運がいい人が飛ぶと……   作:空を飛びたいチキン野郎

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ファースト・ライブ【4】

 ────1つの流星が落ちて来る。

 

 惑星ランドールにワルキューレライブを見に来ていた観客達はそう見えていた。真っ赤に発光してこちらへと真っ直ぐに落ちて来るそれは、やがては纏っている光を失い正体を表す。

 

 黒色のバルキリー。

 

 それが視界に入ると異常事態かとパニック起こしそうだった観客達は興奮し、流れ出した音楽が心を震わせる。既に観客達のボルテージは上って行き、彼女達を今か今かと待ち侘びていた。

 

 ある程度の高さまで機体が落ちて来ると3つの黒い影が分離、その直後別の物を射出し機体をくるりロールさせながら、さながら変身かの如く機体の色を紫色へと変えると射出した物と一緒に5色のスモークを引いた。

 

 それはそれは見事な飛行だったようで幸運な事に観客達はそれに目が奪われ、最初に分離した3つの黒い影の事など忘れていたが────やがては思い出される事となる。影が輝きを放ち、そのベーレを脱いだからだ。

 

「歌は愛!」

「歌は希望!」

 

「歌は命!」

「歌は神秘!」

 

 四つの掛け声が会場に響き渡り、彼女達の降臨を告げる。だが、観客達の期待に応えるには一つ足りない。

 

「ハヤテが死んだ目で言っとった……飛べば飛べるって。飛べば飛べる、飛べば飛べる、飛べば飛べる、飛べば飛べる飛べば飛べる飛べば飛べる飛べば飛べるっていうんかもう飛んどる!  ゴリゴリぃ!!!」

 

 だが、それも僅かな合間。

 

「歌は元気!」

 

 最後の一人、期待の新人フレイア・ビオンは自身を包んでいたベールを脱ぎ捨て、その溢れんばかりの笑顔を向けた。

 その笑顔にある一人のパイロットがヤラレ危うく墜落しそうになったのは全く関係ない事である。

 

「5人目だ!」

 

「新メンバーだ!」

 

「可愛いよフレイアちゃああああああん!!」

 

 だが、最後の一人の登場に会場のボルテージはさらに沸き立ち始まる前から最高潮を記録。中には泣き出す観客もいるぐらい出会った。全くの余談だがあるパイロットもヘルメット内を涙目で濡らして彼女の登場を喜んだらしい。

 

 登場したフレイアは他のメンバーが女神のように着地したのに対し、操作にまだ慣れていないのかオドオドとバランスを崩し、着地に失敗。すっ転んでしまったが観客達にはそれが受けたのか微笑ましいモノを見ているかのような暖かい視線と楽しそうな笑い声が広がった。

 

 そんな会場の中で転んだフレイアを放置し、美雲は一歩歩みを進め、そして宣言する。

 

「聴かせてあげる! 女神の歌を!」

 

 美雲の掛け声が合図となり、それぞれ思い思いのWを作り会場へと向けた。

 

 

「「「「超時空ヴィーナス! ワルキューレ!!」」」」

 

「わっ、ワルキューレ!」

 

 一人出遅れてしまったがコレから始まるは奇跡で夢のような最高過ぎる一時。会場から割れんばかりの歓声と拍手が響き渡りそれを物語っていたのだった。

 

※※※

 

「即興で最高の演出をしてやったぞオラァ!」

 

【ナイス判断だデルタ6、後は任せろ! 全機緊急プランオペレーション、スルト! 荒々しく舞うぞ!】

 

【【【了解!】】】【ウーラ・サー!】

 

 操縦桿を傾けて機体を移動させ、俺は観客達から見えない場所でガウォークへと変形させて滑空、待機する。

 

 いやぁー、マジで焦りましたわ。俺の降下時間が予想以上に短く、ハヤテ達の合流が数秒ズレて予定していたアクロバット飛行が最初から破綻してるって報告聞いた途端、何とかその数秒を稼ごうと即興で本来の演出で使うはずだったスモーク付きミサイルぶっ放した直後、即興劇を披露したけど成功してよかったぁ。

 拡大機能を使い上空からワルキューレの舞を見てるけど……すげぇなありゃ。イントロが流れて来たと思いや、それぞれの衣装が音楽に合った物に変身するかのように変わりやがった。まるで魔法のようだ。

 

【レイナ技術士からメッセージを受信。音声再生、開始【コレは化学、魔法とか言う陳腐な妄想の産物とは全くの別物】────終了】

 

「何でライブ中で尚且つ、めちゃくちゃに物理的に離れているはずの俺の考えが読めるんですかね? その事の方がよっぽど魔法だろうに」

 

 俺のそんな考えなどお構いなしにライブは続く。彼女達ワルキューレが生み出す幻想的な踊りに歌は観客達を沸かせ、サビに入る頃になると観客達は一体となって全力のその一瞬を楽しんでいた。てか、いいなぁ。

 

「俺も今度あの観客先に混じってライブ見れないかなぁ……まぁ、ムリだろうけど」

 

 だって彼女達がライブをするって事は俺も護衛としてアクロバット飛行するって意味だもの。ほら、今だって同じ小隊のハヤテが飛んでるし今回は別としてゆっくりと見る暇なんか────ってオイオイ、ハヤテの奴勝手に踊ってやがるな、ミラージュ少尉がすぐさまフォローに入ってスゲェ事になってやがる。ホントよくやるよ、俺と同じ即興の演出だったとしても踊る方がよっぽど難しいのに……アイツって天才か何かなのかな? 

 

「さてさてサボるはここまでにして俺は俺の仕事をしましょうかね……りんごちゃん、修復状態は如何程?」 

 

【現在全システムの39%を緊急用モードで起動中。全機能の回復には後15時間の見通しです】

 

「オートはダメって事ね了解。そんじゃマニュアルでやりますか……ハートブレイカー、マスターキーで起動」

 

【ハートブレイカー、全周波介入モードで起動します】

 

 腹部に装備された武装が展開され、メインモニターが様々な周波の乱れを表示した画面へと切り替わる。俺はその中から通信や音声に関する物を呼び出して発信先全てへと目を向けた。

 

 

 

 今回、本来のステージ上で行うはずだった俺の仕事、それはワルキューレを視聴しているネットワークの監視だ。

 

 理由は言わずもながらあのアンノウンへの警戒及び、危険分子の早期発見が主な内容となる。

 そしてその監視で役立つのがこの武器。武装名、ハート・ブレイカー。コイツの本当の姿は何とビックリ、斧型のハッキング装置だったのだ。マジで予想外過ぎて理解した時はその時飲んでたアプジュー吹いたからね。

 

 でも1番おかしいと思うのがコイツは一度起動すると効果範囲であれば有りとあらゆる全ての通信へと介入、それ以降通信はコイツを迂回してからとなる点だ。膨大な情報処理を円滑に処理しつつラグ無しで送り出す事もおかしい点が正直言って頭おかしい。それに加えてもっと、もぉぉぉっと頭おかしい点はコイツを一度迂回して通信するその回線の解除キーが自動的に生成されて実質的なマスターキーになってしまう事だな。もう辞めて、お腹いっぱいだから。

 あの時のマキナとレイナの説明では色々とわかんなかったけどこれだけは分かる。多分レイナが見つけたコレは本来この機能を隠蔽する為に廃棄処分される筈だった物じゃないかな? 

 だけど偶然廃棄される直前にレイナのロマンセンサーに引っかかり回収。マキナと一緒に分析した結果この機能が分かり、隠すのでは無くて生かす方針で改修を受けて今に至るって経緯だと思う。細かい事は本人達に聞くしかないけど俺的には何でそんなヤベェ物を斧に改装しやがって狂ってやがるぜ。(褒め言葉)

 でもさ、これって明らかに表に出したらヤバイりんごちゃん同様の厄物だよね? 

 

 それに何だコイツ、フルスペックを発揮しようと思ったら全体の6割以上エネルギー持ってかれる大食いなコンピューター付きの斧って絶対戦闘機用の装備じゃないだろ。4発積んでる俺の機体だからまともに運用できてるからいいものを、コレ普通の機体だったら起動すら出来ないよな……ハァ。

 

「また厄物が増えて不幸だなぁ……あ、これウィンダミアからだ」

 

 複数の通信。その中には色々と怪しい回線が存在したが、個人的に気になったのがフレイアちゃんの生まれ故郷から接続されているのだった。物自体は音声と映像を送るごく普通の通信なだけど必要以上に中継挟んで接続されてるみたいで凄くまどろっこしいやり方してんだよなぁ……接続元も不明としか出てないし。……うん〜、考え過ぎかなぁ? 

 

「ま、なるようになるか」

 

 曲の終盤に入り盛り上がるライブにいっそう難易度を上げて飛ぶデルタ小隊の面々。俺の疑念などどうでも良くなるぐらいに美しく舞うワルキューレの歌はこの星に響いているのであった────

 

【アイテールよりデルタ小隊各機に緊急連絡! 惑星軌道上に正体不明のデフォールド反応確認、アンノウンです!】

 

 ────この時までは。

 




【ワルキューレ小話】

 拝啓、最近歳の影響かバルキリーに乗ると持病の腰痛が酷くなるおじいちゃんへ。今日も元気におばあちゃんのお尻に惹かれてるでしょうか?
私の方はもらったあのCDをどう保管するかで頭がいっぱいですが、なんとか元気です。
 さて、またあの時の同僚の話になるのですが……彼は一体何がしたいのでしょうか?

「ひ、ヒビキ中尉、何をしているのですか?」

「何って目玉焼きに塩かけてるだけだけど……」

「め、目玉焼きには普通醤油でわ?」

「あぁ、俺は気分で変えてるんだわ。この前なんかはケチャップかけて食べたぜ」

「は、はぁ」

おじいちゃんやおばあちゃん、お母さんにお父さんも醤油でしたし……普通醤油ですよね? 

美雲が相談するとしたら誰?

  • ハヤテ&フレイア
  • カナメ
  • マキナ&レイナ
  • ヤベー奴(ヒビキ本人)
  • アラド&ミラージュ+メッサー
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