Vividの二次創作   作:駆け出し始め

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76年度(昨年度)のミッドチルダに於ける退役及び殉職魔導師数は、J・S事件の起きた75年度(一昨年度)との比では約28.8%で、比較に適した74年度(一昨昨年度)との比では約93.6%。

 設立当初からの平均値と比較するならば、約64.2%。

 叉、66年度から76年度(此処10年)の平均値と設立当初からの平均値とを比較するならば約77.6%。

 

 ……先程述べました入局及び復帰魔導師と照合しますと、此処10年の平均損耗率が遂に同期間の平均補充率を下回りました。

 此れは実に約半世紀振りの快挙であり、叉決して偶然などではなく、カルラ医師の技術と知識が最低限地上に普及しきるだろうと予測される96年度迄は、極端な大事件が無い限り損耗率は低下し続けると予測されます」

 

 年明け早早めでたい話だな。

 とは言え、純粋に損耗率が低下しただけではなく、厳密にはゼストの活躍による宣伝効果や、聖王教会との合同演習強化による陸戦魔導師の厚遇による高ランク陸戦魔導師の転属希望に、医師会との結び付きが強いので本局よりも遥かに進んだ医療を受けられる等の理由で補充率が増えているのも損耗率を上回れたのも理由だが、後5~6年もすればソレを抜きにしても補充率が損耗率を上回るのはほぼ確実だろう。

 熱が冷める速度を早めに考慮しても、矢張り20年先迄は補充率が損耗率を下回ることは無いだろう。

 

 ……そして補充率が上昇しただけでなく損耗率も低下したとなれば、今迄遺族や障害を負っていた者に支払っていた分の予算が少なからず浮くということだ。

 しかも地上への寄付金が増えただけでなく、地上の発言権も大幅に向上した為寄付金を本局に強奪される心配もほぼ無くなった以上、漸く綱渡り運営どころか破滅の先送り運営から脱却出来るということだ。

 ならばホロウィンドウに映る喜色を抑えつけ様としている面面の発言は――――――

 

<魔導師の損耗率減少が齎す予算への影響は?>

 

―――――まあ、先ず予算の確認だろうな。

 

 視線でオーリスに回答を促しつつも、新たな議題提唱のタイミングを計る為に各各の意見に耳を傾け続ける。

 

「公傷手当こそ増加していますが、遺族補償並びに後遺障害手当は大幅に減少しており、昨年度の合計金額は63年度から73年度迄の平均の約26.1%であり、此の差額は地上の昨年度予算の約2.9%です。

 叉、損耗率が低下した為新人研修担当の者を就業時間内で割り振ることが可能となってきており、時間外手当減少による昨年度の余剰予算は地上の昨年度予算の約0.1%です。

 

 他にも具体的な数値は算出出来ませんが、熟練者が付き添うことで研修中の死亡乃至障害発生率の低下。

 熟練者を保持し続けられる部隊が増えた為、応援要請低下による時間外勤務の減少。

 超過勤務解放に伴い休養時間増加による無自覚な衰弱から回復し、能力値向上に伴う公傷頻度低下。

 治安維持向上による地元団体及び企業から贈られる寄付の増加。

 ……以上の様な影響も在ります」

<繰越予算はどれ程なのかね?>

「約5.7%です。

 尚、J・S事件で破損した設備、及び聖王教会敷地内に開設予定の医師養成所への費用も支払った上での繰越予算であり、それらを除外したならば19.7%です」

<今年度の予想される余剰予算は?>

「約8.3%です。

 昨年度の80%の寄付金を想定したならば約23%です」

 

 ……数年前迄は赤字を如何にかして誤魔化して運営していたのが、今では約23%も余剰予算があるとはな。

 まあ、危険域に迄経年劣化及び損傷した重要施設並びに重要設備の新設若しくは購入に殆どが消えるだろうがな。

 

<ならば昨年度はJ・S事件の復興を優先して頓挫していた、危険域に在る改修や修理が不可能な重要施設並びに重要設備の新設若しくは購入に是非とも予算を充ててほしいですな>

<改修や修理が可能な施設や設備にはその際に幾つかのパーツを予備代わりに回して貰うとしましても、矢張りそういうところへの予算も欲しいですね>

<一般受付周辺の環境を改善することで、民間の方へ管理局がJ・S事件の影響から回復して組織運営が安定したとアピールもしたいの>

<それならば此の状況へ導いてくれたカルラ医師の業績をマスコミの前で称えながら、一足飛びに中将待遇にすれば十分にアピール出来ると思うが?>

<アピールするだけならば一足飛びにする必要は無いと思うが?>

<本局の者が強権を発動した際にカルラ医師が撥ね退けるには中将待遇は必須じゃと思うがの>

<そうですね。

 今万が一カルラ医師を本局に抑えられてしまえば、最悪医師会と教会との連携が全て破綻してしまいます>

<だが一度に二階級待遇を上げると不吉だ何だと本局が難癖を付けかねないと思うが?>

<授与式を二日に分けて行えば問題は在るまい。

 幸い、J・S事件復興の過程で明らかになった功績が在るのも事実な以上、授与式を二日に延ばす程度は何とかなるだろう>

<しかしカルラ医師を二日も授与式の為に拘束するのは問題が在ると思うが?>

<御多忙なのは周知の事実ですから、授与が終わり次第に退席なされば済むと思いますが?>

<じゃな。

 だが、出来れば初日は授与式前に来て頂き初めに授与し、二日目は授与式最後に間に合う様に来て頂きたいところだの>

<初日は授与式前に幾名かに挨拶させる時間を作って頂き、二日目はマスコミがインタビューするだけの時間を作って頂くという訳か>

<そこで地上が医師会と教会と連携していることをアピールして下されば凄まじい宣伝効果を生みますし、入局者数や寄付金も更に上昇するでしょうね>

<そして世間にJ・S事件が終わったことも含めて十分にアピールし、地上が安定したと印象付けた後に一般受付周りを改修した方が受けも良いし反感も買われ難いと言うわけか>

<局員にもJ・S事件が終わったと認識させ、意識を切り替えさせるイベントにも成るな>

<そして施設や設備の新設や購入に対する予算分配への疑問や遠慮を抑えるわけじゃな>

 

 …………儂へ反感を持っている者も少なからず居るものの、それでも地上の足元を固められるかの重要な時期である以上、流石に此の場で足並みを乱す者は居らんか。

 幸い、奴が権力を行使するのは治療場所へ赴く際に必要な通行許可や、設備が整っていない場所で治療する際に医療機器の代替に成る物の徴発という、全て医療行為に収束する類な以上、凄まじい功績が在るので厚遇化に異を唱える者は居らんな。

 少なくとも地上と医師会と教会が連携する際の中心人物である現状で、万が一茶番の襲撃の末に難癖付けられて逮捕されそうになった際に不逮捕特権を発動可能な様、ベルカ専門の名誉外交官辺りにでも中将待遇で据えればほぼ問題は解決するだろう。

 一応名誉司教の称号をベルカで得ている以上、奴をベルカ専門の名誉外交官とするのは然して難しくはないからな。

 

 とは言え、今迄の様に准将(扱い)ではなく中将(扱い)に成る以上、最早陸のトップ(――――――儂――――――)でも好き勝手動かすのは難しくなるな。

 護衛する分には不都合は無いが、知らぬ間に担がれて内部抗争の原因に陥れられた挙句に減刑と称して扱き使われる可能性が高まった以上、本局だけでなく地上の覇権を狙っている輩達の動向も此れ迄以上に確りと監視せねばならんな。

 

 

 

 

 其の後、予算分配や局内外へのアピールもほぼ儂の想定通りに落ち着いた。

 徒、地上局員の補充速度が損耗速度を上回った以上、20年以上後と雖も地上の局員許容限界を超えることが予想される以上、許容しきれぬ局員を徒断るのではなく他所の管理世界に配属するか本局に配属するかで揉めに揉めた。

 

 本局に貸しを作って横暴を抑制しようと言う者達、各次元世界の治安を向上して本局の出番そのものを削って横暴を抑制しようと言う者達、下手に議題に上げたり打診したりせずにギリギリ迄力を蓄えるべきだと言う者達。

 恐らく地上の局員許容限界を超える頃には今回の会議に参加した者の半数以上は定年を迎えているだろうが、それでも次世代のことを思って侃侃諤諤と意見を戦わす様を見ていると、願わくば次の世代も更に次の世代の為に腐心してくれる者達で溢れる事を切に願った。

 

 

 

 ●

  ■

   ◆

    ▲

    ▽

   ◇

  □

 ○

 

 

 

 う~ん。…………何気無く声かけても大丈夫かな?

 挨拶くらいなら平気だと思うけど、わざわざ近くまで寄って挨拶するのって変じゃないかな?

 でも、挨拶するとみんな嬉しそうに挨拶を返してくれるから、多分大丈夫だよね?

 それにカイは義娘(ヴィヴィオ)のお友達で主治医だから、私が世間話とかしても問題は無い…………よね?

 

 あ、でもカイの近くで護衛してるアルピーノ一尉に仕事はどうしたのかって怒られる…………ならちょっと遅いお昼休みって言えば大丈夫だよね。

 それにアルピーノって、この前エリオとキャロが知り合ったって言ってた子と同じファミリネームだし、其の辺を少し聞いてみたりすれば仲良くなれたりするかな?

 はやてもこれから管理局で頑張るつもりなら陸の人とはできるだけ仲良くしておいた方が良いって言ってたし、良い機会だからお話しようっと。

 

 それじゃあそう決めたなら早速行動しよっと。

 …………って、あれ? ど、どこに行ったのかなぁ…………って、もうあんな所に!?

 は、早く追いかけないと!

 

「………………ハァ…………ハァ…………ハァ……ハァ……ハァ……ハァッ……スウゥ……フウゥッ」

 

 さ、流石に走って追いかけた上に息切れしながら挨拶はないと思うから、早歩きしながらしっかり息を整えないと。

 

「フウゥ……フウゥ……フウゥ……フウゥ…………フゥゥ…………フゥ…………フゥ…………ヨシ」

 

 それじゃあまずは笑顔で挨拶して、それからヴィヴィオの話を挟んで本題に入ろうっと。

 

「おはようございます、カ ルラ医師」

 

 あ、危うくカイって呼び捨てにするところだったけど、ギリギリ間に合ったよね?

 

「御早う御座いますハラオウン執務官。

 屋内にも拘らず走られていましたが、私に火急の御用でしょうか?」

 

 …………コレ、もしかして怒られてる?

 と言うかあいさつ以前にやっちゃってた?

 で、でも、笑顔だから怒ってなんかいないよね?

 

「あ、急ぎ……と言う程ではないですけど、お時間宜しければ少しお話ししたいことがありまして……」

 

 うっかり敬語も失敗しちゃったよ!?

 し、知り合いに堅苦しい話方するのってやっぱり苦手だよぉ。

 と言うか躓きすぎな気がするよ……。

 

「歩きながら且つ乗車する迄の時間で宜しければ構いませんが、如何為されますか?」

「あ、それで構いませんのでお話しさせて下さい」

 

 私がそう言うと同時にアルピーノ一尉が軽く、……本当に軽くだけど頭を下げてから私とカイの間に身体を割り込ませてきた。

 

「護衛のアルピーノ一尉です。

 御気に障られたかもしれませんが職務ですので御容赦を」

「あ、はい」

 

 …………ま、まあ、局員でも変な事するかもしれないのは最高評議会が証明しちゃってるから仕方ないよね。

 私が絶対大丈夫だからって言っても仕事じゃないだけに余計疑われるだけだし、ここは素直にこのままお話ししようっと。

 

「えと、それじゃあ早速本題なんだけど、私の友達がリンカーコアにダメージを追ったままで苦しんでるんだけど、診てもらえないかな?」

「治療意思の在る方が来診されたならば仮令犯罪者であろうと区別しませんので、診察を御希望ならば先ずは来診願います。

 尚、受診に近い往診……法人機関や大規模災害時等の場合を除き原則として受け付けておりませんので、御本人が行動出来ない場合は救急医療センターへ御一報下さい」

 

 ……うん。ヴィヴィオが言った通りの答えだね。

 で、でも、さすがにこの後の展開は違うよね?

 

「そ、そうなん ですけど、以前ドタ ん場でキャンセルしてしまいましたから、もしかしたら今度は以前の診察結果とこの前の模擬戦の時の診察を合わせれば直ぐに治療してもらえるかなと思ったんですけど……」

「「………………」」

 

 あれ? 丁寧に話してて思ったけど、もしかして私、とんでもないこと言ってる?

 と言うか、何を言っているのか良く分からなくなってきた気がする……。

 

「原則として治療に当たる前の診察は必須ですので、最近診察を受けたからといって診察を省いて治療という事はほぼ在りません。

 叉、現状で私は紹介された患者以外は既に受け持ちの患者、若しくは回診以外で診察することは原則として在りませんので、個人間での依頼は基本的に受け付けておりませんので御了承下さい」

「で すがレジアス大将などを個人的に診察して おられるようですが?」

「それは私的時間を捻出しての個人的診察です。

 叉、レジアス大将及び他数名の方は要職に就かれており、治療猶予の在る局員に先んじて治療する正当な理由の提示も容易ですので、職務上の権限逸脱並びに責務放棄には抵触していない以上職権濫用には該当しませんので問題は在りません」

 

 職権濫用じゃないかもしれないけど、それって職権乱用だよね!?

 なのに理論武装で文句を封殺してるって、カイってもしかしなくても交渉スキル高いっ?

 

 だ、だけど、職権乱用しても理由を用意できてるから平気ってことは、お願いしたら聞いてくれるかも知れないって事だよね。

 

「要職に就いて いるのでレジアス大将方の治療を優先させても構わないなら ば、私の友人のなのは 一尉も診察と治療を優先し ていただけないでしょうか?」

「申し訳御座いませんが、要職の是非を判断するのは私達ではなく管理局の上層部の方方ですので、その御要望には御応え出来ません。

 後、敬語に不慣れならば丁寧語でも構いませんので、文法よりも趣意の事解に意識を気兼ねなく割り当てられて下さい」

「「………………」」

 

 す、すごい笑顔なんだけど、コレって素直に気を遣ってもらったって解釈して良いのかな?

 でも、わざわざ難しい言い回しをしたってことは馬鹿にしてるってことなのかな?それとも私を傷付けないよう遠回しに言ってるだけなのかな?

 はやてとかなら何と無く判るけど、カイだとその辺全然判んないな……。

 

 だ、だけど、コレで気楽に話せるから遠慮無くどんどん訊ねようっと。

 

「えと、それじゃあお言葉に甘えて楽にさせていただきます」

「……ええ、どうぞ」

「それじゃあ改めて訊かせてもらうけど、もしかしてカイはなのはが前にドタキャンしたことを根に持ってたりするのかな?」

「「…………」忘れてはいませんが、ソレが御断りした理由に含まれる割合は皆無です。

 何故ならその件に関しては私が高町一尉の意思を確認せずに行動した結果であり、そのことで高町一尉に嫌悪を持つのは筋違いと理解した上で納得しているからです。

 無論、高町一尉が治療行為を軽視した発言を為され、更に理由として成り立たない理由で治療を拒否されたことに思う所は在りますが、ソレは今し方述べました通り、高町一尉の意思確認を怠った此方に非が在ります。

 

 尤も、治療行為の軽視及び最終段階での主客転倒した理由による拒否は、其の後の対応変更を考慮するには十分な事例ですので、通常の患者と比較した場合雑に映るのも当然であり、叉、以前全容を告げずに話を終わらせてしまった為にハラオウン執務官に猜疑心を抱かせてしまったことは私の対応の不備ですので、其の件につきましては御詫び申し上げます」

 

 足こそ止めなかったけれど、カイは私の方に視線を向けると軽く頭を下げた。

 

 礼儀正しいしヴィヴィオのために本当に骨を折ってくれるほどだから悪い子じゃないと思うんだけど、……冷たいと言うか機械的と言うか…………なに考えているかよく分からないと言うか……。

 言っていることは正しいと思うし嘘は吐いてないと思うんだけど、なに考えているか全然伝えないようにしてる気がするんだよね。

 つまり距離を取られている……もっと言えば避けられてるってことだよね。

 

 …………うん。仲良くなれないのは良くないと思うし、良い機会だから理由を訊こうっと。

 

「別に謝るほどのことでもないから、気にしなくていいよ。

 ただ、ヴィヴィオはそうでないみたいだけど、私やなのはを避けてる理由を聞かせてもらえたら嬉しいな」

「「…………」不快になるだろう極めて個人的な理由を聞くことになると思いますが、それでも構いませんか?」

「どんな理由でも構わないから、ぜひ言ってほしいな」

 

 さすがにオーバーキル(なのは式お話し)をしたら冗談や秘密裏で済ませられないし、普通にお話し出来るならまずはお話しするべきだよね。

 と言うか、良~~く考えてみたらソレが普通で正しい気が…………。

 

「それでは率直に述べさせてもらいますと、私にとって貴女達は毒を撒き散らす可能性が極めて高い異物だからです」

「ど、毒!?」

「尤も、貴女達にとっては私が毒である可能性が極めて高いと思われますので、貴女達も私を毒性異物候補という認識を抱かれた方が宜しいかと」

「えっ?えっ?」

「噛み砕いて言いますと、私の私的関係は地上局員が多数であり、貴女達の私的関係は本局局員が多数であることが理由です」

「そ、そんなことで毒になっちゃうの!?」

「易え、治安維持の為ならば質量兵器の限定解禁すら使用に入れる地上と、現体制を保持し続け質量兵器の存在を排斥し続けようとする本局との隔絶は可也のものと容易に想像出来るかと思われますが?

 そして何方に理が在るなどと論ずる心算は在りませんが、私は私の信じる者の判断を信じて地上の側に身を置いている以上、濫りに本局側の方と私的関係を築くことは危険行為だと判断しますので、私は貴女方とは一線を引いている訳です」

 

 つまり、カイが陸派で私達が海派だから、他の人達が喧嘩しないように近づかないってことなのかな?

 ……あれ?でもそしたらどうして教会(シャッハ)と仲良くしているんだろ?

 

「でもそれだと、シスターシャッハと仲が良い理由が分からないんだけど?」

「聖王教会が本局の傘下であるとは寡聞にして存じませんが、先の発言は私の見識の狭さ故に理解が及ばなかった、若しくは私の解釈に誤りのがあるのでしょうか?」

「あ、うん、あのね、私達と仲の良いカリムの秘書みたいなシスターシャッハと仲が良いのはどうしてかな、って意味で……」

「失礼。理解が及びませんでした。

 そして返答ですが、ヌエラ氏は私などよりも遥かに公私の分別に厳格な御方ですので、御自身へ私的に私への仲介を頼まれた際は、ほぼ確実に私と相手の関係性を考慮して仲介の是非を決定されますので問題は感じられません。

 叉、仮に仲介を公的にを命じられた場合、ほぼ確実に私が御断りするのは理解しておられる上、御断りした事に対して悪感情を持たれるどころか縁故に付け込んで私の時間を浪費させた上に不快にさせてたのではないかと悔やまれる御方ですので、ヌエラ氏個人に関しては全く問題は無いと断言出来ます。

 更にグラシア上級騎士に関しては、現状では問題無しと聞いておりますので、問題とは認識しておりません。

 

 それと最後に一つ指摘させて頂きますが、私はヌエラ氏を敬意を払うべき御方とは思っておりますが、友誼を結んだ覚えは無く、ヌエラ氏も私と友誼を結んだ覚えは無いと仰られると思いますので、貴女の先の発言は的を外れていると思われます」

 

 …………カイの中でシスターシャッハの株がものすごく高いんだけど、一体何があったらこうなるのかな?

 でも、尊敬しているけど友達じゃないって、………………もしかしてグランガイツ一佐とシスターシャッハが結婚してカイが養子になるってうわさは本当なのかな?

 少なくてもオーリス二佐と結婚してレジアス大将の義息子になるって話よりは真実味があると思うけど、はやてに聞いた話じゃグランガイツ一佐ってベルカじゃ生神様状態らしいから、殆どの人が尊敬を通り越して崇拝しているからまともに個人として見られることがないって話だったけど、シスターシャッハ違うのかな?

 

 って、いけないいけない。

 駐車場までそんなに距離が残ってないから、早く話しを再開しないと。

 

「…………エエト、私達と仲良くできないかって話だけど、陸と海の仲が悪いならカイと私達で仲良くできるって証明すればいいんじゃないかな?」

「思想の問題と思われますので私と貴方達の友好は誤差程度にしか影響しないと思われますし、管理局員の意識問題を部外者の私が先陣を切って関与してはならないと思いますし、何より私に実行する心算は欠片も在りません」

「…………もしかして理由付けして私達を嫌ってるのを隠してたりするのかな?

 ほら、なのはがカイを引き止めて六課襲撃に巻き込まれたりしたし…………」

「襲撃を察知した上で、若しくは襲撃中に相手と通じて襲撃を苛烈にしたのならば兎も角、そうでないならば貴方達の評価は、〔押しが強いので距離を取りたい〕、程度であり、苦手や面倒と言う認識ではあっても嫌悪や侮蔑を抱くには至りません。

 無論、過度の押しの強さを此方に対して発揮されれば其の限りではありませんが」

「…………とにかく嫌ってはいないんだよね?」

「孤児を引き取られる際に、義務感と責任感と罪悪感、そして愛好以外の理由を持ち得ているだろう方な以上、高町一尉には人間としての魅力を感じていますので、嫌ってはいません。

 但し、先程述べた通り諸事情に因り好きになる労力を怠っていますので、私が貴女方に対して排他的に接していると感じられてしまうでしょうが」

 

 …………なんだかひどく重みのある言葉に聞こえるけど、何かあったのかな?

 あと、さり気無く私のことが除外されてる気がするんだけど、なのはのことを訊いたからなのはの名前で返しただけなのかな?

 

 ともかく、カイがなのはを嫌ってないと分かっただけでも収穫だよね。

 これでヴィヴィオも間に挟まれて困ったりしなくていいし、本当に良かった。

 

「まあ、諸事情を抜きにしましても、御息女と私は少なからず私的関係を構築しておりますので、保護者の方とも無闇に私的関係を築くと容易に関係が煩雑化する上に不純化すると思われますので、御息女と私的関係を持ち続けようとする限りは現状通りの対応になると思いますが」

「って、ソレが本音!?」

「理由の半分近くは今言ったことですが、それだけでないのは今し方説明しました通りですので、仮令御息女と絶縁されましても現状通りの対応を続けますので誤解なさらぬ様願います」

 

 …………なんか長々と説明されたけど、最後のが一番納得できるなぁ。

 母さんが、[親しい人の親との付き合いは、他人行儀に距離を取られるのが普通よ]、って言ってたけど、まさしくその通りの対応だし。

 

「それと最初の話から逸れ過ぎている為忘れられている様なので述べますが、高町一尉のリンカーコアの診察は本局の医院で診察された後に民間医院への紹介状を貰い、其の後紹介された医院の判断で私への治療依頼を医師会に上げ、其の後医師会が私以外に治療が可能かを検討した後に案件を選別し、其の後私へ治療依頼が来る様に成っておりますので、先ずは本局の医院へ受診されることを御勧めします。

 徒、私へ治療依頼が回る場合は重篤であるということですので、私に治療される事態にならないことが良い事だと留意していて下さい」

「あ、うん、分かったよ。

 ……でも、時々陸だけじゃなくて空も診て回ってたけど、その時先に予定を教えてもらえたらそこに行って診てもらうって出来ると思うんだけど、どうかな?」

「…………先程貴女方とは一定の距離を取るという旨の発言をしたのですが、若しや私は他に解釈が可能な言い回しをしていたのでしょうか?」

「え!? あ、いや、その、えと…………そう!ヴィヴィオ!ヴィヴィオにそれとなく言うんだったら問題無いと思うんだけど、どうかなっ?」

「其の場合は御息女が私との私的仲介者に成りかねませんので御断りさせて頂きます。

 それと私の診察に拘っておられる様ですが、余程の重篤患者でない限りは私以外の執刀医で問題無いと思われますので、私に拘られない方が早期に回復すると思われます」

 

 たしかに、カイ以外でも良いお医者さんはいっぱいいると思うんだけど……。

 

「でも、知らない人に自分の身体……って言うか人生を預けるのって、すごく不安だと思うんだよ。

 だから知ってるカイに頼みたいんだと思うんだ」

「私と高町一尉の交流で安心感が得られるならば、担当医の経歴を洗った上で担当された患者の感想を聞き、其の上で確りとインフォームド・コンセント(意思と症状と施術と其の必要性)を行(に付いて確り話し合)えば不安は解消されると思います。

 叉、ソレが難しい様ならば医師の知り合いなどを………………………………」

「?」

 

 急に立ち止まったりしてどうしたのかな?

 しかも目をつぶって深呼吸してるけど……。

 

「失礼しました。

 話を戻しますが、医師の見極めを所望されている方は高町一尉以外に少なからず居られると思いますが、間接的にとはいえ意見を聞き及んで思う所が御座いましたので、次の定例会では予定を繰り上げて患者側に医師の情報が或る程度開示される乃至医師との対話が或る程度可能に成る必要性を提示します。

 無論意識改革には時間を有するでしょうが、此れが医師として私が医師に不満を持たれる方に対して行える行動の限界と捉えて納得して頂ければ幸いです」

「あ、うん。

 えーと、…………なんか話を大きくしちゃうようにしちゃったみたいで申し訳ないけど、なのは以外の人達のためにもなるようにしようとしてくれてるんだから、不満なんて無いから気にしないでいいからね?」

「御理解頂けて何よりです。

 

 …………それでは是にて失礼させて頂きます。

 諸事情により碌に力添え出来ませんが、せめて貴女方が高町一尉が回復に至る道程を歩めることを御迷惑でなければ願わせて頂きます」

「う、ううん。いっぱいお話できたしなんだか大事に発展させちゃったし、その上そう思ってくれるなんて迷惑どころか大収穫だから、むしろこっちが気を遣わせすぎちゃって申し訳ないくらいだよ。

 うん…………本当にわがまま言ってごめんね」

「此の件に関しましては御息女と私的関係を或る程度築いた段階で此方が明言しておくべき事でしたが、ソレをせぬ儘今に至った為に今回の様な事態に成ったと思われる為、今回の話を御気に留めて頂けるならば御気に病まれる必要は御座いません」

「うん。なのはにしっかり伝えておくから安心して」

「感謝します。

 それでは改めて是にて失礼します」

 

 そう言って軽く頭を下げると、カイはアルピーノ一尉に先導される様に扉を潜って駐車場に出て行った。

 

 ………………結局カイになのはを診てもらうことはできそうにないけど、たくさんお話できて何を考えて私達と距離を取っていたか分かったし、満足とはいかないけれど大収穫だよね。

 

 ただ、大収穫は大収穫なんだけど…………仲良くなるのがものすご~~~く難しそうなのはやっぱり納得いかないなぁ。

 まあ、カイにはカイの立場や夢があるから、違う立場や多分違う夢を持ってる私達とはこれ以上上手く付き合えないだろうから、仕方ないと言えば仕方ないと思うんだけど、母さんになんとかならないか今度訊いてみよっと。

 

 

 

 さて、とっ。

 このままじゃ待ち合わせをギリギリオーバーしちゃうから、少し急いでギンガの所まで行かないとね。

 

 …………でも、こんな隔離施設でカイはなにやってたんだろ?

 

 

 







  【作中補足】



・職権濫用と職権乱用

 オリジナル主人公の使用法は間違いではありませんが、フェイトの使用法は間違っています。
 職権乱用は公的寄りで、職権乱用は私的寄りの印象が御座いますが、何方も同様の意味です。
 フェイトが語感で間違って使用しているだけです。

 本当はメガーヌかオリジナル主人公に指摘されて赤面する場面を予定していたのですが、更に冗長に成ると判断した為お流れに成った結果、残念度に拍車が掛かる誤用だけが残ることになったりしました。
 ……フェイトそんぇ、な状態ですが、フェイトらしい気がして敢えて残していたりします。
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