運がいい人が飛ぶと……   作:空を飛びたいチキン野郎

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ヤミキューレの曲買ったんですが……いい曲ですねぇ。


ファースト・ライブ【3】

 暗い暗い光すら飲み込む宇宙空間。そこに一隻ポツンと浮かぶ方舟の中では一機の可変戦闘機が発進はまだかまだかとエンジンを回し、その初出撃を待ち侘びていた。

 

※※※

 

「お客さん方、乗り心地は悪いだろうけど少しの辛抱だ、ライブステージまでは我慢してくれよ」

 

 機体を立ち上げ待機モードから発進モードへと切り替え俺の機体、ブリュンヒルドを目覚めさせていく。りんごちゃんが厄物で腐っていても優秀なので発進手順をオートで進めてくれる。バグはもう勘弁だぞ。

 

【問題は無い、ただちょっとマキナが引っ付いてきて狭いだけ】

 

【本当に皆ゴメンね〜。ホントは人数分見付けたかったんだけど倉庫に置いてあったのがこれだけしかなくて……フレフレ以外は二人一組だけど大丈夫?】

 

【うん~、正直キツイかな】

 

【あら、それは私が太ってるって言いたいの?】

 

【そうじゃなくてね、フレイアからの視線が……】

 

【い、嫌な予感が当たってヤックデカルチャ……ヒビキさん、私だけでも乗せれんの?】

 

「出来ればそうしてやりたいがすまん、今回は無理。既に後部座席には追加の機材を積んでて人が乗るスペースがねぇのよ。大人しく諦めて今回のワルキューレ速達便を受け入れてくれ」

 

 今回の俺の役割、それはワルキューレたちをランドールの会場へのエスコートだ。だけども本来の予定ではこんな事する必要もなかったんだよなぁ。

 

 当初の予定では専用の輸送機を使いワルキューレを移送、大気圏突入後ある程度の高度になったらフリーフォールを実行し、俺がそれぞれイメージカラーのスモークを引きながら空中でキャッチしてステージ入りする予定だった。

 だが、直前になってその輸送機が運悪くエンジントラブル、飛行する事が出来なくなってしまう。一度続いた不運は続くもので本来用意されているはずだった予備機は運悪くアイテール艦内に無く、何故かラグナに置いて来たエリシオン艦内にてオーバーホールの最中。デルタ小隊の面々に乗せて運ぶ手も既にランドールの大気圏内を突入してる真っ最中で戻って来る事が出来ず不可能。既に時間も差し迫っていたのもあって何か時間内に降下する方法が無いかと考えた結果、運悪くりんごちゃんが機体のプログラムと連動出来ずにバグを起こして発進出来てなかった俺に白羽の矢が立った。

 

 だが俺の機体はシートを展開しても俺を含めずに考えて最大2人が上限、無理してすし詰め状態で乗せたとしても4人が限界だ。それでは1人余ってしまう。そこで急遽考え出されたのがこの正気を疑う方法、翼上に生身の人が乗ったままの大気圏突入って訳だ。俺の機体は今回行うはずだった空中キャッチを行う関係上、ワルキューレの面々が不安定な空中で安全に着地出来てそのまま機体の上に乗っていられるように俺の機体には複数の命綱が設置されていた。だから今回はそれを使いワルキューレ面々を機体の上に乗せて固定、マキナとレイナ共同所有の倉庫の奥底に眠っていた特殊な耐熱コーティングと冷却システムが組み込まれた特殊装備を身に着けて一緒に大気圏突入ってのが今回の作戦なのさ。

 

【問題は無い。それに数が揃わなかったのも無理ない、コレは随分昔に作られた試作品、だから仕方ない】

 

【え、今随分昔に作ったって……う、嘘よね?】

 

【もぉーレイレイったらクモクモに嘘ついて不安にさせて、そう言うのダメだぞぉプンプン】

 

【そ、そうよね。いくら何でも昔ってのは冗談──【これは随分昔じゃなくて新統合軍設立前のかなり昔の物でしょ?】──嘘でしょ】

 

【大丈夫、ちゃんと使用できるのは証明済み。その証明で丸焼きが何匹か出来たけどメンテナンスしてるから問題は、ない】

 

【本当にごめんなさい美雲、私もまさか思いつきで言った事を本気にするだなんて思ってなかったから……今度からシデンさん──ヒビキ君の前では軽はずみな事は言わないようにするわ】

 

【だから大丈夫じゃないんよぉおぉぉぉぉ!!!】

 

「フレイアちゃんそんなに怖がらなくても大丈夫大丈夫、それを使ってでの生身での大気圏突入記録はちゃんと残ってるからそれによると例外なくちゃぁーんと突入後までは皆生還してるよ」

 

【ほ、ホント?】

 

「……ただ、揃いも揃って着地手段である装置に不具合が発生して地面に高速で叩きつけられる結果になり、ご想像道理のミンチ肉になってたけど今回は俺が一緒だから問題ない!」

 

【き、聞かなきゃよかった】

 

 安心させるはずが逆にレイナとマキナ以外の面々に不安を植え付け、やっちまったと思ったが時既に遅し。何とか元気づけたかったが予定時刻まで余り時間が無く、差し迫っていたのでこれを無視するしかなかった。すまねぇ三人とも、帰ったらチャックの店でなんか奢るから許してくれ。

 メインモニターに映るりんごちゃんがチェックしてくれた項目に軽く目を通しながら俺は通信を繋げた。

 

「こちらデルタ6からブリッジ、速達ワルキューレ便準備完了。いつでも動かしてくれ」

 

【了解! ブリュンヒルドをカタパルトへと移動させるデスー!】

 

 機体はゆっくりと動かされ、エレベーターを上り甲板へ。そこから見える景色は絶景で今回の目的地であるラグドールもよく見える。

 そのまま機体は移動して行きカタパルトへと機体が接続された。

 

【全システム同調完了。発進タイミングをデルタ6へ譲渡しますデスー】

 

「了解、そんじゃ発進前の最後の安全チェックだ。全員耐熱マントに包まってるか? 命綱はちゃんと機体に固定したか? 人類初である生身での大気圏突入をする覚悟は既に完了か?」

 

【全てオールグリーン、むしろワクワクしてきた】

【私も問題ないよー】

 

 当然お気楽デンジャラス娘たちは既に準備完了っと。それで問題は残りの面々だけど……

 

【……フレイア、貴方はどんな想いで歌うの?】

【すいません美雲さん今は恐怖で余計な事考えてる暇ないです】

【大丈夫よフレイア落ち着いて……その気持ちは私も同じだから】

【カナメさん……】

【そうよ、私も正直恐怖を紛らわしくて質問しただけだから気にしなくてもいい……だけどこれだけは憶えておいて】

【ほい?】

 

 あ、大丈夫そうだな。エンジン出力を上げて機体を唸らせる。さぁ、そろそろだ。

 

【歌には一節一節思いが詰まっている。だからその思いを読みとってどう表現するかはあなた次第、頑張りなさい──―「デルタ6発進する。皆舌噛むなよ!」】

 

 すまんなマジで時間が無いんだわ。

 カタパルトに機体が引っ張られそのまま宇宙空間へ投げ出される。急激にGが体を襲いISCを機動してないだけに正直全身が痛いが我慢我慢。本当ならりんごちゃんに頼んで一番負担の少ないスピードにコントロールしてもらって飛行したかったんだが現在リンゴちゃんは発進直前に発生したバグで機能不全を起こしてるので無理。だから俺自身の体を使って調整するしかない。あ、そうだ。気絶とかしてないか生存確認も含めて話しかけ続けなきゃいけないんだった。

 

「ヴィーナスの皆さんたち、調子はどうだい?」

 

【レイナ問題無し。むしろ最高、もっとスピード出して】

【マキナ問題ないよぉ! 電ッチ体に負担を掛けないように調整するだなんてキャワワ!】

【美雲問題ないわ、ちょっと揺れが酷いぐらいかしら?】

「すいませんねファーストクラスじゃなくて、これでも気を付けて飛んでるんですよ」

【ちょっと美雲……あ、カナメ異常ありません】

【フレイア大丈夫でぇーす、ゴリゴリぃに怖いぃ】

 

 よし皆、問題無さそうだな……これならもうちょいスピードを上げれるか? 

 ゆっくりスロットルを傾け機体を増速させる、身体で感じられるギリギリ身体に負担にならない程度に気を使いながら。

 これから皆には大気圏突入って言う試練が待ってんだ、移動だけで体力減らしてちゃ意味ないぜ。そのままゆっくりと進んでいると突如コックピット内でアラームが鳴り出しメインモニターに惑星の重力圏内に入ったと警告が走った。

 

「さてさて出番だぜワルキューレ。大気圏突入後、成層圏を突破したら即フリーフォールだ、皆気張って行け!」

 

 俺の声に合わせて5人はそれぞれWを作った手を目の前に見える巨大な星へと向けた。

 

 その姿はまるで過去バジュラ戦役で見た────戦場へ向かって行く彼女達二人を見ているようだった。

 

「銀河のために」

 

 マキナが始め。

 

「誰かのために」

 

 レイナが紡ぎ。

 

「今、私たち」

 

 フレイアちゃんが後に続きながら。

 

「瞬間完全燃焼」

 

 美雲が奏でて。

 

「命がけで、楽しんじゃえ!」

 

 カナメが告げる。

 

GO! ワルキューレ! 

 

 

 銀河のヴィーナス、ワルキューレの到来を。

 

 

 機体は星へと向かい降下していき真っ赤に燃える……奇跡の時間まであと少し──

 

 

 

 

「……ある意味今、瞬間で命を燃焼しそうだよな」

 




【ワルキューレ小話】

先日通信端末を買い替える際に気付いたのですが、連絡先に登録しているのが仕事先の相手や同僚達しかいませんでした。……これは不味い事なのでしょうか? この事を偶然同じく通信端末の買い替えに来ていた同僚に話したところ―――

「そういえばヒビキ中尉は何人の連絡先を登録しているのですか?」

「俺? 俺か? 俺はなぁ―――なんと(買い換えたばかりだから)ゼロ人だ」


……彼って友達がいないんでしょうか?

美雲が相談するとしたら誰?

  • ハヤテ&フレイア
  • カナメ
  • マキナ&レイナ
  • ヤベー奴(ヒビキ本人)
  • アラド&ミラージュ+メッサー
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