Vividの二次創作   作:駆け出し始め

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「時にカイさん。洗濯物は分けて洗濯されていますか?」

「幼少時より四苦八苦しながら一人暮らししていた以上、適した洗濯方法が異なれば分別する程度はするぞ。

 まあ、余裕が無い時は殆どクリーニング屋に丸投げするけどな」

「……すみません。訊き方が間違っていました。

 改めて訊きますが、カイさんとビッチ予備軍…………元い、シャンテさんとの洗濯物は分けて洗濯されているんですか?」

「そんな面倒な真似するわけないだろうが。

 一緒に洗濯して一緒に干して一緒に取り込むぞ」

 

 何故こんな質問をされているのか心底理解していない眼で、しかもモノが分からない人に言い聞かせる様に言われるのは腹が立ちますが、相手は診察や手術で裸体どころか体内迄幾度も見た影響で感覚が麻痺しているカイさんなのですから、此処は私が大人の対応で余裕を持って理由を話してあげるとしましょう。

 ファイトです、私。

 

「カイさん。年頃の男女が互いの下着を濫りに見るものではありません」

「着用している下着を見ることについてなら同意するが、洗濯する下着は徒の布だろ?

 普通に洗濯して普通に干して普通に取り込む分には、貞操や情操の面で如何問題が在るんだ?」

「………………」

 

 あれ?若しかして私が間違ってます?

 易やでも家族にでもそういうのは恥ずかしがるのが普通な気がしますけど、家族の距離感云云を語れる程に私の家族間が立派とは言えませんし、…………墓穴を掘りそうな気がするので此れ以上の追求は止めといた方が良いですね。

 

「まあ、変態的行為を変態的に変態へ零落れて実行してないならそれで構わない気がしてきましたので、此の話は此処で一先ず終わりとしましょう。

 

 で、話は変わりますが、今日は露出狂予備軍……元い、シャンテさんの姿が見受けられませんが、とうとう猥褻物陳列罪でめでた…………くなく逮捕されたのですか?」

「首都防衛隊で実地訓練中だ。

 終わればゼストやヌエラさんとの戦闘訓練で、それが終われば休憩がてらに座学の復習。

 そして翌日の朝一番に実地訓練を見て実地訓練を細かく変更するものの、大筋は変わらず前日通りというのを後8ヶ月は続ける予定だ」

「………………物凄まじ過ぎる程に豪華な日程ですね」

 

 カイさんかグランガイツさんに手解きを受けられるなんて、医師会や教会の関係者からすれば金銭に換算出来ない価値ですけど、一度にその二人から手解きを受けられるなんて常識では考えられませんね。

 しかも手解きと言うよりは直弟子に近い扱いですから、求められる資質はそれだけで桁外れに高いと簡単に予想が付きますね。

 

「豪華な日程なのは間違い無いだろうが、深読みし過ぎて思い違いする前に一言言って置くとするなら、シャンテの才能や資質は並か少し高い程度だというのがゼストとの共通見解だぞ」

「……とてもそうは思えません。

 事実、先日模擬戦をした際、同じ女として一寸悲惨だと一瞬の気の迷いで思ってしまう程の状態にしてしまいましたが、それも僅か2月程では手加減と手抜きと片手間で捌けると思っていたからこそ予想を遥かに超えた動きに手加減をし忘れてしまったからであって、普通では到底考えられない成長速度だからこそ起こった事故です。

 それも魔法関連よりも体捌きや瞬間判断の向上という、魔導師ランクに左右されない純粋な反復練習や天性のセンスが必要とされる類が急成長しているんです。

 

 如何考えても常識的範囲内の才能や資質とは思えません」

 

 仮にあの成長速度が常識的範囲内だとするなら、レジアス閣下は長年人材不足に苦しんでいたりはしていなかった筈です。

 何しろ、並の才能と資質の持ち主の正真正銘の素人が、高高2ヶ月程度で陸戦B程に成るなら幾らでも人員補給が出来た筈です。

 

「どうせ見る者が見れば直ぐに知られるので隠さず言うが、…………成長期に他の可能性は軒並み潰して特化させているが故に驚異的な成長速度を得ている訳だ。

 分かり易く例えるなら、シャワーの噴出孔を殆ど塞いで残った噴出孔に回る水量と水圧を上昇させているということだな」

「…………具体的には如何いう……易え、変な事を訊きました。聞き流して下さい」

 

 具体例ではなく抽象例で言う以上、少なくても周囲に聞かれる可能性が在るなら言うべきことではないと判断しているのでしょう。

 まあ、話したくないから話を濁した可能性も考えるべきなのでしょうが、プライベートの時は言いたくないならば喧嘩を売ってると思える程はっきりと断りますから、話したくないということはないでしょうね。

 と言いますか、カイさんは親しい人に訊かれれば仕事関係以外はドン引きする程何でも答えますから、はっきり答えないところを考えるに、はっきり答えればカイさんかグランガイツさん、若しくは双方の仕事に支障を来たすということでしょうね。

 

 ……眼で礼を返されるのを見るに、予想は当たりみたいですね。

 

「変な話と思ってもいなければソレを聞き流すのも構わないが、シャンテの呼称に関しては如何にか成らないのか?」

「シャンテさん…………元い、陰険愉快犯さんのことで何か?」

「……言い直す必要無いよな?」

「失礼。間違えて渾名を言ってしまいました」

「渾名と言うより蔑称だよな?」

「そんなことはありません。

 私はシャンテさんの自分の気持ちに正直な面は本当に尊敬しています。

 特に自堕落に生きる為に先行投資の様に真面目に修練に励んだり、然り気無く優しいアピールや構ってほしいというアピールをしたりする小聡明さは感嘆に値します」

「小聡明いと言う評価と感嘆は基本的に両立しないからな。

 仮に両立するなら、ソレは自身が客観的に性質の悪い存在、少なくても対象よりも下の存在だと肯定しているのと同義だぞ」

 

 ……む。私が享楽主義者(シャンテさん)の下などありえませんね。

 易え、流石に年齢や体重や身長等はシャンテさんより下ですけどね。

 

「矢張り難しい言い回しで誰かを褒めようとすると馬脚を晒してしまいますね。

 私や私に親しい方達の顔に泥を塗らない為にも、語彙や文法を確り学ばなければなりません」

「語彙や文法よりも猫の被り方を学んだ方がいいぞ」

「私はグランガイツさん程ではありませんが、カイさんに比べたら遥かに品行方正を地で行っています。

 猫を被る必要なんて在りません。と言うよりも猫を頭に乗せて御昼寝したいです」

「早速語彙を学ぶべきだな。

 品行方正とは行状や心が立派な様を指す言葉だ。

 シャンテを指す言葉を思い返してみたか?」

「あれは失言です。言い間違いです。

 悪意を篭めての発言でない以上、本人以外から咎められる謂れは在りません」

 

 仮に本人から咎められたとしても、就学中に起きている様に振舞いつつ鍛錬の疲れを癒すべく眠る為、既に高等科迄の座学は全て習得済みですから、問題無く丸め込める私に隙は在りません。

 

 学院へ通えば、カイさんの長時間訓練用の昼食と言う名の精神磨耗物質を胃に流し込まずに済みますから、学院で休養を取るという前提で睡眠の3時間と少し以外を遠慮無く部屋で覇王流の歴史や遥か先の予習に精を出せます。

 成長期に限らず、睡眠とは時間帯ではなく睡眠後3時間程深い眠りに就き続けることこそが重要と以前カイさんが話されてましたし、カイさんからも成長に関しては問題無いと言われてますから、此れからも学院を有効活用すべく部屋で研究と座学に精を出しつつも破廉恥なシスター予備軍(シャンテさん)を言い負かせ続けられる様に在り続けましょう。

 

 

 

 結局、何時も通り何の進展もしない儘其の話は終わってしまいましたが、文献から新しく推測出来た覇王流の幾つかの技は確り全容を掴むことが出来ました。

 矢張りカイさんと一緒に取り組むのは心躍るだけでなく高効率的で、実に代え難い一時ですね。

 

 ………………ぽっと出のシャンテさんが原因で代え難い一時が削れるのは物凄まじ過ぎる程に納得出来ませんが、間に立たれるカイさんの気苦労を考えるなら少しは妥協するべきですね。カイさんやシャンテさんよりは気配りの出来る私が。

 

 

 

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「なんとかその少女とコンタクトを取るくらいは出来ませんか?騎士カリム」

 

 最近取り繕っても取り繕えないほどに精彩を欠かれた顔で頼まれると了承してしまいたくなるけれど、出来もしないか余計に状況が悪化するだけだと分かっている以上、最初から断る以外の選択肢が無いのは心苦しいのだけれど、ここははっきりと断っておかないといけないわね。

 

「申し訳ありませんが、件の少女は正式に聖王教会に所属しているわけではありませんので、呼び出すのは至難の業かと思われます。

 仮に呼び出しに成功したとしても、家人であられるカルラ医師が即座に介入若しくは抗議されると思いますので、状況悪化は避けられないと思われます。

 更に、軟禁や招聘等で強引に接触を図ろうとすれば恐らく躊躇無く直接カルラ医師が乗り込んで来られるでしょうし、その際の護衛はほぼ確実に騎士ゼストの筈ですので、秘密裏且つ穏便に事態を収束させることはほぼ不可能と思われます。

 

 故、その提案は了承致しかねます」

 

 それに時期が悪いわよね。

 カルラ医師が新たな理論提唱と被験者の募集をされると同時に、以降暫くは研究医ではなく臨床医や後進育成に力を注ぐと発表されましたから、カルラ医師の怒涛の医療革命の最後を飾るかもしれないということで現在注目の的な以上、迂闊な真似をすれば世間の注目が全て私達に悪意を持って向けられかねないわよね。

 

 しかも先日、自動発動とはいかないものの任意でなら聖王の鎧を発動可能にまでヴィヴィオを回復させた実績をカルラ医師が持つ以上、聖王教会はカルラ医師にとてつもない借りを作ってしまっているから、カルラ医師に不義理を働くことを強行するのは内部分裂の危機があって極力実行したくないのよね。

 その上、ヴィヴィオに対するお礼として今までの功績を纏めて称えた後で、つい先日名誉司教の称号をカルラ医師に贈ったばかりなのに、余韻も冷めぬ中で聖王教会がカルラ医師に不義理を働けば信徒の反応が怖くて仕方ないわ

「…………ならばSt.ヒルデに通うカルラ医師の友人を呼び出すことは……」

「可能ですが、その少女の対人関係は基本的に排他的ですので、カルラ医師の元へ悪印象を届けられるだけに終わると思われますのでお勧めしません。

 更に付け加えるならば、その少女は自身の実力と身の上と自身がカルラ医師と親しいが故に起きる可能性を十分に把握していますので、並大抵の手段での懐柔は不可能と思われます」

「………………シスターシャッハは……」

「私が命令すれば承服するでしょうが、そうでなければ最低でも聖王教会の益に成らないと判断すれば断る筈ですし、最悪、不義理を仄めかしたとして敵視されかねません。

 シスターと言う役職であるものの、それは騎士である私の秘書である為の措置であって、本来は心技体全てに於いて騎士としての適性を持った人物ですので、自身の忠と義を侮り汚そうとする者への敵愾心は尋常ならざるモノの筈です」

「……やはりそうですか…………」

 

 恐らく試せる可能性は全て試す様に言われていたのでしょうね。

 そうでなければ聞かれるだけで聖王教会から反感を買いかねない質問なんてしないでしょうから。

 しかも多分、あわよくば私がクロノ提督を不愉快に思えば、後で本局の方が謝罪の通信を入れて謝罪とクロノ提督への厳罰をアピールすることで私とのパイプを作り、更にクロノ提督の影響力を削ごうとしているのでしょうね。

 

 ……流石に此のままクロノ提督との通信を切ればクロノ提督が大変な目に遭われるでしょうから、此処は一つフォローを入れておきましょう。

 

「此れはクロノ提督ではなく、後で此の通信を見られる方達へ向けた言葉です。

 ……〔更なる茶番に此方を付き合わせようとするならば、ソレは聖王教会 教会騎士団所属 上級騎士カリム・グラシアのみならず、聖王教会すらも私利私欲で下衆な行いに巻き込もうとしていると見做し、声高く抗議することも辞しませんの御覚悟を〕。…………以上です」

 

 出来る限り表情に出ない様にされているのでしょうが、安堵と感謝の念がはっきりと表情に表れているわね。

 まあ、トラップに巻き込む相手以外解除不可能なトラップに囚われているなら、当然と言えば当然だけれど。

 

 ……以前レジアス大将に気を使ってもらわなければ気付かなかったかもしれないのを考えると、遣り手だと思っていてもまだまだ私も未熟だったというわけね。

 しかもその後何度か聖王教会との連携に付いての話し合いをするべく公式打診をしたのだけれど、[公式に何かをする前に話を纏められていないのは下策だと覚えておくと良い]、って注意されてしまったのを考えると、侮られるのも仕方ない話といえば話よね。

 実際、レジアス大将は私が打診した時には地上の意見を聖王教会と連携出来る様にある程度纏められていたし。

 他にも、[対立勢力は全てを排除するのではなく、ある程度を纏めて監視するのが謀反の察知や別視点の意見と言う観点から見ても妥当だ]、と教わったから、本当にまだまだ全然駄目駄目だと実感したわね。

 

 

 

 その後、安堵した表情で通信を切られたクロノ提督を見届けると、私は急遽来年度か再来年度から開設を予定されている医師養成所の書類に視線を戻し、自然と吐いてしまう溜息に幸せが逃げている様な錯覚に陥ってしまった。

 

 地上と聖王教会がこれから友好を築いていく象徴として、聖王教会が土地と建設や補修を請け負い、地上が建設や補修の資金や資材を請け負い、そして医師会が養成に必要な人材と機材を請け負うという、均等な相互協力にも見える利権の貪り合いの関係に、開設どころか建設前に頭痛がするのは仕方がないと思えてしまう辺り、とても友好を築く象徴には成らないと思えて再び溜息が毀れてしまった。

 しかも本局が一枚も噛んでいない上、利権の調整者が、地上で将官待遇を約束され且つ医師会の寵児であり且つ聖王教会の名誉司教のカルラ医師である辺り、本局が此れから更に形振り構わなくなるかと思うと、三度溜息が毀れてしまった。

 

 

 

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「ヴィータちゃん…………元気だすですぅ……」

 

 ツヴァイの心配する言葉にも扉の奥のヴィータは何の反応も返さず、気まずい沈黙が廊下に満ちてもうた。

 

 何時もやったら家族の心配を無碍にするなんてことはせえへんヴィータやけど、流石に今回は半端やない落ち込み具合で声そのものが届いとらんみたいやな。

 と言うか、部屋の前に置いたご飯どころかクーラーボックスに入れたアイスも食べずに溶かしてしまう辺り、こら相当やな。

 

「……そっとしといてやり。

 流石にあんまりな命令やったし、それ以上にあんまりな結果やったみたいやし…………」

 

 私がそう言うと、ツヴァイは力無く項垂れながら扉の前から離れて私の肩の上に座り込む。

 

「幸い、常識を疑うほどに馬鹿らしい命令やってのはヴィータの上司も分かっとるし、踏んだり蹴ったりな結果になったのも分かっとるから、一月は休んでも構わんし休職も受け付けるて言うてくれとるから、今はそっとしといてやろ?」

「………………はいですぅ……」

 

 返事を聞いてからリビングに歩き始めるものの、廊下の角を曲がるまでツヴァイはヴィータの部屋の扉を心配そうに眺め続けたままやった。

 

 

 

 本局が見事なまでに時流に乗り遅れた上、先の失態が尾を引いたかは分からんけど、いっそ笑えるほど見事に地上と医師会と聖王教会からハブられてもうたし、中心人物のカルラ医師とは一切パイプが無いから渡りも付けられんからぼっち状態。

 カリムの部下のシャッハがカルラ医師とパイプがあるいうてもそれは教会上級騎士としての部下やから本局理事官のカリムとは関係無いし、仮に強引にシャッハから渡りを付けてもらおうもんならカルラ医師の私的関係者に圧力を掛けた手前悪感情を抱かれるのは必至やから、カリム経由で教会のパイプを使うことはほぼ不可能。

 ならば最終手段とばかりにハニートラップ(ハニトラ)を実行することになったらしいんやけど、流石に10歳男児に20前後~30後半の女性を向けても相手にされんだろうということで、少なくても見た目は同年代の者をということでヴィータに白羽の矢が立った。

 

 階級もそれなりで知名度も六課の副隊長ということで低くないし、見た目も大きなお友達が大勢出来るほど可愛っちゅうことが選ばれたポイントらしいんやけど、流石にヴィータの上司も馬鹿臭い上にヴィータの貞操や尊厳を無視した命令に抗議したらしいんやけど、本局の危機云々と大げさに言われた挙句圧力を掛けられて断れんらしかった。

 そやけどせめてもの抵抗とばかりに、[失敗しても構わない。と言うよりも、成功させようとして墓穴を掘らないことを最大限勤めろ]、てヴィータに言うてくれたらしかった。

 

 そやけど、………………女性の裸どころか内臓まで見まくる医師やからか、それともカルラ医師が誠実だったり人間嫌いやのか、はたまた10歳ということで性に目覚めていないのかは分からへんけど、全く効果が無かった。

 しかも即座に目的がバレた上、ヴィータの身体なのか人格なのかは分からんけれど、ゴミどころか路上の畜糞を見るような眼で見ながら丁寧に追い返されたらしく、女としても人間としても騎士としても大ダメージを受けて塞ぎ込み中になってもうた。

 

 

 …………ついこの間私が職場のストレスで胃潰瘍……て言うか胃壊溶で入院して、今度は家族のヴィータが馬鹿丸出しの命令の煽りで欝になって引き篭もる破目になってもうたのを知った陸の人達は、前より更に少しだけ優しくしてくれる様になった。

 

 

 


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