最愛の人にフられたのでAGI/STRに特化しようと思う 作:望月鈴夏
[Gaaa!!]
「てぇい!!」
嫌な雰囲気を纏う黒紫のブレスを避け、着弾したブレスが拡散させた瘴気を吸い込んだことで発生した状態異常の発症ゲージが進んでいくのを視界の隅に捉えながら顔面を横凪に斬りつけて距離を取る。
少し距離が離れたからか噛み付いてきた竜の口に長剣を一本突き込むことで怯ませて、長剣を引き抜くと同時に回し蹴りをたたき込んでダウンさせた。
「ダウン取った!!」
倒れた体を起こそうともがく竜の頭を斬り付けつつ、こいつについて考える。
先ほど発見したこの竜、名をゴア・マガラと言うのだけれど、もう十分以上も戦闘を続けている。
ゴアの吐くブレスに混じっているウイルスに感染されてはゴアを斬り続けて克服、クリ率アップのバフを得て攻撃をするというパターンが続いており、時折咆哮や翼腕で周囲を薙ぎ払っての攻撃を中断させるような行動を取ってくる所為で翼幕の内側でうごめくウイルスが青から紫に染まってきていて何だか不穏な雰囲気を感じさせている。
本能もこれ以上ウイルスが活性化すると危ないと警鐘を鳴らしているのでさっさと倒してしまいたいけれど、今までの行動の中で特に弱ったと思わせる行動もなかったので不可能だろうと判断して一度攻撃を中断した。
[Gaaaaa!!]
「おっと!危ない……なぁ!」
攻撃の中止と同時にダウンから起き上がる動作を見せたのでバックステップで離れると、案の定起き上がると同時に地面に向けて発射したブレスの反動で飛び上がり、一瞬だけ滞空するとその巨大な爪の付いた翼腕で僕を握りつぶそうと腕を僕に向けて滑空してきた。
それを逆手持ちにした左手の長剣で受け流し、反転して突進してきたのを頭部を踏み台にして背後に回り込んで尻尾を斬り付ける。
「お返し!!」
[Gaaaaaaaa!?]
確かな手応えとともに切り飛ばされた尻尾が跳ね、本体のゴアも悲鳴にも似た咆哮を上げて怯んだようにこちらを睨み付けて後退った。
[Gaa……ッ!!aaa……Gaaaaaaaaaaッ!!]
猫のように威嚇の咆哮を上げているゴアの首を刎ねようと突撃すると、ピクリと肩が跳ねたゴアがウイルスを周囲に大量にまき散らしたと同時に翼腕を地に着け、頭部から紫の触角を生やして咆哮を上げた。
それによって発生した風圧で押し返されるのを足に力を込めて踏み止まっていると、悪い予感がして顔を上げた瞬間には高威力のブレスが発射される寸前だった。
「ッ!?間に……合えッ!!」
[Gaaa!!]
踏ん張っていた地面を無理矢理に蹴りつけて前脚と翼腕の隙間に潜り込んだ直後、翼腕で抑えていても仰け反るほどの威力が込められたブレスが三連続で炸裂した。
空中に居た所為か発生した風圧によってゴアの頭上に投げ出された事を利用してかかと落としを決め、そのまあ反動でサマーソルトのように空中で回転して着地する。
[Gaa……ッ!?Gaaaッ!?aaaaaaaaaッ!!]
流石に頭上からの強烈な衝撃は効いたようで立ち上がろうとしないゴアの触角を斬り飛ばすと、尻尾の時以上に悲鳴を上げたかと思うと転がるように後退し、翼腕で地面を握りしめながら咆哮を上げた。
「格闘術必殺奥義……ッ!!ドロップキック!!」
[Gaaッ!?───Gaaaaaaッ!!aaaaa……]
そんなゴアに向かって剣を鞘に戻しながら走り始め、頭をこちらに向けた直後に格闘術にて威力が底上げされる動作の対象であるドロップキックをお見舞いすると、触角が根元から折れると同時にゴアの頭蓋を突き破って脳が潰れ、ゴアのHPが全損して地に伏した。
「……勝ったのはいいけど、脳味噌踏みつぶした感触まで再現しなくてもいいじゃん……」
足に残るやけにリアルな感触にぼやきながら地に伏したゴアに剥ぎ取り用のナイフを突き刺すと、甲殻や鱗、触角に翼腕等がアイテムとして取得され、残った遺骸はポリゴン化した後に粒子となって消えていく。
そんな風景を見て勝てた事を実感すると同時に、その余韻をぶちこわすようにゴアの素材で出来た大きめの宝箱が現れた。
大層な出現方法に反してしょぼい報酬だったらどうしようかと考えながら宝箱を開けると、ゴアをモチーフにしたのであろう装備が入っていて、それらはユニークシリーズというらしくいつの間にかフィールドをダンジョンと捉えたクエストを受けていたことを知らされることとなった。
そんなユニークシリーズだけれど、性能はこんな感じだ。
『黒蝕ノ双弓剣』
【STR+20】【AGI+10】
スキル【鬼人化】
【蝕弦矢】
【破壊不可】
『黒蝕ノ触角冠』
【MP+30】【INT+10】
スキル【無我の境地】
【破壊不可】
『黒蝕ノ装衣』
【DEX+10】【STR+10】
スキル【回避性能Ⅴ】
【破壊不可】
『黒蝕ノ篭手』
【DEX+10】【STR+10】
スキル【見切りⅤ】
【破壊不可】
『黒蝕ノ下衣』
【AGI+20】【INT+20】
スキル【虎視眈々】
【破壊不可】
『黒蝕ノ鎧靴』
【DEX+20】【AGI+10】
スキル【バイオドクター】
【破壊不可】
『黒蝕ノ翼腕』
【STR+15】【AGI+15】
スキル【浮遊Ⅴ】
【破壊不可】
『黒蝕ノ剣尾』
【STR+15】【AGI+15】
スキル【黒蝕ノ鱗粉】
【破壊不可】
『黒蝕ノ護石』
【STR+10】【DEX+10】【AGI+10】【VIT+10】【INT+10】【HP+10】【MP+10】
スキル【召喚】
【破壊不可】
『武士道ノ巻物』
スキル【ブシドースタイル】
スキル【ジャスト回避】
スキル【トリニティレイヴン】
『黒蝕ノ巻物』
スキル【狂竜身】
スキル【狂竜化】
全体的に攻撃力やクリティカル率を上昇させる効果が多く、クリティカル率は最大で90%と初期値の10%、つまり合計で100%となって攻撃に必ずクリティカルが発生することになる。
また、最低でも30%はクリティカルが発生するし、そうでなくとも一定の攻撃に威力増加の効果が発生することで戦闘の速度が加速する事になる。
システムすらも変更させるほどのスキルが多いので修正は食らうだろうけど、多分第一回目のイベントが終わるまではこのままだと思うし有難く使わせてもらおう。
防具を装備して思うのはドレスみたいだと言うこと。翼腕も折り畳んで腰辺りに巻き付かせればよくあるドレスのようになるし、そもそもの装衣も裾がぼろぼろになっているものの上半身だけで言えば肩出しのドレスのものだと言われても違和感がない。
尻尾も双弓剣の格納庫にも翼腕の覆えないお尻側を隠す用途にも使えるし、手足の竜を模した鎧も任意でレッグアーマーとニーハイブーツに外観を変えることも出来るみたいだし、色合いが黒主体なのも僕の名前のノワールと合っていて良い。
装備の慣らし作業ついでにレベリングをしてからログアウトしよう。