運がいい人が飛ぶと…… 作:空を飛びたいチキン野郎
「えっと、この書類の情報を整理するにつまりは俺の呼び出したYFー29ちゃんが紆余曲折あっておたくの所有する乗り物を大破させてしまったと?」
「端的に言えばそうですね」
赤毛のワルキューレのアイドル、カナメさんの告げる現実とそれを裏付ける書類を前に俺は頭を悩ませ、そして思考する。あぁ~なんでこうなったんだっけ?
今の状況への入りを説明するには時を数分前に戻す必要がある。俺は病室と思われるベットから這い出て立ち上がろうとする、するとそのタイミングでベットの下からはマキナがこんにちわとばかりに姿を現した。
俺はそれに気付かず踏んでしまい、マキナの両親に見せられないような表情を晒しているところを見てしまい正直気まずくなる。
あぁ~……ホント今度会ったらどうしよう。とりあえず引っ付き虫の様に引っ付いたままのレイナをそのままに、俺は立ち上がりそのまま一言も発さずに無言でマキナをベットの裏から引きずり出すと俺を囲むカーテンを開け放ち近くにあった椅子へと腰掛けた。
「きゃ! もう、強引なんだから……でもそんな電ッチの事も好き」
それに対して何故か頬を赤く染め、恥ずかしくも嬉しそうな表情でこちらを見つめるマキナ……まったく、なんでこんな性格になったんだか。
「マキナ、確かに久しぶりの再会は俺も嬉しいよ」
「うんうん! 私もすっごく嬉しい!」
「でもね、せめて普通に再会したかったなぁ……」
昔からお転婆な性格でよく俺を困らせてたからその性格は治らないだろうと思ってたけどまさか、お転婆に磨きがかかって更なるパワーアップを果たしこんな風な再会になるとは思ってなかったぞ。
あとレイナ、張り付くならせめてオンブの体制になってくれ、今の宙ぶらりんの状態だと首を絞めてるから。正直苦しい。
「だって早く会いたかったんだもん……」
そうそうその体制その体制……なんか昔を思い出すな。昔は一緒に住んでた頃よくせがまれてこんな事をしてたっけなぁ~懐かしい……え? マキナとはどういう関係だって?
「ずっとメールでのやり取りだけで電話一本よこさないんだもん、私だって我慢の限界」
ん~、改めて他人に話すとなると難しいなぁ……一言でいえば友達の娘って感じだし──―え? 他人じゃない? ルームメイトで親友? ……自分で友達作れたんだなぁ、俺は嬉しいゾ。
「それにお父さんと私との約束の答えだってまだもらってないわけだし、目覚めたら一番に話したかったから──―ってレイレイはいつからそこに?」
しみじみと改めて娘同然のレイナの成長を身近に感じ、引っ付いたままの体制で頭を撫でてると何か語っていたマキナもレイナの存在に気付いたみたいで驚いた顔を浮かべている。……思い込むと周りが見えなくなる癖は変わってないんだなぁ。
「むふふふふ……私はただ甘える女、ルールは関係なくお兄さんだけの引っ付き虫」
「もうレイレイッ!」
イダダダダダッ! 引っ付いたレイナを剥ぎ取ろうとマキナは動くけどレイナは一向に離れる気はないらしくその華奢な体とは裏腹に凄い強い力で俺を掴んでは馴れまいとする。いや、本当に痛いから! 服だって下手したら破れるぅぅぅぅぅ!!!
「は・な・れ・てッ!」
「は・な・れ・な・いッ!」
「イダダダダダダダダダ!」
一触即発の攻防、
「と言うかマキナはお兄さんとどんな関係なの!」
「私は許嫁! そっちこそ電ッチとどんな関係なの!」
「私は嫁、この人を娶る者なり」
「あ! ずるぅーい! 私が娶るぅ!」
あぁぁーーー!! 何か大声で言ってるみたいだけど音量が大きすぎて逆に聞き取れないんじゃァ!
傍から見ても俺から見てもカオスとしか言い表せない状況の中、ドンドンとノックオンがドアから聞こえて来る。た、助けて!
「失礼します」
そしてドアが開かれる。そこには何と言うか大量の書類を抱えた赤髪のあの人がいた。
「お目覚めですかヒビキ・シデンさん」
ぬ? 俺の名前を知っているだと???
俺は疑問に思いつつもとりあえず立ち上がり赤髪の人へと目線を向けるけど……多すぎませんか、それ。彼女は大量に抱えた書類を一旦近くにあったテーブルの上へと置くと俺を視界に捉えて──ーた途端レイナとマキナの攻防に目を見開かせて驚く。まぁ、この人が来た途端二人とも無言になってステレスさんを実行してたから気付かなかったんだろうなぁ〜。力は変わらずだから痛いままだけど。
「ちょっと二人とも、目覚めたばかりの怪我人に対して何やってるの!」
そのままプンスカプンスカなどの効果音が幻聴で聴こえてくるような怒り方をし俺から二人を引き剥がすとその場で叱り始めた。
「二人の気持ちは昔からよく聞かされてたからわかるけどこの人はまだ目覚めたばかりで何も分かってない状態なのよ! それに対して────」
「うぅ〜、カナカナごめんなさいぃ」
うぁーお、あのおてんば鋭い切れる天然として俺の中で有名なマキナさんが素直に説教を受け止めてやがる。すげぇ、あの人すげぇお母さん
「謝罪、反省、でも後悔はしてない」キリッ
あとレイナさんやい、キリッてなんだよキリッって。後悔せずにドヤ顔してんじゃないですよ。そんな態度だと追加のお叱りをくら────
「ならヨシ!」
────って、それでいいんかい。
ツッコミが止まらない一幕。俺は大人しく見る事しかしてないけど何だかこのマキナ命名カナカナ氏もこの二人と同じポンコツ臭がしてきたぞ。
フロンティアから培ってきた経験からこの人もポンコツな人かな? と疑問に思いつつも二人を叱り終わるのを待つしかなかった。
「本当にすみません、身内の恥を晒してしまって」
「まぁ二人とは昔から付き合いがあるので大丈夫です、ハイ」
大丈夫ではあるけどかなり長かったなぁ、説教。正座して叱られてた二人なんて足が痺れて水あげされたばかり魚の如くピクピクと震えてるし……やべぇ、めちゃくちゃつっついてイタズラしてぇ。
「いたたた……ん! 電ッチ今イタズラしたいとか考えたでしょ?」
「考えてません、心をナチュナルに読もうとしないでくだされ」
「でも絶対考えた、証拠に鼻がヒクヒクし──」
ウッソだろお前!? 俺は急いで鼻を隠した────って、なんで笑ってんのさレイナ。
「──てないね」
「でもマヌケは見つかった」
オーマイガー、俺っちてば完全敗北。ガッカリと頭を下げて両手を上げて降伏宣言。片方なら勝てると思うけど二人一緒だと勝てねぇや。
「ゴッホン!」
そんな茶番劇をやっていた俺らを待っててくれた赤髪の人。ごめんなさいね、茶番ばっかりして。
俺はイタズラしたい気持ちをグッとグググっと押さえて赤髪人へと対面した。
「改めまして、戦術音楽ユニット、ワルキューレリーダー、カナメ・バッカニアです」
そして差し出される綺麗なよく手入れされたお手。すげぇ、ビリーに手入れされたぐらいに白く澄んでいやがる。俺もメイク技術を仕込まれたけれどここまでのは不可能だ。……今度聞き出すか。
オカマな友達に今度手入れの仕方を聞き出そうと心に誓い、それに応じる形で俺は握手した。
「どうも、元SMS──って多分知ってますよね」
「えぇ、噂はかねがね」
絶対デルタ小隊の隊長さんが話したなコリャ。
不幸だと感じながら促されるままに椅子へと座った。すると持ってきていた大量の書類の一番上に重ねてあった書類を取り出して俺の前へと────ファ!? そして、今に至る。
「ど、どうしよう」
ヤバイよ! ヤバイよ! ヤバイよ! まだ働き口も見つかってないのに借金抱えるとか何処のクズだよこのやろぉ! いや、本当に不味いぞ。残ってた貯金はバルキリーの修理代で吹っ飛んで残りはカスしかねぇ。マジどうしよう……
バルキリーを最悪売るか? と考えはじめた所でカナメさんがもう一枚の書類を出した。ん? なんだろ?? と気になり読んで見るとそれは民間軍事会社ケイオスへの雇用契約書だった。
「そこで提案なのですが貴方の腕をかって、我が社のパイロットの一人として働いてみてはいかがでしょうか?」
「」
わ、渡に船すぎる!
契約書によると給料も悪くないみたいだし福利厚生、死亡保険まで付いてくると来た。それに働けば借金利子をゼロにしてくれるし俺の所有するバルキリーを無料整備までしてくれるらしい……やべぇ、何気にS.M.Sより高待遇かもしれねぇ。なんでここまで高待遇なのかがちょっと気になるけど今の俺に選んでる余裕は、ない。
「よろしく、お願いします」
そんな風に考えながら俺は頭を下げ、その提案を受け入れるしかなかった。
「……作戦」
「……成功」