運がいい人が飛ぶと…… 作:空を飛びたいチキン野郎
「うわぁ」
暴動の起こるシャハルシティ、その上空を俺は偶然にも飛行していた……巻き込まれる前に飛べて本当に運がよかったなぁ。
ハヤテ達と分かれ後空港へと辿り着き報告のあった俺の機体、
「これは……酷いなぁ」
上空から見た景色は混沌としていて地獄絵図そのモノ。本来なら市民を守るべく駐屯していたゼントランの軍人さん達が市民へと牙を剥き暴徒と化している。どうやらこれがフレイアちゃんに言ってたヴァール化みたいだけど……まったく恐ろしい奇病だな、おい。
一応暴徒鎮圧に動いたデストロイドがいるけど暴走するゼントランの軍人さん達の力は凄まじく、彼らが操る一〇四式リガードには歯が立たずに撃破されてしまっている。うわぁシャイアンIIが荷電粒子砲で溶けてやがる……あれは助からないだろう。ってか新統合軍は何故動かないんだ?
確かにここの惑星、もっと言えばこの星団そのモノは辺境だけどもバルキリー部隊が駐屯しているはずだ。早く動かないと大変な事になるぞ……ッ!
「マジか、こりゃバジュラ大発生の時ほどではないにしても大惨事だ」
恐らく可燃物が大量にあったのだろう、町の一角が爆発と共に火が上がりリガードは次の目標を探し始める……そして見つけてしまった。
「不味い!」
同時に俺の機体に搭載してあるセンサーが1人の女性を捕らえた。
それは空港で見た紫色の髪をした綺麗な女性。その人はこんな暴動が起こって大惨事って時なのに暢気に歩いていらっしゃる。俺はその姿に何と言いうか……言い表せないほどの危険を察知すると気づけば機体を降下させていた。
スロットルを引き下げエンジン出力を上げて女性へと迫るリガードへと突撃。踏み潰そうと足を上げたリガードに対して俺はバトロイドへと高速変形そして―――ぶん殴った。
「オラぁ!」
それも思いっ切り。機体出力と運動エネルギー、そしてピンポイントバリアの三つの要素が噛み合った結果か、リガードの装甲を俺の拳は軽々と貫き敵を撃破する。感触的に中身は攻撃してないみたいだからある意味安心ではある、流石に人殺しなんてまっぴらゴメンだからな。
「大丈夫か、そこの紫の人」
「!?」
バトロイドからガウォークモードへと呼ばれる戦闘機に足が生えたような状態へと機体を変形させてキャノピーを上げ俺は話しかけた。本当ならそのまま話しても良かったんだけど……なんとなく、そうした方が後々良いと思ったからそうした。
キャノピーを開けて直接対面するとやっぱりあの紫色の髪をした人だと確信したは良いんだけど……やっぺ、よく考えれば俺ある意味不審者じゃん。
「え、えっとありがとう」
ほらぁ~彼女も戸惑ってるよぉ~‥‥マジどうしよう。
ある意味気まずい雰囲気の流れる中、俺は彼女の奥の瓦礫にいた見知った人物を発見した。アレってフレイアちゃんにハヤテじゃん!
「おーい!ハヤテ達、そっちは無事かぁ!」
「!? あん時の!」
「ヒビキさん!」
思ったよりも早すぎる再会に俺も喜ぼうとしたけれどそんな暇、この戦場では与えてはくれるはずも無く。
「ッ! 三人とも伏せろ!」
機体内にロックオンアラートが鳴り響いた。
ロックオンのされている位置、3時の方向、視線を向けるとそこには荷電粒子砲を構えたもう一機のリガードの姿が。キャノピーを急いで閉じバトロイド形態へと素早く変形、装備した盾を構え攻撃を運よく受け止めることが出来た。
「こなくそぉ!」
その直後すぐに展開できる武装として機体背部にあるビーム砲塔を展開、発射する。ビームはそのまま敵を貫き敵はそのまま沈黙する。
ふぅ~何とかなった。カメラで確認するに三人は無事、よかったぁ~。
「早く避難を! ここは既に戦場だ」
俺はそう言い残し次の敵を警戒……っていきたかったのだが。
「まだいるのかよ!」
再度ロックオンアラートが響き敵さんが俺へとラブコールを送ってきているのが分かった。マジで勘弁してつかぁさい。
レーダには敵影が2機表示されていてどちらもスーパー・グラージ。やっぺ、油断すると普通にオレやられちまうな。
「しゃらくせぇ!」
敵のビームが雨霰と飛んで来る中ファイターモードへと変形、何とか高度優位を取ってミサイルを発射した。ミサイルは敵の目の前まで来ると空中で爆発、強い光と共に画面がブラックアウトする。
しかし俺にはそんな些細な事関係はない。ガウォークへと変形してナイフを取り出すと滑るように敵の横腹へと潜り込んでナイフを突き刺す。火花と共に装甲が割け重要部分を切った事が俺にも分かるともう一機の機体に対しても同じように横っ腹を突き刺した。ホントはガンポットを使っても良かったんだけど威力がね……高すぎるのよ。あと俺がガンポット使うと必ずヤバイ事になるからあんまり使いたくない。
最初使った時なんてミハエルが死にかけて最終的になんやかんやあって幼馴染と結婚式を上げる事になったからなぁ……あ、そういえばアイツ最近子供ができたらしい。
「ふぅ、ふぅ、ふぅぅぅ~、重力内戦闘、キツ過ぎ、正直、吐きそう」
ってか重力影響内での地上戦ってこんなにキツイのか、宇宙で余裕で出来る事がなんでここだとこんなにキツイんだよ。ISCがあるとはいえ、俺は横Gには弱いんだ。
今すぐにでも吐きたい気分を何とか我慢して敵の警戒に移るんだけど……またアラームなったって
「今度は5機かよ!?」
※※※
声が聞こえる。
「おい、どうした!」
さっきバルキリーに乗って助けてくれたヒビキさんもそうだけんど私の感じた事がない風がビビビっと来るんよ。でも今は別の―――風。
「虹色の――」
それは虹色の――――声。
私のルンがごりごりでピカピカっと新しい
「‥‥ふふふ、なんだかおもしろい人に出会ってしまったわ」
でもこの風は私は知ってる。何度だって聞いて私の憧れた―――
「―――声!」
「そして、この場もやっと温まって来たわね、それじゃあ……!」
掛け声と共に帽子とサングラスを脱ぎ捨て―――
「イッツ、ショータームッ!」
―――その人を中心にこの戦場の空にスポットライトが灯り。新しい風が吹き荒れた。
「歌は神秘!」
紫色の眩しぃ輝きと共に空からそれに続く様に流れ星も振ってくるん。
「歌は愛!」
「歌は希望!」
「歌は命!」
緑、ピンク、黄色と流れ星は紫色の光に集まるかのように落ちて来て姿を現した。そしてそれに対して私は興奮が抑えきれんかった。あれは! あの人達は―――!
「聞かせてあげる、女神の歌を!」
「「「「超時空ヴィーナス、ワルキューレ!」」」」
ホントならここは戦場、だけど今の私にとってはライブ会場と差ほど変わらん。だって目の前であのワルキューレが歌っとるんだからね!
まるで夢や幻、そんな幻想的な光景が私の前に広がっていた。
光る機械を巧みに、ぴかぴかっと綺麗に輝かせてゴリゴリに舞い踊りそして、歌い続ける4人の歌姫たち。その光景はまるで夢の様に私は感じたのだった。
「すごい! ごりごりぃぃ!!」
※※※
ワルキューレの歌が戦場で絶えず木霊し、敵味方魅了し続けるそれはまさに魔性のようだがそうではないあれは歴とした彼女達の絶え間ない努力で勝ち取った物だ。
「ピンポイントバリア正常に形成完了、フォールドアンプ異常無し、ワクチンライブ継続可能!」
そしてそれをサポートする者達も当然存在する。
可変戦闘機《VFー31》。最新鋭の新型にして彼女達、ワルキューレのライブ活動を補助するためのアイテムを豊富に積んだ特別仕様のそれ。彼、彼女らは主役を最大限目立たせるための無くてはならないわき役、そのような立ち位置だった。だがしかしそれは彼女らにとって必要であり必須のモノ。
「デルタ・リーダーより各機へ、アルファ、ガンマが上空護衛に入った。これより予定通り彼女達の直衛行動に入る」
通信機越しデルタ小隊のリーダーであるアラド・メルダースが響き渡りその力強さを感じさせる。
「「了解!」」
「ウーラ・サー!」
その指示に導かれ四機の戦闘機は大きく翻し暴動溢れる都市へと突入していく。その姿はまさに姫を護衛、または守る隊列の取れた騎士達のようだった。