運がいい人が飛ぶと…… 作:空を飛びたいチキン野郎
「ひ、酷い目にあった……」
ミラージュ少尉の長時間の絡みをなんとか捌きり、女性の酔っ払いだからとレイナとマキナに押し付けた俺はテラスへと避難して来た。しっかしあれから時間が経ってもう夜更けってのにみんなテンション高いなぁ……あ、艦長がアームレスリングで相手の腕ボキボキにしてる……いたそぉ。
何も食べれてない為にお腹を鳴らしつつ何処か座る席がないかと右往左往していると見覚えのある二人がいた。
「おっす、お二人さん。未成年組は酔っ払い達から避難かい?」
ハヤテとフレイアちゃんだ。ハヤテはどうやら串焼きを食べている途中のようで声ではなく手を上げて反応してくれるが、机に伏せているフレイアちゃんは苦しそうに唸るばかり……大丈夫か?
「お、お腹が……ゴリゴリぃ〜」
「なるほど、ただの食べ過ぎが原因か」
「そりゃあれだけ食えば苦しくもなるもんだ」
フレイアちゃん意外と大食いだもんね。いつも以上にお腹が膨れてたのか、納得納得。ハヤテの持った最後の一本を横取りして口へと運ぶ。濃厚なソースの味が串に刺さった肉に絡まりもぉーう。
「デリシャス!」
「それお前の苦手なクラゲ肉の串焼きだぞ」
「」
それを先に言わんか先に。ハヤテの謀略にハマりシクシクと涙を流しながらチャック特性ニャンニャンチャーハンを口にしているといつの間にかハヤテが店の中からアプジューを持って来てくれた。サンキュー!
「アプジュー、飲まずにはいられないッ!」
「アプジュー!」
「アップルジュースな」
プハァ! これだよコレ、やっぱり酒よりもアプジューだよな。程よい酸味とリンゴ特有の甘味を味わいながら二人との会話を楽しむ。酒癖が悪い大人どもの席じゃ出来ない事だよなぁコレ……あぁ、目の前の光景が俺をしみじみさせるぅー。だって────
「それでハヤテその時ヒビキさんがスパバッて、まるで魔法のように魚を捌いて────」
「へぇ、そりゃすげぇ。今度俺も魚を調理してみる────」
────二人の雰囲気がその……いい感じだからですね。流石は10代の若者、意識せずとも二人だけの空間を構築とかやりますなぁ。うん〜目の前の光景でご飯が進む進む。
でもこんな光景、見てると懐かしくなるなぁ。俺も学生の頃は色々と……ダメだ、いくら記憶を探ってもそんな甘酸っぱい思い出なんて一つも無く、あるのはミシェルの女関係で毎度起こすトラブルのフォロー活動とランカちゃん、シェリルさんの恋の応援、その他はルカとの機械弄りぐらいの記憶しか出てこない……かなちぃ、
「で、今度はヒビキさんがこう言い返したんよ。【俺の道は俺が切り開く、だからお前達は他の道へと進む事だな】って」
「なるほど、なるほど……ん? ちょっと待てフレイア、何で海猫探しの話でそんな決め台詞が出てくるんだ?」
「さぁ?」
てか、俺ってばこの空間で明らかに異物じゃね? カップルの間に入り込んでしまっている不届き者は早速さと退散しなくては────
ゆっくりそろりと二人だけの空間から脱出し、店の中へ戻ろうと動く。ッヘ、俺の第五の特技が気配消しだったなんて、俺も知らなかったぜ俺だ……
「何処に行こうと」「しているのお兄さん」
「な、いつの間にッ!?」
だが、ピンクと緑の肉食獣には効果がなく捕まってしまった。クソ! 離せ二人とも。俺にはあの二人が放つ十代の輝きは眩しすぎるんだ!
「お兄さんまだピチピチ、まだまだ若いのに何ってるの?」
「それに今回は三人のお祝いだよ、もっと楽しまなくっちゃ!」
せっかく離れた位置まで移動できたのに抵抗空くズルズルと二人に引きずられ、元の席へピットイン。肝心のフレイアちゃんとハヤテはいつもの事かと呆れ顔で笑ってるばかり。仕方ねぇでしょ、お兄さん前世とかある影響で感性が古くなっちまってるんだから。まぁ、前世云々は誰にも話した事ないけどね。
いつの間にか俺達と同じくアプジューを片手に俺の両サイドに座った彼女らは何だか嬉しそうにアプジューを飲んでいる……俺が逃げないように腕を拘束したままに。ハァ、これじゃアルコールが無いだけで中と変わらないジャマイカ。てかレイナ、どさくさに紛れて俺のまで飲まないでくれ。
「そういえばフレフレにハレハレ、もうラグナでの生活には慣れた?」
「ほいな!」
「まぁ大方は、な」
……おい、そのジト目でこっち見るなよ。まるで俺が何か問題の原因の如く見るなよ。
シッシッと手を振りたかったがマキナとレイナが拘束してる中俺は動けるはずも無く、虚しく終わった。……てか、腕を組まれた状況になって改めて思うけどマキナあれから偉く育ったなぁ、主に背丈。
「へぇ〜、じゃあ電ッチわ?」
「俺か? 俺はなぁ────」
そういえばもう1ヶ月もの間この惑星で暮らしてるんだよなぁ……時間の経つのが早いこと早い事。まぁ、俺の場合は熱帯気候が苦手で最初こそキツかったが今ではなんともないから慣れたって言えるのかな? でもなぁ毎日の如く不幸な事にトラブルに巻き込まれてるし主に両隣の二人の影響で寮でもろくに落ち着かず波乱すぎて慣れる云々関係ないほど忙しいんだよなぁ。でも正直に答えようものなら何が待ってるか想像に固くないし……ハァ。
「ま、まぁそれなりには慣れたかなぁ」
「じー」「とー」
「……その両サイドで見てくるの止めてくれない?」
居心地の悪さを久々と感じ、ちょっと本気でこの場から消え去ってやろうかと思い始めた頃一つの笑い声が響いた。
「ニシシシ、ハヤテやヒビキさん、ワルキューレのみんなと一緒に過ごす毎日は村にいた頃と同じぐらい楽しいやんね」
「村? 村って言うとウィンダミアの?」
「ほいな!」
ウィンダミアか……そういえばハヤテから聞いた話では2人の出会いはウィンダミアから密入国だったらしいなぁ。すげぇや、俺でも非合法なブラックマーケットでのバルキリーの窃盗はやったことあっても密入国はないぜ。
「それにここって、ラグナって何となく故郷と似る気がするんよ」
「へぇ、フレイアの故郷ってどんな場所なんだ?」
「まず風が気持ち良くて空も地面も真っ白、年中雪が積もっとるけど見渡すばかりのリンゴ畑が広がって────」
そうかそうか、風が気持ち良く雪が積もり空も地面も真っ白────って。
「それって何処も似てなくないか?」
「全然似てない」
「むしろラグナの環境と間反対なような……」
コラマキナ。あんまり言ってやるな、それは俺も思った事だから。
ハヤテとレイナ、そしてマキナが俺の気持ちを代弁するかのようにツッコミを入れると本人も気付いたみたいで恥ずかしそうに頭をかいている。それでも幸せそうに笑顔満点なフレイアちゃん。そんな素敵な故郷と同じぐらい楽しいって言われて俺は嬉しくてたまらんぞ! うぉぉぉぉぉ!!!
「ニシシシ、それもそうやね」
よし、俺フレイアちゃんがワルキューレデビューしたら真っ先にファンクラブ作るわ。てか今作ったわ。決め手ですか? 彼女の笑顔です。
「それにしてもほんっとお前の笑い方って変だよなぁ」
「もぉハヤテ! 変って言うな!」
「そーだぞハヤテ。世の中にはグハハハとかグヒヒとかゴバババって笑う海賊のボスすらいるんだ、だからそれぐらいの事個性として受け入れとかないと」
あとはイヒャヒャヒャとかアヒャヒャヒャとかだな。でも個人的に1番酷かったのではオッホホホなリアルお嬢様笑いだったぞ。俺の義理の妹なんて……いや、この話は止めとこう。俺の場合噂をしたら何とやらって事態になりかねない。
「……? それってフォローになっとらんよね?」
「大丈夫だよフレフレ、その笑い方もキャワワァだから」
「みんな個性的、大丈夫、安心」
「そーだよ、フレイアちゃんは大丈夫。俺みたいな常識人が保証するんだから」
「っハ、個性の塊が何言ってんだか」
よし、ハヤテ。今度の演習はお前を後ろに乗せて脳味噌シェイカーコースで飛んでやる。よかったな!
こうして飲んで歌って笑い合う楽しい夜は続いていく。それはコレから始まるライブに向け最高を祈ってか、それとも失敗への不安を忘れるためか……それは誰にも分からない。けれど彼、彼女らはそんな事気にする事はなく笑い合って今を楽しむのであった……
※※※
美雲は1人、夜空の下過ごす。彼女のは月明かりで照らされ幻想的なその場所で彼女は一糸纏わぬ姿で何か考えるように視界に広がる景色を見つめていた。
そこは綺麗な海と満天の星空がよく見える特別な場所。誰にも邪魔される事も覗かれる事もないその場所は彼女のお気に入りだった。
※※※
「ヒビキ・シデン……」
私の目線を独り占めにして心を惑わす謎の人。これまで歌やワルキューレの事でしか興味の湧かなかった私が何故か興味を惹かれる存在。だからこの1ヶ月の間、何度か彼に話し掛けようと動いてみたものの運の悪い事にその機会が無くて例え会ったとしても事務的なことばかりで話は弾ずむ事も無くて気付いたらマキナかレイナに人攫いの如く流れるように攫われていってしまうおかしな人……ある意味彼が気にかけているフレイアが羨ましいわ。
「本当に、彼は一体何者?」
でも、本当に知りたいのはそんな興味云々じゃない。本当に知りたいのは彼を見た旦に常に感じるようになった何か特別と思える繋がりそして、彼を一目視界に入れる度に感じる胸の高鳴りと何故か彼が女性と話したり関わっている時に限って感じる何とも言えない不快感。
どれもこれも記憶のない私が初めて感じるものばかりで彼と出会ってから私が私じゃ無くなったみたいに分からない事だらけになってしまったわ。
「……明日のライブでその答えは見つかるといいのだけど」
月明かりは私を照らし続け、夜は続く。
いっその事、この事について誰かに相談してみるのもアリなのかしら?
そんな考えが浮かんで思わずクスリと笑ってしまった。
美雲ってあんまり喋るイメージが無い影響で口調が難しい……誰か教えてクレメンス!
美雲が相談するとしたら誰?
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ハヤテ&フレイア
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カナメ
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マキナ&レイナ
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ヤベー奴(ヒビキ本人)
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アラド&ミラージュ+メッサー