Vividの二次創作   作:駆け出し始め

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「肺と心臓に血の生産に関する働きは何とか目安の数値に到達。

 前回目安の数値に成っていた他の全部は、何一つ目安の数値から落ちたりもしていません。

 リンカーコアの働きはレリックウェポン時の73.4%に到達し、更に45日間急に高くなったり低くなったりもなく順調に回復中。

 

 ……此の儘順調に回復されれば新学期には編入しても問題は無さそうですね」

「ほ、本当!?」

 

 ようやく聞きたかった言葉がカルラ医師の口から聞けたことで、珍しく大声を出してますね。

 とは言え、直ぐに恥ずかしがりながら落ち着きを取り戻す様は、自身の行動を客観的に見て恥ずべきことだと認識しているということですから、さほど目くじらを立てるほどでもありませんけどね。

 

「え、……えと、…………大声出して…………ごめんなさい」

「喜びの余り第一声が大声に成ったとしても、謝ることは在りませんよ。

 素直に回復に対して喜びを表して下さるのは、医師にとっての御褒美の一つでもありますからね」

「は…………はいっ♪」

 

 ヴィヴィオに話すからと可也解り易い言葉にしているのは分かりますが、ご褒美と言うと途端に変質者臭く感じるのはなぜでしょう?

 

 まあ、見ているこちらも嬉しくなる笑顔は、たしかにカルラ医師がご褒美と言うだけはありますね。

 ですが、喜んでばかりでは話が進みませんし、残念でしょうがヴィヴィオが思っているほどは回復していないはずですから、早めに釘を刺しておいてもらいましょう。

 

「喜ばれているところ水を注して悪いですが、編入後の諸注意があれば伺いたいのですが……」

「ああ、説明を怠り済みません。

 編入後の色色な注意ですが、先ず何を措いても身体やリンカーコアに大きな負担を掛ける行為は禁止です。

 身体の方の目安は、100メートル走の3~4回や、1500メートル走などでしたら問題無いでしょうが、1時間以上の水遊びや水泳、そしてストライクアーツの様に身体全体が酷く疲れることが当て嵌まります。

 リンカーコア面では兎に角使用を控える、つまり魔力運用自体をしないでもらうという以外に言えることは在りません」

「あ、あの…………いつからならできるようになる……じゃなくて、できるようになりますか?」

 

 目に見えて喜びが半減したヴィヴィオが、気を抜くと甘い顔をしたくなってしまうほどに庇護欲を誘う顔で問いかけてますが、………………狙ってやっているのなら将来が不安になりますが、素で行っている辺り将来がもっと不安になります。

 

 多分、フェイトさんのような天然と、なのはさんの様な男らしさを兼ね備えた、異性同姓誰彼構わず気付かない間に大勢を虜にしてる未来が可也はっきりと見えます。

 まあ、カルラ医師は少しも心動かされた様子が在りませんから安心してお任せできますが、…………いえ、寧ろ全く心動かされた様子が無さそうなのは逆にカルラ医師の将来が心配ですが、男性の性差認識は女性に比べて遅いらしいですので、カルラ医師の年齢でヴィヴィオの表情や行動に何も感じずとも問題無いかもしれませんね。

 

「身体はある程度一定の速度で成長しているか如何かを確認してからになりますから、何も問題が無ければ半年程ですね。

 リンカーコア面ではレリックウェポン時の98%以上に到達した後、リンカーコアのリハビリを行いながらの様子見をしますから、問題が無ければ一年程ですね」

「い、一年…………」

 

 更に喜びが半減した顔になるヴィヴィオさんは、本当に庇護欲を非常に誘いますね。

 そしてカルラ医師は相変わらず気にした様子がありませんね。

 

「ですが、今迄順調に回復していますし、此方の言う事を守って下さっているので、此の目安を超えることは無いと思われますし、7~8ヵ月後からならばリンカーコアの様子見も兼ねてストライクアーツも少しは許可出来ますね。

 勿論何か起こってからでは遅いので、1~3ヶ月程は1日~3日は休みを挟む必要は在りますが」

「ほっ!………………本当ですかっ?」

「少なくても今迄通りに回復し続け、更に別の治し方が確立されたりしない限りは此の方針で進める心算です。

 但し、許可が下りた喜びの余り熱を入れ過ぎると負担が掛かって逆効果になりますので、呉呉も誰かの監督下で此方が指示した注意を厳守してもらいます」

「そっ、そんなことはしないもんっ。…………じゃなくて、しません」

 

 ……どうにもヴィヴィオはカルラ医師を医師としてでなく、一個人として見るのを優先してしまってますね。

 まあ、医師ではなく個人の時に出会ったヴィヴィオにとっては、年が倍近く離れていてもカルラ医師は友人でしょうから、仕方ないと言えば仕方ないですね。

 

 ただ、ヴィヴィオにとってカルラ医師が友人であっても、カルラ医師にとってヴィヴィオが友人なのかはかなり微妙なのが怖いところですが。

 ……自分に懐く近所の幼女というのがヴィヴィオに対するカルラ医師の認識でしょうから、うっかりなのはさんやフェイトさんがヴィヴィオの友達ということで強引に誘おうものなら、今度こそカルラ医師に訴えられそうで本当に怖いですね。

 

「…………ヴィヴィオさん、貴女は泣かずに苦痛を我慢することを美徳と思っているようですが、それは必ずしもそうとは限りません。

 少なくとも身体の問題を正しく知り、その上で正しい考えをすることが難しい子供が無闇矢鱈と苦痛を隠すと、其の苦痛が放って置いて問題の無いモノかそうでないのかを学ぶることすら出来ずに取り返しが付かない事態へと発展し、死ぬことすら十分に在りえます。

 特に保護者を頼らなければ医師に掛かることがほぼ出来ない子供が、自身で治療する知識や方法を持ち合わせていないにも拘らず徒に苦痛を隠し通すということは治療をしないということでもあり、それは貴女を思う全ての方に心配を振りまく行為だと理解して下さい。

 勿論貴女が貴女に寄せられる好意や心配を関係無いと無視するのならば其の限りではありませんので此れ以上鬱陶しい事は言いませんが、そうでないならば貴女は貴女に寄せられる好意や心配を考えた上で自分の譲れないこととそうでないことを選り分けて健康で在り続けなければなりません」

「……………………はい…………」

「其の返事が何方であるのかは此れからの貴女が示すことですので訊き返しませんが、貴女の考えが貴女を幸せにすることを願っています。

 

 それと、貴女より少しだけ早く働き始めた者の意見ですが、働き始めれば押し付けられる責任や人付き合いや諦め…………所謂柵に囚われ、望まぬことを行わなければならなくなりますので、せめて其の時迄は輝かんばかりの時間を送ってほしいと多くの者が思っている筈です。

 働き始めれば辛い事しかないとは言いませんが、ヴィヴィオさん、社会へ出ずに保護者に守られた儘過ごす今の時間こそが楽しみと幸せを得られる最高の時であり、その時に楽しみも幸せも得られなければ働き始めてからならば更に得難くなりますので、子供の本分は楽しみと幸せを見つけて手に入れ、そしてそれを守り抜くか発展させることを知ることですので、思う存分我儘を言う位で丁度良いんです。

 勿論働く時の為に知識や技術を習得するのも本分ですので、片方にだけ力を注がない様にしなければなりませんけどね」

 

 世の成っていない全ての親に聞かせてやりたい言葉ですね。

 そしてこの事が解られているなら、シャンテを引き取られたことにも不安はないですね。カルラ医師に関しては。

 

 徒…………カルラ医師の年齢で仰られると不気味と言うか…………、能力さえ在るならば働けるという今の社会の仕組みの歪みを叩き付けられた様に感じますね。

 事実、ヴィヴィオさんも感銘は受けたようですが、さながら、〔お前が言うな〕、というような眼でカルラ医師を見られていますし。

 

「ああ、確かに貴女よりも幼い時に医師に成った私が言うのは、冗談の様な話だという自覚は在ります。

 

 同年代と遊んだことが一度も無い儘医師に成り、貴女の保護者よりも上の待遇を管理局でされる様になる迄ずっとその儘で、多分一生そうなのだろうと思いつつも別に全く気にもしていませんでした。

 ですが、気付けば何時の間にか同年代の者と知り合い、気付けば何時の間にか親しくなり、そしてそう成って漸く遠くばかりでなく近くを見ることが出来、自分が目指す幸せの容の歪さと身勝手さを知ることが出来ました。

 同じ目線で見て話すことで、時には相手から直接、時には相手を通して自分を見ることが出来、今迄を遥かに超える速度で自分の足りない所を埋めて成長し続けることが出来ています。

 

 凄まじく低い確率を潜り抜けて素晴らしい者と知り合えて親しくなることが出来たからこそ言えますが、滅多に在り得ないからこそ偶然で、如何にもならない時以外は当てにするモノではないないと断言出来ます。

 若しも私が軽い気持ちで新しい親しい者が欲しいと思い、見事今言った者に出遭えたなら、何もせずに偶然を待っていただけの自分を許せず、偶然の出会いそのものを無かったことにする為にその者と別れた筈です。

 ですから、価値が在るだろう偶然を当てにせずに自分が望む事に力を入れ、その上で価値在る偶然に巡り会えたなら、素直に喜ぶという程度にしておいた方が良いですよ」

 

 カルラ医師のプライベートと言うか人生の一部を聞けるなんて、凄くレアな体験ですね。

 記者がカルラ医師の生年月日や出生地や好物などの質問をしても、[医師と患者の関係は他人と知人の中間が丁度良いので、不用意に個人情報を公開して距離を詰めかねない御質問には御答え致しかねます]、と言われる程に自分のことを語らないのは有名というのに、それでも話されたのは患者の将来を案じたからなのか、はたまたヴィヴィオ同様カルラ医師も少しはヴィヴィオに好意を抱いているからなのか……。

 はっきりと言えるのは、この事がなのはさん達の耳に入れば、ヴィヴィオとカルラ医師が友人だと認識されてしまうということですね。

 

 まさかヴィヴィオに、[カルラ医師がヴィヴィオを友達と思っていないかもしれないのになのはさん達が勘違いするといけないから]、と言って口止めするわけにもいきませんし、ここは運に任せにしましょう。

 

「随分脇道に逸れましたが、他に訊ねたいことは在りますか?」

「んと……………………ないです」

「分かりました。

 それでは此れから保護者代理のヌエラさんと詳しい話をしますが、残られて一緒に聞かれますか?」

「終わったら一緒に遊べるなら残るけど…………」

 

 少し長く話すだけで息が上がり始める程に疲れているのが分かるカルラ医師を遊びに誘うのは、久し振りに遊べると期待に胸を膨らませていたヴィヴィオも流石に気が引けるようですね。

 

 カリムが騎士ゼストから聞いた話では、一月前の検診から2日前までで合計40時間も寝てないらしく、往診の時間分だけでも休ませなければそろそろ昏倒しかねないらしいので、適当な理由を付けて地上本部へ受診しに来てくれと打診があったそうですが、どうやら本当に酷いオーバーワークみたいですね。

 …………怪我をなされていたために患者の体調調整が無駄になったらしく、待たせてしまった患者の体調を最優先して手術日を決めた結果、40日弱で30名強の手術を敢行している上、本局が異様なまでにせっついている新たなプロジェクトの最終調整の真っ只中らしく、集中力過多で1日3キロもブドウ糖を補給しなければ体重が減少するほどの激務というのは本当のようですね。

 

「申し訳無い上に恥ずかしい話ですが、ヌエラさんに御説明した後に少少寝る予定ですので…………」

「少少って……、だめだよ。

 凄く元気ないんだからたくさん寝ないとっ」

 

 むしろ私はそこまで疲れているのに、昏睡せずに少しだけ寝て起きられる方が驚きですけどね。

 

「そうしたいところですが、体調の安定化が難しい患者の手術は簡単に延期出来ませんから、私の脳波が一定の数値を下回らない為の休み以外は今取ることは出来ません。

 

 ですが御心配には及びません。

 医師として倒れないギリギリに留めていますし、休む時間と仕事の時間の効率も考えていますので、結果はきちんと出ています」

 

「お医者さんのギリギリって凄く怖いよ!?

 あと、それは全然大丈夫じゃないから!?

 他の人も大変かも知れないけれど、カイが倒れたらどうしようもないから休まなくちゃだめだよ!」

「失礼ですが、何と言われ様とも私の都合で怪我をした結果治療が遅れてしまったのは事実であり、治療が遅れた患者の中には、延期をした場合二度と手術可能域迄体調の安定や体力の回復が見込めない者も存在し、必要最低限を明らかに超過する休息を取ることは現状出来ません。

 此れは医師として患者に対して果たすべき最低限の義務と誠意であり、成したい事の為に医師である必要が在る私には曲げることは出来ませんので、此の話は此処で終わらせて頂きます。

 

 ……それでは此れからヌエラさんへ詳しい話をさせて頂きますので、御帰りになられるようでしたら御気を付けて」

「あ…………う……………………」

 

 なるほど。

 こうならないためにストラトスさんはカルラ医師が医師として振舞う時は他人として接していたんですね。

 

 うっかり知り合いの距離感のまま善意でしたことが医師の本分を侵し、今のヴィヴィオさんの様に完膚なきまで他人の扱いをされないため、自ら…………いえ、双方望まない展開にならないように距離を取ったということですか。

 まあ、カルラ医師も睡眠不足で可也余裕がなくなっておられるようですから、普段なら表面上は笑顔で流せることも流せなかったというところでしょうかね。

 

 …………って、のんびり分析している場合じゃありません!

 ヴィヴィオが泣きそうなのが見て取れますし、もしなのはさんの耳に入れば面倒なことになるのは明らかですし、その時私やカリムだけでなく聖王教会も巻き込む事態に発展しかねない以上、急いで何とかしなければ!

 

 と、思って急いでヴィヴィオを慰めようとした私ですが、それより早く――――――

 

「失礼。どうも睡眠不足で自制心が可也低下していたようです。

 

 医師の義務や誠意に関しては曲げられませんが、先の場面では心配の言葉だけを受け取り柔らかに拒否すれば良いものを、無駄に攻撃的な物言いで突き放してしまったのは私の対応ミスです。

 嫌な思いをさせてしまいすみませんでした」

 

――――――カルラ医師が謝罪と共に頭を下げられていました。

 

 

 

 結局、ヴィヴィオも自分の考え無しの発言がカルラ医師の夢を知らずに軽んじていたと気付き、ギクシャクしながらも謝り返し、医師と患者の関係は他人と知人の中間が良いというカルラ医師の言葉の意味を痛いほど実感しながら帰りました。

 

 その後恒例の詳細説明が終わった後、最近忙しくて私にシャンテの面倒の殆ど任せきりな事に付いて深々と、本当に深々と頭を下げられました。

 私としてはどれほど忙しいかは知りませんでしたが、忙しくても毎日欠かさず帰宅されてシャンテの面倒を最低限されていられるのを知っているだけに、むしろ保護者代理を平気で頼むどこかのどなたかのように図太くなってほしいと言ったら、カルラ医師の雰囲気だけが凄いことになりました。

 

 

 しかし、シャンテについては本当に困ったものですね。

 私としては性根が捻じ曲がった者は真っ直ぐになるまで殴って矯正したいところなのですが、カルラ医師が(シャンテ)の在り方を変えるのに膂力を振るわないという方針を立てておられますので、自衛以外でシャンテに力を振るえないのは本当に面倒ですね。

 

 カルラ医師がシャンテに引け目を感じるのは分からないでもないですが、今のシャンテでは調子に乗るだけな気がするのですが、どうもカルラ医師はそれならそれで構わないと思っている節があるみたいなのが理解出来ませんね。

 まあ、カルラ医師が窶れても尚シャンテとの時間を捻出されている以上、私の勝手な持論でカルラ医師の苦労を踏み躙るわけにもいきませんから、カルラ医師が提示された2年までは黙って見守っておくことにしましょう。

 

 

 

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