ソード・ワールド2.5(sw2.5)エピックトレジャリー リプレイ風オリ主小説「レプラカーンの冒険」 作:すー2018
第六話 第二の冒険の始まり
レプラカーンの少女チェルシーが初めての冒険を終えてから、数日が経つ。
"はきだめの"魔動死骸区に建つ豪邸の、地下室へと戻ったチェルシーは、今日も朝食の時間を迎えた。従者となったルーンフォークのトット、そして育ての親である叔父のシュタインバッハも一緒だ。
シュタインバッハがこれまで用意していた奇抜な味の黒焦げパンではなく、多少はコックの心得があるトットが作る食事になったのは、冒険を始めてみて一番良かったことなのかもしれない。
「ますたー、ごはんです!」
地下室のキッチンの脇に置かれたテーブルの上に、トットが作った料理が並んだ。
ほどよく焼けたトースト、ふわふわのスクランブルエッグ。生ハム。それなりに色使いの綺麗なサラダ。
「わー、おいしそう」
「えへへ、そう言って頂けるとうれしいです、ますたー」
「いただきまーす」
チェルシーはスクランブルエッグを口に運んだ。
「冒険者になったら、生活費は入れると言っていたような気もするが……さっぱりだなぁ、チェルシー」
シュタインバッハが苦笑する。
「もぐもぐ……ごくん。だって、冒険ってもっといっぱいお金とかアイテムとかもらえると思ってたんだよ! 本格的に、冒険者セットとか、トットのもっといい装備とか、マテリアルカードのいいやつとかを揃えようとしたらあっと言う間に足りなくなっちゃう。ごめんねシュタインバッハおじさん、今日もツケで!」
チェルシーは悪びれずに軽く謝った。
「まあ、いいだろう。うちにいるあいだに、本当に冒険に出られるくらいの分別を覚えていってくれるなら私も協力を惜しまないよ。渡したSSランクのマテリアルカードにも頼らずに無事ひとつの仕事を終えることが出来たのだから、その調子で頑張りなさい」
「はーい、シュタインバッハおじさん!」
「そうだ、黄金のマトックがあるから必要だったら持っていきなさい」
「ええ……! それは、さすがに重くて持てないよ!」
黄金のマトックは、ウォーハンマーの武器として使える光り輝くアイテムだ。金額的にはこれも1万ガメルを超えるものだが、それをさらっと渡そうとするシュタインバッハも、申し出を断るチェルシーも金銭感覚や、冒険者としてのアイテム収集欲の無さに大問題がある、と大家さんのテディが見ていたら思うところだろう。
「ますたー……おうちにどれくらいお宝が眠ってるです……ダンジョン並みにアイテムがあるです」
トットも驚きを隠せなかった。
そうして家族での朝食を終えたところに、コンコン、と地下室のドアが叩かれた。
空き家となっている豪邸の地下室にレプラカーンの家族が住んでいることを知っている者など、ひとりしかいない。
「テディさん! このあいだはありがとうございました」
「ますたーに会わせてくれてありがとうです」
「よお、チェルシー、トット。礼はこっちも言わなくちゃな。蛮族退治をありがとよ」
「朝ごはん、いる? トットが作ってくれると思うけど」
「……そうか。じゃあ、話は飯を食いながらにするか」
テディは椅子に腰かけた。
「また、冒険のお話? テディさん」
チェルシーがワクワクとしている。
「ああ。まあ、今回は冒険って言えるほどじゃあないのかもしれないけどな……」
「と、いうと?」
「俺がここみたいな、いくつかの家を持ってることは知ってるだろ? 実はな、そのひとつに……どうも最近、出るらしいんだ」
「出る……? まさか」
「幽霊だよ。たぶん、な。ごろつきじゃあない」
「ヤダ! 恐いじゃん、そんなの」
幽霊と聞いて、チェルシーが拒否る。
「ますたー……恐いと思ってやめてたら、冒険はたぶんいつまでも出来ないです……」
「そのとおりだ、トット。今回も俺が一緒だ、ふつうの家だから罠も仕掛けもないはずだし、場所は魔動死骸区の中だから日数をかけることもないだろう。頼まれてくれよ、チェルシー」
「うーん……」
「今回も、もうひとり仲間がいる。チェルシーと同じファイターのやつだぞ?」
「ええ……。知らない人とまたパーティ組むの? 冒険って、それは絶対なんだ」
「……ますたー……ほんとに、性格が冒険向きじゃないです……」
「でも分かった! やる! テディさんの頼みだもんね」
「おっ、ちょっとは成長したな、チェルシー。こういうときは、だ。引き受けるときの金額を交渉して、ちょっとは報酬をプラスにするといいんだぞ」
「そうなの? じゃあ、1万ガメル」
「……ますたー……身の程知らずと世間知らずは、いちばん恐ろしいかもしれないです……」
「はっはっは、まったくだ、トット! だけど前よりはすこし弾むぞ。ひとり1000ガメルは約束する」
「1000ガメル! そっか、そのくらいあれば身の回りを整えるくらいの装備品は買えるねっ。よし、やるよテディさん! シュタインバッハおじさんにツケてる生活費のぶんを払えるくらいには、ボクはなるっ!」
「……ますたー……すごく小さな目標なのです……」
「はっはっは、行っておいでチェルシー。気を付けて」
「はーい、シュタインバッハおじさん!」
そうして、チェルシーとトットの第二の冒険が、幕を開けた。