運がいい人が飛ぶと……   作:空を飛びたいチキン野郎

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ようやく戦闘、始まりました

 奴の飛び方は──―とにかく出鱈目で先が読めない飛び方だった。

 

「ッチ、何故命中しない!」

 

【当たる当たる当たる当たるFOOOOOOOOOOOOOOO!!!】

 

「デルタ6煩いぞ! 口を閉じて操縦が出来ないのか!」

 

【そんなこと言われてもFOOOOOO! いま掠った、掠ったよね!】

 

 奴──―ヒビキ シデン中尉との模擬戦闘が始まって既に三分半が経過。最初一回の戦闘軌道で倒せると考えていた相手に既に5000発以上消費し、ただの一発たりとも弾を当てられていない。

 

【ぎゃぁぁぁぁぁ、酔う酔う酔う────ウップ】

 

「──ー」

 

 何ともふざけた奴だ。

 機体が変わる前はケイオス内で断トツの墜落回数を保持し、学科の成績も最低。正直言って落ちこぼれと言って過言ではないパイロット。

 アラド隊長が直々にスカウトし、奴の過去の経歴から絶賛してどんな悪い結果を出してもその評価を変えないことから今までは強く言えなかったがインメルマンと同様、戦場に出る前から震い落とすべき兵になる事が出来ないと言う奴への評価は変わっていない。この試験を理由に辞めさせるつもりだったが──―アラド隊長の感は当たっていたと言う事なのか? 

 

「何故、当たらないんだ!」

 

 加速Gに体がやられながらも俺は自身の操る機体を更に加速し必死に逃げる奴の機体を俺は食らいつき続ける。この三分半、常に奴の後ろを取り続け何度も捻り込みやハイ・ヨー・ヨーなどの軌道を取り何度も何度もガンポットの射程に収め引き金を引くが何故か当たらない。必ず当たると確信したタイミングでさえも運が奴へ味方しているのかその度に無茶苦茶な軌道をしているのを突然辞め、狙ったかのように適切な回避をやってのける。

 神業と言うしか表現できないその飛行技術は、奴の才能なんだろうか──―

 

【当たる────―ってぎゃあああああああああああ! 今キャノピーの真上を真っ赤なペイント弾がぁ────ー!!】

 

 ──―いや、それは考え過ぎか。だが、ただの偶然とするには何度も連続して、あまりにも幸運に恵まれすぎている。────これが隊長の言っていた銀河一のアンラッキーと呼ばれていた由縁なんだろうか? 

 

※※※

 

 

 拝啓、マキナさんレイナさんそれとりんご大好きフレイヤちゃん。元気にダンスレッスンに励んでおられますでしょうか? 私は絶賛回避機動による強いGで人間シェイカーに入れられた気分です。

 

「ぁぁぁ」

 

 あと説教するって言ってごめんあそばせ。この制御プログラム、音楽が鳴る欠陥こそあるものの最高ですわ。

 

 思考がお嬢様に侵食されつつも視界映るキャノピー外の景色は雲が高速で後ろへ流れ流れ流れ続け、俺の乗る機体は高速で飛び続ける。後ろから迫って来る死神が撃ち出すペイント弾()から逃れる為に。

 

 既に逃げ続け、精神は常に極限様態でキープされていた為にそろそろ限界。叫び続けた結果喉も枯れ叫ぶ元気も失せ、必死に操縦桿を右往左往と傾けて機体を操り続けるけど正直もぉぉぉぉう、しんどいッ! 

 

【何故当たらないんだ!】

 

 それはこっちが聞きたいよ! 

 運が良いのか悪いのか俺の無茶苦茶な回避機動はメッサーの射撃タイミングにピッタシ合ってるみたいで何度も何度も避ける事に成功してるけど──―何度も言ってるけどキツ過ぎる! 。

 メッサー、俺ってば重力下飛行が苦手なの忘れてない? あと模擬戦なのにムキになるのは止めてほしいぜ。

 

「クルチイ、クルチイ」

 

 加速Gでシートに体が押し付けれ、同時に肺も圧迫されるから呼吸がツラタン。これでも試作品とは言え最新型のISCを搭載してるだぜ。なのに内臓を吐きそうなほど負担ががががが。

 

「頭が……ぼぉーっと────」

 

【血圧の急激な低下を確認、ISCフル稼働します】

 

 って起動してなかったんかい! 

 次第に呼吸が楽になり暗くなっていっていた視界がクリアになるけど状況は改善してねぇ、どうしよう。

 

「勝たないと、何とか勝たないと──―……」

 

 頭の中で考え続けながらも後ろから迫るメッサ―からの攻撃を避け続け、逃げるけれどこのまま行くと俺は後数分しか持たないかもなぁ……過去の経験から察するに。ヤバいなぁ、コレに勝たないと辞めさせられるって俺の勘が囁いているんだよなぁ。こう言う時の勘は良く当たるから無碍には出来ねぇ。

 機体でシザース軌道を取りながらランダムにエルロンロールを挟んで常に回避機動を取り続ける。後方わずか60mほどに迫るメッサーの軌道を予測しながらグルリぐるりぐるりと回り続ける、同時に視界もグルグルグルグル……ッハ! 目を回してた。

 

【敵機の戦闘軌道を計算──完了。エラー勝率が低すぎます。再計算を実行────】

 

「な、なんだ?」

 

 突然画面に映るりんごちゃんが何か計算し始めやがった! 

 何でだ? りんごちゃんはあくまでも操縦アシスト機能のはハズだろ、なのになんで勝手に戦略練ってやがるだ? コレはアレか? 自己進化か俺が投げ捨てた説明書にそんな機能が書いていたのか? 

 

【計算──計算──完了。勝率40%上昇を確認、戦略を掲示します】

 

 チラチラっと後方を確認するために設置されてる小型の反射鏡を確認しながらメインモニターに掲示されているデータを軽く確認するが……マジか確かにそんな軌道、無重力状態ではしょっちゅうやる操作だけど重力下でも同じことできんのか? それに勝率は50%程度としか書いたないし────だけどこのまま飛んでても毅然として状況は動かず、動いているのはメッサーの殺意のこもったイヤらしい位置に飛んで来る意地汚いペイント弾のみだからなぁ。

 ────コレはアレだな、いくら考えても一緒の奴だ。

 

「ま、物は試し。やってみるしかねぇッ!」

 

 覚悟を決め、操縦桿を握りしめてグイッと手前に引き機体を垂直に上へと向かせ、太陽へ向かい飛ぶかのように高度を急激に上昇させた。

 ただ上がるだけなら意味がない行動だけどこっちはエンジン4発、相手は2発。つまり俺の方が上昇力は上! 提示された軌道は重力下では明らかに行えない、パイロットの負担をガン無視したモノだ。でもそれをやんなきゃ勝てそうにもないから仕方ないのも事実。だったら出来るよう状況を整えるしかないじゃない! だから俺は一気に成層圏へ向かうぜ! 

 

「宇宙……やはり素晴らしい!」

 

 俺の読み道理にメッサ―との距離は離れ無重力に近い空間へとステージを移せた。今回のルールでは成層圏はギリギリ違反とならない場所。そして俺は無重力下は──―

 

「──―大の得意なんだよぉッ!」

 

 

 右のフットペダルを強く踏んで片足のみガウォークで水平方向へ推力を変更。それと同時に両端に付いている2発のエンジンを傾け重力や航空力学何か全てを無視した急角度のバレルロール! 

 

【──―ッ!】

 

 機体は横滑りするかのような軌道で回転し、頭上を取る。それと同時に片腕のみ展開し前腕部レールマシンガンの照準を向けるがコレぐらいの動きに対応出来ないメッサーじゃない。

 

 メッサーは俺の動きに合わせるかのように素早く変形、足のみ展開した半ガウォーク形態へなると急減速し機首をそのまま俺へと向け、半クラビットのような軌道を取ると両翼内に装備されたレールマシンガンの照準を向ける。

 

 まさに刹那の出来事。

 

 ほぼ同時に発射されたペイント弾はどんな偶然か全て両者の弾を撃ち落としてた。

 

「こなくそぉぉぉ!」

 

 あり得ない事だが運が悪い事に数発撃って全てが同じ現象が起こってしまったのが見えた俺は直感で機体を動かす。引き金は引いたままにそのままにガウォークからバトロイドへ素早く変形。両腕をメッサーへと向け、搭載されているペイント弾が装填された全ての武装を向け撃つ────のだが。

 

「あ、当たられねぇ!?」

 

 メッサーはそれを読んでいたかのようにヒラヒラと木の葉が舞うかの如く機体を動かし上昇、全て回避してしまった。

 マジかよ、アレが回避できるってメッサーの腕はオズマ以上かよ! 

 そしてこの時、一瞬呆気に取られたのが原因だったのか────

 

「ぬぉぉぉ」

 

 ────突如として俺の視界は真っ赤に染まったのだった。

 

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