運がいい人が飛ぶと…… 作:空を飛びたいチキン野郎
「あ~、旅行はここで最後か……次の就職先、どうしよう」
コックピットの中。俺は1人愚痴るがヘルメットの中でその声は響くのみ。あぁ~、旅行は楽しいけどマジでこれからどうしよう。
外へ目を向けるとそこにはサンドブラウンが広がった大きな惑星が……って。
「あ、いっけね」
俺が気付くのと同時にアビオニクスのモニターから危険信号が鳴り響き始めた。俺は機体のデータを大気圏突入モードへと変更。機体に装着していたフォールドブースター搭載のスーパーパックを惑星軌道上に分離。データを惑星の管制塔へと送信した。
「こちらS.M.S 001大気圏への降下を開始、誘導を頼む」
「こちら管制塔、確認した。F滑走路が開いている、そちらへの着陸を頼む」
操縦桿を握り管制塔からのデータを元に惑星への突入コースへと入っていく。キャノピーの外の景色は真っ赤に染まり機体が震え始めるが想定内だから問題ない。
やがて大気圏が終わり広大な……マクロスの中では見れなかった広大な空を俺は飛んでいた。
「あはは、大気があるとやっぱりちょっと飛び難い……すまんなアルト、俺はやっぱり宇宙で飛ぶ方が性に合ってるわ」
何処へと知れず女を置いて飛んで行ってしまった親友へゴメンと心の中でも謝罪しながら俺はこの最後の旅行へと胸を膨らませるのだった。
惑星アル・シャハル。本当ならここから30光年隣の惑星ラグナへと行きたかったんだが予算の都合からここが最後になってしまったけどここはここで観光地として開発されているらしいから最後でも問題ないだろ。そんな考えでここに来たけど……結構楽しそうな所じゃん。そんな感想が浮かぶほどに綺麗な星だった。
俺は転生者である。前世の記憶はこれまでの濃い人生のおかげで薄くなりつつあるけどまぁ問題なく…‥‥なく? 今は色々あって前の職場を辞めて貯金で旅行している最中だったりする。
「……ここは南国かな?」
そしてこれが俺、紫電 響鬼の惑星に降り立って初の発言だった。
まず熱い! 気候や光星との距離的にも考えて仕方がないとは言え、まるで南国地帯の惑星へと来たみたいな気分になる。パイロットスーツの間にも入り込む湿気にギラギラと俺を照らすおっきな太陽! 完全に俺の苦手な分類のアツイ国ですわ、まだ砂漠の方がマシだ。
「んっぐ、んッぐ‥‥プハァ~、水うめぇ」
持参した飲み物を飲み干し、パイロットスーツのボタンをいくつか外して風通しを良くする。あぁ~、安全上スーツは密封されてるからマジでキッツイわ。ホント熱すぎ。
それに加えここは空港、地面が晒されて地面からの熱で視界が歪むほど……あぁ~地面と太陽からのツーコンボで俺がダウンしそうなんじゃぁ。
猛暑の中、スーツを開けたことによって涼しい風が癒しに……なんねぇや。早く日陰に行こ行こ。
機体の中にヘルメットを置いて俺は空港のロビーへと足を向けた……ってか俺の機体大丈夫だよな? 一応システムにロックはしてきたから大丈夫だと思うけど。‥‥ってか機体色真っ黒に緑のツートーンだから戻ってきたら地獄なんだろうなぁ。
※
空港は案の定人で溢れていた。流石は観光地、キャリーバックを転がしている人や子供連れた観光客っぽい人。俺もその波に飲まれて何度転倒しかけたか……いやぁ~マジで人込み嫌い。
「ここにも弁当って文化あったのか…いや、空港だからもしかしてもたらされた物かも……?」
空港内のベンチに座り弁当屋で売っていた銀河デカルチャー弁当を食べる……うん、美味い。
食べながら雑誌でも読もうかと探すがどこにもない……やっぱり地球やフロンティアとは違うなぁ。
「あそこだったらあるのに……文化の違いって奴なのかな?」
仕方ないので暇つぶしに右往左往する人を観察しようと思う。あぁ~かわいい子いないかな? そう思い観察をしようとしたのだが……ポケットが震え出す……???あ、携帯か。
今では使われなくなって逆に新しい気もするぐらい古い型の端末、具体的に言えばガラパゴス携帯を取り出し通知を確認。どうやら知り合いからのメールだったみたいだった。ん? 二通来てるな。
電ッチへ
ハロハロ~ 電ッチ元気してるー? 今日で最後の旅行地らしいけどそろそろ私の元へ来る気になった? なったよね! なったのならお父さんも言った通りそろそろ私と一緒に―――
「なってないのでお構いなくっと……送信」
お兄さんへ
ねぇ、なんで前の連絡先消しちゃったりしたの? こうやって探すのに苦労しちゃったじゃんか……もう、君だから許すけど。あとそろそろ私との約束守る気に――――
「なってないです私の事はほっといてくだされ、あと俺の端末にハッキングしてメールを送らないでくれっと、送信」
まったく困ったものだ、いやホントに。
最初に返信した人物は前の職場で俺の機体がお世話になってた整備員さんの娘さんだ。その人と俺は仲が良くってその付き合いで娘さんとも知り合ったんだけど……なんか、なつかれちゃって。それに加え整備員さんも―――
「あいつを得体のしれない男にやるよりもお前に嫁いでもらった方が安心だ!」
―――とか言いながら俺とアイツをくっ付けようとして来たり、もっと最悪な事にその娘さんは娘さんですっごく乗り気で―――まぁうん、この話は置いておこう。少なくても俺は幸せにならない。
もう一人は8年の旅行中に立ち寄ったマクロス7船団で発生したトラブルの結果知り合った子だ。
あの時はフリーのプログラマーの仕事をメインとして追加の旅行代を稼いでいる時だった。当時はいきなりハッキングを受けて俺自身パニックになりながら適当に自身の端末に繋がってる配線ブッコ抜いてハッキングを防いだ、その結果何故か感謝されてしまう事に。
事情を聞くとどうやら自分で作ったプログラムが突然暴走、近くのホテルを偶々借りていた俺の端末をハッキングしてたらしく咄嗟に端末をネット回線からブッコ抜いたおかげで俺の端末の中にそのプログラムが残って結果的に隔離出来たとの事。その後、俺達は対面してまぁ交流が始まった。
出会った当初は何と言いますか……女子力ZEROでハッキングの事しか頭にないその日を生きる事で精一杯な問題児でね。何かの縁だと思い滞在中お節介でお世話していた……いや、10歳の少女が何であんな場所で1人暮らししてんだよ……。
2年間ぐらい俺が引き取って一緒に暮らし、結果もう大丈夫と判断して俺はあの子の前から去った……のだけど度々俺の居場所をストーカーの様に突き止めて来るんだよなぁ……なんでこんなことに。
「はぁ~……気を取り直して旅行しよ、旅行」
携帯を仕舞い俺は外へと繰り出した。町は何だか色々とにぎわってるみたいでサイリュームを持った人がちらほらと同じ方向へと歩いて行っている……何かあるのかな?
目を向けるとそこにはデカデカと高層ビルや看板などに《WALKURE》と……いや、なんで音楽までガンガンと鳴ってるのに気付かなかったんだ、オレ。
「それにしてもワルキューレか……そういえばオレ、何にもワルキューレの事知らないなぁ」
何分色々な場所を飛び回ってただけに今の流行とか気にした事無かったからなぁ……あ、プリン食べたい。
俺はプリンを求めふらふらと人込みの中へと紛れるのであった……そういえば空港で