Vividの二次創作   作:駆け出し始め

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 大分落ち着いた真昼の日差しが差し込む何時もの執務室は、前と違って窓を開けると丁度良い気温ね。

 本当ならあまり風が吹き込まないから汗ばんだりするのでしょうけど、薦められて取り付けた大き目の天井扇(シーリングファン)のお蔭で凄く快適ね。

 ローブを着ていると汗を掻く程には強い日差しだけど、紙が捲れるか捲れないか程度の風が天井から吹き付けるだけで汗を掻かなくて済むし、冷房と違った自然な涼しさが本当に気持ち良いわね。

 

 ふふっ。何時も締め切った部屋で本や画面と睨めっこしていたら気分が滅入ると言うのは本当ね。

 それに折角良いお天気なのだから、外の空気を入れなきゃ勿体無いわね。

 

 大分落ち着いた緑の匂いに、風で揺れる梢の音。

 お昼時だからか、遠くから聞こえる楽しげな談笑。

 閉め切った部屋の中じゃ退屈に時間が過ぎていくだけだったけれど、窓を開けるだけで人や自然の営みを実感出来るなんて、本当にびっくりするくらいの変化よね。

 

 

 ……陽気も良いし調べ物も凄く進んだし、お昼にしちゃおうかしら?

 それに折角だから外で食べてみるのもいいわね。

 お弁当は用意してないけれど外で食べられそうなのを幾つか買って、ちょっと遠いけれど見晴らしの良いベンチでお昼にしましょう♪

 

 そうと決まれば早速戸締りね。

 あ、それと書き置きもしないといけないわね。

 他には…………此の時間からは木陰に入るはずだから読み掛けの本を持っていけば準便万端ね。

 

 

 

 ・

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 何てことの無い軽食だけど、外で食べるかと思うとそれだけで凄く美味しそうに思えるなんて、やっぱり閉め切った部屋に居ると人生損しているっていうのは本当よね。

 執務室だとで美味しいご飯を食べても作業みたいに感じるけれど、この軽食は美味しくなくても楽しく食べられそうだし、美味しくなければ叉外で食べる時は美味しい物を買おうって言う目標も出来るから良い事尽くめよね。

 

 ……何て事の無い事を考えている間にもう直ぐね。

 気付けば目的地まで後少しだなんて、今の私は何て事の無い考えも楽しくてしょうがないみたいね。……と思っている間に到着……って、……あら?

 

「シャッハ……………………一体如何したの?

 定型句の挨拶じゃなくて、本当に如何したのか気になるんだけど?」

 

 私のお目当てのベンチに所狭しと高カロリー食品を並べているだけでなく、足元に在る幾つもの大きな袋には食品の包装や容器が詰め込まれているんだけど、…………まさか一人でお昼として食べたのかしら?

 如何控えめに計算しても5千キロカロリーはありそうなのだけど、本当にシャッハが一人で食べたのかしら?

 それに未だ手を付けられていないのは限界迄控えめに計算しても、食べただろうのと同じ5千キロカロリーはありそうなのだけれど、まさかそれも食べるつもりなのかしら?

 

 考えが顔に出ていたみたいで、シャッハが直ぐに私の疑問に答えを返してくれる。

 

「き、騎士カリム。お見苦しいところを晒してしまいすみません。

 これは先日カルラ医師に適度に脂肪を付けろと言う忠告を受けた為、何とか脂肪を付けようと高カロリー食品を過食していた次第でして……」

「か、過食って…………、暴食どころか自殺しようとしているとしか思えない、食べ物の量なのだけれど?」

「そ、ソレが恥ずかしながら幾ら食べても太るどころか血肉と成るばかりで脂肪が付く気配が無い為、今日から摂取カロリーを倍にした次第でして……」

「此れだけ食べて太らないって…………」

 

 普通なら女性の大半を敵に回しそうな発言としか思えないけれど、シャッハの場合――――――

 

「食べた分だけ動くからじゃないかしら?」

 

――――――としか思えないわね。

 後、こんなに食べると太るよりも先に胃腸が壊れて病気になるのが先な気がするから注意しないといけないわね。

 

「シャッハ。たしかにカルラ医師の仰る通り女性としての在り方から逸脱しない様にするのは良いことだと思うわ。

 だけど、そんなに食べると脂肪を蓄えるよりも先に貴女の身体が壊れるのが先になると思うんだけど?

 それにそんなに食べたら夕食どころか明日の朝食も食べられない気がするんだけど?」

「い、一応胃腸を気遣って消化吸収に良い物を選んでいますので、そう簡単に身体を壊すことはありませんから大丈夫です。

 それと夕食と朝食は腹ごなしに鍛錬に打ち込んで食べたりしないので特に問題ありません」

「問題無いって、…………問題だらけでしょうが?

 簡単に身体を壊すことはありませんって言ってるけど、この量はお腹に詰め込むだけでも相当難しい量だし、この半分の量を食べても太らない鍛錬もしてるみたいだし、絶対身体に負担を掛けてるわよ?」

「こ、この程度の食事や鍛錬で壊すやわな体はしてませんので大丈夫です」

「…………」

 

 負担を負担と思わないのは一見すると美徳に見えるけど、実際はただの欠点でしかないわね。

 騎士シグナムとの模擬戰の時も思ったけれど、シャッハって脳筋バトルジャンキーよね。しかも精神論……と言うよりも根性論が大好きな。

 

 …………なんだか幾ら私が注意しても効果が無さそうだし、此処は初手から切り札を切った方が良さそうね。

 

「……………………」

「……えと、騎士カリム? 凄く嫌な予感がするんですが、何方に連絡を入れられてるのでしょうか?」

 

 お昼時だからもう少し通信に出られるまで時間があるだろうからシャッハの疑問に答えようとしたら、思いの外速く通信に出られたからシャッハに手を翳して沈黙を促すと、直ぐに挨拶をすることにしました。

 

「お昼時にも拘らず急に連絡を入れてしまい申し訳ありません。

 私、聖王教会教会騎士団所属上級騎士の、カリム・グラシアと申します」

<時空管理局委託医師、カイ・カルラ准将相当官です。

 傷病中故床に座した儘の対応になりますが御容赦下さい>

 

 通信相手がカルラ医師だと知ったシャッハの顔が面白くて笑いが零れそうになるけれど我慢我慢。

 

「いえ、本来ならば御静養なされなければならない時に通信を入れた此方こそ御容赦下さい」

<……本調子では(互いに謝辞を続けると話が)ないので(進みそうにありませんので)無駄話はせず(此処は双方に非が在ると認め合ったとし)手早く終わらせてほしいのですが?(話を進めてもらっても宜しいでしょうか?)

「……分かりました」

 

 普通に応対されたからつい礼を払い過ぎてしまったけれど、本調子で無い時に持って回った話は負担を掛けるだけだから気をつけないと。

 ……早く会話を終わらせたいと言う本音が痛い程伝わるし、最低限失礼にならない礼に留めて早く要件をすませた方が良さそうね。

 

 

「では本題に入りますが、先日、St.ヒルデへ親善訪問された際、シャッハ・ヌエラというシスターへ注意喚起されたことを覚えておいででしょうか?」

<はい。体脂肪やホルモンバランスについて注意喚起した、武闘派シスターのことですね?>

「ええ。間違いありません。

 そしてそのシャッハ・ヌエラという者が、注意喚起通り脂肪を付けようと試み続けてきたみたいなのですが、暴食と呼ぶのも生温過ぎる食事にも拘らず未だ体脂肪の増加が見受けられない為、カルラ医師に軽い問診と指導、そして出来ましたら退院後に定期的に診察と指導をしていただけたらと思いご連絡させていただきました。

 

 勿論ご静養中且つ退院後は多忙になられるカルラ医師でなくとも、他に満足のいく指導や治療をして下さる医師が居られることは承知しております。

 ですが、先の者は既に意固地に成ってしまっており、余程の地位と名声と実力を兼ね備えた医師の方でなければ指導を聞き入れないと予想されますので、先の者が取り返しがつかない程に体調を崩すのを防げるのは私が知り得る中ではカルラ医師しか居られないと判断したのがご連絡した理由です」

 

 ……常識で考えれば教会がカルラ医師と何とかパイプを持とうとしているとしか思えない言葉よね。

 私もシャッハがこんなに食べているのを見なかったら、普通の食事量の範囲で高カロリーなのを重点的に食べているとしか思わなかったもの。

 

<私の注意喚起が原因で健康を害そうとしている方ならば是非も在りません。

 徒、現在だと通信面会以外は謝絶状態ですので全て画面越しになってしまい、診療や指導の真似事となってしまいますが、それでも構わないと御当人が仰られるならば直ぐに御受けさせていただきます>

 

 …………カルラ医師の注意喚起が原因で健康を害そうとしているならカルラ医師が受けるのほぼ確実なのは分かっていたけれど、パイプ作りが目的で無駄に時間と体力を使わせようとしていると思われたくないから、後でカルラ医師と仲が良いストラトスさんにそれと無くフォローしてもらうよう頼むとしましょう。

 

 後、顔が面白い状態になっているシャッハ宛てに離している間にこっそり送った、[断れば私の面子どころかカルラ医師に無駄話を聞かせてご静養の時間を削った上、シャッハを心配して心労を重ねられてしまわれるから、断るなんて選択は採れないわよ]、というメールを読み終わったみたいだから、逃亡を封じる為にも直ぐにシャッハへ水を向けることにしましょう。

 

「それでは早速で恐縮ですが、既に控えさせておりますので当人とお話し下さい」

 

 言葉と同時にシャッハの方へと通信を切り替え、後のことを全てカルラ医師に託します。

 

 流石に今最も有名な医師の上に委託医師とはいえ准将相当官という高官で、人体に対する賦活・整形・矯正を高次元で融合させた第一人者ということに加えて、本当に重症の相手が気遣いか職業倫理の何方か若しくは両方かで体力を削ってまで行う指導や治療を無碍にするということをシャッハはしないですから、もう安心ですね。

 

 

 さて、と、シャッハの診察が終わった時に私が居ないのも不誠実ですし、当初の予定通り此処でお昼にしましょう。

 お目当てのベンチはシャッハが立ち上がったら左右の食品が崩れてベンチの空きスペースを埋めてしまいましたし、そうでなくてもあのベンチに座ると画面に私が入ってしまう以上、座るなら別の場所にしないといけませんね。

 

 …………いっその事そこの木の根元で食べましょうか?。

 ハンカチを敷けば汚れないでしょうし、大きさが足りないなら買い物袋をレジャーシートの代用にすればいいですし、問題はありませんね。

 

 そうと決まれば早速ハンカチを敷いて……、次は買ってきた食べ物を横に置いて……、最後に買い物袋を破って広げてからスカートが触れそうな部分に敷いて……完成っと♪

 

 それじゃあ困ったシャッハの顔と声を見聞きしながら、少し遅くなったお昼にしましょう。

 

 

 

 それから暫く経った後、少なからず筋肉が減ったものの筋肉や靱帯の柔軟性が増し、更に全体的に女性らしい丸みを帯びた上、しかも髪質や肌艶が凄く綺麗になったシャッハは、密かに付けられていた〔シスターマッチョ・ヌゲバ〕という不名誉な渾名を返上することが出来ました。

 しかも胸がが戦闘の邪魔にならないギリギリまで成長した上、表情にも可也の余裕が出た為、騎士シグナムとは正反対のスレンダータイプとして教会内の男性に人気となったりしたのだけれど、カルラ医師の所へ受診に赴いている時に気になる方が出来たのか、他の男性は全く眼中に無いとばかりに気付いた様子が無く、少なからず落ち込んだ男性を量産する毎日を送ったりしました。

 

 

 

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