Vividの二次創作   作:駆け出し始め

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「[速報。ゼスト隊隊長ゼスト一佐 奇跡の部隊機動六課のフルメンバーとの模擬戦にて勝利する]。

 ……………………言っては何だけど、人間業とはとても思えないわよね」

「しかも騎士シャマルとザフィーラも入ってるんだから、完膚なきまでに完敗だね」

「空戦のS+が二人に、S-とAAA+とA+が一人ずつ。

 総合のSSにAA+が一人ずつに、A+が二人。

 陸戦のAAが3人に、広域防御AAAが一人。

 

 …………改めて騎士ゼストの凄さが伺えますね」

 

 午前中の内に行われた公式模擬戦の結果が、しかも本局派の敗北がお昼のお茶会の時にはもう公表されているなんて、レジアス大将の情報操作かしら?

 

「と言うか、陸戦限定の者が地上に残っている間は飛行を封じられるというハンデがあってコレなんだから、もう闘神とか言っても過言じゃない気がするよ」

「でも開始後1分足らずでその3名プラス1名は戦闘不能になったらしいわよ。

 なんでも、弾幕を全て捌きながら一直線に肉薄してそれぞれ一蹴したらしいわね」

「うわっ。フェイト執務官を越える速度で弾幕を捌きながら突撃されるって、恐怖以外のなにものでもないよね」

「なのはさんにいたってはスターライトブレイカーを突っ切られて撃墜されたらしいわよ。

 しかも凄いことにほぼ無傷だったらしいわよ」

「恐らくカートリッジを使用して瞬間的に傾斜形成したシールドを強化して突撃されたのでしょう。

 物理設定なら砲撃の推力に負けるかもしれませんが、非物理設定ならば騎士ゼストは十分突破可能ですから、始点が決まっている砲撃ならば余裕で捌けるでしょうね」

 

 誇らしげに騎士ゼストを語るシャッハは凄く可愛いわね。

 しかも僅か半年程でシスター・マッチョの渾名を返上して、更に全体的に丸みを帯び始めているから、多分この儘いけば人気がうなぎ上りになりそうよね。

 

 ……まあ、動きにくいから胸はあまり大きくしたくないとカルラ医師に注文している時点で、そうなってもシャッハに変化は無さそうだけれど。

 

「けれど、ゼスト一佐ほどの魔導師ランクだったら何処に所属しても戦闘要員はゼスト一佐だけになりそうなんだけど、レジアス大将も上手いこと考えたよね」

「そうよね。

 複数の役職に就かせることで役職の数だけ魔導師ランクを分割してリミッターの使用を回避するなんて、地上のトップだからこそ出来る離れ業よね。

 しかもしっかり結果を示しているし」

「まあ、その分毎月の末は報告書の嵐みたいだけどね」

「それは本来なら一つ仕上げれば後はコピーするだけで済むはずだったらしいですが、騎士ゼストの影響力を排除したい輩が役職毎に微妙に違う文句や申請をしているかららしいですよ。

 

 …………本局に乗り込んで成敗してやりましょうかね?」

 

 もしここで冗談でもGOサインを出したら、ほぼ確定級に怪しい方達の性根を治すべく乗り込んで大暴れするでしょうね。もちろん私の責任で。

 

 ……なんだか最近のシャッハって、騎士ゼストに対して崇拝混じりの尊敬と恋慕を融合させている感じがするわね。

 少しからかってみたいところだけど、今からかうと折角芽生えだしてたナニかが枯れちゃいそうだし、もう少し様子を見るとしましょう。

 

 

 

 

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「す、凄かったですねっ!?」

「うん!凄かったよね!」

「……エ、エリオ君だけじゃなくてスバルさんも凄く嬉しそうですね?」

「だって憧れの騎士ゼストと戦えたしアドバイスももらえたんだ!

 もう大感激だよ!」

「私も母さんが尊敬してるゼストさんと戦えて、何で母さんが尊敬してるかようやく実感できて凄く嬉しいんだ!」

「…………元気よねぇ……」

 

 私は完敗を通り越して勝負にすら成らなくて結構落ち込んでるのに。

 と言うか、捕捉出来ないし、捕捉出来ても捌かれるか避けられるし、中っても効きそうにないとか、もう虐めよ。虐め。

 

 とりあえずスバルとエリオのテンションに着いていけないし、まともな反省会も出来そうにないから、キャロとだけでも反省会しときましょっと。

 

「あそこの脳味噌お花畑の二人は置いといて私たちだけで反省会しましょうか?」

「そ、そうですね」

「あ、それとでっかい方はもうなんか駄目そうだったけど、せめてちび竜は大丈夫だった?」

「フ、フリードだけじゃなくてヴォルテールも生きてますっ。

 ヴォルテールは何とかでしたけど……」

「………………アレでよく生きてたわね」

 

 デバイスや非殺傷設定を一切合財無視してるヴォルテールをいきなり召還した時はドン引きしたけど、まさか召還されて10秒以内に叩きのめされたのにはもっとドン引きしたわね。

 

 と言うか、ゆりかごを真っ二つにした時より小さい上に峰打ちだったからって言っても、何で生きてんのかしら?

 身体が半分地面にめり込んだだけじゃなくて、頭も半分身体めり込んでたのに。

 

「あ、それはヴォルテールを回収してくれたアルピーノ一尉がヴォルテールと同格で殆ど同じサイズの虫を召還して、カルラ医師の助手として上手く操ってくれたお蔭で何とか生き延びられたそうです。

 なんでも、めり込んだ頭を直ぐにひっぱりだしたあと、首を大きく切り開いてカルラ医師が傷口の中で直接神経とかを治療したそうです」

「……正真正銘視界全部が患部って、…………改めてカルラ医師の凄さが実感できたわ」

「おかげで安静にさえしていればドラゴンの回復力から考えて一ヶ月ほどで全快するって言われました。

 むしろ手当てが後回しになったフリードの方が全快まで時間がかかっちゃうことになっちゃいましたし、今もフリードに用意されたベッドでぐっすり休んでます」

「いや、ちび竜もちび竜でビルを縦に貫通するほどの勢いで叩き飛ばされたのに、よく全快までもっていけるわねぇ。

 って言うか、ちび竜用のベッドって、凄く準備が良いわね」

「アルピーノ一尉から聞いたんですけど、フリードが大きいままでもかまわないようにベッドとテントの用意をしてくれてただけじゃなくて、応急用みたいですけど全員分の治療器具や薬とか用意していてくれたみたいです」

「………………」

 

 普通に考えれば用意が良いで済むんだけど、六課の設備を全く当てにしてないとか、カルラ医師を六課隊舎内に入れたくないっていう陸の考えにも見えるのは穿ちすぎなのかしら?

 

 っと、私たちまで反省会してなかったら隊長たちに怒られるし、さっさと話を軌道修正しないと。

 

「ま、まあ無事全快できるならそれでいいし、反省会といきしょうか」

「あ、はい」

「じゃあ、まずはお互いここはこうすればよかったってところか話しましょうか。

 ………………と言っても、単純に自力が足りないから何しても無駄だったって結論に行き着くだけだけどね……」

「あ、あはは……」

 

 そりゃキャロもフォローじゃなくて苦笑いしかできないわよねー。

 一直線に突撃してくるのに碌に捕捉出来ないし、捕捉出来そうと思った瞬間に加速されて結局捕捉出来ないし、正面から私とフェイトさんが威力無視した連射をしても全部捌くし、ギリギリで突撃を避けて背中に撃ち込もうとしても私が横に飛ぶと同時に進路変更してアッサリ一撃で撃墜されたんだから。

 

 仮にビルの上から連射してたらビルを壊されて崩壊に巻き込まれて終わるし、ウィングロードを走るスバルの背中にしがみ付いて連射すればウィンロードの前方から巨大化した魔力槍の刃で叩き飛ばされるし、ちび竜に乗って連射すればちび竜を盾にしながら突っ込まれるだろうし、隊長たちにしがみ付けば隊長たちの機動力や攻撃力を激減させるだけだし、どう考えても詰みよね。

 負けが確定しているのにあの時ああすれば良かったって反省するのって、滑稽を通り越して無意味に思えるわね。

 

 …………負けるにしても全力を出して負けるべきって言葉があるけど、そもそも勝負になってすらいない気がするから、身の程知らずの見苦しい言い訳はしないに限るわね。

 

「まあ、笑えない結論だけど、私達フォワードはでっかいのを呼べるキャロ以外は勝ち負け以前に勝負にすら成らないわね。

 だからキャロ以外は良くて空気。悪ければ足手まとい。

 つまり反省点は、勝負にすらならない自力の低さを向上させるという一点のみね」

「あ、あの、私も自力を向上させる以外の反省点が考えつかないんですけど……」

「どこかに穴掘って隠れてるとか、でっかいのの背中に振り落とされないようにバインドで自分を括りつけるとかかしらね。

 隠れてもすぐに見つけられそうだし、括りつけられたら無茶な回避運動や攻撃運動ですぐリタイアするだろうけれど、それまでの間は十分戦力になったはずよ。

 ……と言っても、結局自力が足りないことには変わりがないから反省点は私達と一緒だけどね」

「ですよね」

 

 キャロもいい感じに諦めというか悟りの境地に達してるわね。

 

 まあ、私達となのはさん達ほど実力差があっても不意を突けたり作戦が嵌れば倒せそうなのに、ゼスト一佐は不意打ちや作戦で埋められる差を遥かに越えてるんだから、正真正銘の無理ゲーよね。

 例えるならRPG序盤の中ボスが裏ボスに挑むようなものよね。

 

「まっ、いつまでも気落ちしててもしょうがないし、世の中には全滅覚悟でも少ししか時間を稼げない悪夢の権化がいるって分かっただけでも収穫としましょ」

「そうですね。

 強くなるって言っても、流石にゼスト隊長ほど強くなるのも人間的にちょっと…………」

「とんでもなく失礼だけど、あそこまで人間か疑わしいレベルの強さだと、憧れたり僻むより引くわよねぇ。普通は」

 

 そう言ってキャロと二人で飽きずに興奮し続けている二人を見やる。

 …………底抜けの能天気さが疎ましいけれど、それと同じくらい絶対的な差を見せ付けられても素直にはしゃげる二人が少しだけ羨ましいわね。

 

 小利口なのは性分だけど、私も自分の限界を気にせず物事を考えられたら、少しは人生楽しくなるのかしら?

 

 

 

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「ありえねーありえねー。マジありえねー」

「ヴィータちゃん、…………気持ちは分かるけどやさぐれすぎよ?」

「っなこと言ってもよぉ、ヴァイスを抜かせば六課の戦闘可能全要員ブッコンだってぇのに、追い詰めるどころか体力や魔力を削るのが精一杯って、ホントマジありえねぇって。

 

 ありゃバグってない時の初代リインフォースでも勝てるか判らねえレベルだぞ?

 ぶっちゃけ、人間じゃなくてロストロギアって言われたら本気で信じるレベルの理不尽さだぞ」

「ま、まあ、シグナムのシュツルムファルケンを掴んで止めた上、殆ど同じ速度で投げ返した時は、ロストロギアとか使ってないか疑ったりもしたけど…………」

「他にもヴィータののツェアシュテールングスハンマー(――――――切り札――――――)を弾き飛ばした上に回収し、あまつさえ振り回し始めた時は戦鬼にしか思えんかったな」

「…………見苦しいぞお前達。

 こうも見事に完敗したのだ。まずは相手を褒め称える言葉は出んのか?」

 

 全く嘆かわしい。

 あれほど素晴らしい武を見せた相手を称えることも出来ないどころか、あまつさえ謗るようなことを言うなど、騎士以前に人として成っていない。

 

「いや、当たり前の結果って称えるモンじゃねえ気がすんだけど?」

「さ、流石に当たり前の結果ってほどは…………あるのかな?」

「……全く、……当たり前の結果だろうとそうでなかろうと、あれほど見事な武を持ち合わせている者を称えることのどこに問題があるというのだ?」

 

 出来て当然のことだろうと、ソレが素晴らしいことならば賞賛を惜しむ理由にはならんだろうに。

 況してや相手は断ったとはいえ、王の称号を万人に認められて戴けるほどの者なのだ。

 頭を垂れて礼を尽くすのが当然と分かっていないとは。

 

「たしかにシグナムの言う通りだとは思うけれど、ゼスト一佐って私達を凄く避けてる気がするから、素直に賞賛し辛いというか…………」

「そうかもしれんが最低限の礼を私達に払われているのなら、私達だけ反感を持って礼を失するわけにはいくまい」

「…………シグナムの言う通りだな。

 だが、それでもやはり面と向かって賞賛はせん方が良かろう」

「あ、それはあたしも思った。

 なんて言うか、話しかけられるのも嫌だけど、嫌だと思うことも嫌がってる感じがするからな」

「え?え?え??

 ゼ、ゼスト一佐ってちょっと怖いけど礼儀正しい人にしか思えないけど…………」

「「「「……………………」」」」

 

 コレは酷いな。

 私もたいがい機微には疎いと思うが、コレは幾らなんでも酷すぎるな。

 

 …………なるほどな。

 コレがヴィータの言う、[空気読まなくていいから人を見ろ]、と言う状態なわけか。

 

「フェイトちゃん、…………私、あなたが執務官として問題無い対人関係を築けるかを今ほど不安に思ったことはないわ」

「むしろあたしは何で今迄執務官できてたのかが不思議だぞ」

「…………(敢えて何も言うまい。俺は空気が読める守護獣だ)…………」

「テスタロッサ、…………悪いことは言わんから、一度カウンセラーの真似事でもして対人関係のスキルを上げろ。

 私も脳筋だのバトルジャンキーだの戦わなければ相手を理解出来ん奴だの言われているが、流石に今日六課に来られた時には気付けたというのに、対人関係の能力が必須なお前が察せんのは深刻的に問題だぞ?

 局員の全てが必ずしも友好的とは限らん以上、相手に気を使えなければ捜査時に碌に協力を得られん時もあるはずだぞ?」

「わ、私、そんなに駄目だしされるほどなの?」

 

 凄まじくうろたえながら訊くテスタロッサに、私を含めた全員は神妙な顔で深く頷いた。 

 高町がゆりかごの時(以前)やらかした無茶の応急処置ということでまだ治療を受けている以上、テスタロッサの味方はいな…………いや、高町がいてもトドメをさしただろうから、結局テスタロッサが崩れ落ちるのは変わらんか。

 

 

 主が役職や階級的に当然持っていると思っていたものが、自分も周りも持ってないと分かって愕然としたと仰られていた意味がようやく少し分かった気がするな。

 

 

 

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「J・S事件の約2ヵ月後には、記録されていた最大魔力値から約8%の減少。

 前日本局で精査された記録では、記録されていた最大魔力値から約9%の減少。

 本日の模擬戦後の簡易検査では、記録されていた最大魔力値から約12%の減少ですが、休息を挟めばある程度は回復すると思われますので、実際は最大魔力値から約10%の減少でしょう。

 

 ……シャマル医師や八神二等陸佐の報告を基にし、更に私の是迄の治療経験からの推測になりますが、恐らく30前後から急速にリンカーコアが衰弱し始め、40前後でリンカーコアを使用する度に肉体へ過度の負担を掛けて寿命を縮め、50前後で死に至るでしょう。

 無論、此れは現在の生活環境を改めなければの話であり、長期療養を行い且つ緊急時のみの非常勤戦闘魔導師に成られるならば、健康寿命は若干平均を下回るでしょうが十分に平均寿命へ到達可能でしょう。

 

 後、応急処置に関してですが、機動六課解散迄は休養を取らないという発言を考慮し、休養を前提とせぬ代わりに極めて効果の低い応急処置しか施していませんので、普段通りの生活を送られても普段通りにしか死期が早まりませんので御安心下さい。

 叉、長期療養を行わないのならば魔導師を診る殆どの医師の対処療法で十分ですので、本局若しくは聖王教会の病院ならばほぼ確実に十分な対処療法を施して貰える筈です」

 

 ……丁寧な話し方やけど、要約すると、〔死にたい奴を治す気は無いから勝手にしろ〕、やね。

 それと多分、[忙しいから死にたがってる馬鹿を診させる為に呼ぶな]、とも言うとるやろね。

 

「それと粉砕骨折していた左鎖骨と胸骨と左第一肋骨は一応簡易整形しましたが疲労骨折寸前の状態である為、左腕の使用及び重力負荷や衝撃伝動だけでなく、咳等でも再び粉砕骨折しますので重重注意して下さい」

 

 安静にして下さいとか言わん辺り、言っても無駄と完全に匙を投げられとるな。

 と言うか、むしろ後で文句言われんよう、嫌々一応注意だけしとる感が透けて見えるわ。

 

「尚、内科の検診は行っておりませんので断言は出来ませんが、肉体疲労及び睡眠時間短縮訓練を受けたわけでないにも拘らず睡眠時間の削減の繰り返しにより、内臓若しくは造血能力が低下している可能性が極めて高いと思われます。

 叉、報告書を読む限りでは恐らく病的月経不順、25日~35日以内に月経がないことを指し、24日以内ならば頻発月経、36日以降ならば稀発月経を罹患されている可能性が高いと思われますので、20代~30代で病的月経不順を放置したならば不妊症に陥る確率が高いですので、妊娠及び出産をされる御心算ならば早期治療を推奨します。但し無排卵であればの話ですので、排卵されている場合は其の限りではありません。

 

 以上が診断結果及び推測の報告です。

 

 扠、御質問等は在りますでしょうか?」

 

 エリオとほとんど同じ年齢のはずやったけど、なのはちゃんだけやなくて私ら全員の裸見ても恥ずかしがるどころか眉一つ動かさんで平然と月経云々を語る辺り、医者の貫禄が窺えるわ。

 10歳の男子が性を意識するかは結構微妙やけど、どっちであろうとカルラ医師の貫禄が消えたりはせんやろな。

 

 ……いやはや、カリムからシャッハがカルラ医師を瞠目どころか尊敬に値するて言うてるのを聞いたのを考えるに、子供が医療知識や技術を持ったとかやなくて、子供やけど医師に必要なモノだけやなくて社会についても十分知っていると思て間違い無いやろな。

 そやからカルラ医師がプライベートだった前回の時みたいな対応をしたら、怒るんやなくて後日六課や本局に抗議文が送られるやろな。

 就業時間中の将官待遇医師に高々尉官風情が舐めた真似を働いたのを見過ごせば、所属している陸に多大な迷惑を掛けるのを熟知しているやろから、あらかじめ硬い態度で接するように厳命しとってよかったわ。

 

 んじゃ特になのはちゃんからの質問も無いやろから、診察と治療のお礼を言って見送って――――――

 

「あ、カルラさん…………じゃなくて、カイ君。ヴィヴィオのことで少し訊きたいんだけど、いいかな?」

 

――――――終わ………………りやと思ってた時が自分にもありました。はい。

 

「高町一等空尉。貴女の義娘のヴィヴィオさんの診断についての報告は代理のシャッハ・ヌエラさんへ過不足無く報告しています。

 ですが、そのヌエラさんが過不足を此の場で問うのでしたら、医師として私の落ち度ですので低頭して聞かせて頂きますが、代理を立てた貴女に此の場で訊かれる謂れは御座いません。

 仮にヴィヴィオさんが緊急の様態だと仰られるならば話は別ですが、先程御見かけした限りはその様に御見受け出来ませんでしたが、それは私の判断違いなのでしょうか?」

「な、なんだか良く分からないけどヴィヴィオは元気だから心配無いよ。

 後、お医者さんじゃなくて個人のカイ君に質問してるから、普段通りの話し方でいいよ?」

 

 ………………勘弁してやなのはちゃん。

 大人の貫禄を見せてるつもりなんやろけど、完璧にその対応はアウトやから。

 相手が子供で正式な局員やなくても、局から正式に、〔局員からは将官待遇として扱われますよ〕、って約束されとるんやから、局員が、それも高々尉官がそれを蔑ろにしたら絶対アカンて。

 しかも一応そんな対応しても構わん場合も想定しとってくれとる辺り、将官待遇よりも医者の立場に重きを置いているのもアピールしとるから文句の付け所も無い対応やのに、なのはちゃんだけ勘違いを炸裂させて大人の貫禄を見せようとしてるとか、局員として最低限の礼節を払えん痴態を晒しとるだけやん!

 

 ほらほらほら!ゼスト一佐とアルピーノ一尉の視線と雰囲気が凄まじいやんか!

 コレ、絶対後で私もとばっちり…………って言うか部下の教育と掌握について文句言われるで!

 一応教育に関しては教導隊に押し付けられるけど、部下の失態っちゅうか痴態はどう足掻いても私の責任やから、謝罪文のストックが無くなった今の私にはもう何て謝罪していいか分からんで!?

 

 

 

 結局、このやりとりで六課は解散1週間前に抗議文が寄せられて大わらわになる事態になってもうた。

 しかも定期健診が必要なヴィヴィオの保護者の一人であるなのはちゃんとカルラ医師の間に、グランドキャニオンも真っ青な溝が出来てまうというおまけ付きや。

 もし次の定期健診の時になのはちゃんが意趣返しで同伴してカルラ医師に何かしたら、最悪なのはちゃんがヴィヴィオを引き取る土壌を作った私にまで飛び火するかと思ったら、六課解散の二日後にとうとう胃に大孔が開いて内臓に胃液や消化物が大量にばら撒かれてもうたから、開腹して除去や手術で一週間ほど寝込むことになってもうた。

 

 ただ、結構洒落にならんほどのストレスでも働き続けたことを評価されたおかげで、陸での私の評価が結構上方修正されたことだけが唯一の救いやった。

 

 

 







 【後書】



【ゼストがゆりかごを斬り裂いた云云について】

 魔力で作った巨大なビームサーベル擬きで真っ二つにしています。
 単純に伸長したのではなく、ゆりかごを両断するに相応しい程の大きさに成っていますが、ゼスト次第である程度調整可能です。

 実はヴィヴィオが聖王状態の時に両断しているので、ヴィヴィオに尋常ならざる過負荷を掛けた者の一人だったりします。

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