろうという愚か者はいないとは思うが、なんといっても"はきだめの"魔動死骸区の無人の家など、盗んで下さいと言っているようなものだ。レプラカーンの発明家が住んで守ってくれていることに、テディも感謝をして、自由にさせている。

 

チェルシーは、赤ん坊のころに彼女の両親から託されて、シュタインバッハが育てることを引き受けた。シュタインバッハが行うアルケミストやインベンターとしての道具作りの仕事を子どものころから知っていて、見よう見まねで簡単なおもちゃが作れるくらいには、技術をそこそこ覚えている。しかし、彼女は15才になったら冒険に出ると言って聞かなかった。シュタインバッハもこの"はきだめの"魔動死骸区に落ち着くまでは、それなりに冒険に出て仲間とともに蛮族を倒したり、遺跡の探査をしたりという経験はある。

 

しかし、チェルシーは。

 

「シュタインバッハおじさん。ボク、ひとりで大丈夫だよ! 知らない子と一緒にいる方がイヤだっ」

 

なんと、冒険に出るというのに、たったひとりで行けると思っているのだ。シュタインバッハは知っている。人見知りで排他的なことが大勢のレプラカーンたちの総じた性格であるとはいえ、仲間抜きには冒険が出来ない。

 

チェルシーが、最低限必要なこととして、シュタインバッハと遺跡ギルドの幹部であるテディのつてを頼り、ひとと触れあうことをイヤイヤやりながら覚えた冒険者としてのたしなみは、なんとファイター。筋力も生命力も弱めなレプラカーンにはわりと不向きな技術を学んでしまったのだ。もうひとつの技能は、魔動死骸区の外の自然に出かけることが好きで覚えたレンジャー。

 

要するに、遺跡だらけのここ"はきだめの"魔動死骸区の住人でありながら、人工の遺跡の探索や罠、そして敵などについてまったく知らないど素人として育ってしまったのだ。

 

シュタインバッハは心配で仕方がない。家の主であり、数少ない友人でもあるテディに相談をしたところ、ちょうど一体のルーンフォークが主のいない状態だというので、せめてお供につけようとマスター認定をさせたところ……。

 

チェルシーは拒否った。

 

その始末である。

 

「シュタインバッハおじさん! ボク、新しく見つけた遺跡にさっそく行くからねっ。こんな子いらないから!」

「うう、いらないはひどいです! お役に立ってみせるです、マスター!」

 

そうだ。今日は魔動死骸区の外れ、森や草むらのなかにチェルシーが遊んでいたらひとつの遺跡を見つけて、行くと聞かないからこうして緊急的にルーンフォークのトットをつけようとしていたのだった。

 

「見たとこ、すごく小さな遺跡っぽかったし、そんなのボクひとりで調べられるよ!」

 

えっへん、と胸を張るチェルシー。

 

いやいやいや。探索スキルのスカウトも、知識としてのセージも持っていない子どもになど、無理に決まっている。シュタインバッハは頭の中で即断したが、冒険をまだ吟遊詩人の歌や、書物でしか知らないチェルシーにどう知らせてやるべきなのか。物語には必ず強い味方の仲間が描かれていたはずだが、いざ始めようというときに、その記憶が抜け落ちているのは何なのか。

 

「いいんじゃないか、シュタインバッハ。行かせてやれよ」

 

ルーンフォークのトットを連れてきて、マスター認定拒否という修羅場に居合わせたため、しばらく気配を殺し様子を見ていたテディが笑った。

 

「テディ……」

「トットには一応最低限のセージがあるし、俺はスカウトとしてそこそこの腕前を自認してる。小さな遺跡くらいなら、様子を見に行く程度は大丈夫だろ」

「まさか、この子と一緒に行ってくれるのか!」

 

シュタインバッハが困り果てた顔を、瞬時に変えて輝かせた。

 

「新しい遺跡が見つかったら、ひとまずどんなところかを探りに行くのは遺跡ギルドの仕事でもあるしな。チェルシー、大家さんの俺の言うことは聞けるよね?」

 

うぇえ、とチェルシーは心底イヤそうな顔をした。

 

「このトット、そして俺を連れて行くことは絶対だぞ、チェルシー。なに、それも冒険の勉強だと思ったらいいさ。……そうだな。いい機会だから、もうひとり新米のスカウトを連れて行こう。俺が何でも見つけちまったら冒険の勉強にはならないからな。リオンっていううちの若いやつがいるから、そいつも一緒だぞ」

 

……こうして、レプラカーンの少女チェルシーとルーンフォークのトットのコンビはテディの口添えでなんとか成立し、スカウトふたりという頼もしいお伴が付いての「冒険のプロローグ」となったのだった。




キャラクター


チェルシー レプラカーン 女 15才 冒険者技能:ファイター2 アルケミスト1 レンジャー1 いちばんの一般技能:インベンター3(発明家)

取得戦闘特技: 武器習熟A(ウォーハンマー)

器用度19 敏捷度13 筋力9 生命力14 知力14 精神力15


トット ルーンフォーク 0才 冒険者技能:マギテック2 シューター1 セージ1 いちばんの一般技能:ハウスキーパー5(家政婦)

取得戦闘特技: ターゲッティング

器用度19 敏捷度15 筋力13 生命力16 知力15 精神力8


テディ ナイトメア 男 26才 冒険者技能:スカウト5 フェンサー2 コンジャラー2 いちばんの一般技能:ペガー5(物乞い)

シュタインバッハ 男 98才 冒険者技能:アルケミスト6 シューター5 セージ3 いちばんの一般技能:インベンター5(発明家)

リオン 人間 男 16才 冒険者技能:スカウト1 ソーサラー1 フェンサー1 いちばんの一般技能:ノーブル5(貴族)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。