運がいい人が飛ぶと…… 作:空を飛びたいチキン野郎
「空が早いいいいいいいいいいい、敵からのロックオン鳴り止まないいいいいいい」
五機の暴徒と化したクァドラン・レアに追いかけられながら俺は都市上空をほぼトップスピードで飛びまくっていた。
機体出力が限界点ギリギリまで高められ、下手したら爆発するんじゃないかと内心ビビる。だってこんなスピード飛んだの5年ぶりだよ、それに加え準備運動すら出来てないんだから怖いに決まってるだろう!
「ぎゃぁー!??? いま掠った?!、掠ったよね!!」
五機のクァドランに装備されたガトリングレーザーや対艦インパクトカノンから放たれる沢山がビームや質量弾が俺の機体を撃破せんとばら撒かれながら襲ってくるが運がいい事にそれはどれも直撃はしない。ってか回避運動キツ過ぎッ!
馴れない重力に振り回され心臓が恐怖で悲鳴を上げるけどマジキチぃ。
「くそぉ、ドックファイトへと持ち込めねぇ!」
本来ならドックファイトなんなりに持ち込むんだが今回はとにかく数が多い、攻勢に出ようにも下手に軌道変更してみろ、直撃して仏さんになっちまう。
敵を連れて右往左往、上昇下降を繰り返し撒こうに撒けない。せめてもの抵抗として回転型砲塔を展開、後ろへとぶっ放しまくるけど全然あた―――
「うぉ! ラッキー、ラッキーショット!」
追ってきている一機のバックパックに直撃、推進機関が壊れたのだろう墜落していく。よし、後四機!
さらにフットペダルを押し込み、熱核バーストエンジンが火を噴き上げ、増速。機体からはオーバースピードだと警告音が鳴りだすけどまだ行ける!行ける!頑張れ相棒!
「うおぉぉぉッ!! 舐めんなゴラァぁぁぁぁ!!!」
テンションもだんだんと上昇してやっと景色がよく見えて来た。
本来早く流れていくはずのキャノピー外の景色、しかし今の俺にはゆっくりと流れるようにハッキリ見えてきた。
敵の弾道、ビームの軌道なんて本来の俺なら見えないはずなのに何処に、どのようなタイミングで飛んで来るのかがハッキリと分かる。
「反撃開始じゃゴラァ!」
機体をビームの飛来に合わせて右へ左へと揺らしお次はエルロンロールよ呼ばれる機体を回す操作。敵機のビームを躱すと半ガウォーク形態かの様に足を出して推進機関であるエンジンへと前方へと噴射し急停止行う。急激なGが俺の体を襲うが構ってる暇はねぇ!
敵がそれに反応できなかったのか俺を追い越して前方へ出るとロックオンを告げるアラートが鳴る。よし、フルバーストッ!
「全部もってけぇッ!!」
機体に設置されてあるマイクロミサイルランチャーと重量子ビームガンポッド、ビーム砲、展開できる武装を全部ぶっ放した。
ミサイルや武装全てはロックオンの通りに当たってくれたらしく派手な爆発と共に爆発四散! ナムサン!
「ってやっべ、殺しちまったか?」
その場をホバーで留まりその光景に覚悟するが―――その必要もなかったらしい。
「ふぅ~、ラッキー」
どうやらミサイルやガンポットが直撃した部分は装甲の厚い部分だったらしく、中のゼントランの軍人さんが外から確認できるぐらい機体の損傷は酷いがセンサーによると無事だと言う事が分かる、マジでよかったぁ。
安心に胸をほっとさせるのもつかの間、警告音が響いた。場所は直上、12時の方向。目を向けるとそこには――――機体が、隊列を組んだ機体が見えていた。
「VFー31、初めて見た……」
最新鋭機VF-31、俺の機体YFー29の二つ後に当たる後輩で配備数も新統合軍でもまだ少なく、滅多に見られる機体じゃないはずなんだが……すげぇ、何処の小隊だよ、ありゃぁ。
特徴的な前進翼に大型カナード翼、それに加えYF-30から継承されたマルチパーパスコンテナユニット……カッコイイなぁ。
新しい物好きの俺はその機体の飛ぶ姿に見惚れていると何処からか聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「――歌?」
一瞬ランカやシェリルの声かと思ったがそれは気のせい、しかし過去に最終戦場で聞いた二人の歌にも似た何かを感じた。
それがどこか何処かと探すが凄く遠くの方で流れているらしく姿は残念ながら確認できない。だけど聞こえる4人の歌声。
その声に敵味方関係なく聞き惚れてるらしく皆揃って歌の発生源へと視線を向けている。
「スゲェ、マジであの二人みたいだなぁ」
恐らくあの歌っている歌姫達こそがフレイアちゃんの言ってたワルキューレなんだろう。
降下してきたVFー31はその歌姫達に合わせるように色とりどりのスモークを引き模様を書き、アクロバット飛行を始める。しかしその途中でも暴徒と化した軍人さん達を抑え込んだり無効化を図っている所から見ると腕は確からしい。
「スゲェ、機体も機体ならパイロットもパイロットで優秀ってか……って事はあの機体の中に少尉がいるのか」
歌を聞けば暴動が終わる。まるで過去に見たアルトの黄金の舞いかの如き奇跡を目の当たりにしてるんじゃないかと錯覚し始めたごろ更なる知らせを機体が告げる。
「アンノウン?」
宇宙からの襲来者を告げる。時代遅れなレーダーの為に数は分からなかったが小隊ぐらいの人数はいそうだ。正体を俺の機体にあるデータバンクで探すが該当は無く正体は不明。完全にアンノウンって奴だな。
俺はファイターへと機体を変形、落下予想地点へと飛んだ。
※※※
「こちらデルタ3、アンノウン、数は6! 新統合軍艦隊を突破してシャハルシティにアプローチするコースに入ってます!」
チャック・マスタング少尉からの報告に私は理解できなかった。
「新手か?」
「ヴァール特有のフォールド波も検出されていません……つまり」
「厄介なお客さんって事か……」
ヴァ―ルシンドロームの混乱に紛れテロ行為を行うテロリストの出現、デルタ1であるアラド・メルダース隊長の予想道理の出現。いつかいつかと考えていましたがまさかこんなにも早く出現するだなんて……何故このような愚かな真似を。
「テロリストッ」
操縦桿を握り直して接敵に備える私だったがレーダーに新たな機影が映る。
「こちらデルタ4、新たなるアンノウンを捉えました」
「な!? バカな、こっちのレーダーには何も―――」
何故電子戦機であるデルタ3のレーダーでは無く私の機体のレーダーで捉えたかは分からないが確実にそこにいると分かる。
「それは後だデルタ3、アンノウンって事は空のお仲間さんか?」
「分かりません、私の機体ではそこまで……」
「―――こっちでも捉えました、数は1、機種は―――YFー29!?」
「YF-29?」
地球でも配備数が少なく幻の試作機と呼ばれている機体が何故このような場所に。いつも冷静であるあのデルタ2、メッサー・イーレフェルト中尉ですら声にだして疑問に思うほど場違いな機体。見たところによると私達の様にヴァ―ルシンドロームに侵された人を止めているようにも見えるが……まだわからない。
「今近くの空港から連絡が入った。あの機体は旅行者の機体のようだが詳細は不明、しかしYFー29を使ってる事から考えるによっぽどの腕だぞ。あんなピーキーな機体、俺でも扱いきれん」
「隊長でもですか、よっぽどじゃじゃ馬な機体なんですね」
「あの時は軽く死にかけたぜ、ハッハハ」
「デルタ1デルタ3私語はそこまでに、そろそろ接敵します」
デルタ2の一言により小隊各機は私語を辞め、集中を取り戻すが私は隊長の言葉に引っ掛かりを覚えていた。
「旅行者?」
そういえば先ほどバルキリーでこの惑星へと旅行目的で訪れていると言ってた人がいたような。名前は確か―――
「―――ヒビキ・シデン?」
「ん? デルタ4、今何と」
通信が私の呟きを拾ったらしく隊長が私へと聞き返す。隊長の声は先ほどの様なふざけた感じでは全くなく、何処か緊張したような声を発していた。
「ヒビキ・シデンです、恐らくですがあのYF-29のパイロットかと」
私が言い直す。すると突然隊長は大笑いを始めた。えぇ!? 今の笑う要素ありましたか???
「ッハハハハ、すまない、すまない、いやぁ~まさかその名前をここで聞くとは思ってなくてな」
隊長は彼を知っているらしく先ほどとは違い親しげな感じで話していた。
「各機、とりあえずYFー29は無視して問題ない。むしろ気合入れろよ、お前ら! アイツの活躍次第ではこの戦場、荒れるぞ。全機オールウェポンズフリー!客を出迎えるぞ!」
「「了解!」」
「ウーラサー!」
そして私達の機体は空の敵を向い撃つべく空を駆ける。その途中――
「まさかこんな所で銀河一の
―――隊長が最後に発した呟きが私の耳に不思議と残った。