Vividの二次創作   作:駆け出し始め

15 / 19
015

 

 

 

「シスターシャッハ、空戦Sランク取得おめでとう」

「騎士ゼストから賛辞の御言葉を受けることが出来、光栄の極みで御座います。

 ですがそれも、手解きをして下さった騎士ゼストと、治療を施して下さった此処には居らっしゃられないカルラ医師の御力添えが在ればこその結果ですので、改めて御礼を言わせて下さい。

 …………有難う御座います」

 

 騎士ゼストに事故死すら在りえる程のハイレベル戦闘訓練に付き合って頂き、カルラ医師に肉体とリンカーコアを外部刺激を前提とした限界値迄の誘導をして頂かなければ、とてもではないですがSランク取得など叶いもしませんでした。

 しかも陸戦の私が空戦へ短期間で転換する為、陸戦と然して勝手が変わらぬ様に空中に魔力で足場を作る手解き迄も騎士ゼストにして頂き、更にカルラ医師から負担の少ないリンカーコアの使用法の手解きをして頂くことで、長距離移動には不向きなものの、一般的な戦闘域内に限定すれば通常の飛行魔法と互角以上の移動方法を手にすることが出来ました。

 

 心からの感謝を篭めて下げていた頭を戻し、自分でも驚く程に柔らかい表情なのだろうと思いながら言葉を続けます。

 

「それにアピニオンさんが休息として昏倒されている間と雖も、騎士ゼストが手解きして下さる貴重な時間を優先的に私へ譲って下さった教会の方達の配慮が無ければ、こうも短期間で陸戦から空戦への転換など叶いませんでした」

「〔万の謝辞より一の成果を〕。

 新たに得られたその資格で今迄以上の働きを示すことこそが彼の者達への最大の礼に他ならない」

「心得ています。

 そして叉、礼を急くばかりに功に逸る事も致しません。

 

 私の主務が秘書と護衛である以上、新たに獲得した資格で相手を威嚇して襲撃を未然に防ぐ事こそが目的であり、賞賛や謝辞の為に得たものではないことを失念したりは致しません」

 

 自衛ではなく護衛の基礎を教わる際、〔華麗な活躍の必要が無い下準備と抑止力こそが護衛の真髄であり、それを理解出来ない者は真に誰かを守ることは出来ない〕、と口酸っぱく言われ続けましたし、少年少女に在りがちな英雄願望を爆発させたりなんて断じてしません。

 

 と、そんな訓戒を思い返していると、騎士ゼストが苦笑混じりに話し出されました。

 

「言う迄も無い事だったようだな。

 

 ……易や、済まない。

 如何にも年を取ると気に入った相手には老婆心が湧いてしまうようだな」

「………………え?

 気、気に入った相手とは…………」

「年寄り…………と迄は言わんが、中年になると気に入った子供や若者には、自分の夢や希望を託すだけではなく、過剰な節介を焼きたくなっていかんな」

「あ、ああ。

 ……そういう意味ですね」

 

 まあ、年齢が倍程離れているのですから、騎士ゼストがそう思われるのも至って普通なのでしょうけれど、如何にも同列(女性)として見られていない感が強くて不満ですね。

 易え、騎士ゼストは実に騎士らしく且つ紳士で非の打ち所が無く、異性への気配りも若干拙いながらも決して疎かにしない方ですが、異性を女性として見られているかと問われると激しく疑問に感じると言いますか何と言いますか……。

 

「…………済まない。

 如何にも俺は女性への機微には疎く、知らずに不快にさせてしまったらしい。

 

 何を謝罪すれば良いのかは判らぬが、こういう場合は…………しかも貴女の様な方を不快にさせたのならば、先ず間違い無く私が……男が悪いのだと流石に経験で解るので、心より謝罪させて頂く」

 

 ……何と言うか…………人生経験が滲み出ている御言葉ですね。

 アルピーノ一尉から聞いた話では、[隊長の女性に対する事前対応は結構難在りだけど、事後対応は何とか及第点]、とのことですから、恐らく相当苦労をなされたのでしょうね。

 形式上の気遣いは素晴らしいにも拘らず、女心を読むべき場面では可也難が在る行動をされ、にも拘らず事後対応は不器用ながら一応の体を保っているのですから、アルピーノ一尉とナカジマ一尉の懸命の教授(――――――苦労――――――)が透けて見えるというものですね。

 

 ……っと、謝罪の言葉に対して何時迄も沈黙した儘と言うのは礼に反しますね。

 急いで返答しなくては。

 

「易え、別に不快とは思っていませんので御気になさらないで下さい」

「気遣いは素直に嬉しいが、女性の扱いが成っていない男を責めるのは女性の特権だ。

 遠慮せずに文句を言ってくれて構わない」

「あの、……本当に不快とは思ってませんので御気になさらないで下さい。

 徒、…………少しばかり騎士ゼストが対等に見て下さらないことに対しての不満と、私程度で対等に見てもらおうと思ってしまう増長に自己嫌悪しただけですので……」

 

 実際私と騎士ゼストの差は、管理局で言えば大将と尉官…………贔屓目でギリギリ佐官でしょうか?まあ、それ程差が開いているのですから、同じ目線に立ってほしいなど余りにも癡がまし過ぎます。

 士官学校の時より苦悩や絶望を共にしながら理想を目指し疾走されているレジアス大将に、平穏を対価にレジアス大将達を後押しするどころか追い着かれたカルラ医師と違い、嘆きや代償とは無縁に生きてきた私が騎士ゼストへ彼等に対する様に同じ目線で見てほしいなど、三名全員に対する侮辱でしかありません。

 

 …………高みを目指して精進していた筈が、気が付けば高みに座す方達を引き摺り下ろしたく思ってしまうとは、我ながら全く以って未熟ですね。

 私がこんな様では折角賛辞を掛けて下さった騎士ゼストの――――――

 

「勘違いなら笑って聞き流してほしいのだが、俺もレジアス…………大将もカ……ルラ医師も、自分の決断や人生が特別だと思ったことは一度としてない」

 

――――――風聞どころ……………………え?

 

「俺達は何かを成し遂げる為には力が足りず、それ故に幾つも零し続け、その結果大切なモノとそれ以外の溝を深め続け、気付けば目指すモノと抱え込み続けるモノと切り捨てるモノが明確に成ってしまった。

 …………俺達を人生に於ける勝ち組と評す者は少なくないが、寧ろ俺達は敗北者……良くて挑戦者だ」

「…………」

「叶わぬからこそ足掻き続け、届かぬからこそ藻搔き続け、焦がれるからこそ傷付き続ける。

 惨めだろうが情けなかろうが浅ましかろうが、求めることを決して止めはしない。

 何故なら、俺達はその為に命を使い切ると決めたのだから」

「………………」

「成し遂げた訳でもなければ身の程を悟って身を引いた訳でもなく、かと言って現実や身の程も知らずに子供の様に挑み続けるのでもなく、現実と身の程を知って尚挑み続ける往生際の悪さ。

 …………正直、何一つ失うことも無ければ切り捨てたことも無いだろう者達の方が、俺達よりも遥かに勝者という言葉が相応しいだろう」

「……………………」

 

 そ、そういう風に考えられていたとは思いもしませんでしたね。

 まあ、現状に満足している者こそが勝者で、その境地に立とうとした者、若しくは立とうとしている者が敗北者や挑戦者と言うのは分からないでもないですが、騎士ゼスト達が全員勝者に成れていないとは…………。

 

「それにな、失う事も切り捨てることも無い道程を歩んできた者が非難される謂れは無い。

 経験が足りないだとか深みが無いだとか、誰かを失うことでしか得られないモノを持ち得ていないことを非難する心算は微塵も無い。

 況してや局員が失う者の最たるモノは守るべき民間人だ。

 俺の持論が如何とか言う前に、常識で考えても非難出来る類ではない」

「それは…………確かに……」

「十分勝ちより七分勝ちなどと戯けたことを言う下衆に成り下がりたくない。

 絶えず十分勝ちを繰り返し、何一つ取り零したくない。

 苦労も昂揚もせず、最速にて事を収めたい。

 徒在るだけで抑止として十全に機能したい。

 人の善性が悪性に勝ってほしい。

 

 …………無論、ソレが叶わぬからこそ、取り零し続け、遅きに逸し続け、切り捨て続け、奔走し続け、在ってほしくない現実を突き付けられ続ける。

 こんな俺やレジアスを…………元い、レジアス大将が勝者などとは断じて呼べん」

 

 ………………な、何と声を掛けて良いのか分かりません。

 しかも恐らく私が分不相応な望みを漏らしたからこそ吐露して下さった本音だろうだけに、余計――――――

 

「と、言えば丸め込めるのだろうが、実際のところ俺もレジアスも……元い、レジアス大将も、〔守りたいと思う者が当たり前の様に住む場所を守れる様にする〕、を目指しているだけだ。

 そして究極的には他のことは如何或ろうと構わないと思っている」

 

――――――に言葉が…………………………はい?

 

「オフレコと言うヤツだが、俺達は自分で何から何迄したいなどとは思っていない。

 出来る出来ないの問題ではなく、する気が無いのだ」

「……………………え゛?」

「徴兵されたわけでもないならば、仮令事務局員であろうと非常時には民間人を優先する義務がある以上、危険は絶えず付き纏う。

 そして危険だからこそ得られるものも同時に在る以上、死した時に役職に課された分を超えて責任を負うということは相手の危険(リスク)を根刮ぎ自分のものとすることであり、それは危険(リスク)の果てに得られるものをも奪い取るということだ。

 

 そして民間人の死に関しても役職に課された範囲を超えて責任を取る心算は無い。

 何故ならば、濫りに職責を越える責を背負うということは越権であり、それは繰り返せば繰り返す程に超過分の責を公人の責と誤認し、最後にはその責に報いるべく公人としての権力を揮って周囲へ甚大な被害を齎しかねないからだ。

 何より、一人で背負うと言うことは分かち合わないということだ。

 

 俺は俺と同じ夢を見たレジアスと夢を……夢に至る痛みを……苦しみを、…………分かち合わずに独占するという不義理且つ不誠実という恥知らずな真似は断じてしたくはない」

 

 恐らく、偽らざる本音であると同時に、必要な分を超えて背負おうとしない申し訳無さも混じっているのでしょうね。

 

 

 

 結局、騎士ゼストが如何いう意図で私にそんな話をして下さったのかという意図は察すことが出来ませんでした。

 けれど、今迄遠くに在った完璧な騎士然とした騎士ゼストが、青臭い夢を捨てきれない誠実な大人に感じられ、凄く身近に感じる様になりました。

 

 後、薄着で気絶していたシャンテを見て、12歳目前の少女にしては発育が良いことに可也イラッときました。

 

 

 

 ●

  ■

   ◆

    ▲

    ▽

   ◇

  □

 ○

 

 

 

「肉体面及びリンカーコアの双方が252日以上安定。

 内、週に10時間から15時間魔力を使用したストライクアーツが56日。

 但し、魔力行使はレリックによるリンカーコアの強制拡張が行われていないだろう範囲での魔力使用に留めている為、魔力行使に於ける安全域の明確な線引きは不明。

 しかし現時点迄の領域ならば、身体及びリンカーコアが衰弱していなければ推測上問題無し。

 

 ……結論ですが、是迄指定した範囲内での魔力行使でならば、他に学院生活で制限は必要無いと思われます。

 尤も、今の話は身体とリンカーコアが衰弱していないことが前提ですので、一度何方か若しくは双方が衰弱した場合、許可の取り消し及び再許可の見通しが不明と言う場合は十分に在りえます。

 

 扠、何か御質問は在りますか?」

「え、えと……」

 

 む、無限書庫でたくさんの本を見たからカイに普通に説明しても平気だって言ったのはいいけど、読むんじゃなくて聞くのはほとんど初めてのが多いから、理解するのに少し時間がかかって質問したいことがまだ思い浮かばないよ~。

 

「……予定を速く消化出来ているので後30分は時間が在りますので、焦らずに熟考して下さって構いません。

 御家族の方との話が終わった後でも十分に時間は在る筈ですので」

「は、はい」

 

 は、話に着いて行くのにいっぱいいぱいで質問することにまで考えが回らないなんて、自信たっぷりにいつまでも子供に聞かせる話方で無くても平気だって言っちゃったのが恥ずかしいよぉ~。

 

 恥ずかしくてちょっとうつむいていると、カイはヴィヴィオからフェイトママへ体の向きを変えてから話し始めた。

 

「それではハラオウンさん、何か御質問は在りますか?」

「……一定以上の魔力行使が危険なら、いっその事リミッターを掛けた方がヴィヴィオも気にしないで楽な気がするんだけど、ダメなのかな?」

「自力での制御が困難ならば兎も角、そうでないのならば第二次成長が終わる迄は成長阻害等を考慮して極力避けたいですので、御本人からの強い御要望と止むを得ないと判断するに足る理由が無い限りは御断りするつもりですので、その御提案は現状では承諾しかねます」

「あの……その、私……考え無しに危ないこと言っちゃったりして…………」

「患者若しくは御家族からの治療法乃至現状改善の提案に対して御答えするのは、情報を開示した上での合意(インフォームド・コンセント)に於いては至って当然の事ですので御気に為さらないで下さい」

 

 い、いんふぉーむどこんせんとって何なのかな?

 …………いっぱい訊いたりしても問題無いってのは何と無く分かるから、詳しくは後で調べようっと。

 流石にカイが話している最中にカイの言葉をネットで検索するのは、失礼とか言う以前に恥ずかしいしね。

 

「……それじゃあ遠慮無く訊いちゃうけど、何歳頃になったらヴィヴィオは全力を出せたりして、そしてソレを早めたりする方法は無いのかな?」

「極限迄安全を追求されるならば、基本的に生涯全力を出すことを御勧めしません。

 少少の危険を容認されるならば、第二次成長終了迄全力を出すことを御勧めしません。

 多少の危険を容認されるならば、第二次成長開始推定2年以内迄全力を出すことを御勧めしません。

 甚大な危険を容認されるならば、今からでも全力を出して頂いて情報を収集し始めます。

 

 尤も、どれを御本人が選択為されても、全力を出すことを禁止する場合も在ればその逆も在ります。

 但し、危険度の高さに比例して相応の理由が在ると判断しない限り私は承諾しませんので、危険度が高い選択を為される場合は、覚悟だけでなく相応の理由も御提示願います。

 

 若しくは、来年の11月からミッドチルダのベルカ自治領で開設予定の医師養成所(医療系最高学府)の院生を卒業し修士号を得て自己診断管理をすると言う手段も在ります」

「「…………」」

 

 院生が何かは分からないし、やる前から諦めるのは好きじゃないけど、全然出来る気がしないよぉ。

 と言うか、ソレが出来る頃にはとっくに大人に成ってる気がするから、勧める意味が無いと思う。

 

「え……と、…………ソレってどれくらい勉強すればいいのかな?」

「実技や語学を除外しますが、St.ヒルデの総必修量の最低でも260倍強ですね」

「「……………………」」

 

 改めてカイは凄いって思った。

 そして出来るとか出来ないとかじゃなくて、毎日が全然楽しくなくなっちゃいそうだから、最後のはしないって決めた。

 

「自己診断管理は難しそうだし、ソレに力を費やすより他のことに力を注いだ方が楽しく暮らせそうだから、私としては反対かな…………」

「まあ、価値観や人格が屈折や歪曲を繰り返し易いですので、その判断は妥当でしょう」

「そんなことを勧めてたの!?」

「流石にその類の可能性が高いならば、一考された場合には御教えしますので御安心下さい」

「あ、あのね、後で教えるとかそういう問題じゃなくて、そういう危険があることを選択肢にするのが問題な気がするんだけど……」

 

 うん。ヴィヴィオもそう思うけど、カイはなんてことない様な顔で――――――

 

「多くの選択肢を提示し、同時に恩恵と危難の度合いも御説明するので問題は無い筈です。

 今回は選択肢の提示と同時に御説明はしませんでしたが、最低でも選択された際には必ず御説明していますので御安心下さい」

 

――――――と言った。

 でも…………あれ?

 

「…………なのはママの扱いはかなり雑だったって聞いたけど……」

 

 言葉遣いは丁寧でも、言外に、〔お前のことなんて知らない〕、って感じだったってなのはママが言ってたけど……。

 

 フェイトママも同じことを思ってたみたいで、ヴィヴィオと一緒にカイをじっと見つめた。

 そしたらカイはさっきと同じ様になんてことない顔で答えてくれた。

 

「治す意思が在れば患者ですが、治す意思が無いのならば対処療法以外では見当外れの文句を言われない為に報告と忠告をする程度に留めます」

「さ、流石に治す意思はあったと思うけど…………」

「…………御家族ということで少少御話ししますが、以前航空隊を回っていた時に診察した際、治療行為を〔そんなこと(●●●●●)〕と仰られ上で仕事に影響が出るのでと治療を御断りされました。

 一応職場の上司の方に放置した際の危険性を御説明し、治療の為に中期から長期の休養を取る旨を進言しました。

 説明と具申の甲斐あって御理解頂けたので治療勧告をして下さりましたが、私の時と同様の応対で断られたので仕事の交代勤務(シフト)の調整が可能だということを確認した上で再度治療勧告をして下さるも、皆に迷惑が掛かるからという理由で再度断られました。

 そして職場の皆様方に事情を説明して了解を得た上で三度目の治療勧告を上司の方がして下さり、漸く渋渋ながらも了承して下さりました。

 ですが、土壇場で矢張り皆に迷惑が掛かると言って治療を拒否されました」

「「…………」」

「何かしらの葛藤や不安が在ったのでしょうが、既に人事部に勤務表を提出して受理されていた為、急な職場復帰が叶う筈もないのですが、強引に出勤と出動を繰り返し大勢の方に迷惑を振り撒かれたという前科が御在りですので、徹夜で始末書と勤務表の訂正等をされて過労で倒れられた上司の方や人事部の様な方達を増やさぬ為にも、それからは治療の推奨などをせぬ様心掛けるに至りました」

「「………………」」

 

 何でだろう? 不思議なくらいその時の光景が目に浮かぶよ……。

 フェイトママも同じみたいで、引き攣った顔で何て言って良いのか迷ってるよ……。

 

「先程も述べましたが、何かしらの葛藤や不安、若しくは強迫観念や重度の依存と言う理由も在るのでしょうが、生憎私は相談援助(カウンセラー)は飽く迄治療される上でしか行いませんので、治療自体を明確に拒絶される方は対象外です。

 

 医師の責務としてで再三治療勧告を状況を整えつつ行いましたが、にも拘わらず治療を拒否されるならばそれ以上拘わるのは時間の無駄ですので、他の方と比して対応が雑になるのも致し方ないと思います」

「「……………………」」

 

 ふぉ、フォロー出来ないよっ!

 て言うかなのはママ何やってるのっ!?

 フェイトママもフォロー出来なくて途方に暮れてるよっ!

 

「それと此れは多くの医師が思っていることですが、殆どの方が医師に幻想を抱き過ぎです。甘え過ぎと言っても過言ではありません」

「「…………え?」」

「〔何時でも受診出来て当然〕、〔医師や病院は全力を尽くして当然〕、〔医師は患者へ親身に接して当然〕、〔1%でも助かる可能性が在るなら実行して当然〕、〔患者の命を賭けるなど言語道断〕、〔未熟な医師に執刀させるなど以ての外〕、〔不安が在れば兎に角病院へ〕。

 ……要約すると、〔医師は都合良く黙って使い潰されろ〕、という考えが意識の根底に在りますね」

「「…………………………」」

「まあ、医師以外の方が医師に持つ正鵠を射た不満も在りますから、医師が一方的な被害者だとは言いませんし思いませんが、医師も人間であり耐久限界や性能限界が存在し、更には生活や嗜好が存在しているという当然のことを認識してほしいということです」

「「………………………………」」

 

 言いたいことがたくさんある話だけど、私達がお医者さんに抱いているイメージを改めて一度に言葉にされるとすごい無理難題に聞こえたりするのに、何で今まで気付かなかったのか不思議。

 

 

 

 その後気まずい雰囲気になってお話は終わりになっちゃたけど(カイは気にしてなさそうだったけど)、診察が終わる間際にダメ元で今度カイのお休みの時に一緒に遊べないかって訊いた。

 そしたら今度の日曜日に休みを利用してたくさん買い物するみたいだから、一緒に買い物なら構わないって言ってくれた。

 

 すぐにOKの返事をしたけど、フェイトママがヴィヴィオもカイも襲われる要素が多いから不安がってたら、カイがゼストさんか部下のナカジマさん(スバルさんのお母さん?)も休みで買い物する筈だから付き合ってもらえば大丈夫だって言ったらフェイトママも納得してくれた。

 なのに、何でか当日はフェイトママ達が物陰から様子を見ていたせいで、ものすご~く目立って恥ずかしかった。

 

 

 ゼストさんが言っていたストラトスジョーさんって言うカイのお友達に会えなかったのが残念だったけれど、ものすごく楽しい一日だった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告