ソード・ワールド2.5(sw2.5)エピックトレジャリー リプレイ風オリ主小説「レプラカーンの冒険」 作:すー2018
「庭って言うか……こりゃ、ちょっとした森だな」
門を開き、幽霊屋敷の敷地内へ足を踏み入れたテディが言った。
無人であった10年の歳月は、屋敷の庭をちょっとした森へと変えていた。建物の一階ほどは背のある木々が生い茂り、門から屋敷へと至る道も草をかき分けて四人は進んでいった。二階建ての建物には窓を突き破り、植物が中から伸びているところもあった。
「……ここに住んでいたのは、どんなひとだったんだ? テディさん」
アッシュが尋ねる。
「なんでも、商売に成功した農家の夫婦が持ってたらしいんだがなぁ。10年前にそのひとり、奥さんの方が病気で亡くなって旦那が急に引っ越してからは、何の手入れもしていないはずだ」
「うーん、窓が割れてたり、壁に蔦(つた)が這(は)っているのは、ほんとに幽霊屋敷みたいで恐いけど……こんなに緑が多いところが魔動死骸区にあったなんて知らなかったよ、テディさん。仕事を終えたらボクの遊び場にしてもいい?」
「幽霊が恐かったんじゃないのか、チェルシー」
「ええ……恐いけどさ、話をして、あの世に行ってもらえれば大丈夫なんでしょ」
「そりゃそうだが」
「この家にも、地下室はあるのかな? ボクはそれが気になるよ」
チェルシーはレプラカーンらしい意見を言った。
「ボクだってお年頃だからね! そろそろ自分の地下室が欲しいなあって」
「ますたー……生活費もツケにしてるのに、無謀です……」
「ははは。欲しいのは豪邸じゃなくて地下室っていうところが、レプラカーンの連中は本当に面白いなあ」
テディがおかしそうに笑った。
「さあ、入るぞ?」
幽霊屋敷の玄関の扉には、鍵がかかっていた。
「一応鍵もあるんだけどな。アッシュ、練習にはちょうどいいだろ。開けてみな」
「……はい」
アッシュのスカウトツールによる鍵開けで、ドアは難なく開いた。正面には二階へと続くどっしりとした階段があり、左右に大きな窓とさまざまな部屋へと続く通路がある。
「やっぱり窓が割れて開いてる。ここから入っても良かったねっ」
チェルシーが風通しのいい方向に目を向け、割れた窓を見つけて言った。
「今回も探索の練習に来たようなもんだ。一応鍵開けはやってもらわないとな? だいたいこの家は10年、泥棒の多い"はきだめの"魔動死骸区で無人だったんだ。ま、正面の鍵はかけてたが、窓だとか裏の入り口とかは割れたり開いてたりするんだろ、まず金目のものは何も無いだろうな」
テディがそう答える。
「ええ……ほんとに、幽霊だけが住んでるとこなんだ……」
レプラカーンの少女の、大きなもふもふの耳がぺしょんと垂れた。
「広そうな家だな。手分けして探すか、幽霊を」
アッシュが提案する。
「そうだなあ。よし、二手に分かれよう。左右の通路から一階部分を見に行って、戻ってくるんだ。何も無かったら、四人でいよいよ影を見たって言う二階に行こう」
「……了解、テディさん」
と、アッシュが答えた。
「一階に何かモンスターがいたら、ボコっちゃってもいい?」
「おいおい。単独だとか少人数で、パーティが別れた状態のときに戦闘に入るのは無謀すぎるぞ、チェルシー。どうしても仕方がないならやるしかないが、まずは撤退してパーティメンバーと合流できるならそのほうがいいことは覚えとくんだ」
「はーい」
「ますたー、返事だけはすごく良いのです……」
そうして四人は二手に分かれた。スカウトの技術を持つテディと、ファイターのチェルシー。同じくスカウトがあり、ファイターでもあるアッシュと後衛専門のトット。
広い屋敷の一階部分をくまなく探してみたが、あるのは何もかもがはぎ取られたり持っていかれたりした殺風景な部屋ばかりだ。お宝になるようなものは何も無く、そして今回の目的である影の主も見当たらなかった。
「じゃあ、いよいよ二階だ。ここはちょっと警戒して、四人で行こう」とテディ。
「うう……だんだん恐くなってきたよ、テディさん。姿くらまして逃げちゃダメ?」
「ますたー、これも冒険の練習になるです!」
「……分かったよう」
「いざというときは、俺もアッシュも力になる。心配すんな、チェルシー」
「うん……」
怖気づくチェルシーを何とかなだめ、合流した四人は二階への階段を上がっていったのだった。